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あんかば ~Undercover~
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【見知らぬ相手を待つ男、メイド美少女、泥酔オヤジ、妖艶な和服美女
いったい、こいつらは何者か?
Barを舞台に潜入捜査が始まる!】
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
ニコニコ笑顔のメイド美少女に出迎えられて、俺は戸惑った。ここはメイド喫茶か? 内装はごく普通の年季の入った渋い味わいのバー。メニューも定番の酒類とつまみで、ぼったくり価格ではなさそうだ。
「萌え萌えキュンキュン、おいしくなあれ~~~」
運んできたビールを前に、両手でハートマークを作ってくれた。しかも、俺が座っているのはボックス席なので、彼女はわざわざ床にひざまずいてくれている。キュンキュンして、惚れてしまいそうだ。
だが、まずは落ち着け。もしかしたら、指定された店を間違えたのだろうか。いや、住所も店名も合っている。ちなみに、店名は『Bar優作』男の名前だぞ。
メイド美少女がカウンター内に戻っていき、俺はスマホで待ち合わせ相手にメッセージを送った。お互いのコードネーム以外、相手が誰なのか分からない。
店内を見回した。客はカウンター席に二人だけ。一人は和装の清楚な美女。スマホを見ながら、グラスワインを優雅に飲んでいる。もう一人は、俺と同じくらいのおっさんだ。なぜかカウボーイスタイル。ウエスタンなブーツにテンガロンハットにチョッキ……じゃなく、ベストと呼ばないと。
ここはコスプレ酒場か? どちらにしろ、この二人ではなさそうだ。待つとするか。
「ねえねえ、マサコちゃん、おかわり、ちょうだい~」
おっさんはかなり酔っ払っているみたいで、メイド美少女に絡んでいる。
「マサコちゃん、あんまり胸ないね。歳いくつ? 教えて、教えて」
「え~、永遠の十八歳ですぅ~」
「またまた~、若作りしてるけど、結構いってるでしょ? 肌、見れば分かるよ」
「もう~、お客さん、飲みすぎですぅ~」
メイド美少女は笑顔で対応しているけど、目は笑っていないぞ。他に従業員はおらず、ワンオペのようだ。
「マサコちゃん、あちらの美女に同じものを」
おっさんがきどって、和服美女を示した。こういうのは相手に聞こえないようにやるのが基本だろう。いや、相手にしてみたら、気持ち悪いだけだが。
和服美女が気づいて、即座に反応した。
「そんな、お気持ちだけで結構ですから」
「心配しなくていいですよ。経費で全部落ちますから」
ガハハと笑う。なんて下品な。男は年齢を重ねても、俺のように爽やかさを保ったイケオジでいたいものだ。
和服美女はおっさんを避けるように席を離れた。別の席に移るのか、トイレに行くのか。おっさんは相手にされなかったので、メイド美少女に絡みだした。
「お代わりまだ~? マサコちゃん、お代わりは~?」
「は~い、お待たせしました~」
メイド美少女は透明の液体が入ったグラスをカウンターの上に置こうとした。その瞬間、手が滑り、グラスがひっくり返った。液体はおっさんにぶっかかり、下半身がびしょ濡れになる。
「ああ~~っ、マサコちゃん、何やってんの!」
「ごめんなさ~い~」
わざとだ。絶対にわざとだ。おそらく液体もただの水道水だろう。
「お待たせしました」
ボックス席の俺の向かい側に、あの和服美女が座っていた。
「ジョゼフィーヌです」
えっ、彼女が……。俺は動揺しながら、自分のコードネームを告げた。
「ジャン=ピエールです」
和服美女が小さな紙袋をテーブルの上に置いた。
「ありがとうございます。こちらが代金です」
俺は小封筒を差しだした。
「困ります。コード決済で送金してくださいとお願いしたはず」
「PaiPaiって、使い方がいまいち分からなくて……だからこれで」
無理やりにでも俺は渡そうとする。
「では、この話はなかったことに」
和服美女は小封筒を突き返し、紙袋を持って立ち上がろうとした。俺はその紙袋をつかんだ。
「これがないとダメなんだ! 余計に払うから、売ってくれ!」
和服美女と取り合いになった。けれど、第三の手によって奪われた。酔っ払いのおっさんである。
「麻薬取締部の者です」
鋭い眼光。完全にしらふだ。俺は一瞬のうちにおっさん、もといマトリの男に取り押さえられ、床にねじ伏せられた。
その隙を突いて、和服美女は現金の入った小封筒を奪って出口へ走った。刹那、横からメイド美少女の飛び蹴りが突っ込んできた。床に転がった和服美女に、メイド美少女は馬乗りになった。その手には手錠。
「抵抗すると、公務執行妨害も付け加えるぞ!」
彼女もマトリだったのか。俺も和服美女も観念して、お縄になった。
「主任、おつかれさまです」
マトリの男がメイド美少女にかしこまった。彼女が上司か。
「山田、お前、調子乗りすぎだぞ。さっきから言いたい放題じゃねえか」
メイド美少女はクールなまなざしを部下に向けていた。なんて乱暴な言葉づかいだろう。
「申し訳ありません。主任のコスプレ姿、かなり無理してて、可愛かったものですから」
「だから、うるせえって言ってんだろ!」
怒った顔も可愛いなと、俺は連行されながら思った。
(了)
いったい、こいつらは何者か?
Barを舞台に潜入捜査が始まる!】
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
ニコニコ笑顔のメイド美少女に出迎えられて、俺は戸惑った。ここはメイド喫茶か? 内装はごく普通の年季の入った渋い味わいのバー。メニューも定番の酒類とつまみで、ぼったくり価格ではなさそうだ。
「萌え萌えキュンキュン、おいしくなあれ~~~」
運んできたビールを前に、両手でハートマークを作ってくれた。しかも、俺が座っているのはボックス席なので、彼女はわざわざ床にひざまずいてくれている。キュンキュンして、惚れてしまいそうだ。
だが、まずは落ち着け。もしかしたら、指定された店を間違えたのだろうか。いや、住所も店名も合っている。ちなみに、店名は『Bar優作』男の名前だぞ。
メイド美少女がカウンター内に戻っていき、俺はスマホで待ち合わせ相手にメッセージを送った。お互いのコードネーム以外、相手が誰なのか分からない。
店内を見回した。客はカウンター席に二人だけ。一人は和装の清楚な美女。スマホを見ながら、グラスワインを優雅に飲んでいる。もう一人は、俺と同じくらいのおっさんだ。なぜかカウボーイスタイル。ウエスタンなブーツにテンガロンハットにチョッキ……じゃなく、ベストと呼ばないと。
ここはコスプレ酒場か? どちらにしろ、この二人ではなさそうだ。待つとするか。
「ねえねえ、マサコちゃん、おかわり、ちょうだい~」
おっさんはかなり酔っ払っているみたいで、メイド美少女に絡んでいる。
「マサコちゃん、あんまり胸ないね。歳いくつ? 教えて、教えて」
「え~、永遠の十八歳ですぅ~」
「またまた~、若作りしてるけど、結構いってるでしょ? 肌、見れば分かるよ」
「もう~、お客さん、飲みすぎですぅ~」
メイド美少女は笑顔で対応しているけど、目は笑っていないぞ。他に従業員はおらず、ワンオペのようだ。
「マサコちゃん、あちらの美女に同じものを」
おっさんがきどって、和服美女を示した。こういうのは相手に聞こえないようにやるのが基本だろう。いや、相手にしてみたら、気持ち悪いだけだが。
和服美女が気づいて、即座に反応した。
「そんな、お気持ちだけで結構ですから」
「心配しなくていいですよ。経費で全部落ちますから」
ガハハと笑う。なんて下品な。男は年齢を重ねても、俺のように爽やかさを保ったイケオジでいたいものだ。
和服美女はおっさんを避けるように席を離れた。別の席に移るのか、トイレに行くのか。おっさんは相手にされなかったので、メイド美少女に絡みだした。
「お代わりまだ~? マサコちゃん、お代わりは~?」
「は~い、お待たせしました~」
メイド美少女は透明の液体が入ったグラスをカウンターの上に置こうとした。その瞬間、手が滑り、グラスがひっくり返った。液体はおっさんにぶっかかり、下半身がびしょ濡れになる。
「ああ~~っ、マサコちゃん、何やってんの!」
「ごめんなさ~い~」
わざとだ。絶対にわざとだ。おそらく液体もただの水道水だろう。
「お待たせしました」
ボックス席の俺の向かい側に、あの和服美女が座っていた。
「ジョゼフィーヌです」
えっ、彼女が……。俺は動揺しながら、自分のコードネームを告げた。
「ジャン=ピエールです」
和服美女が小さな紙袋をテーブルの上に置いた。
「ありがとうございます。こちらが代金です」
俺は小封筒を差しだした。
「困ります。コード決済で送金してくださいとお願いしたはず」
「PaiPaiって、使い方がいまいち分からなくて……だからこれで」
無理やりにでも俺は渡そうとする。
「では、この話はなかったことに」
和服美女は小封筒を突き返し、紙袋を持って立ち上がろうとした。俺はその紙袋をつかんだ。
「これがないとダメなんだ! 余計に払うから、売ってくれ!」
和服美女と取り合いになった。けれど、第三の手によって奪われた。酔っ払いのおっさんである。
「麻薬取締部の者です」
鋭い眼光。完全にしらふだ。俺は一瞬のうちにおっさん、もといマトリの男に取り押さえられ、床にねじ伏せられた。
その隙を突いて、和服美女は現金の入った小封筒を奪って出口へ走った。刹那、横からメイド美少女の飛び蹴りが突っ込んできた。床に転がった和服美女に、メイド美少女は馬乗りになった。その手には手錠。
「抵抗すると、公務執行妨害も付け加えるぞ!」
彼女もマトリだったのか。俺も和服美女も観念して、お縄になった。
「主任、おつかれさまです」
マトリの男がメイド美少女にかしこまった。彼女が上司か。
「山田、お前、調子乗りすぎだぞ。さっきから言いたい放題じゃねえか」
メイド美少女はクールなまなざしを部下に向けていた。なんて乱暴な言葉づかいだろう。
「申し訳ありません。主任のコスプレ姿、かなり無理してて、可愛かったものですから」
「だから、うるせえって言ってんだろ!」
怒った顔も可愛いなと、俺は連行されながら思った。
(了)
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