Complex

亨珈

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Fifth Contact 笑顔の行方

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 ざわめきの戻って来た屋上では、頬杖を付いた満と、腕組みして空を仰いだウォルターだけが、黙りこくっていた。流石のウォルターも今回は繭にはフォローしなかったので、連れの女の子たちと一緒に何処かに行ってしまっていた。

 新菜と円華がテーブルに戻って来て席に着き、おずおずと口を開いた。

「何か凄かったねぇ……浩司くん」

「怒るとああなっちゃうワケだ……結構迫力あったね」

「オレも初めて見た」

 まだ少し呆けた様子で、満が二人を見た。

「どうでもいい女に対しては、ああなるんだよ」

 ウォルターが首を戻して三人を見渡しながら説明する。

「俺も昔の浩司は知らないけど、一緒に夜遊びしだした去年からか……飲んでる時とかヤンキーに絡まれたら容赦しないぜ。流石に手は出さなかったけどな、今回は」

 この二人が一緒にいると余計に目立ち、歩いているだけで因縁つけられたりするのだった。

「そりゃそうと、翔子ちゃんは?」

 満が周囲を確認してから尋ねた。

「浩司くん追っ掛けてったけど……どーしたのかなぁ。ただならぬ雰囲気だったし……」

 新菜は心配そうに答えた。

「今、傍にいても、煙たがられるだけじゃないのかなあ」

「探しに行く?」

「いや、ここで待ってた方が判り易いだろ。三十分くらい経っても戻って来なかったら行ってみようぜ。ひょっとしたら、二人で何処かへ行ってるかもしんないし」

 最後の一言だけ冗談ぽく言って、ウォルターは円華に向けてウインクした。

「まっさかあ。ウォルターじゃあるまいし」

 円華はプッと吹き出した。







 しばらく放心状態でへたり込んでいた翔子だったが、ふと我に返り先程の浩司の言葉を一つ一つ思い出して、段々と腹が立って来た。

(言ってることは解ったけどっ! 何かはっきり言って八つ当たりっつーヤツじゃねぇのォ!? 屋上でかなりあの女に怒鳴ってたみたいだしっ!)

 翔子は背筋を伸ばして立ち上がると、ぱたぱたと服を払ってから拳を握った。

(一方的に言いたいことだけ言って去っちまって!)

 怒りはどんどんこみ上げてきて、収まりそうもない。

(ふざけんなっつーの!)

 勢い良くドアを開けると、足早に廊下を歩いた。

(言われっぱなし、つーのが無茶腹立つっ! 言い返してやんねーと女が廃るっ。男にあんだけ言われて黙ってる私じゃねぇしっ!)

 姿を求めて廊下を歩き回り、一階まで下りたところで丁度階段を下りて来た満達と出くわした。

「翔子ちゃん」

 満の声に足を止める。

「こ、浩司くん知んない!?」

 満のジャケットを両手で掴んで早口で問うが、首を横に振られてしまう。

「あれっきりだけど、もしかしたら家に帰っちまったかも」

「じゃ、家の方に行ってみるっ」

 それだけ言って、翔子は駆け出してしまった。
 その背中を見つめながら、新菜は吐息する。

(あたしらに一声掛けていかないって事は、相当何かあって浩司くん探してんだろうなぁ。あの後出会えずにずっと探してるってんじゃないだろうし。目がマジ入ってんし……)

 円華も同じように考えていたのか、目が合うと苦笑しながら溜め息をついた。
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