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恋のひと押し ~Nothing's Gonna Stop Me Now~
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【高校時代の同級生・小池君と同窓会で再会した相田さんは、神社の境内に呼び出し、思い切って告白した。
しかし、相田さんの一途な恋は絶望的な展開に。
そして、悲劇と奇跡が起きる……。】
***
【女性読者(視点)と男性読者(視点)によって、正反対の印象を受けるピュアラブストーリー!】
「小池君、私と付き合って!」
私は勇気を振り絞って告白した。まるで、十代の思春期のような初々しさだと、自分でも思ってしまった。
「相田さん、いきなり呼び出して、どうしたの? びっくりするじゃないか」
「小池君のことが好き! 大好き! 昔からずっと!」
まるでマンガかアニメのような大胆なセリフだ。自分でも、よくこんなことが言えたと思う。
小池君は完全に当惑していた。
「この前の同窓会で小池君と再会して、やっぱり運命だって思ったの!」
運命、まさにその通りだ。
ここは神社の境内。四百四十四段あると言われている石段、そのふもとに私たちが通っていた高校が見える。
あの頃、私はいつも小池君を遠くから眺めていた。勉強もスポーツもできて、性格も謙虚で優しい。誰からも好かれ、私には手の届かない存在。そんな小池君はレスリング部の練習で、毎日この四百四十四段を駆け上り、駆け下りていたのだ。アマレスのコスチュームって、どうしてあんなにセクシーなのだろう。
「もう無理だよ。今日はここを上るのさえ、息が上がって。あした、いや、あさっては筋肉痛だな」
今も小池君はさわやかな笑顔だ。声をかけることなんて、一度もできなかったけれど、毎朝、電車とバスが一緒になるように時間を合わせていたっけ。
「あの頃、小池君は私の存在さえ気づかなかったでしょ?」
「相田さんはいつも一人で物静かな印象だったね。こんなに変わるなんて……。あ、いい意味でだよ。すごく綺麗になったし」
お世辞でも嬉しい。やっぱり、小池君は気遣いのある人だ。
「小池君、今、付き合ってる人、いないって言ったよね?」
「そうだけど、この先どうなるかは分からないよ」
何か予防線を張っている。いないことはちゃんと確認済みだ。
「だったら、彼女ができるまでの関係でいい。何なら、彼女ができても、ボディパートナーでもいいから」
ちょっと暴走しちゃったかな? ていうか、自分で言うのも何だけど、ボディパートナーなんて言葉あるの?
小池君は苦笑いしながらスルーし、そろそろ帰ると言い出した。また、この急な石段を下りていくのだ。私はその背に向かって呼び止めた。
「同窓会の二次会を抜け出して、ホテルに行ったじゃない。また、あの時みたいに熱く激しいバトルをしようよ!」
小池君は困惑気味になった。
「小池君のセリフ、忘れられないんだ。このベッドは白いマットのジャングルだ……だっけ。小池君の寝技、本当にすごかった。私、初めてだったから」
「ごめん……酔ってて、何も覚えてないんだ」
「パワーボムって、あんな強烈なんだね。さすがレスリング部」
「えっ……僕、そんなことしたの? そもそも、アマレスにそんな技ないけど。でも、もし本当なら心から謝るし、ちゃんと償うから」
「そんなことないって! むしろ最高だった。私、あれからね、胸がキュンキュンして、ずっと痛いの」
小池君は急に真顔になった。
「それ、僕がかけた技のせい? 病院に行ったほうがいいんじゃない?」
こうなったら、攻めるしかない。私は小池君の手を取ると、自分の胸に押しつけた。
「ほら、服の上からでも分かるでしょ?」
「何するんだよ! 誰かに見られたら、誤解されるじゃないか!」
手を引っ込めようとする小池君だったが、私は放さなかった。
「私ね、バージョンアップの手術をしたんだ。どう?」
「相田さんの気が済むなら、僕が別に言うことはないけど」
「だって、小池君、大きいほうが好みなんだよね? 知ってるよ」
小池君は思いきり手を振りほどいた。
「どうして、知ってるんだよ! いやいやいや、もういいよ。じゃあね!」
「行かないで! 私、一度でいいから青春を味わってみたいの!」
「くどくど、くどいって! いい歳して、気持ち悪い。もう二度と連絡しないでくれ」
私は止まらなかった。小池君の背中に飛びついた。バックハグ。アオハルだ!
しかし、タイミングがずれ、小池君に勢いよくタックルしてしまった。
「あ~~~っ!」
小池君が石段を踏み外した。真っ逆さまに転がり落ちていく。
「小池君!」
四百四十四段の一番下で、小池君は動かなくなった。あまりに遠く小さすぎて、様子が分からない。私は急いでスマホで救急車を呼んだ。
× × ×
小池君は頭を強打して意識不明になったが、無事に手術は成功した。ずっと眠り続けたが、私は頻繁にお見舞いに来ては、まめまめしく身の回りの世話をしてあげた。こうやって、ずっと二人きりでいられたら。
だが、そんな日々は終わりを告げた。小池君が目を覚ましたのだ。
「ここ、病院だよ。体はすっかり直ってるから」
「……僕は誰?」
戸惑いながら小池君は見返してきた。
「え? 分からないの?」
「君は誰?」
私? 私は……。
「私はあなたの恋人よ」
チュッ!
(了)
しかし、相田さんの一途な恋は絶望的な展開に。
そして、悲劇と奇跡が起きる……。】
***
【女性読者(視点)と男性読者(視点)によって、正反対の印象を受けるピュアラブストーリー!】
「小池君、私と付き合って!」
私は勇気を振り絞って告白した。まるで、十代の思春期のような初々しさだと、自分でも思ってしまった。
「相田さん、いきなり呼び出して、どうしたの? びっくりするじゃないか」
「小池君のことが好き! 大好き! 昔からずっと!」
まるでマンガかアニメのような大胆なセリフだ。自分でも、よくこんなことが言えたと思う。
小池君は完全に当惑していた。
「この前の同窓会で小池君と再会して、やっぱり運命だって思ったの!」
運命、まさにその通りだ。
ここは神社の境内。四百四十四段あると言われている石段、そのふもとに私たちが通っていた高校が見える。
あの頃、私はいつも小池君を遠くから眺めていた。勉強もスポーツもできて、性格も謙虚で優しい。誰からも好かれ、私には手の届かない存在。そんな小池君はレスリング部の練習で、毎日この四百四十四段を駆け上り、駆け下りていたのだ。アマレスのコスチュームって、どうしてあんなにセクシーなのだろう。
「もう無理だよ。今日はここを上るのさえ、息が上がって。あした、いや、あさっては筋肉痛だな」
今も小池君はさわやかな笑顔だ。声をかけることなんて、一度もできなかったけれど、毎朝、電車とバスが一緒になるように時間を合わせていたっけ。
「あの頃、小池君は私の存在さえ気づかなかったでしょ?」
「相田さんはいつも一人で物静かな印象だったね。こんなに変わるなんて……。あ、いい意味でだよ。すごく綺麗になったし」
お世辞でも嬉しい。やっぱり、小池君は気遣いのある人だ。
「小池君、今、付き合ってる人、いないって言ったよね?」
「そうだけど、この先どうなるかは分からないよ」
何か予防線を張っている。いないことはちゃんと確認済みだ。
「だったら、彼女ができるまでの関係でいい。何なら、彼女ができても、ボディパートナーでもいいから」
ちょっと暴走しちゃったかな? ていうか、自分で言うのも何だけど、ボディパートナーなんて言葉あるの?
小池君は苦笑いしながらスルーし、そろそろ帰ると言い出した。また、この急な石段を下りていくのだ。私はその背に向かって呼び止めた。
「同窓会の二次会を抜け出して、ホテルに行ったじゃない。また、あの時みたいに熱く激しいバトルをしようよ!」
小池君は困惑気味になった。
「小池君のセリフ、忘れられないんだ。このベッドは白いマットのジャングルだ……だっけ。小池君の寝技、本当にすごかった。私、初めてだったから」
「ごめん……酔ってて、何も覚えてないんだ」
「パワーボムって、あんな強烈なんだね。さすがレスリング部」
「えっ……僕、そんなことしたの? そもそも、アマレスにそんな技ないけど。でも、もし本当なら心から謝るし、ちゃんと償うから」
「そんなことないって! むしろ最高だった。私、あれからね、胸がキュンキュンして、ずっと痛いの」
小池君は急に真顔になった。
「それ、僕がかけた技のせい? 病院に行ったほうがいいんじゃない?」
こうなったら、攻めるしかない。私は小池君の手を取ると、自分の胸に押しつけた。
「ほら、服の上からでも分かるでしょ?」
「何するんだよ! 誰かに見られたら、誤解されるじゃないか!」
手を引っ込めようとする小池君だったが、私は放さなかった。
「私ね、バージョンアップの手術をしたんだ。どう?」
「相田さんの気が済むなら、僕が別に言うことはないけど」
「だって、小池君、大きいほうが好みなんだよね? 知ってるよ」
小池君は思いきり手を振りほどいた。
「どうして、知ってるんだよ! いやいやいや、もういいよ。じゃあね!」
「行かないで! 私、一度でいいから青春を味わってみたいの!」
「くどくど、くどいって! いい歳して、気持ち悪い。もう二度と連絡しないでくれ」
私は止まらなかった。小池君の背中に飛びついた。バックハグ。アオハルだ!
しかし、タイミングがずれ、小池君に勢いよくタックルしてしまった。
「あ~~~っ!」
小池君が石段を踏み外した。真っ逆さまに転がり落ちていく。
「小池君!」
四百四十四段の一番下で、小池君は動かなくなった。あまりに遠く小さすぎて、様子が分からない。私は急いでスマホで救急車を呼んだ。
× × ×
小池君は頭を強打して意識不明になったが、無事に手術は成功した。ずっと眠り続けたが、私は頻繁にお見舞いに来ては、まめまめしく身の回りの世話をしてあげた。こうやって、ずっと二人きりでいられたら。
だが、そんな日々は終わりを告げた。小池君が目を覚ましたのだ。
「ここ、病院だよ。体はすっかり直ってるから」
「……僕は誰?」
戸惑いながら小池君は見返してきた。
「え? 分からないの?」
「君は誰?」
私? 私は……。
「私はあなたの恋人よ」
チュッ!
(了)
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