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悔しさと愛しさと
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「こんなこと、おれに言われたくないだろうけど。新さんの才能、凄いと思う。コンビなんて組まなくても、パーツの接着の時とかだけ誰かに手伝ってもらえば、十分に今まで通り続けていけると思うんだ。だから」
今度こそ、本当に。
実は、こくりと喉を鳴らし、真摯に新汰を見つめながら紡いだ。
「新さん、おれを救ってくれてありがとう。
沢山、新しい世界を見せてくれて、そこに連れていってくれてありがとう。
凄く好きだった。ずっと一緒に前を向いて歩いていきたかった。隣に居たかったよ。だけど、おれの気持ち、何度言っても伝わってないと思った。
近くに居るはずなのに、ずっと遠く感じてた。他に目がいかなかったから、それでもぐずぐずして、誤解させてたと思う。
突然みたいに思っても、もう何年も前から違和感の方が強くて、ようやく決心が着いただけなんだ。
これからは、一人のファンとして、新さんのこと応援するよ。本当に……ありがとうございました」
最後に深く腰を折るところまで、身じろぎもせずに新汰は聴いていた。
やがて、深い吐息が伝わり、くるりと新汰は踵を返した。
「もっとメジャーになってから後悔してもしらないからな」
そう言い捨てて、壁沿いに足音は遠ざかっていく。
やがて足音は消え、代わりに何台か車が通り過ぎて、それから足早に横切る通行人を数人見送ってから、実は握っていた拳を開いて恐る恐る哲朗を振り返った。
ん、と淡く笑みを刷いた口元と目をじっと見て、小さくごめんと呟くと、どうしてと哲朗が腕を広げた。
「いこ」
だが、熱が冷めてここが何処だかを思い出し、自分の車の方へと足を向ける。
本当は、今すぐ抱き締めて口付けたかった。
しかしながら、今まで散々に騒がせておいて今更だけれど、きっとご近所さんにも少なからず聞こえていると思うのだ。
実も顔を赤らめてから、助手席に身を沈ませ、二人は夜の帳の中を、郊外に向けて走り出したのだった。
一軒ずつコテージになっているモーテルに車が滑り込んでいく。もしかしたらと思っていた実だが、結局何も言わないままに哲朗に続き、室内へと入った。
小さな家のしつらえそのままに、ワンルームの十二畳ほどの広い部屋にキングサイズのベッドが鎮座し、浴室とトイレは独立しているがベッド脇のカーテンを開ければ、ガラス越しに風呂が見えるようになっている。
玄関ドア横の小窓に係の人が手と口元だけ覗かせて、哲朗が支払った金を手に、さっさと戻っていった。
まるで洋画に出てくるような寂れた雰囲気の中にも落ち着きがあり、街中のホテルとは全く異なる趣であるが故に、実はどうすれば良いのか解らず立ち竦んだ。
暖房が入った唸るような音にびくつき、セーターを脱いでソファに放り投げた哲朗が、今度こそと実を後ろから抱き締めた。
「わったん……あの」
「しるし、って何」
露天風呂の騒ぎの時には気付かなかった。そうまじまじと見たわけでもないから見落としたのか、それとも。
そう単なる疑問では済まされない黒い想いが渦巻き、そのまま実のベルトを緩めてスラックスごと落とす。先に下を晒されたことに羞恥が増し、実は哲朗の手に自分の手を重ねて緩く首を振った。
「ちゃんと、おれから言うつもりだった……」
そう、と身を屈めた哲朗が一息にシャツとトレーナーを頭から抜き、殆ど抱き上げられるようにして、うつぶせのままベッドに載せられる。
「ひゃっ」
「悔しいけど、確かに俺、何も知らないし」
「そ、れは」
性急に下着も足から抜かれ、あっと言う間に丸裸になった体を返されて、煌々と点いたままの明かりの下で、実はベッドカバーを握り締めて目を閉じた。
「みのる」
指と唇が、横を向いた実のうなじを辿っていく。びくびくと歓喜に震え始める体を、ゆっくりと丁寧に辿り、脇のラインが弱いことも見抜かれて散々いじられて呼気が荒くなった。
ついに下肢を持ち上げられ、それまで肌で感じていた哲朗の唇が消えたとき、反射的に実は目を開けてしまった。
もう既に雫を零し始めている箇所の傍に吸い付いている視線に肌が焼かれる。
このまま印も焼けて溶ければいいのにと、涙が零れた。
「痛くないか」
そっと指先が触れて、新しく生まれ変わる途中の薄い皮膚から伝わる感触に、敏感な腰が跳ねた。
「こんなとこ、痛いに決まってるよな」
身を沈めた哲朗が実の視界から消え、柔らかく湿ったものが傷跡をちろちろとなぞった。
「ぁ、やっ」
うねる腰は逃げているのではなく、更なる快感を求めていた。
まだ肝心な場所には触れられていない。まずは印を探すためになのか、これまでの愛撫は全身を確かめるささやかなものだった。何年もかけて新汰に開発された実は、もう待ちきれないと全身を戦慄かせ、喉を反らせた。
忙しさにかまけて、自分でも何も処理してはいない。ずっと解していない後ろは、ひょっとしたら哲朗のものを飲み込みきれなくてまた傷つくかもしれない。それでも、もう心が限界を告げていた。
伸ばした腕で哲朗の髪を掻き混ぜ、キスしてと誘う。
熱に浮かされた瞳と声に呼ばわれ、服を脱ぎ捨てた哲朗が被さり、きつく互いに吸い上げながら、手の届く限りの場所を触れ合っていく。
蕩けるような甘い声が哲朗の中心を昂らせ、とっくにその気になっている実自身と擦り合わせると、それぞれから透明な雫が零れてその下へと垂れていく。
「なんか、して欲しいことあったら言ってな。傷付けたくないんだよ……」
長い腕が足の間を割り、その粘液を更に下の部分に塗り付ける。円を描きながら周囲を巡る指先を、ここにちょうだいと入り口が薄く開いて誘った。
今度こそ、本当に。
実は、こくりと喉を鳴らし、真摯に新汰を見つめながら紡いだ。
「新さん、おれを救ってくれてありがとう。
沢山、新しい世界を見せてくれて、そこに連れていってくれてありがとう。
凄く好きだった。ずっと一緒に前を向いて歩いていきたかった。隣に居たかったよ。だけど、おれの気持ち、何度言っても伝わってないと思った。
近くに居るはずなのに、ずっと遠く感じてた。他に目がいかなかったから、それでもぐずぐずして、誤解させてたと思う。
突然みたいに思っても、もう何年も前から違和感の方が強くて、ようやく決心が着いただけなんだ。
これからは、一人のファンとして、新さんのこと応援するよ。本当に……ありがとうございました」
最後に深く腰を折るところまで、身じろぎもせずに新汰は聴いていた。
やがて、深い吐息が伝わり、くるりと新汰は踵を返した。
「もっとメジャーになってから後悔してもしらないからな」
そう言い捨てて、壁沿いに足音は遠ざかっていく。
やがて足音は消え、代わりに何台か車が通り過ぎて、それから足早に横切る通行人を数人見送ってから、実は握っていた拳を開いて恐る恐る哲朗を振り返った。
ん、と淡く笑みを刷いた口元と目をじっと見て、小さくごめんと呟くと、どうしてと哲朗が腕を広げた。
「いこ」
だが、熱が冷めてここが何処だかを思い出し、自分の車の方へと足を向ける。
本当は、今すぐ抱き締めて口付けたかった。
しかしながら、今まで散々に騒がせておいて今更だけれど、きっとご近所さんにも少なからず聞こえていると思うのだ。
実も顔を赤らめてから、助手席に身を沈ませ、二人は夜の帳の中を、郊外に向けて走り出したのだった。
一軒ずつコテージになっているモーテルに車が滑り込んでいく。もしかしたらと思っていた実だが、結局何も言わないままに哲朗に続き、室内へと入った。
小さな家のしつらえそのままに、ワンルームの十二畳ほどの広い部屋にキングサイズのベッドが鎮座し、浴室とトイレは独立しているがベッド脇のカーテンを開ければ、ガラス越しに風呂が見えるようになっている。
玄関ドア横の小窓に係の人が手と口元だけ覗かせて、哲朗が支払った金を手に、さっさと戻っていった。
まるで洋画に出てくるような寂れた雰囲気の中にも落ち着きがあり、街中のホテルとは全く異なる趣であるが故に、実はどうすれば良いのか解らず立ち竦んだ。
暖房が入った唸るような音にびくつき、セーターを脱いでソファに放り投げた哲朗が、今度こそと実を後ろから抱き締めた。
「わったん……あの」
「しるし、って何」
露天風呂の騒ぎの時には気付かなかった。そうまじまじと見たわけでもないから見落としたのか、それとも。
そう単なる疑問では済まされない黒い想いが渦巻き、そのまま実のベルトを緩めてスラックスごと落とす。先に下を晒されたことに羞恥が増し、実は哲朗の手に自分の手を重ねて緩く首を振った。
「ちゃんと、おれから言うつもりだった……」
そう、と身を屈めた哲朗が一息にシャツとトレーナーを頭から抜き、殆ど抱き上げられるようにして、うつぶせのままベッドに載せられる。
「ひゃっ」
「悔しいけど、確かに俺、何も知らないし」
「そ、れは」
性急に下着も足から抜かれ、あっと言う間に丸裸になった体を返されて、煌々と点いたままの明かりの下で、実はベッドカバーを握り締めて目を閉じた。
「みのる」
指と唇が、横を向いた実のうなじを辿っていく。びくびくと歓喜に震え始める体を、ゆっくりと丁寧に辿り、脇のラインが弱いことも見抜かれて散々いじられて呼気が荒くなった。
ついに下肢を持ち上げられ、それまで肌で感じていた哲朗の唇が消えたとき、反射的に実は目を開けてしまった。
もう既に雫を零し始めている箇所の傍に吸い付いている視線に肌が焼かれる。
このまま印も焼けて溶ければいいのにと、涙が零れた。
「痛くないか」
そっと指先が触れて、新しく生まれ変わる途中の薄い皮膚から伝わる感触に、敏感な腰が跳ねた。
「こんなとこ、痛いに決まってるよな」
身を沈めた哲朗が実の視界から消え、柔らかく湿ったものが傷跡をちろちろとなぞった。
「ぁ、やっ」
うねる腰は逃げているのではなく、更なる快感を求めていた。
まだ肝心な場所には触れられていない。まずは印を探すためになのか、これまでの愛撫は全身を確かめるささやかなものだった。何年もかけて新汰に開発された実は、もう待ちきれないと全身を戦慄かせ、喉を反らせた。
忙しさにかまけて、自分でも何も処理してはいない。ずっと解していない後ろは、ひょっとしたら哲朗のものを飲み込みきれなくてまた傷つくかもしれない。それでも、もう心が限界を告げていた。
伸ばした腕で哲朗の髪を掻き混ぜ、キスしてと誘う。
熱に浮かされた瞳と声に呼ばわれ、服を脱ぎ捨てた哲朗が被さり、きつく互いに吸い上げながら、手の届く限りの場所を触れ合っていく。
蕩けるような甘い声が哲朗の中心を昂らせ、とっくにその気になっている実自身と擦り合わせると、それぞれから透明な雫が零れてその下へと垂れていく。
「なんか、して欲しいことあったら言ってな。傷付けたくないんだよ……」
長い腕が足の間を割り、その粘液を更に下の部分に塗り付ける。円を描きながら周囲を巡る指先を、ここにちょうだいと入り口が薄く開いて誘った。
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