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Fifth Contact 笑顔の行方
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「あのっ」
翔子が声を掛けると足を止めて振り返り、驚いた顔で見つめられる。長い廊下の死角というと階段くらいしかなく、唯乃の腕を掴んで翔子は昇降口に向かいながら周囲を確認する。特に気に留められてはいないようだ。
キョトンとしている唯乃の腕を離すと、翔子はぎゅっと鞄を握り締めた。
「初対面の人にぃ、突然んな事訊いていいのか判んないんだけどぉ……」
(ホントは初対面じゃないんだけど)
目いっぱい下手に優しく話し掛ける。
「浩司くんと、どーゆー関係?」
(普通なら脅し口調で胸倉掴んで言ってるトコだけど、この人浩司くんとも仲いーしぃ、あのぬるい女みてーなんじゃなさそうだし。
で、多分、浩司くんはこの人の事……私とは正反対の、大人しそうな女……)
「ってゆーかぁー、えーと……」
真顔で問いながら、他にどう言えばいいのか言葉を選び、前髪を掻き上げる。勢いで出て来てしまったものの、普通に喋るのはなかなか難しい。
(これがあの中坊みてーな女なら、無理矢理でも吐かしたるんだけど、そーゆーわけにもいかんし……)
「さっき私が浩司くんと腕組んでんの見て、何か思わんかった? 例えば、妬いたとか、腹立ったとかさぁ」
不思議そうに翔子を見つめていた唯乃だったが、
「妬くとか……? 腹立つ……?」
とようやく声を発して首を傾げた。
「そうね……軸谷くんが、女の子三人も連れてて、しかも腕組んでるっていうのはびっくりしたなぁ。初めて見たし」
「あ? びっくりしたって、そんだけ?」
今度は翔子が首を傾げる。
「そんだけ、ってどうして?」
唯乃は首を戻すと逆に聞き返す。ぐ、と言葉に詰まっている様子を見て、ふ、と口元を緩めた。
「っと、それから……少し妬けたかも。私、軸谷くんと一番仲良い女子って私かなーっとか思ってたから。
何かでも違うみたい。いつの間にか妙な自惚れあったのかな……ごめんね? 」
「けど、前に浩司くんと【RyuRyu】で――」
その後付け回したとまでは言えず、翔子はその後の言葉を飲み込む。
「浩司くんとはどーゆー関係? 浩司くんのことどう思ってんの? 浩司くんと一番仲の良い女子……って、でごめんねって、何で謝るの?」
翔子は早口に畳み掛けるように問う。此処まで言われてようやく唯乃もピンと来たのだろう、
「あ、もしかして、軸谷くんのこと、好き……?」
まじまじと翔子の目を覗き込んだ。あれだけ浩司にくっついていたのに、恋愛感情とは結び付けていなかったらしい。
翔子は赤面して、少し間を置いてからこくんと頷く。
「けど、私は浩司くんにゃ、あんま好かれてないみてーだけどぉ」
ぽりぽりと後頭部を掻きながら苦笑。
「って、私の事じゃなくてっ。浩司くんのことどう思ってんの? この間、仲良さそうにデートしてたしぃ」
(私はデートって思いたくねぇけどっ)
「デート……」
唯乃は想像もしていなかった言葉に面食らっている。
「って、もしかしてこないだの喜多町での、あれ、かな?」
と片手を頬に当てた。少し赤い。
「そう、それ」
コクンと翔子が頷くと「やだぁー、見てたのお!? 」とますます赤面する。
「あ、あれねっ、本城くんの誕生日プレゼント選んでもらってたのっ。なんたって、軸谷くんの方が本城くんと付き合い長いし、男の子同士趣味とか良く知ってるかもって思って」
そわそわした様子で説明する唯乃は、どうやら慌てているらしい。
翔子が声を掛けると足を止めて振り返り、驚いた顔で見つめられる。長い廊下の死角というと階段くらいしかなく、唯乃の腕を掴んで翔子は昇降口に向かいながら周囲を確認する。特に気に留められてはいないようだ。
キョトンとしている唯乃の腕を離すと、翔子はぎゅっと鞄を握り締めた。
「初対面の人にぃ、突然んな事訊いていいのか判んないんだけどぉ……」
(ホントは初対面じゃないんだけど)
目いっぱい下手に優しく話し掛ける。
「浩司くんと、どーゆー関係?」
(普通なら脅し口調で胸倉掴んで言ってるトコだけど、この人浩司くんとも仲いーしぃ、あのぬるい女みてーなんじゃなさそうだし。
で、多分、浩司くんはこの人の事……私とは正反対の、大人しそうな女……)
「ってゆーかぁー、えーと……」
真顔で問いながら、他にどう言えばいいのか言葉を選び、前髪を掻き上げる。勢いで出て来てしまったものの、普通に喋るのはなかなか難しい。
(これがあの中坊みてーな女なら、無理矢理でも吐かしたるんだけど、そーゆーわけにもいかんし……)
「さっき私が浩司くんと腕組んでんの見て、何か思わんかった? 例えば、妬いたとか、腹立ったとかさぁ」
不思議そうに翔子を見つめていた唯乃だったが、
「妬くとか……? 腹立つ……?」
とようやく声を発して首を傾げた。
「そうね……軸谷くんが、女の子三人も連れてて、しかも腕組んでるっていうのはびっくりしたなぁ。初めて見たし」
「あ? びっくりしたって、そんだけ?」
今度は翔子が首を傾げる。
「そんだけ、ってどうして?」
唯乃は首を戻すと逆に聞き返す。ぐ、と言葉に詰まっている様子を見て、ふ、と口元を緩めた。
「っと、それから……少し妬けたかも。私、軸谷くんと一番仲良い女子って私かなーっとか思ってたから。
何かでも違うみたい。いつの間にか妙な自惚れあったのかな……ごめんね? 」
「けど、前に浩司くんと【RyuRyu】で――」
その後付け回したとまでは言えず、翔子はその後の言葉を飲み込む。
「浩司くんとはどーゆー関係? 浩司くんのことどう思ってんの? 浩司くんと一番仲の良い女子……って、でごめんねって、何で謝るの?」
翔子は早口に畳み掛けるように問う。此処まで言われてようやく唯乃もピンと来たのだろう、
「あ、もしかして、軸谷くんのこと、好き……?」
まじまじと翔子の目を覗き込んだ。あれだけ浩司にくっついていたのに、恋愛感情とは結び付けていなかったらしい。
翔子は赤面して、少し間を置いてからこくんと頷く。
「けど、私は浩司くんにゃ、あんま好かれてないみてーだけどぉ」
ぽりぽりと後頭部を掻きながら苦笑。
「って、私の事じゃなくてっ。浩司くんのことどう思ってんの? この間、仲良さそうにデートしてたしぃ」
(私はデートって思いたくねぇけどっ)
「デート……」
唯乃は想像もしていなかった言葉に面食らっている。
「って、もしかしてこないだの喜多町での、あれ、かな?」
と片手を頬に当てた。少し赤い。
「そう、それ」
コクンと翔子が頷くと「やだぁー、見てたのお!? 」とますます赤面する。
「あ、あれねっ、本城くんの誕生日プレゼント選んでもらってたのっ。なんたって、軸谷くんの方が本城くんと付き合い長いし、男の子同士趣味とか良く知ってるかもって思って」
そわそわした様子で説明する唯乃は、どうやら慌てているらしい。
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