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第4章 迷宮探索(ダンジョン・アタック)
第29話 オルフェリアの秘密
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ボロボロと体を崩壊させていくホルベイル。
致命的な攻撃を受けたので、霊体と魔力で構成された体を維持できなくなっているのだ。
「おおお! 死霊術の秘儀にて不死者へと昇華し三百年を生きた、この儂が! このホルベイルが、あのような小僧の一撃でやられるのか!」
怨嗟の声を上げるホルベイル。
隙を突いたとは言え、確かにおかしな話と言えた。
ミスティファー、イスカリオスの魔法攻撃を耐え抜いた高レベル不死者が、未熟なロウドのたった一撃で滅びるとは、到底考えられることではない。
周りでホルベイルの断末魔を見届けているヴァルたちも、『まさか一撃で』と疑問を感じていた。
当然、その疑問の焦点は、素性不明の魔剣オルフェリアへと向けられる。
『オルフェリアの隠された能力が、ホルベイルに致命的なダメージを与えたのでは?』
実際にロウドがオルフェリアを振り下ろした際、柄頭の宝玉が微かな光を放っており、オルフェリアの助力があったことはほぼ確実であった。
しかし追究することも憚られる。どんな事情であれ、助かったことには変わりが無いからだ。
そして肝心のオルフェリアはと言うと、意識内にて煩悶していた。
「『過剰な助力は避けよ、でなければ使い手が成長しないから。お前が制限無しで全力を出していいのは、竜相手の時だけ』。創造主よ、貴方はそうおっしゃられた。真にその通りだと妾も思う。しかし、此度は、明らかに力量が違いすぎた。今のロウドでは、あの死に損ないにまともなダメージを与えることなどできはしません。故に過ぎたる助力をいたしました。お叱りは、妾の存在が限界を迎え、貴方の元へと戻ったときに幾らでもお受けいたします。妾はもう見たくないのです、使い手が死ぬのを……」
己を作り上げた創造主への懺悔。
創造主との約定を破ってまで、ロウドを助けたオルフェリア。
幾度となく使い手の死を見てきた。
老衰や病死なら仕方が無い。
だが、ほとんどの者は戦いの果てに死んだ。そう、敗北して死んでいったのだ。
使い手と認めた者の死を間近で見続けてきたオルフェリア。
使い手の力量以上の助力はするな。との創造主の言葉に従い助力を制限したが故に、皆格上の奴らに敗れて死んでいった。
使い手の死を見すぎて倦み疲れていたオルフェリア。そんな状態のところで不意を突かれて七十余年ほど封印されたのだ。
それが解かれて今、山人のナウマウに拾われて、ロウドと出会うことになる。
新たな使い手を見て思ったのは『この真っ直ぐな子を死なせはしない。守り導き育てよう』であった。
そしてロウドの手に余る強敵のホルベイルと戦う羽目になって約定を破ることとなるが、オルフェリアとしては後悔はしていない。
使い手が死ぬのをむざむざと見ているのは、もう御免なのだ。
そんなオルフェリアの思いを知ってか知らずか、強敵を撃ち倒した感動に打ち震えているロウド。
「やった! あの手強い敵を倒した!」
無邪気に喜んでいる。オルフェリアが制限を解除して力を貸してくれたなどとは露ほども思ってないのだろう。
「やりましたね!」
アナスタシアも眼鏡の下の瞳を輝かせて、一緒に喜んでいる。
他の皆は、薄々オルフェリアのことに感づいてはいるが、少年少女の感動に水を差すのもアレなので黙っていた。
だが、そこに冷水を浴びせる者がいる。
「それは……オルフェリアか?」
魔力阻害銀粉の影響から抜け出て、魔力による視覚を取り戻したホルベイルがオルフェリアをじっと見ていた。
その声には憎悪と恐怖が滲んでいた。
「何故それがここにある。封印されていたはず……魔老公に、ムドウ様にお知らせせねば」
バラバラになりつつある魔力を最後の力を振り絞り集中させるホルベイル。
占いに使う水晶玉位の大きさの光球がホルベイルの前に出現した。
「マズい! ロウドよ、あの玉を切れ!」
オルフェリアが慌てた様子で指示を出す。
その切迫した様子に聞き返すこともなく、光球を切ろうとするロウド。
しかしオルフェリアの刃が当たる寸前にソレは消えた。
「もう遅い! お前らの映像は記録してムドウ様のところに送った! お前らは魔族の総力を挙げて追われることになる。その忌まわしき屠竜剣を持っている限りな。これから先、怯えて震えながら眠れぬ夜を過ごすがいい! くかかかか!」
哄笑を上げながら、光る粒と化して散っていくホルベイル。
「屠竜剣だと?」
オルフェリアを見詰めながらヴァルが呟いた。
* * *
グレイズ王国より遥か東、〈大地の背骨山脈〉の地下。
そこに魔族の国がある。
そこの一角、魔老公ムドウの部屋。
椅子に座った見事な白い髭を床にまで届かんばかりに伸ばした矮躯の老人が、目の前に座る額から角を生やした美少女に術の講義をしている。
魔老公ムドウと孫の魔少女パメラだ。
「ん? この魔力はホルベイルか?」
魔力の波動を感じて身構えるムドウの前に、ロウドたちの前から消えた光球が出現した。
光球が虚空に映像を映し出す。
「な、これはオルフェリア? 馬鹿な! アレは七十年程前に捕らえて封印庫に叩き込んだはずじゃ!」
映像の中のオルフェリアを見て驚愕するムドウ。
「オルフェリアと言うと、あの忌まわしき屠竜剣ですか?」
映像を見ながら、パメラが祖父に問う。
「そうじゃ。ちと待っておれ、封印庫に行って確認してくる」
そう言うや、転移をして消えるムドウ。
厳重な封がされていて正式な手順を踏まなければ入れない封印庫だが、魔族随一の魔力を誇るムドウならば、転移も可能なのだろう。
ムドウはすぐに戻ってきた。
で開口一番、
「フッカー! あの馬鹿者が!」
と額に青筋を立てて怒鳴る。
「お、お祖父さま? どうされたのですか?」
怒る祖父などそうそう見たことないパメラが、恐る恐る聞く。
「封印庫には、精巧な複製が置いてあったわい。そこに残っていた魔力はフッカーのものじゃった。あの馬鹿、色々と引っかき回すためにオルフェリアを持ち出したに違いない!」
フッカー。道化師の格好をした魔族。その実力は魔神将級。
性格は快楽優先。事態を引っかき回すことを一番の楽しみにしている享楽主義者である。
「どうしますの、お祖父さま?」
孫娘の問いに、
「どうもこうも……評議会を召集し、議題に掛けるしかなかろう」
と答えるムドウ。
「そうですか。お祖父さま、私コイツらに見覚えがありますの」
* * *
「アーサーたちの冥福を祈って乾杯!」
マッセウ最大の冒険者の宿〈天上の舞姫亭〉の一階の酒場ホールにて、宴会が行われていた。
参加しているのは、アーサーたちのことを知る者たちであり、彼らが死んだことを聞いて集まってきたのだ。
「たくよう、ジャンの野郎がグダグダ言わなきゃ、今でもここでやれてたのによ!」
オブライエンが木製ジョッキになみなみとつがれたエールを飲みながら、くだを巻く。
オブライエンもアーサーたちがマッセウにいた頃に良くつるんで馬鹿をやっていたので、その死に関しては思うところがあるのだろう。
そんなふうにヴァルとオブライエンらがアーサーたちを偲んでいる脇で、ミスティファーは山人のナウマウに話を聞いていた。
「じゃあ、宝箱の中に入ってたんじゃなくて落ちていたのね、オルフェリアは?」
ミスティファーの前に座っている、肝っ玉母さんのように恰幅の良い女性が頷く。
「そうだよ。あの剣は、宝箱に戦利品として入ってたんじゃない。九階層の玄室の片隅に落ちていたのさ。一目見て、これはいいもんだ。と思ったよ。で拾ったんだ」
山人女性のナウマウの言葉を聞いて、思案するミスティファー。
「え、どういうこと? 誰かが置いてったってことかしら? あんな高レベルの不死者でも恐れるようなモノを一体、誰が?」
トリックスターの魔族が面白がって置いてった。などという真相に辿りつくことは絶対にないだろう。
「いたたた……」
更に酒場の片隅では、ロウドが全身筋肉痛に苛まれながら食事をしていた。
筋力増強薬の副作用だ。
「だ、大丈夫?」
心配そうに見ているアナスタシア。
自分が与えた薬のせいでこうなっているのだからと、食事の補佐を申し出たのだ。
「大丈夫です。一人で食べられます……ところで、オルフェリア」
ロウドはアナスタシアの申し出をやんわりと断り、愛剣に話しかけた。
実は帰還の途中、オルフェリアはだんまりを決め込み、一言も喋らなかったのだ。
「ホルベイル、倒せたのは君のおかげなんだよね?」
使い手の問いかけに、溜息を一つついて答えるオルフェリア。
「そうじゃ。妾が力を貸した」
「そうか……そうだよね、僕なんかにあんな化け物が倒せる訳がない」
「何をしょげとる。ソレが悔しいなら自分の力で倒せるように強くなれば良かろう。今回は確かに妾が力を貸した。しかし、我が身には色々と制約がかかっており、今後も同じように力を貸せるわけでもない。だから強くなれ、ロウドよ」
オルフェリアがこんこんと少年を諭す。
「ちらと聞いたが、お前には倒さなきゃならない奴がおるのじゃろう?」
オルフェリアの言葉に、リーズを思い出すロウド。
「そうだ。リーズ。アーサーさんたちとリチャード兄さんの仇」
ホルベイル戦の勝利が自分の力では無かったことを知って落ち込んでいた心が、メラメラと燃え盛る。
「そうだ、僕は強くなんなきゃならないんだ。なんでソレを忘れていたんだろう」
「持ち直したか。その意気じゃ。所詮は妾は武器に過ぎん。何度も言っとるが、武器を生かすも殺すも使い手次第じゃ、良いな。妾を持つに相応しく強くなるがいい」
「はい」
少年が落ち込みから回復したのを見て、アナスタシアは微笑み自分も料理を口に運んだ。
「良かった、元気になって……あら、これ美味しい」
オルフェリアの秘密 終了
致命的な攻撃を受けたので、霊体と魔力で構成された体を維持できなくなっているのだ。
「おおお! 死霊術の秘儀にて不死者へと昇華し三百年を生きた、この儂が! このホルベイルが、あのような小僧の一撃でやられるのか!」
怨嗟の声を上げるホルベイル。
隙を突いたとは言え、確かにおかしな話と言えた。
ミスティファー、イスカリオスの魔法攻撃を耐え抜いた高レベル不死者が、未熟なロウドのたった一撃で滅びるとは、到底考えられることではない。
周りでホルベイルの断末魔を見届けているヴァルたちも、『まさか一撃で』と疑問を感じていた。
当然、その疑問の焦点は、素性不明の魔剣オルフェリアへと向けられる。
『オルフェリアの隠された能力が、ホルベイルに致命的なダメージを与えたのでは?』
実際にロウドがオルフェリアを振り下ろした際、柄頭の宝玉が微かな光を放っており、オルフェリアの助力があったことはほぼ確実であった。
しかし追究することも憚られる。どんな事情であれ、助かったことには変わりが無いからだ。
そして肝心のオルフェリアはと言うと、意識内にて煩悶していた。
「『過剰な助力は避けよ、でなければ使い手が成長しないから。お前が制限無しで全力を出していいのは、竜相手の時だけ』。創造主よ、貴方はそうおっしゃられた。真にその通りだと妾も思う。しかし、此度は、明らかに力量が違いすぎた。今のロウドでは、あの死に損ないにまともなダメージを与えることなどできはしません。故に過ぎたる助力をいたしました。お叱りは、妾の存在が限界を迎え、貴方の元へと戻ったときに幾らでもお受けいたします。妾はもう見たくないのです、使い手が死ぬのを……」
己を作り上げた創造主への懺悔。
創造主との約定を破ってまで、ロウドを助けたオルフェリア。
幾度となく使い手の死を見てきた。
老衰や病死なら仕方が無い。
だが、ほとんどの者は戦いの果てに死んだ。そう、敗北して死んでいったのだ。
使い手と認めた者の死を間近で見続けてきたオルフェリア。
使い手の力量以上の助力はするな。との創造主の言葉に従い助力を制限したが故に、皆格上の奴らに敗れて死んでいった。
使い手の死を見すぎて倦み疲れていたオルフェリア。そんな状態のところで不意を突かれて七十余年ほど封印されたのだ。
それが解かれて今、山人のナウマウに拾われて、ロウドと出会うことになる。
新たな使い手を見て思ったのは『この真っ直ぐな子を死なせはしない。守り導き育てよう』であった。
そしてロウドの手に余る強敵のホルベイルと戦う羽目になって約定を破ることとなるが、オルフェリアとしては後悔はしていない。
使い手が死ぬのをむざむざと見ているのは、もう御免なのだ。
そんなオルフェリアの思いを知ってか知らずか、強敵を撃ち倒した感動に打ち震えているロウド。
「やった! あの手強い敵を倒した!」
無邪気に喜んでいる。オルフェリアが制限を解除して力を貸してくれたなどとは露ほども思ってないのだろう。
「やりましたね!」
アナスタシアも眼鏡の下の瞳を輝かせて、一緒に喜んでいる。
他の皆は、薄々オルフェリアのことに感づいてはいるが、少年少女の感動に水を差すのもアレなので黙っていた。
だが、そこに冷水を浴びせる者がいる。
「それは……オルフェリアか?」
魔力阻害銀粉の影響から抜け出て、魔力による視覚を取り戻したホルベイルがオルフェリアをじっと見ていた。
その声には憎悪と恐怖が滲んでいた。
「何故それがここにある。封印されていたはず……魔老公に、ムドウ様にお知らせせねば」
バラバラになりつつある魔力を最後の力を振り絞り集中させるホルベイル。
占いに使う水晶玉位の大きさの光球がホルベイルの前に出現した。
「マズい! ロウドよ、あの玉を切れ!」
オルフェリアが慌てた様子で指示を出す。
その切迫した様子に聞き返すこともなく、光球を切ろうとするロウド。
しかしオルフェリアの刃が当たる寸前にソレは消えた。
「もう遅い! お前らの映像は記録してムドウ様のところに送った! お前らは魔族の総力を挙げて追われることになる。その忌まわしき屠竜剣を持っている限りな。これから先、怯えて震えながら眠れぬ夜を過ごすがいい! くかかかか!」
哄笑を上げながら、光る粒と化して散っていくホルベイル。
「屠竜剣だと?」
オルフェリアを見詰めながらヴァルが呟いた。
* * *
グレイズ王国より遥か東、〈大地の背骨山脈〉の地下。
そこに魔族の国がある。
そこの一角、魔老公ムドウの部屋。
椅子に座った見事な白い髭を床にまで届かんばかりに伸ばした矮躯の老人が、目の前に座る額から角を生やした美少女に術の講義をしている。
魔老公ムドウと孫の魔少女パメラだ。
「ん? この魔力はホルベイルか?」
魔力の波動を感じて身構えるムドウの前に、ロウドたちの前から消えた光球が出現した。
光球が虚空に映像を映し出す。
「な、これはオルフェリア? 馬鹿な! アレは七十年程前に捕らえて封印庫に叩き込んだはずじゃ!」
映像の中のオルフェリアを見て驚愕するムドウ。
「オルフェリアと言うと、あの忌まわしき屠竜剣ですか?」
映像を見ながら、パメラが祖父に問う。
「そうじゃ。ちと待っておれ、封印庫に行って確認してくる」
そう言うや、転移をして消えるムドウ。
厳重な封がされていて正式な手順を踏まなければ入れない封印庫だが、魔族随一の魔力を誇るムドウならば、転移も可能なのだろう。
ムドウはすぐに戻ってきた。
で開口一番、
「フッカー! あの馬鹿者が!」
と額に青筋を立てて怒鳴る。
「お、お祖父さま? どうされたのですか?」
怒る祖父などそうそう見たことないパメラが、恐る恐る聞く。
「封印庫には、精巧な複製が置いてあったわい。そこに残っていた魔力はフッカーのものじゃった。あの馬鹿、色々と引っかき回すためにオルフェリアを持ち出したに違いない!」
フッカー。道化師の格好をした魔族。その実力は魔神将級。
性格は快楽優先。事態を引っかき回すことを一番の楽しみにしている享楽主義者である。
「どうしますの、お祖父さま?」
孫娘の問いに、
「どうもこうも……評議会を召集し、議題に掛けるしかなかろう」
と答えるムドウ。
「そうですか。お祖父さま、私コイツらに見覚えがありますの」
* * *
「アーサーたちの冥福を祈って乾杯!」
マッセウ最大の冒険者の宿〈天上の舞姫亭〉の一階の酒場ホールにて、宴会が行われていた。
参加しているのは、アーサーたちのことを知る者たちであり、彼らが死んだことを聞いて集まってきたのだ。
「たくよう、ジャンの野郎がグダグダ言わなきゃ、今でもここでやれてたのによ!」
オブライエンが木製ジョッキになみなみとつがれたエールを飲みながら、くだを巻く。
オブライエンもアーサーたちがマッセウにいた頃に良くつるんで馬鹿をやっていたので、その死に関しては思うところがあるのだろう。
そんなふうにヴァルとオブライエンらがアーサーたちを偲んでいる脇で、ミスティファーは山人のナウマウに話を聞いていた。
「じゃあ、宝箱の中に入ってたんじゃなくて落ちていたのね、オルフェリアは?」
ミスティファーの前に座っている、肝っ玉母さんのように恰幅の良い女性が頷く。
「そうだよ。あの剣は、宝箱に戦利品として入ってたんじゃない。九階層の玄室の片隅に落ちていたのさ。一目見て、これはいいもんだ。と思ったよ。で拾ったんだ」
山人女性のナウマウの言葉を聞いて、思案するミスティファー。
「え、どういうこと? 誰かが置いてったってことかしら? あんな高レベルの不死者でも恐れるようなモノを一体、誰が?」
トリックスターの魔族が面白がって置いてった。などという真相に辿りつくことは絶対にないだろう。
「いたたた……」
更に酒場の片隅では、ロウドが全身筋肉痛に苛まれながら食事をしていた。
筋力増強薬の副作用だ。
「だ、大丈夫?」
心配そうに見ているアナスタシア。
自分が与えた薬のせいでこうなっているのだからと、食事の補佐を申し出たのだ。
「大丈夫です。一人で食べられます……ところで、オルフェリア」
ロウドはアナスタシアの申し出をやんわりと断り、愛剣に話しかけた。
実は帰還の途中、オルフェリアはだんまりを決め込み、一言も喋らなかったのだ。
「ホルベイル、倒せたのは君のおかげなんだよね?」
使い手の問いかけに、溜息を一つついて答えるオルフェリア。
「そうじゃ。妾が力を貸した」
「そうか……そうだよね、僕なんかにあんな化け物が倒せる訳がない」
「何をしょげとる。ソレが悔しいなら自分の力で倒せるように強くなれば良かろう。今回は確かに妾が力を貸した。しかし、我が身には色々と制約がかかっており、今後も同じように力を貸せるわけでもない。だから強くなれ、ロウドよ」
オルフェリアがこんこんと少年を諭す。
「ちらと聞いたが、お前には倒さなきゃならない奴がおるのじゃろう?」
オルフェリアの言葉に、リーズを思い出すロウド。
「そうだ。リーズ。アーサーさんたちとリチャード兄さんの仇」
ホルベイル戦の勝利が自分の力では無かったことを知って落ち込んでいた心が、メラメラと燃え盛る。
「そうだ、僕は強くなんなきゃならないんだ。なんでソレを忘れていたんだろう」
「持ち直したか。その意気じゃ。所詮は妾は武器に過ぎん。何度も言っとるが、武器を生かすも殺すも使い手次第じゃ、良いな。妾を持つに相応しく強くなるがいい」
「はい」
少年が落ち込みから回復したのを見て、アナスタシアは微笑み自分も料理を口に運んだ。
「良かった、元気になって……あら、これ美味しい」
オルフェリアの秘密 終了
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