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第5章 悪徳の港町バルト
第47話 ヴァルとの戦い
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「△X○○ 蜘蛛の網!」
短杖の先端の宝石から粘性の網が放出されて、獣人ヴァルと蠍尾獅子を絡め取った。
粘ついた網によって、一塊にされるヴァルと蠍尾獅子。
「神の一撃、食らいなさい! 神聖衝撃!」
ミスティファーの伸ばした右手から放たれる不可視の衝撃波が、網に捕らえられた哀れな獲物を叩きのめす。
「おごわぁぁ!」
「ぐるぁぁ!」
衝撃波により体を損傷し血飛沫を上げるヴァルと魔獣。
そこにエリザベスの追い打ちがかかる。
「食らえ! 爆弾、発射!」
トランクより球体が放出されて、喚き続けるヴァルたちの方へと飛んでいく。
着弾し爆発する球体。
外殻の破片が肌を裂き食い込み、火燃薬の燃焼が体を焼いていく。
爆発の煙が晴れた後、そこにあるのはボロボロになった二匹の魔獣。
ヴァルの左腕は肘から千切れ、全身もボロボロになっている。
蠍尾獅子も、その象徴ともいえる蠍の尾が半ばほどから千切れて、片翼も失っている状態でかなりの重傷だ。
「やったか? これで行動不能になってくれれば……」
コーンズが期待を込めた声を出す。
が、そんなセリフは終わってない事のフラグでしか無い。
咆哮を上げながら残った右腕に力を込め、体に絡みついた蜘蛛の網を引き千切ろうとするヴァル。
ビチビチと音を立てて、伸長限界を越えた粘糸が千切れていく。
「まずい! もう保たない!」
「ぐぁぁ!」
雄叫びと共に完全に引き千切られる蜘蛛の網。
深紅の双眸をミスティファーたちに向け、唸り声を上げるヴァル。
こんだけやったのだから当然だが、完全に敵とみなしているようだ。
ヴァルの両脚に力が篭もり次の瞬間、血飛沫を尾のように引きながら矢のように巨体が駆ける。
こちらに向かってくる漆黒の巨体に対し、立ち向かったのはロウドだ。
皆の前に立ち、オルフェリアを構える。
風を切り振るわれる毛むくじゃらの豪腕を、オルフェリアの刀身の腹で受けるロウド。
強烈な加重が掛かり慌てて左手も刃に添えて攻撃を受け止める。
「あああ!」
しかし装備を剝がされた状態では、獣人と化したヴァルの攻撃を止めるには無理があった。
両脚の踏ん張りも虚しく後方へと吹き飛ばされるロウド。
もし魔剣のオルフェリアではなく、普通の剣であったなら確実にへし折られていたであろう。
ゴロゴロと転がるロウドを受け止めるコーンズ。
「大丈夫か?!」
「う、うん。何とか」
立ち上がり、再度オルフェリアを構えるロウド。
「しぃ~~」
右腕を振り切った状態のヴァルが、口から呼気を吐きながら、ロウドを睨みつける。
「はいはい、その坊やだけじゃないですよ! 貴方のお相手は!」
そう言って前腕ほどの長さの金属筒ー銃を構えるエリザベス。
弾の入ってるとおぼしき箱を取り替えて、筒下の取っ手に付随している、弩弓の物と同じ引き金を引く。
小さな爆発音ー銃声を響かせて発射される弾丸。
着弾。その衝撃に身を震わせるヴァル。
しかしチンピラどもとは違い、ヘッド・ショットではなく、胴体に撃ち込んだためか、あまり効いてるようには思えない。
厚い胸板に空いた弾痕から吹き出していた血が、ヴァルが呼気を発し身を震わせた途端に止まる。
おそらく筋肉を締めて出血を止めたのだろう。
「は~。爆弾ならともかく、弾丸ではイマイチ効きませんか。でも、これはどうですかね」
二連射。それはヴァルの今にも駆け出しそうな脚の両膝を撃ち抜いた。
脚を支える膝を撃ち抜かれて、もんどり打って倒れる漆黒の巨体。
「動きは止めました。さあ、早く!」
エリザベスの声が響くや、次の魔術の詠唱を始めるイスカリオス、豊穣の女神への聖句を唱え始めるミスティファー。
「ロウド、コーンズ、ボケッとするな! 二人の準備が整うまで牽制するんじゃ!」
オルフェリアの叱咤と共にロウドとコーンズも動いた。
ロウドはオルフェリアを振りかざし、コーンズは逃げた守衛の者たちが捨てていった舶刀を手に取り、ヴァルへと向かう。
「ぐるぁぁ!」
威嚇の咆哮を上げ続けるヴァルの体は、傷が再生しつつあった。
先に受けた全身の傷は既に完全に塞がっており、千切れた左腕も出血が止まって肉が盛り上がっている。
膝の傷も血泡を吹き出しつつ再生しつつあるようだ。
「なんだよ、この再生速度は」
その再生を見たコーンズの口から驚きの声が漏れた。
神聖術の治療に頼らず、自己再生をするモノは確かに存在する。魔獣しかり、魔人しかり。
コーンズもそんな奴らと戦ったことは何度かある。
しかし、ここまでの速度で再生するモノは初めてだ。
「魔神・牢獄のパッサカリアの呪いの加護……いや、フッカーの魔力も上乗せされておるのか」
オルフェリアが苦々しげに呟いた。
本来のパッサカリアの呪いの魔力に加えて、封印解除に篭められたフッカーの魔力も上乗せされているが故の異常な再生力。
これをどうにかするには、再生力を上回るダメージを与え続けなければならない。
「取りあえず、切り続けろ! それしかない!」
オルフェリアの言葉を受け、ヴァルに切りかかるロウドとコーンズ。
「ヴァルさん、すみません!」
謝罪の言葉を口にして、振り回される右腕を掻い潜り、オルフェリアを振るうロウド。
刃が左の肩口を切り裂いた。しかし、浅い。
「手加減はしねえぞ、ヴァル!」
宣言通り、思いっ切り舶刀を振るうコーンズ。
しかし悲しいかな。接近戦の技量の低いコーンズの攻撃は、完全に見切られていた。
振られた舶刀の刃は、ヴァルの右手に鷲掴みにされ、そのまま握り潰される。
「は?! ふざけんなよ!」
自分なりの渾身の一撃を常識外れな方法で捌かれたコーンズは怒声を上げた。
「あんな雑な剣筋で、当てられると思ってんのかよ」
そんなコーンズを遠目から見ていたヤンソンが舌打ちした。
鍵開けや罠解除などの盗賊系技能と共に、軽めの刀剣の使い方を鍛えてきたヤンソンからすると、コーンズの刀剣の使い方は全くなっていない。
思い返せば修業時代、コーンズは弓矢以外の武器の使い方を覚えようとはしなかった。
「俺は弓矢があればいい」
と言い続けて、接近戦の修業をしようとしなかったのだ。
矢が途切れたときのために、とヴォーラスが説き伏せ、辛うじて最低限の軽めの刀剣の使い方を覚えたのだ。
そんな修業時代の結果が、先日のヤンソンVSコーンズの戦いであり、今ここでの醜態である。
「あれだけ言われてんのに、接近戦の修業しねえからだ」
コーンズのあまりの不甲斐なさに愚痴をこぼすヤンソンを、傍らのミックが短刀を弄びながら揶揄する。
「おいおい、ヤンソン。またアイツらの心配かよ。お前はもう冒険者じゃねえ、こちら側なんだ。薄汚え組織の一員なんだよ」
ミックの指摘に俯くヤンソン。
畳み掛けるように言うミック。
「お前が幾ら奴らの心配をしたとしても、奴らがお前を仲間扱いすることはもうねえ。仲間見捨てて逃げた薄汚えドブネズミなんかな。お前を受け入れるのは、同じスラム育ちの俺たちだけだ。それを忘れるな」
ミックと背後に立つ大男ジントからの圧力に押し黙るしかないヤンソン。
視線だけをかつての修行仲間に向けて、
『さっさと、その馬鹿止めて正気に戻せよ』
と心の中で呟く。
そんな風にヤンソンに見守られているとは知らないロウドとコーンズ。
ロウドはひたすらオルフェリアを振るい、コーンズは今度は短剣を拾って、ヴァルの足止めを行っている。
風を切って唸る豪腕を何とか躱し、攻撃を仕掛ける。
さっきのように武器で受けることはしない。受けたら、吹き飛ばされることは間違いないからだ。
故に躱すことに専念し、ヴァルの気を散らすために適当に攻撃を仕掛ける。
そう、イスカリオスとミスティファーの準備が整うまで時間を稼ぐのだ。
ギリギリの線で、足止めだけに専念する。
そして、その時は来た。
イスカリオスが大きく足を踏み鳴らす。
「ロウド、後ろに跳べ!」
その合図を聞いたコーンズがロウドに指示を出して、後ろに大きくバックステップする。
それに倣うロウド。
「氷雪嵐!」
高らかに響き渡るイスカリオスの声と共に発生した氷の礫混じりの極寒の冷気の渦が、ヴァルと傷を負ってもがいていた蠍尾獅子を飲み込んで吹き荒れた。
氷の礫が肌を裂き、冷気が体温を奪っていく。
かなりのダメージを負っていた蠍尾獅子は、これによりトドメを刺された。
ヴァルも傷が再生しつつあるとはいえ、これはキツかったらしく、霜に覆われた体を震わせて蹲っている状況だ。
そして、とうとう本命の決め手が。
ミスティファーの聖句の唱えは終わり、神への嘆願が広間に響き渡る。
「豊穣と慈愛の女神よ! 我が友に掛けられし魔神の悪しき呪いを、どうかお鎮めください!」
暖かな神気が広間に満ち溢れ、それがヴァルの首筋へと凝縮する。
首筋に浮かんだ禍々しき赤い呪印を緑色の燐光が覆っていく。
はたして呪いの再封印はなるか。
ヴァルとの戦い 終了
短杖の先端の宝石から粘性の網が放出されて、獣人ヴァルと蠍尾獅子を絡め取った。
粘ついた網によって、一塊にされるヴァルと蠍尾獅子。
「神の一撃、食らいなさい! 神聖衝撃!」
ミスティファーの伸ばした右手から放たれる不可視の衝撃波が、網に捕らえられた哀れな獲物を叩きのめす。
「おごわぁぁ!」
「ぐるぁぁ!」
衝撃波により体を損傷し血飛沫を上げるヴァルと魔獣。
そこにエリザベスの追い打ちがかかる。
「食らえ! 爆弾、発射!」
トランクより球体が放出されて、喚き続けるヴァルたちの方へと飛んでいく。
着弾し爆発する球体。
外殻の破片が肌を裂き食い込み、火燃薬の燃焼が体を焼いていく。
爆発の煙が晴れた後、そこにあるのはボロボロになった二匹の魔獣。
ヴァルの左腕は肘から千切れ、全身もボロボロになっている。
蠍尾獅子も、その象徴ともいえる蠍の尾が半ばほどから千切れて、片翼も失っている状態でかなりの重傷だ。
「やったか? これで行動不能になってくれれば……」
コーンズが期待を込めた声を出す。
が、そんなセリフは終わってない事のフラグでしか無い。
咆哮を上げながら残った右腕に力を込め、体に絡みついた蜘蛛の網を引き千切ろうとするヴァル。
ビチビチと音を立てて、伸長限界を越えた粘糸が千切れていく。
「まずい! もう保たない!」
「ぐぁぁ!」
雄叫びと共に完全に引き千切られる蜘蛛の網。
深紅の双眸をミスティファーたちに向け、唸り声を上げるヴァル。
こんだけやったのだから当然だが、完全に敵とみなしているようだ。
ヴァルの両脚に力が篭もり次の瞬間、血飛沫を尾のように引きながら矢のように巨体が駆ける。
こちらに向かってくる漆黒の巨体に対し、立ち向かったのはロウドだ。
皆の前に立ち、オルフェリアを構える。
風を切り振るわれる毛むくじゃらの豪腕を、オルフェリアの刀身の腹で受けるロウド。
強烈な加重が掛かり慌てて左手も刃に添えて攻撃を受け止める。
「あああ!」
しかし装備を剝がされた状態では、獣人と化したヴァルの攻撃を止めるには無理があった。
両脚の踏ん張りも虚しく後方へと吹き飛ばされるロウド。
もし魔剣のオルフェリアではなく、普通の剣であったなら確実にへし折られていたであろう。
ゴロゴロと転がるロウドを受け止めるコーンズ。
「大丈夫か?!」
「う、うん。何とか」
立ち上がり、再度オルフェリアを構えるロウド。
「しぃ~~」
右腕を振り切った状態のヴァルが、口から呼気を吐きながら、ロウドを睨みつける。
「はいはい、その坊やだけじゃないですよ! 貴方のお相手は!」
そう言って前腕ほどの長さの金属筒ー銃を構えるエリザベス。
弾の入ってるとおぼしき箱を取り替えて、筒下の取っ手に付随している、弩弓の物と同じ引き金を引く。
小さな爆発音ー銃声を響かせて発射される弾丸。
着弾。その衝撃に身を震わせるヴァル。
しかしチンピラどもとは違い、ヘッド・ショットではなく、胴体に撃ち込んだためか、あまり効いてるようには思えない。
厚い胸板に空いた弾痕から吹き出していた血が、ヴァルが呼気を発し身を震わせた途端に止まる。
おそらく筋肉を締めて出血を止めたのだろう。
「は~。爆弾ならともかく、弾丸ではイマイチ効きませんか。でも、これはどうですかね」
二連射。それはヴァルの今にも駆け出しそうな脚の両膝を撃ち抜いた。
脚を支える膝を撃ち抜かれて、もんどり打って倒れる漆黒の巨体。
「動きは止めました。さあ、早く!」
エリザベスの声が響くや、次の魔術の詠唱を始めるイスカリオス、豊穣の女神への聖句を唱え始めるミスティファー。
「ロウド、コーンズ、ボケッとするな! 二人の準備が整うまで牽制するんじゃ!」
オルフェリアの叱咤と共にロウドとコーンズも動いた。
ロウドはオルフェリアを振りかざし、コーンズは逃げた守衛の者たちが捨てていった舶刀を手に取り、ヴァルへと向かう。
「ぐるぁぁ!」
威嚇の咆哮を上げ続けるヴァルの体は、傷が再生しつつあった。
先に受けた全身の傷は既に完全に塞がっており、千切れた左腕も出血が止まって肉が盛り上がっている。
膝の傷も血泡を吹き出しつつ再生しつつあるようだ。
「なんだよ、この再生速度は」
その再生を見たコーンズの口から驚きの声が漏れた。
神聖術の治療に頼らず、自己再生をするモノは確かに存在する。魔獣しかり、魔人しかり。
コーンズもそんな奴らと戦ったことは何度かある。
しかし、ここまでの速度で再生するモノは初めてだ。
「魔神・牢獄のパッサカリアの呪いの加護……いや、フッカーの魔力も上乗せされておるのか」
オルフェリアが苦々しげに呟いた。
本来のパッサカリアの呪いの魔力に加えて、封印解除に篭められたフッカーの魔力も上乗せされているが故の異常な再生力。
これをどうにかするには、再生力を上回るダメージを与え続けなければならない。
「取りあえず、切り続けろ! それしかない!」
オルフェリアの言葉を受け、ヴァルに切りかかるロウドとコーンズ。
「ヴァルさん、すみません!」
謝罪の言葉を口にして、振り回される右腕を掻い潜り、オルフェリアを振るうロウド。
刃が左の肩口を切り裂いた。しかし、浅い。
「手加減はしねえぞ、ヴァル!」
宣言通り、思いっ切り舶刀を振るうコーンズ。
しかし悲しいかな。接近戦の技量の低いコーンズの攻撃は、完全に見切られていた。
振られた舶刀の刃は、ヴァルの右手に鷲掴みにされ、そのまま握り潰される。
「は?! ふざけんなよ!」
自分なりの渾身の一撃を常識外れな方法で捌かれたコーンズは怒声を上げた。
「あんな雑な剣筋で、当てられると思ってんのかよ」
そんなコーンズを遠目から見ていたヤンソンが舌打ちした。
鍵開けや罠解除などの盗賊系技能と共に、軽めの刀剣の使い方を鍛えてきたヤンソンからすると、コーンズの刀剣の使い方は全くなっていない。
思い返せば修業時代、コーンズは弓矢以外の武器の使い方を覚えようとはしなかった。
「俺は弓矢があればいい」
と言い続けて、接近戦の修業をしようとしなかったのだ。
矢が途切れたときのために、とヴォーラスが説き伏せ、辛うじて最低限の軽めの刀剣の使い方を覚えたのだ。
そんな修業時代の結果が、先日のヤンソンVSコーンズの戦いであり、今ここでの醜態である。
「あれだけ言われてんのに、接近戦の修業しねえからだ」
コーンズのあまりの不甲斐なさに愚痴をこぼすヤンソンを、傍らのミックが短刀を弄びながら揶揄する。
「おいおい、ヤンソン。またアイツらの心配かよ。お前はもう冒険者じゃねえ、こちら側なんだ。薄汚え組織の一員なんだよ」
ミックの指摘に俯くヤンソン。
畳み掛けるように言うミック。
「お前が幾ら奴らの心配をしたとしても、奴らがお前を仲間扱いすることはもうねえ。仲間見捨てて逃げた薄汚えドブネズミなんかな。お前を受け入れるのは、同じスラム育ちの俺たちだけだ。それを忘れるな」
ミックと背後に立つ大男ジントからの圧力に押し黙るしかないヤンソン。
視線だけをかつての修行仲間に向けて、
『さっさと、その馬鹿止めて正気に戻せよ』
と心の中で呟く。
そんな風にヤンソンに見守られているとは知らないロウドとコーンズ。
ロウドはひたすらオルフェリアを振るい、コーンズは今度は短剣を拾って、ヴァルの足止めを行っている。
風を切って唸る豪腕を何とか躱し、攻撃を仕掛ける。
さっきのように武器で受けることはしない。受けたら、吹き飛ばされることは間違いないからだ。
故に躱すことに専念し、ヴァルの気を散らすために適当に攻撃を仕掛ける。
そう、イスカリオスとミスティファーの準備が整うまで時間を稼ぐのだ。
ギリギリの線で、足止めだけに専念する。
そして、その時は来た。
イスカリオスが大きく足を踏み鳴らす。
「ロウド、後ろに跳べ!」
その合図を聞いたコーンズがロウドに指示を出して、後ろに大きくバックステップする。
それに倣うロウド。
「氷雪嵐!」
高らかに響き渡るイスカリオスの声と共に発生した氷の礫混じりの極寒の冷気の渦が、ヴァルと傷を負ってもがいていた蠍尾獅子を飲み込んで吹き荒れた。
氷の礫が肌を裂き、冷気が体温を奪っていく。
かなりのダメージを負っていた蠍尾獅子は、これによりトドメを刺された。
ヴァルも傷が再生しつつあるとはいえ、これはキツかったらしく、霜に覆われた体を震わせて蹲っている状況だ。
そして、とうとう本命の決め手が。
ミスティファーの聖句の唱えは終わり、神への嘆願が広間に響き渡る。
「豊穣と慈愛の女神よ! 我が友に掛けられし魔神の悪しき呪いを、どうかお鎮めください!」
暖かな神気が広間に満ち溢れ、それがヴァルの首筋へと凝縮する。
首筋に浮かんだ禍々しき赤い呪印を緑色の燐光が覆っていく。
はたして呪いの再封印はなるか。
ヴァルとの戦い 終了
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