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吸血鬼の弟

天才と謳われた兄

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 「こんなもんですかねぇ……。」
 輝君がつまらない仕事を、何気なく終わらせたような感じで一言吐き出した。
 そして、類君の腕の出血が輝君の能力によって直ぐに治っていった。それはまるで、本物の神様が行った所業のように感じられた。
 相当な痛みだったのか、類君の方は一瞬にして消えていった腕の違和感と、通常の感覚のギャップでびっくりしているようだった。
 でも、類君は直ぐに我に帰って慌てて輝君にお礼を言った。そのお礼は、信仰している女神様にでもするように、以上なくらいに丁寧なものだった。
 必要以上に姿勢を正して、声を大きく張ってお礼を言って深々と頭を下げていた。それを見た僕も、類君と同じように輝君にお礼をした。
 けれど、輝君は類君の行為を無視して隣で頭を下げている僕の目の前にやって来た。僕が恐る恐る顔を上げようとして、必然的に上目遣いになった瞬間、僕は輝君に顎を優しく持ち上げられて深いキスを落とされた。

 静かな医務室に響き渡る水音は、ピチャピチャと水のようにサラサラした液体が絡み合う音だけど、ねっとりとしているようにも聞こえなくはない。
 「んんっ……」
 僕は深くて長いキスに思わず下手くそに息を吐いた。正直息苦しい。
 きっと輝君はそんな僕の状況を分かっている。でも、そんなのはお構い無し。もちろん、すぐ横にいる類君の事も気にしていない。
 まだまだ輝君は僕とのディープキスに満足できないらしく、輝君の舌は僕の舌をもっと絡めようとしている。満たされない我が儘な舌は僕の口内を犯していく。
 もうそろそろ酸欠になって僕が倒れるんじゃないかって時だった。

 「何やってんだよ輝………。」

 呆れたような燈哉君の声が医務室のドアから発声された。その顔は若干不機嫌になっていた。
 そのことに気がついたらしい輝君は、やっと僕の舌を解放した。それでもまだ、僕自身を放してくれる事はしないらしく、僕の体に纏まりつくように抱き締めてきた。
 「何って……見ての通りですよ。いっちゃんとイチャイチャしてたんです。それに、誰のせいで学園に呼び出されたと思ってるんですか??」
 前半は、余裕の表情を浮かべながら話していた輝君だったけれど、後半に行くにつれて苛立っているのが分かった。その苛立ちには燈哉君も同意しているみたいだった。けど、僕には何の原因が元になって二人が苛立ってるのかは皆目見当もつかなかった。
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