逃がさないよ?

亨珈

文字の大きさ
上 下
9 / 22
初デートってことでいいんですかね!?

ひとりぼっち

しおりを挟む
 せめてscarがないかなーと漁り続けるも、他のチームが目ぼしいものは持っていっちゃったか元からないのか見つからない。
 そんなとき、遠くからやってくるセスナの音。

「イアさん! あれ取りましょう!」

 何処で落とすかわからないので、建物から出てひたすら空を見上げて視線で追いかける。

 パシュッ。サイレンサーで狙撃される音。肩を掠っていくのに気付くと同時に、建物の陰に入ってしゃがむ。

「迂闊だな、マメ」
「ごめんなさい!」

 取り敢えず包帯巻き巻き。ついでにエネルギードリンクごくごく。現実ならゴミはお持ち帰りだけど、戦場ではその場にポイ。何度やっても心苦しい。

「方向わかりました?」
「多分SEの山頂」
「仕留めるなら囮になりますよー」

 ここに芋ってても補給物資取れないし。うー。早くコンテナのとこ行きたい!

「お前の個人的な事情が透けて見えるが、ま、それが妥当か」
「収縮前に移動したいですしねっ」

 あっちの山も次のエリアからは外れている。こっちの方が近いけど、それでもやっぱりエリア外なんだよね。

 元気を取り戻した私は、そろっと建物から覗いてみる。間髪置かずに放たれた弾が、アバターの髪の先を掠めて塀を穿った。

(引っ込めるの間に合って良かった~!)

 スモークグレネードのピンを抜いて塀との間、それから塀の向こうに投擲する。次々と煙が拡散されて、コンテナまでのスモークロードの出来上がり。

(よし、行くか!)

「信じてますよ、イアさん」
「Sure」

 なんで英語やねーん! と心の中で突っ込みながら、私は陰から飛び出した。

 何発か予測射撃が掠めていったけど、適当にジグザグに走り続けていると、建物内からガウンと重い音が響いた。
 続いてバイザー左下に現れるダウン表示と次の銃声。確殺だ。

(ヘッドショット一発なんて流石イアさん。頼もしすぎる)

 コンテナに無事辿り着いた私は、持っていた銃を二挺とも捨てて、中身を取り出した。

「イアさん、いいものゲットー」
「嫌な予感がする……」

「9ミリ残り少ないし、MPも置いていきます」
「てことはまさか、」

 言いかけたイアさんが息を呑む気配がした。

「特定された」
「えっ?」

 イアさんがいるはずの建物から、閃光が漏れてきた。

「イアさん!」

 耳鳴りで何も聞こえていないはずのイアさんに呼びかけて引き返そうとした途端、

「来るな! そのままエリアに入れ!」

と叱咤される。

 バイザー端では、収縮のカウントダウンが始まっている。あと、数秒。
 軽機関銃とアサルトライフルの音が交錯し、左上に表示されているイアさんの体力がミリになった。

 反転していた身体をまた返して、私は走り出した。

 イアさんがダウン表示になる。
 収縮が始まり、建物がパルスに呑まれていく。
 イアさんの表示が、死亡に切り替わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

PMに恋したら

秋葉なな
恋愛
高校生だった私を助けてくれた憧れの警察官に再会した。 「君みたいな子、一度会ったら忘れないのに思い出せないや」 そう言って強引に触れてくる彼は記憶の彼とは正反対。 「キスをしたら思い出すかもしれないよ」 こんなにも意地悪く囁くような人だとは思わなかった……。 人生迷子OL × PM(警察官) 「君の前ではヒーローでいたい。そうあり続けるよ」 本当のあなたはどんな男なのですか? ※実在の人物、事件、事故、公的機関とは一切関係ありません 表紙:Picrewの「JPメーカー」で作成しました。 https://picrew.me/share?cd=z4Dudtx6JJ

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

処理中です...