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第5章 悪徳の港町バルト
第38話 ロンダーズ・ファミリー
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路地裏を歩く一行。
先頭にはギーン、そしてアナスタシアを抱えた大男、ロウドとコーンズ、短刀男にヤンソンの並びである。
迷路のようになった路地を迷わず進むギーン。
「畜生……ホントに何で宿屋に戻らなかったんだよ」
「だって、コーンズのことが心配で……」
前後を挟まれて、しかもアナスタシアが囚われている以上、迂闊に動くことはできず、コーンズとロウドは大人しく従うしかなかった。
で、こうやって小声で言い合っているのだ。
「お前みたいな未熟もんが人の心配するなんざ、片腹痛え」
「なに言ってんだよ。僕が助けに入らなかったら、ヤンソンにやられてたじゃないか」
「ば、馬鹿。あそこから華麗に反撃するとこだったんだよ」
「見栄張んの良くないよ。完全に負けてたじゃん」
見苦しい言い合いをしている二人を、ヤンソンは最後尾から見ていた。
「何やってんだ、アイツら。これから、組織の本拠に連れてかれるって分かってんのか?」
呆れたように呟く。
「ホント、緊張感ねえな。お前の知り合い」
短刀を弄びながら痩せぎすの男が、ヤンソンに顔を向けて言う。
「そう言うなよ、ミック。普段、魔族とか魔獣とか相手にしてるから、恐怖心が半分麻痺してんだよ。冒険者ってのは」
無意識のうちかロウドとコーンズを庇うような物言いをするヤンソン。
ミックと呼ばれた短刀男は、
「それ、ただの馬鹿だろ」
と呆れたように言い、短刀を舐める。
「なあ、ミック。前から言おうと思ってたんだが、その癖やめた方がいいぞ」
忠告するヤンソンに視線だけ向けて、
「何を?」
と聞き返すミック。
「いや、だから……その刃物を舐める癖だよ」
言いにくそうに口篭もりながら、ヤンソン。
「はっきり言ってチンピラにしか見えない」
意を決して言い切ったヤンソンに、顔を向けて笑い始めるミック。
「くっ、あひゃひゃひゃひゃ!」
「何がおかしい?」
「いや、今さら何を。と思ってな。チンピラも何も、お前も俺もチンピラだよ。それ以外の何でもないだろ?」
ミックの指摘に黙り込むヤンソン。
確かにその通りだと思ったからだ。
ストリート・チルドレンとして育ち、犯罪者になるところをアーサーたちに誘われて冒険者に。
だが、それも命惜しさに逃げ出して、昔のツテを頼ってロンダーズ・ファミリーに身を寄せることになった。
確かにチンピラ以外の何者でも無い。
唇を噛んで俯くヤンソンに、ミックは厳しい目を向けて言う。
「冒険者になるって、この町を出てったお前を俺たちは希望を込めて見送った。一旗揚げて来いよってな。だが、お前は俺たちの期待を裏切った。すごすごと逃げ帰ってきたんだ。それを忘れんなよ」
このミックという短刀男は、ヤンソンのストリート・チルドレン時代の仲間だったのか。
『ストリート・チルドレン出身の奴が、ひとかどの冒険者として名を上げる』
それは彼らの希望であったのかもしれない。
しかし、ヤンソンは戻ってきた。臆病風に吹かれて仲間を見捨てて逃げてきた。
期待を、希望を持ってしまった分、落胆は大きかっただろう。
それでも、路地裏での悲惨な幼少期を共有した者として受け入れ、組織にツナギを取ったのだ。
「ジントだって同じ思いだからな」
前を歩く巨漢に目をやるミック。
アナスタシアを抱えた巨漢も、ヤンソンの昔馴染みなのか。
そんな最後尾の旧友の愛憎劇を余所に悠々と歩き続けるギーン。
ある建物の路地に面した勝手口に到達し、妙なリズムでノックする。
おそらくはあのリズムが符丁になってるのだろう。
勝手口の覗き窓が開き、男の目が見えた。
幹部のギーンや、ジントなどを確認すると、鍵を開けて扉を開く。
「お客人ですか?」
ギーンを迎えながら、門番の男が聞く。
「ああ。なんと、あの〈自由なる翼〉の方々だ。首領のところに連れて行って、引き合わせる」
見た目は爽やかな、しかし皮膚の下の毒が透けて見える笑顔を浮かべるギーン。
その笑顔に薄ら寒いものを感じながら一行を通した後、扉を閉める門番。
「ご苦労様」
門番に労いの言葉をかけ、奥へと進むギーン。
その後に続く面々。
壁には一定間隔で魔力で照らす照明球が設置されているため暗くはなく、すぐそこに地下に下りる階段があるのが見て取れた。
階段を降りていくと、そこには重厚な観音扉があった。
取っ手に手をかけ、勢い良く開けるギーン。
足音しかしなかった静かな空間から、一気に喧噪の渦へと巻き込まれる。
扉の向こうはカジノ・ホールだった。
ルーレットの回る音、ポーカーのカードをシャッフルする音、ドッグ・レースで犬が駆ける音。
そして、それらに興じる男女の嬌声と罵声。
奥の方では楽団が演奏をしており、その脇のステージでは、半裸の女性が音楽に合わせて艶めかしく踊っている。
一行はホールを横切り、ステージ脇の扉の前に立つ。
「首領、ギーンです」
ノックして、中に伺いを立てるギーン。
「入れ」
嗄れた声が、室内から響いた。
ギーンが扉を開き、室内へと入る一行。最後のヤンソンが扉を閉める。
部屋は悪趣味の極みだった。
所狭しと黄金と宝石の細工の調度品が並び、どぎつい紫色の大きなソファーにガマガエルを擬人化したような男が、二十歳そこそこの肉感的な女を侍らせて座っている。
「ギーン。ソイツらはなんだ?」
ガマガエルがロウドとコーンズを見ながら、見た目に相応しい嗄れ声を出す。
「はい、首領。かの高名な冒険者パーティ〈自由なる翼〉のメンバーです」
頭を下げ、説明をするギーン。
その様子を後ろから見ながら、コーンズが呟く。
「あれがロンダーズの首領ドルネイか」
それを聞きつけたヤンソンが、
「そうだ。下手な口きくなよ。気に入らない奴は、すぐペットの餌にするからな」
と小声で釘を刺す。
「ふうむ……連れてきてどうする気だ? 奴隷として売るのか? まあ、三人とも需要はありそうだが」
ドルネイの無遠慮な舐め上げるような視線に晒され怖気を振るうロウド。
女のアナスタシアは当然、男二人もコーンズは美形だし、ロウドはまだ可愛らしい雰囲気の残る美少年と言っていい。
労働力としての奴隷ではなく、愛玩目的としての奴隷として需要がある、と言っているのだ。
「ええ、最終的には奴隷として売りますが、ひとまず、おびき出しの餌として使います」
「おびき出す? 誰をだ?」
首領の問いに、あの本性の透けて見える笑みを浮かべて答えるギーン。
「彼らの頭目は、かの大鬼殺しの息子なんですよ。闘技場のメイン・イベントとして、大鬼殺しの息子VS首領のペットはどうでしょう。大盛況間違い無しだと思いますが」
ギーンの提案に、醜悪な笑みに顔を崩し、手を叩くドルネイ。
「ぐふふふ……いいな、それ。アイツも最近は弱い相手ばかりだから欲求不満気味だからな。よしギーン、手筈は任せる」
「はい、お任せください」
主の命を受ける執事のように大仰な仕草で、首領の命を受けるギーン。
そんなやり取りを後ろから見て、ロウドとコーンズは慌てていた。
「ヤバいよ、コーンズ」
「俺たちを囮にヴァルを何かと戦わせる気か」
「どうする?」
「どうするって……くそ」
打開策が見つからず歯噛みする男二人の腰の辺りで、小さい声がボソボソと。
「あのギーンという男、なんか覚えがあるような……」
そんなオルフェリアの独り言は誰にも聞かれることは無かった。
* * *
「なんですと?! バルトへ向かった?!」
マッセウの冒険者の宿〈天上の舞姫〉亭にて、白金の髪をツインテールにしたメイド服の少女が叫んでいた。
マーレ家のメイド、エリザベスだ。
単輪魔道車を爆走させ到着したマッセウ。
主アナスタシアを求めて聞き込みを開始して、この宿の酒場にて情報を得たのだ。
そう、〈自由なる翼〉に参加して港町バルトへ向かった。という情報を。
「あ~、一足遅かった! 急がねば! あ、情報ありがとうございました」
そう言って踵を返し、酒場を出る。
酒場前に停めてあった単輪魔道車に乗り込み、始動する。
魔道機が唸りを上げる中、前の方から何かが歩いてきた。
それは四つ足の鉄の獣。
胴体の上に座席があり、そこに山人が三人乗っていた。
ナウマウ率いる〈鋼の怒り〉のパーティである。
一番前に座り操作をしていた、小札鎧を着た山人が単輪魔道車に乗るエリザベスに気付いた。
「あれ、エリザベス?」
それを聞いたエリザベスは鉄の獣の座席を見上げ、
「デック? 貴方、ここで冒険者やってたんだ」
と鉄の獣を操作している山人に声を掛ける。
デックと呼ばれた山人は笑みを浮かべて、
「うん、そう。それにしても久しぶりだね。オイブ師匠の修行が終わって以来か……」
と、昔を懐かしんだ。
「そうね。と、話し込んでる暇は無いだった。主を探しにバルトまで行かねばならないんで、悪いが行かせて貰うわ。今度会ったらゆっくり話そう」
エリザベスはそう言って、単輪魔道車を発進させた。
爆音を響かせて走り去る単輪魔道車。
それを見送るデックに、山人の武神官であるナウマウが話しかける。
「ねえ、あの子って」
「エリザベス。オイブ師匠のとこで魔工学を学んでいたときの修行仲間ですよ」
「え? アンタがオイブさんとこで修行してたのって二十年ぐらい前よね? あの子、平人の子供に見えたけど……」
「ああ、見かけはそう見えますよね。彼女は自動人形、昔からずっとあのままの外見です」
ロンダーズ・ファミリー 終了
先頭にはギーン、そしてアナスタシアを抱えた大男、ロウドとコーンズ、短刀男にヤンソンの並びである。
迷路のようになった路地を迷わず進むギーン。
「畜生……ホントに何で宿屋に戻らなかったんだよ」
「だって、コーンズのことが心配で……」
前後を挟まれて、しかもアナスタシアが囚われている以上、迂闊に動くことはできず、コーンズとロウドは大人しく従うしかなかった。
で、こうやって小声で言い合っているのだ。
「お前みたいな未熟もんが人の心配するなんざ、片腹痛え」
「なに言ってんだよ。僕が助けに入らなかったら、ヤンソンにやられてたじゃないか」
「ば、馬鹿。あそこから華麗に反撃するとこだったんだよ」
「見栄張んの良くないよ。完全に負けてたじゃん」
見苦しい言い合いをしている二人を、ヤンソンは最後尾から見ていた。
「何やってんだ、アイツら。これから、組織の本拠に連れてかれるって分かってんのか?」
呆れたように呟く。
「ホント、緊張感ねえな。お前の知り合い」
短刀を弄びながら痩せぎすの男が、ヤンソンに顔を向けて言う。
「そう言うなよ、ミック。普段、魔族とか魔獣とか相手にしてるから、恐怖心が半分麻痺してんだよ。冒険者ってのは」
無意識のうちかロウドとコーンズを庇うような物言いをするヤンソン。
ミックと呼ばれた短刀男は、
「それ、ただの馬鹿だろ」
と呆れたように言い、短刀を舐める。
「なあ、ミック。前から言おうと思ってたんだが、その癖やめた方がいいぞ」
忠告するヤンソンに視線だけ向けて、
「何を?」
と聞き返すミック。
「いや、だから……その刃物を舐める癖だよ」
言いにくそうに口篭もりながら、ヤンソン。
「はっきり言ってチンピラにしか見えない」
意を決して言い切ったヤンソンに、顔を向けて笑い始めるミック。
「くっ、あひゃひゃひゃひゃ!」
「何がおかしい?」
「いや、今さら何を。と思ってな。チンピラも何も、お前も俺もチンピラだよ。それ以外の何でもないだろ?」
ミックの指摘に黙り込むヤンソン。
確かにその通りだと思ったからだ。
ストリート・チルドレンとして育ち、犯罪者になるところをアーサーたちに誘われて冒険者に。
だが、それも命惜しさに逃げ出して、昔のツテを頼ってロンダーズ・ファミリーに身を寄せることになった。
確かにチンピラ以外の何者でも無い。
唇を噛んで俯くヤンソンに、ミックは厳しい目を向けて言う。
「冒険者になるって、この町を出てったお前を俺たちは希望を込めて見送った。一旗揚げて来いよってな。だが、お前は俺たちの期待を裏切った。すごすごと逃げ帰ってきたんだ。それを忘れんなよ」
このミックという短刀男は、ヤンソンのストリート・チルドレン時代の仲間だったのか。
『ストリート・チルドレン出身の奴が、ひとかどの冒険者として名を上げる』
それは彼らの希望であったのかもしれない。
しかし、ヤンソンは戻ってきた。臆病風に吹かれて仲間を見捨てて逃げてきた。
期待を、希望を持ってしまった分、落胆は大きかっただろう。
それでも、路地裏での悲惨な幼少期を共有した者として受け入れ、組織にツナギを取ったのだ。
「ジントだって同じ思いだからな」
前を歩く巨漢に目をやるミック。
アナスタシアを抱えた巨漢も、ヤンソンの昔馴染みなのか。
そんな最後尾の旧友の愛憎劇を余所に悠々と歩き続けるギーン。
ある建物の路地に面した勝手口に到達し、妙なリズムでノックする。
おそらくはあのリズムが符丁になってるのだろう。
勝手口の覗き窓が開き、男の目が見えた。
幹部のギーンや、ジントなどを確認すると、鍵を開けて扉を開く。
「お客人ですか?」
ギーンを迎えながら、門番の男が聞く。
「ああ。なんと、あの〈自由なる翼〉の方々だ。首領のところに連れて行って、引き合わせる」
見た目は爽やかな、しかし皮膚の下の毒が透けて見える笑顔を浮かべるギーン。
その笑顔に薄ら寒いものを感じながら一行を通した後、扉を閉める門番。
「ご苦労様」
門番に労いの言葉をかけ、奥へと進むギーン。
その後に続く面々。
壁には一定間隔で魔力で照らす照明球が設置されているため暗くはなく、すぐそこに地下に下りる階段があるのが見て取れた。
階段を降りていくと、そこには重厚な観音扉があった。
取っ手に手をかけ、勢い良く開けるギーン。
足音しかしなかった静かな空間から、一気に喧噪の渦へと巻き込まれる。
扉の向こうはカジノ・ホールだった。
ルーレットの回る音、ポーカーのカードをシャッフルする音、ドッグ・レースで犬が駆ける音。
そして、それらに興じる男女の嬌声と罵声。
奥の方では楽団が演奏をしており、その脇のステージでは、半裸の女性が音楽に合わせて艶めかしく踊っている。
一行はホールを横切り、ステージ脇の扉の前に立つ。
「首領、ギーンです」
ノックして、中に伺いを立てるギーン。
「入れ」
嗄れた声が、室内から響いた。
ギーンが扉を開き、室内へと入る一行。最後のヤンソンが扉を閉める。
部屋は悪趣味の極みだった。
所狭しと黄金と宝石の細工の調度品が並び、どぎつい紫色の大きなソファーにガマガエルを擬人化したような男が、二十歳そこそこの肉感的な女を侍らせて座っている。
「ギーン。ソイツらはなんだ?」
ガマガエルがロウドとコーンズを見ながら、見た目に相応しい嗄れ声を出す。
「はい、首領。かの高名な冒険者パーティ〈自由なる翼〉のメンバーです」
頭を下げ、説明をするギーン。
その様子を後ろから見ながら、コーンズが呟く。
「あれがロンダーズの首領ドルネイか」
それを聞きつけたヤンソンが、
「そうだ。下手な口きくなよ。気に入らない奴は、すぐペットの餌にするからな」
と小声で釘を刺す。
「ふうむ……連れてきてどうする気だ? 奴隷として売るのか? まあ、三人とも需要はありそうだが」
ドルネイの無遠慮な舐め上げるような視線に晒され怖気を振るうロウド。
女のアナスタシアは当然、男二人もコーンズは美形だし、ロウドはまだ可愛らしい雰囲気の残る美少年と言っていい。
労働力としての奴隷ではなく、愛玩目的としての奴隷として需要がある、と言っているのだ。
「ええ、最終的には奴隷として売りますが、ひとまず、おびき出しの餌として使います」
「おびき出す? 誰をだ?」
首領の問いに、あの本性の透けて見える笑みを浮かべて答えるギーン。
「彼らの頭目は、かの大鬼殺しの息子なんですよ。闘技場のメイン・イベントとして、大鬼殺しの息子VS首領のペットはどうでしょう。大盛況間違い無しだと思いますが」
ギーンの提案に、醜悪な笑みに顔を崩し、手を叩くドルネイ。
「ぐふふふ……いいな、それ。アイツも最近は弱い相手ばかりだから欲求不満気味だからな。よしギーン、手筈は任せる」
「はい、お任せください」
主の命を受ける執事のように大仰な仕草で、首領の命を受けるギーン。
そんなやり取りを後ろから見て、ロウドとコーンズは慌てていた。
「ヤバいよ、コーンズ」
「俺たちを囮にヴァルを何かと戦わせる気か」
「どうする?」
「どうするって……くそ」
打開策が見つからず歯噛みする男二人の腰の辺りで、小さい声がボソボソと。
「あのギーンという男、なんか覚えがあるような……」
そんなオルフェリアの独り言は誰にも聞かれることは無かった。
* * *
「なんですと?! バルトへ向かった?!」
マッセウの冒険者の宿〈天上の舞姫〉亭にて、白金の髪をツインテールにしたメイド服の少女が叫んでいた。
マーレ家のメイド、エリザベスだ。
単輪魔道車を爆走させ到着したマッセウ。
主アナスタシアを求めて聞き込みを開始して、この宿の酒場にて情報を得たのだ。
そう、〈自由なる翼〉に参加して港町バルトへ向かった。という情報を。
「あ~、一足遅かった! 急がねば! あ、情報ありがとうございました」
そう言って踵を返し、酒場を出る。
酒場前に停めてあった単輪魔道車に乗り込み、始動する。
魔道機が唸りを上げる中、前の方から何かが歩いてきた。
それは四つ足の鉄の獣。
胴体の上に座席があり、そこに山人が三人乗っていた。
ナウマウ率いる〈鋼の怒り〉のパーティである。
一番前に座り操作をしていた、小札鎧を着た山人が単輪魔道車に乗るエリザベスに気付いた。
「あれ、エリザベス?」
それを聞いたエリザベスは鉄の獣の座席を見上げ、
「デック? 貴方、ここで冒険者やってたんだ」
と鉄の獣を操作している山人に声を掛ける。
デックと呼ばれた山人は笑みを浮かべて、
「うん、そう。それにしても久しぶりだね。オイブ師匠の修行が終わって以来か……」
と、昔を懐かしんだ。
「そうね。と、話し込んでる暇は無いだった。主を探しにバルトまで行かねばならないんで、悪いが行かせて貰うわ。今度会ったらゆっくり話そう」
エリザベスはそう言って、単輪魔道車を発進させた。
爆音を響かせて走り去る単輪魔道車。
それを見送るデックに、山人の武神官であるナウマウが話しかける。
「ねえ、あの子って」
「エリザベス。オイブ師匠のとこで魔工学を学んでいたときの修行仲間ですよ」
「え? アンタがオイブさんとこで修行してたのって二十年ぐらい前よね? あの子、平人の子供に見えたけど……」
「ああ、見かけはそう見えますよね。彼女は自動人形、昔からずっとあのままの外見です」
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