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第5章 悪徳の港町バルト
第42話 宴の開幕
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そして二日後、宴が開かれた。
ロンダーズ・ファミリーが繋がりのある者を招待して行われる饗宴。
招待された者は多岐にわたり、裏稼業の者は勿論、表の世界の者もいる。
ここバルトの表面上の支配者であるトールマン公爵も、その一人だ。
「では、ヴァルくんは私の護衛としてついてきて貰うということで」
一見派手には見えないものの、見る人が見れば上質の物だと分かる仕立ての良い服で極めた公爵が、傍らのヴァルに言う。
ヴァルはといえば、目立つ竜鱗の鎧は脱いで普通の鎖帷子を着込んでおり、武器は両手持ちの新月蛮刀を背負っている。
「で、私とイスカリオスは外から様子を伺って、折を見て騒ぎを起こす、ということで」
「そうだね。豊穣の女神の神官と魔術師では目立ちすぎるから」
ミスティファーとイスカリオスが自分たちの役割を確認する。
宴は、バルト郊外にあるドルネイの屋敷で行われるため、二人は外で待機し、宴もたけなわの頃を見計らって攻撃を仕掛け、ロンダーズの下っ端どもの注意を引きつけるのだ。
まあ、確かに神官と魔術師が護衛についてくるなど悪目立ちにしかならないから、そういう分担にならざるを得ない。
「ヴァル。コーンズやロウドくんたちを見かけても、知らんぷりするのよ。動くのは、私たちが騒ぎを起こしてからだからね?」
脊髄反射で行動をしかねないヴァルに釘を刺すミスティファー。
「わ、分かってるよ」
少し目をそらし不貞腐れたように返事をするヴァル。
そんな様子を横目で見ながら、
「なんだ、尻に敷かれてんのかよ」
と、からかうように言うエドガー。
「まあ、年が上だからね」
エドガーの言葉を受けて、イスカリオスが呟く。
そう、二十歳そこそこに見えるが、半森人のミスティファーの年齢は、見かけ通りではない。
故に、この〈自由なる翼〉の真の頭目として君臨し、ヴァルを尻に敷いているのだ。
「なるほど姉さん女房か」
納得したように頷くエドガーに、とことことミーシャが近付いてきた。
「エドガーおじさんも、みんなも頑張ってね」
ミーシャの激励を受け、破顔するエドガーとその周りの皮鎧の男たち。
ロンダーズ残党のうち、エドガーと戦闘力の高い何人かは、ミスティファーたちに同行し、屋敷の襲撃に加わる。
ミーシャは、戦闘力の低い奴らと一緒に留守番だ。
なお留守番組の中には、逃げようとしたチンピラたちも含まれている。
そのチンピラどもを半眼にした目で見ながら、指示というか恫喝をするエドガー。
「おい、お前ら! きちんとお嬢を守るんだぞ! 今度、芋引きやがったら魚の餌にしてやっからな!」
身を震わせ、声を揃えて返事をするチンピラたち。
「「「は、はい!」」」
小便をちびりそうなる顔の下っ端から視線を外し、公爵たちの方に顔を向ける。
「公爵、よろしく頼むぜ」
エドガーの言葉に、笑みを返す公爵。
「ああ、ドルネイに一泡吹かせてやろうじゃないか。この町の支配者の私を舐めた報いを受けさせてやる」
* * *
豪華なシャンデリアの吊り下げられた大広間で宴は行われていた。
参加者は貴族階級や商人とおぼし着飾った者たち、見るからにその筋の者と分かる胡散臭い奴らが混在し、ロンダーズ・ファミリーの影響力を物語っている。
幾つかあるテーブルの上には贅をこらした料理が並び、その間を酒のグラスを乗せた銀盆を手にした給仕が忙しそうに行き来していた。
「は、こりゃまた。バルトの町の有力者、それに近辺の貴族なんかも呼んでんのか……うわ、甘」
招待客を見回しながら、給仕の銀盆の上から酒を取り一口飲んだヴァルは、その甘さに顔をしかめる。
「種類も確認しないで手に取るからだよ。隣の領のキンブル伯爵にゴーツ男爵。あまり自領の経済状況がよろしくないらしいが、ドルネイに尻尾を振りに来たか」
他の招待客と歓談している貴族らを見て吐き捨てるように言う公爵。
「おお、トールマン公爵。いらしてたのですね」
声を上げ、客たちの間をすり抜けながら近付いてくる美形が一人。
ロンダーズのNo.2のギーンだ。
「アイツがNo.2のギーンだ」
小さな声でヴァルに囁く公爵。
歩み寄ってくるギーンを見て、ヴァルの直感が警鐘を鳴らしていた。
『コイツ、なんか分からんがヤバい』
武道の経験など微塵も感じられない体つきと歩き方、見た限りでは頭だけでのし上がってきたタイプにしか見えない。
だが、どこか引っかかるのだ。戦士としての勘が『コイツはヤバい』と言っている。
「ご無沙汰しております、トールマン公爵。おや? 初めて見る顔ですね。護衛の方は」
目の前まで来たギーンは、にこやかに笑みを浮かべ話しかけてきた。
「ふむ。しばらくぶりだね、ギーン。彼は新しく雇ったんだ」
「なるほど。前のアルゴさんよりも腕は立ちそうですね。失礼ですが、お名前は?」
ヴァルに名前を聞いてくるギーン。
「ヴァ……ヴァンと申します。以後、よろしくお願いします」
馬鹿正直にヴァルと言いそうになり、慌てて言い換える。
「ヴァンさんですか。いい名前だ。他の方たちにも挨拶があるので、ここで失礼させていただきます。では、お二人ともごゆっくり宴をお楽しみください」
そう言って二人の前から離れていくギーン。
その後ろ姿を見ながら、ホッと息を吐くヴァル。
「キミは本当に嘘が下手だな」
呆れたように言葉をこぼす公爵に、
「すんません」
と、頭を搔きながら謝るヴァル。
そんな様子を見ている者がいた。
大広間の隅、胡散臭い連中がたむろっているところから視線を向けている者が三人。
ヤンソンと、そのストリート・チルドレン時代の仲間であるミックとジントの三人だ。
「アレが大鬼殺しの息子か、ヤンソン」
「ああ、そうだ」
ミックの問いに答えるヤンソン。
その傍らに立つ巨漢ジントは、ヴァルを興味深そうに見ていた。
そしてボソリと口を開く。
「アイツ、強いか?」
そんな友の問いに、意図を計りかねながらも答える。
「ああ、強い。なんつっても大鬼と好き好んでタイマン張る大馬鹿だ」
「大鬼とタイマン……」
「そうだよ。アイツ相手に腕試ししようなんて考えるなよ、ジント」
脳筋馬鹿に興味を持ったらしい旧友に釘を刺すヤンソン。
ジントが弱いわけではない。
だが、あの戦闘狂の脳筋は桁が違う。
本人は『親父には遠く及ばない』と思っているようだが、比較対象が強すぎるだけで、ヴァル自身は既に最強への階段を昇り始めている。
そんな奴に普通の人間枠の者が叶うはずがないのだ。
自己を過小評価している英雄の息子がテーブルの料理をパクついているのを見ながら、ヤンソンの心にあまりよろしくない感情がこみ上げる。
殻を破ることができなかった自分と、とっくの昔に殻を破り上へ上へと登っていくヴァル。
比べることすら馬鹿馬鹿しい圧倒的な才能の差。
アーサーなどは前向きに追いつこうとしていたが、何をどうしても埋まらない差というのはあるのだ。奴にはそれが分かっていなかった。
いや、分かっていながら分かっていないふりをしていたのかも知れない。
その差を完全に自覚してしまえば、ヤンソンのようにやさぐれるしかないから。
そんな風にヤンソンがやさぐれていると、広間の客たちがざわめき始めた。
広間の端にある舞台の上に、この宴の主催者であるロンダーズの首領ドルネイが姿を現したのだ。
ガマガエルを擬人化したような醜く太った体を、ゴテゴテと成金のように宝石で飾り付けた男は、客たちを見回した。
「ロンダーズ・ファミリーの首領ドルネイだ。宴にお集まりくださり感謝する。皆様、宴は楽しんでいただけてるだろうか」
一端言葉を切り、反応を確かめる。
客たちの端々から追従の言葉が上がる。
「おお、ドルネイ殿。勿論、楽しませて貰ってる」
「本当に楽しい宴だ」
反応に気を良くして、肉の付きまくった喉を鳴らして笑うドルネイ。
「ガハハハ! 楽しんで貰えてるようで何より。でだ。より楽しんで貰えるように余興を行いたいと思う」
ドルネイがそういうと、舞台の後ろの壁が開いた。
そこには、この広間ほどではないがそこそこの広さの部屋があり、かなり大きい檻が真ん中にある。
檻の中では、一匹の魔獣がグルグルと喉を鳴らしてうろついていた。
蠍尾獅子だ。
獅子の体に蝙蝠の翼、蠍の尾を持つそこそこの強さの魔獣である。
「コイツは私のペットのカーディフだ。で、このカーディフと高名な冒険者との死闘を皆様に見て貰おうと思う」
そう言うとドルネイは、指を鳴らす。
公爵とヴァルを武器を構えた男たちが取り囲んだ。
「おやおや、バレていたか」
苦笑する公爵の前に、再び姿を現したギーン。
「ええ、公爵様。貴方の使用人の中にも私たちの息の掛かった者はおりますので、全て筒抜けですよ。さあ、大鬼殺しの息子〈自由なる翼〉の頭目ヴァル。檻の中に入っていただけますか?」
表面上は涼やかな、しかし見る者が見ればその下のどす黒い素顔が透けて見える笑顔を浮かべるギーン。
「嫌だと言ったら?」
ヴァルのそんな言葉に呼応するかのように、向こうの部屋に縛られた者たちが連れてこられる。
コーンズ、ロウド、アナスタシアの三人だ。
「断れば、貴方より弱いあの三人が、首領のペットと戦うことになります」
宴の開幕 終了
ロンダーズ・ファミリーが繋がりのある者を招待して行われる饗宴。
招待された者は多岐にわたり、裏稼業の者は勿論、表の世界の者もいる。
ここバルトの表面上の支配者であるトールマン公爵も、その一人だ。
「では、ヴァルくんは私の護衛としてついてきて貰うということで」
一見派手には見えないものの、見る人が見れば上質の物だと分かる仕立ての良い服で極めた公爵が、傍らのヴァルに言う。
ヴァルはといえば、目立つ竜鱗の鎧は脱いで普通の鎖帷子を着込んでおり、武器は両手持ちの新月蛮刀を背負っている。
「で、私とイスカリオスは外から様子を伺って、折を見て騒ぎを起こす、ということで」
「そうだね。豊穣の女神の神官と魔術師では目立ちすぎるから」
ミスティファーとイスカリオスが自分たちの役割を確認する。
宴は、バルト郊外にあるドルネイの屋敷で行われるため、二人は外で待機し、宴もたけなわの頃を見計らって攻撃を仕掛け、ロンダーズの下っ端どもの注意を引きつけるのだ。
まあ、確かに神官と魔術師が護衛についてくるなど悪目立ちにしかならないから、そういう分担にならざるを得ない。
「ヴァル。コーンズやロウドくんたちを見かけても、知らんぷりするのよ。動くのは、私たちが騒ぎを起こしてからだからね?」
脊髄反射で行動をしかねないヴァルに釘を刺すミスティファー。
「わ、分かってるよ」
少し目をそらし不貞腐れたように返事をするヴァル。
そんな様子を横目で見ながら、
「なんだ、尻に敷かれてんのかよ」
と、からかうように言うエドガー。
「まあ、年が上だからね」
エドガーの言葉を受けて、イスカリオスが呟く。
そう、二十歳そこそこに見えるが、半森人のミスティファーの年齢は、見かけ通りではない。
故に、この〈自由なる翼〉の真の頭目として君臨し、ヴァルを尻に敷いているのだ。
「なるほど姉さん女房か」
納得したように頷くエドガーに、とことことミーシャが近付いてきた。
「エドガーおじさんも、みんなも頑張ってね」
ミーシャの激励を受け、破顔するエドガーとその周りの皮鎧の男たち。
ロンダーズ残党のうち、エドガーと戦闘力の高い何人かは、ミスティファーたちに同行し、屋敷の襲撃に加わる。
ミーシャは、戦闘力の低い奴らと一緒に留守番だ。
なお留守番組の中には、逃げようとしたチンピラたちも含まれている。
そのチンピラどもを半眼にした目で見ながら、指示というか恫喝をするエドガー。
「おい、お前ら! きちんとお嬢を守るんだぞ! 今度、芋引きやがったら魚の餌にしてやっからな!」
身を震わせ、声を揃えて返事をするチンピラたち。
「「「は、はい!」」」
小便をちびりそうなる顔の下っ端から視線を外し、公爵たちの方に顔を向ける。
「公爵、よろしく頼むぜ」
エドガーの言葉に、笑みを返す公爵。
「ああ、ドルネイに一泡吹かせてやろうじゃないか。この町の支配者の私を舐めた報いを受けさせてやる」
* * *
豪華なシャンデリアの吊り下げられた大広間で宴は行われていた。
参加者は貴族階級や商人とおぼし着飾った者たち、見るからにその筋の者と分かる胡散臭い奴らが混在し、ロンダーズ・ファミリーの影響力を物語っている。
幾つかあるテーブルの上には贅をこらした料理が並び、その間を酒のグラスを乗せた銀盆を手にした給仕が忙しそうに行き来していた。
「は、こりゃまた。バルトの町の有力者、それに近辺の貴族なんかも呼んでんのか……うわ、甘」
招待客を見回しながら、給仕の銀盆の上から酒を取り一口飲んだヴァルは、その甘さに顔をしかめる。
「種類も確認しないで手に取るからだよ。隣の領のキンブル伯爵にゴーツ男爵。あまり自領の経済状況がよろしくないらしいが、ドルネイに尻尾を振りに来たか」
他の招待客と歓談している貴族らを見て吐き捨てるように言う公爵。
「おお、トールマン公爵。いらしてたのですね」
声を上げ、客たちの間をすり抜けながら近付いてくる美形が一人。
ロンダーズのNo.2のギーンだ。
「アイツがNo.2のギーンだ」
小さな声でヴァルに囁く公爵。
歩み寄ってくるギーンを見て、ヴァルの直感が警鐘を鳴らしていた。
『コイツ、なんか分からんがヤバい』
武道の経験など微塵も感じられない体つきと歩き方、見た限りでは頭だけでのし上がってきたタイプにしか見えない。
だが、どこか引っかかるのだ。戦士としての勘が『コイツはヤバい』と言っている。
「ご無沙汰しております、トールマン公爵。おや? 初めて見る顔ですね。護衛の方は」
目の前まで来たギーンは、にこやかに笑みを浮かべ話しかけてきた。
「ふむ。しばらくぶりだね、ギーン。彼は新しく雇ったんだ」
「なるほど。前のアルゴさんよりも腕は立ちそうですね。失礼ですが、お名前は?」
ヴァルに名前を聞いてくるギーン。
「ヴァ……ヴァンと申します。以後、よろしくお願いします」
馬鹿正直にヴァルと言いそうになり、慌てて言い換える。
「ヴァンさんですか。いい名前だ。他の方たちにも挨拶があるので、ここで失礼させていただきます。では、お二人ともごゆっくり宴をお楽しみください」
そう言って二人の前から離れていくギーン。
その後ろ姿を見ながら、ホッと息を吐くヴァル。
「キミは本当に嘘が下手だな」
呆れたように言葉をこぼす公爵に、
「すんません」
と、頭を搔きながら謝るヴァル。
そんな様子を見ている者がいた。
大広間の隅、胡散臭い連中がたむろっているところから視線を向けている者が三人。
ヤンソンと、そのストリート・チルドレン時代の仲間であるミックとジントの三人だ。
「アレが大鬼殺しの息子か、ヤンソン」
「ああ、そうだ」
ミックの問いに答えるヤンソン。
その傍らに立つ巨漢ジントは、ヴァルを興味深そうに見ていた。
そしてボソリと口を開く。
「アイツ、強いか?」
そんな友の問いに、意図を計りかねながらも答える。
「ああ、強い。なんつっても大鬼と好き好んでタイマン張る大馬鹿だ」
「大鬼とタイマン……」
「そうだよ。アイツ相手に腕試ししようなんて考えるなよ、ジント」
脳筋馬鹿に興味を持ったらしい旧友に釘を刺すヤンソン。
ジントが弱いわけではない。
だが、あの戦闘狂の脳筋は桁が違う。
本人は『親父には遠く及ばない』と思っているようだが、比較対象が強すぎるだけで、ヴァル自身は既に最強への階段を昇り始めている。
そんな奴に普通の人間枠の者が叶うはずがないのだ。
自己を過小評価している英雄の息子がテーブルの料理をパクついているのを見ながら、ヤンソンの心にあまりよろしくない感情がこみ上げる。
殻を破ることができなかった自分と、とっくの昔に殻を破り上へ上へと登っていくヴァル。
比べることすら馬鹿馬鹿しい圧倒的な才能の差。
アーサーなどは前向きに追いつこうとしていたが、何をどうしても埋まらない差というのはあるのだ。奴にはそれが分かっていなかった。
いや、分かっていながら分かっていないふりをしていたのかも知れない。
その差を完全に自覚してしまえば、ヤンソンのようにやさぐれるしかないから。
そんな風にヤンソンがやさぐれていると、広間の客たちがざわめき始めた。
広間の端にある舞台の上に、この宴の主催者であるロンダーズの首領ドルネイが姿を現したのだ。
ガマガエルを擬人化したような醜く太った体を、ゴテゴテと成金のように宝石で飾り付けた男は、客たちを見回した。
「ロンダーズ・ファミリーの首領ドルネイだ。宴にお集まりくださり感謝する。皆様、宴は楽しんでいただけてるだろうか」
一端言葉を切り、反応を確かめる。
客たちの端々から追従の言葉が上がる。
「おお、ドルネイ殿。勿論、楽しませて貰ってる」
「本当に楽しい宴だ」
反応に気を良くして、肉の付きまくった喉を鳴らして笑うドルネイ。
「ガハハハ! 楽しんで貰えてるようで何より。でだ。より楽しんで貰えるように余興を行いたいと思う」
ドルネイがそういうと、舞台の後ろの壁が開いた。
そこには、この広間ほどではないがそこそこの広さの部屋があり、かなり大きい檻が真ん中にある。
檻の中では、一匹の魔獣がグルグルと喉を鳴らしてうろついていた。
蠍尾獅子だ。
獅子の体に蝙蝠の翼、蠍の尾を持つそこそこの強さの魔獣である。
「コイツは私のペットのカーディフだ。で、このカーディフと高名な冒険者との死闘を皆様に見て貰おうと思う」
そう言うとドルネイは、指を鳴らす。
公爵とヴァルを武器を構えた男たちが取り囲んだ。
「おやおや、バレていたか」
苦笑する公爵の前に、再び姿を現したギーン。
「ええ、公爵様。貴方の使用人の中にも私たちの息の掛かった者はおりますので、全て筒抜けですよ。さあ、大鬼殺しの息子〈自由なる翼〉の頭目ヴァル。檻の中に入っていただけますか?」
表面上は涼やかな、しかし見る者が見ればその下のどす黒い素顔が透けて見える笑顔を浮かべるギーン。
「嫌だと言ったら?」
ヴァルのそんな言葉に呼応するかのように、向こうの部屋に縛られた者たちが連れてこられる。
コーンズ、ロウド、アナスタシアの三人だ。
「断れば、貴方より弱いあの三人が、首領のペットと戦うことになります」
宴の開幕 終了
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