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あなたにいつも、まばたき二回
ノムラとわたし
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それから。
それからながいながい時間がすぎて。
それでも、イソベはそばにいなくて。
そんなの耐えられないから、もう見るのもやめた。
そうしたら、いつの間にか眠ってたみたい。
そろりそろりと目を開けたら、水がなくなってて。
ここはどこ?
イソベはどこ?
知らないよ、こんなとこ知らない。
お外に出ないって約束したのに。ここはお外だ。せめて屋根があるとこにいかなくちゃ。
ずっしり重い体でなんとか立とうとしたら、前足が痛くて、どうしても片方しかつけないの。ぶるぶるするのがせいいっぱい。
ヒョコンヒョコン、ゆっくりゆっくり進む。おうちは、たぶんあっち。
体の中のレーダーが向いてる。
周りを見てもどうせわかんない。
とりあえず、屋根。どこか狭いとこにいたい。
だれか知らないニンゲンが、上から下にドアみたいなのを引っぱってるのが見える。ギギッて音がして、地面につくより前に止まってる。
ニンゲンが見えなくなってから、わたしはそこにもぐりこんだ。
そのあとのわたしは、なんていうかもうろうとしてて、よくわからなかった。
気付いたらだれか知らないニンゲンの腕の中、それから注射されて、あ、病院かって思った。
少しは具合良くなったけど、あいかわらず足は痛いままだし、しっぽの感覚はない。ヒョコンと歩いて振り返ると引きずってる。
なめてお手入れしようとしたら、ふさふさの毛がすり切れて、硬いものが出てた。よくないにおいもしてる。
ご飯をくれるニンゲンは「おばあちゃん」というらしい。
でもまた病院、たぶん前とは別のトコに行くと「ノムラさん」って呼ばれてたから、「ノムラ」って呼ぶことにする。
ノムラと病院のニンゲンは、わたしを「ちーちゃん」って呼ぶの。
わたしは「エリ」よ。イソベが付けてくれたの。
また注射されて、つぎに気付いたときにはしっぽがなくなってた。もう自分では動かせなかったし、においも変だったから、ない方がいいんだろうけど。
やっぱり悲しかった。
ノムラは、わたしをなでながらいっぱい泣いていた。
長いしっぽは、高いところに上がるときとかバランスを取るのに大事なの。でもなくってもなんとかなる。
おしりがつるんとしてて、なでられるときに変な感じ。
痛いけど、なんとか歩くことができるようになって、ご飯も用足しもひとりで大丈夫。病院にいたときみたいに、タレ流しはイヤなの。シートが吸い取ってくれるっていっても、やっぱり隠したいし。
イソベは木のにおいがする砂のトイレを用意してくれてたけど、ノムラのおうちだとシートなの。
ここにしてねって言われたし、おふとんや畳にするのはプライドがゆるさないから、そこで用足ししてるわ。
ノムラがわたしを助けてくれたのはわかってる。だから、それくらいはガマンしなくちゃね。
ノムラのうちには、イソベのうちになかったものがいっぱいあって、いちばん不思議なのがブツダンってやつ。
ノムラは毎朝ブツダンのお水を替えて、ご飯もオソナエして、オリンを鳴らしては見えないナニカに話しかけてる。
いまは足が痛くてのぼれないけど、そこにナニがいるのか、いつか調べてみたいと思ってるわ。
ある日、安かったからってニコニコしながらノムラが買い物袋から出したものをブツダンにオソナエしてたの。
とってもいいニオイ!
ノムラがマグロのオサシミって言ってた。
ヒゲは全部オサシミに向いちゃう。
イソベもマグロって言いながらパウチからわたしのお皿によそってくれたけど、それとは全然ちがうの。もっと新鮮なニオイ。
わたしにもちょうだい? って、ノムラが座ったところによじ登ってお願いしてみる。
あごにスリスリ。耳たぶハミハミ。それから手をペロペロ。イソベならイチコロよ。
そうしたらノムラはクスクス笑って、もう少し待ってねって言うの。
待ってたらいいの?
そういえば、オソナエのあと、お菓子やくだものはノムラが食べてるもんね。
待ってたらマグロも食べていいのね?
わかった! じゃあイイコで待ってるから、ぜったいわたしにもちょうだいね?
ブツダンの前に座って、いまかいまかと見上げては、チラッとノムラを振り返っていたら、気付いたノムラに笑われちゃった。
ノムラはお茶ガラとほうきを持って、となりのへやに行っちゃった。前に見たとき面白かったけど、お茶ガラをへや中にまいてからほうきではくの。
足が痛くなかったらついて回って見ていたいけど、今日はやめとくわ。もしかしたら、わたしがいない間にブツダンにいるナニカがマグロをぜんぶ食べちゃうかもしれないし。
見張っていないとね!
ノムラは、だいたい夜明けに起きる。新聞配達のバイクの音で目が覚めるみたい。だから、時刻はイソベより遅い感じね。
でもオシゴトに行かなくていいみたいだから、ゆっくり寝ていたらいいのにね。
ノムラのうちは、階段がないの。ただ、へやとへやの境い目にでっぱりがあるから、ノムラもわたしも気を付けながら歩いてる。前ならこんなのへっちゃらだったのにな。
でも急ぐ用事もないからいいんだけどね。
ノムラは買い物に行く以外は、ほとんどおうちにいる。たまに近所の人が来て、お庭に面した窓を開けはなって、そこに腰かけておしゃべりしてるの。
お庭には小さな花壇があるくらいで、ニンゲンが二、三歩歩いたらすぐにフェンスにあたって道に出れるようになってる。フェンスは低いから、わたしたちならジャンプで飛び越せる高さよ。
もっとも、いまのわたしにはムリなんだけどね。
とはいえ、できたとしても、もうお外には行かないわ。
だって、お外には怖くて痛いことしかなかったもの。
あんなにイソベと約束したのに、わたしは守れなかった。
イソベとの約束も、イソベのおうちも。
留守番って、留守のおうちを守ることなんだって。でもドロボウとか、知らない人が勝手に入ってきたら隠れてねって言われてた。危ないからって。
なにを盗まれるより壊されるより、エリが大事だよって。
だから、イソベは怒ったりしないと思う。
だけど、あんなに水びたしになって、イソベが寝ることはできないと思う。
帰ったとき、びっくりしただろうな……わたしはいないし、おうちグシャグシャだし。
うなだれていたら、ノムラが抱っこしてなでてくれた。
わたしが眠るまで、ずうっとなでてくれた。
わたしがすっかりノムラとの暮らしに慣れて、たまにしか悲しくならなくなったころ、おうちの外からイソベの声が聞こえた気がして、耳がピンとしてお庭にくぎ付けになったの。
たしかにエリって聞こえる! 何度も何度も呼んでる!
台所でなにかを作っているノムラも、声には気付いたみたい。でもわたしは『ちーちゃん』だから、誰のことかはわかってないの。
わたしはガラスに近付いて、前足をガラスに付けて後足で立ちあがってみたけど、お外が見えるガラスは上半分だけだから、なにも見えなかった。
イソベなのね? そこにいるのね?
ぼんやりとしたシルエットと、大好きなイソベの声。ノムラより低くて、しっとりした声。
エリのこと大好きだよって、何度も何度もささやいてくれた声が、いまは少しかすれるくらいに大声で、お外からわたしを呼んでる。
イソベ! エリはここよ!
イソベにするみたいに、ガラスに体をこすりつけてると、ノムラがこっちに歩いてきた。
ノムラとイソベがお話しているのを、わたしはノムラの太ももにくっついて聞いている。
あのあと、ノムラがガラスを開けてイソベをおうちに入れてくれた。
イソベは、わたしの首に巻いているナニかのおかげでここを見つけられたんですって。あれだけ水にもみくちゃにされたけど、外れなくてよかったわ。
もうすっかり私のにおいが消えちゃっているイソベにしっかりマーキングして、それからなでさせてあげて。
それから、自然とノムラのとなりで寝そべっちゃてる。
ノムラは、聞いたばかりのわたしの名前を呼びながら、わたしをなでる手をとめない。
イソベがわたしたちのことを説明して、そのあとノムラがわたしとのことを話して、それからノムラ自身の色々なことをずーっとしゃべっていたの。
まるで、口をとめるのが怖いみたいに。
だんだんと日が落ちてきて、窓側にいるイソベの顔が、かげになって見えづらい。
でも、わかるの。
イソベもノムラも、泣きそうなかおしてるのね。
ぽつり、ぽつり。こぼれることばが、わたしの名前ばかりになる。
その声が、どちらもしんみりしていて。
大丈夫よ、ノムラ。わたしはここにいる。
それでいいよね? イソベ。
じっと見上げると、イソベがゆっくり二回まばたきした。
私も二回、まばたきを返す。
大好きよ、イソベ。
でもね、わたしはイソベのおうちでひとりきりの時間が長すぎた。
ノムラとなら、ずっといっしょなの。
さびしくないの。
だから、ここにいてもいいよね?
わたしとノムラは、イソベほどには意志が伝わらない。でも、イソベがオシゴトしてる間にひとりぼっちで留守番してるなら、ここに居た方が楽しい。
イソベみたいに狩りごっこしてくれなくても、追いかけっこできなくても。どっちみちもうそんなに走り回れないし。
ふたりでゆっくりと、このおうちの中だけ歩き回って、いっしょに寝るの。
朝起こしてあげるのもしなくていいけど、近所の人が来てないときには、話を聞いてあげられるわ。
ありがとう、イソベ。
やっぱりあなたとは以心伝心ね。
さよならじゃないの、またね。
新しく買ったリュックタイプのケージをノムラに預けると、イソベは帰っていった。
わたしのおうちは、ここ。ノムラのおうち。
だけど、今日からわたしは『エリ』にもどった。
了
それからながいながい時間がすぎて。
それでも、イソベはそばにいなくて。
そんなの耐えられないから、もう見るのもやめた。
そうしたら、いつの間にか眠ってたみたい。
そろりそろりと目を開けたら、水がなくなってて。
ここはどこ?
イソベはどこ?
知らないよ、こんなとこ知らない。
お外に出ないって約束したのに。ここはお外だ。せめて屋根があるとこにいかなくちゃ。
ずっしり重い体でなんとか立とうとしたら、前足が痛くて、どうしても片方しかつけないの。ぶるぶるするのがせいいっぱい。
ヒョコンヒョコン、ゆっくりゆっくり進む。おうちは、たぶんあっち。
体の中のレーダーが向いてる。
周りを見てもどうせわかんない。
とりあえず、屋根。どこか狭いとこにいたい。
だれか知らないニンゲンが、上から下にドアみたいなのを引っぱってるのが見える。ギギッて音がして、地面につくより前に止まってる。
ニンゲンが見えなくなってから、わたしはそこにもぐりこんだ。
そのあとのわたしは、なんていうかもうろうとしてて、よくわからなかった。
気付いたらだれか知らないニンゲンの腕の中、それから注射されて、あ、病院かって思った。
少しは具合良くなったけど、あいかわらず足は痛いままだし、しっぽの感覚はない。ヒョコンと歩いて振り返ると引きずってる。
なめてお手入れしようとしたら、ふさふさの毛がすり切れて、硬いものが出てた。よくないにおいもしてる。
ご飯をくれるニンゲンは「おばあちゃん」というらしい。
でもまた病院、たぶん前とは別のトコに行くと「ノムラさん」って呼ばれてたから、「ノムラ」って呼ぶことにする。
ノムラと病院のニンゲンは、わたしを「ちーちゃん」って呼ぶの。
わたしは「エリ」よ。イソベが付けてくれたの。
また注射されて、つぎに気付いたときにはしっぽがなくなってた。もう自分では動かせなかったし、においも変だったから、ない方がいいんだろうけど。
やっぱり悲しかった。
ノムラは、わたしをなでながらいっぱい泣いていた。
長いしっぽは、高いところに上がるときとかバランスを取るのに大事なの。でもなくってもなんとかなる。
おしりがつるんとしてて、なでられるときに変な感じ。
痛いけど、なんとか歩くことができるようになって、ご飯も用足しもひとりで大丈夫。病院にいたときみたいに、タレ流しはイヤなの。シートが吸い取ってくれるっていっても、やっぱり隠したいし。
イソベは木のにおいがする砂のトイレを用意してくれてたけど、ノムラのおうちだとシートなの。
ここにしてねって言われたし、おふとんや畳にするのはプライドがゆるさないから、そこで用足ししてるわ。
ノムラがわたしを助けてくれたのはわかってる。だから、それくらいはガマンしなくちゃね。
ノムラのうちには、イソベのうちになかったものがいっぱいあって、いちばん不思議なのがブツダンってやつ。
ノムラは毎朝ブツダンのお水を替えて、ご飯もオソナエして、オリンを鳴らしては見えないナニカに話しかけてる。
いまは足が痛くてのぼれないけど、そこにナニがいるのか、いつか調べてみたいと思ってるわ。
ある日、安かったからってニコニコしながらノムラが買い物袋から出したものをブツダンにオソナエしてたの。
とってもいいニオイ!
ノムラがマグロのオサシミって言ってた。
ヒゲは全部オサシミに向いちゃう。
イソベもマグロって言いながらパウチからわたしのお皿によそってくれたけど、それとは全然ちがうの。もっと新鮮なニオイ。
わたしにもちょうだい? って、ノムラが座ったところによじ登ってお願いしてみる。
あごにスリスリ。耳たぶハミハミ。それから手をペロペロ。イソベならイチコロよ。
そうしたらノムラはクスクス笑って、もう少し待ってねって言うの。
待ってたらいいの?
そういえば、オソナエのあと、お菓子やくだものはノムラが食べてるもんね。
待ってたらマグロも食べていいのね?
わかった! じゃあイイコで待ってるから、ぜったいわたしにもちょうだいね?
ブツダンの前に座って、いまかいまかと見上げては、チラッとノムラを振り返っていたら、気付いたノムラに笑われちゃった。
ノムラはお茶ガラとほうきを持って、となりのへやに行っちゃった。前に見たとき面白かったけど、お茶ガラをへや中にまいてからほうきではくの。
足が痛くなかったらついて回って見ていたいけど、今日はやめとくわ。もしかしたら、わたしがいない間にブツダンにいるナニカがマグロをぜんぶ食べちゃうかもしれないし。
見張っていないとね!
ノムラは、だいたい夜明けに起きる。新聞配達のバイクの音で目が覚めるみたい。だから、時刻はイソベより遅い感じね。
でもオシゴトに行かなくていいみたいだから、ゆっくり寝ていたらいいのにね。
ノムラのうちは、階段がないの。ただ、へやとへやの境い目にでっぱりがあるから、ノムラもわたしも気を付けながら歩いてる。前ならこんなのへっちゃらだったのにな。
でも急ぐ用事もないからいいんだけどね。
ノムラは買い物に行く以外は、ほとんどおうちにいる。たまに近所の人が来て、お庭に面した窓を開けはなって、そこに腰かけておしゃべりしてるの。
お庭には小さな花壇があるくらいで、ニンゲンが二、三歩歩いたらすぐにフェンスにあたって道に出れるようになってる。フェンスは低いから、わたしたちならジャンプで飛び越せる高さよ。
もっとも、いまのわたしにはムリなんだけどね。
とはいえ、できたとしても、もうお外には行かないわ。
だって、お外には怖くて痛いことしかなかったもの。
あんなにイソベと約束したのに、わたしは守れなかった。
イソベとの約束も、イソベのおうちも。
留守番って、留守のおうちを守ることなんだって。でもドロボウとか、知らない人が勝手に入ってきたら隠れてねって言われてた。危ないからって。
なにを盗まれるより壊されるより、エリが大事だよって。
だから、イソベは怒ったりしないと思う。
だけど、あんなに水びたしになって、イソベが寝ることはできないと思う。
帰ったとき、びっくりしただろうな……わたしはいないし、おうちグシャグシャだし。
うなだれていたら、ノムラが抱っこしてなでてくれた。
わたしが眠るまで、ずうっとなでてくれた。
わたしがすっかりノムラとの暮らしに慣れて、たまにしか悲しくならなくなったころ、おうちの外からイソベの声が聞こえた気がして、耳がピンとしてお庭にくぎ付けになったの。
たしかにエリって聞こえる! 何度も何度も呼んでる!
台所でなにかを作っているノムラも、声には気付いたみたい。でもわたしは『ちーちゃん』だから、誰のことかはわかってないの。
わたしはガラスに近付いて、前足をガラスに付けて後足で立ちあがってみたけど、お外が見えるガラスは上半分だけだから、なにも見えなかった。
イソベなのね? そこにいるのね?
ぼんやりとしたシルエットと、大好きなイソベの声。ノムラより低くて、しっとりした声。
エリのこと大好きだよって、何度も何度もささやいてくれた声が、いまは少しかすれるくらいに大声で、お外からわたしを呼んでる。
イソベ! エリはここよ!
イソベにするみたいに、ガラスに体をこすりつけてると、ノムラがこっちに歩いてきた。
ノムラとイソベがお話しているのを、わたしはノムラの太ももにくっついて聞いている。
あのあと、ノムラがガラスを開けてイソベをおうちに入れてくれた。
イソベは、わたしの首に巻いているナニかのおかげでここを見つけられたんですって。あれだけ水にもみくちゃにされたけど、外れなくてよかったわ。
もうすっかり私のにおいが消えちゃっているイソベにしっかりマーキングして、それからなでさせてあげて。
それから、自然とノムラのとなりで寝そべっちゃてる。
ノムラは、聞いたばかりのわたしの名前を呼びながら、わたしをなでる手をとめない。
イソベがわたしたちのことを説明して、そのあとノムラがわたしとのことを話して、それからノムラ自身の色々なことをずーっとしゃべっていたの。
まるで、口をとめるのが怖いみたいに。
だんだんと日が落ちてきて、窓側にいるイソベの顔が、かげになって見えづらい。
でも、わかるの。
イソベもノムラも、泣きそうなかおしてるのね。
ぽつり、ぽつり。こぼれることばが、わたしの名前ばかりになる。
その声が、どちらもしんみりしていて。
大丈夫よ、ノムラ。わたしはここにいる。
それでいいよね? イソベ。
じっと見上げると、イソベがゆっくり二回まばたきした。
私も二回、まばたきを返す。
大好きよ、イソベ。
でもね、わたしはイソベのおうちでひとりきりの時間が長すぎた。
ノムラとなら、ずっといっしょなの。
さびしくないの。
だから、ここにいてもいいよね?
わたしとノムラは、イソベほどには意志が伝わらない。でも、イソベがオシゴトしてる間にひとりぼっちで留守番してるなら、ここに居た方が楽しい。
イソベみたいに狩りごっこしてくれなくても、追いかけっこできなくても。どっちみちもうそんなに走り回れないし。
ふたりでゆっくりと、このおうちの中だけ歩き回って、いっしょに寝るの。
朝起こしてあげるのもしなくていいけど、近所の人が来てないときには、話を聞いてあげられるわ。
ありがとう、イソベ。
やっぱりあなたとは以心伝心ね。
さよならじゃないの、またね。
新しく買ったリュックタイプのケージをノムラに預けると、イソベは帰っていった。
わたしのおうちは、ここ。ノムラのおうち。
だけど、今日からわたしは『エリ』にもどった。
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