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Fourth Contact きみが好き
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自宅に帰って着替えだけ済ませた円華は、気が付いたらウォルターの家のチャイムを押していた。殆ど頭の中は真っ白なまま、原付バイクを走らせて襟川町にやって来てしまっていた。
中でチャイムが鳴っているのは聞こえるのだが、一向にドアが開く気配はない。
(まだ学園かなぁ。そういや、次は学園祭の後期があるつってたし、その準備でもしてんのかなあ。
それとも明け方まで飲んでたし、まだ寝てるとか~?)
鞄から携帯電話を取り出し、電話を掛けてみる。家の中からは微かに電話の呼び出し音が聞こえてくるものの、十回以上鳴らし続けても取る様子もなければ、他に物音も聞こえてこない。どうやら本当に無人のようだと判断し、フリッパーを閉じた。
(すぐ帰って来るかなぁ。少し待ってみよっか)
道路の端に停めておいた原付を門の中に入れると、玄関前の階段に腰掛ける。
(今、五時過ぎか……遅くても七時くらいにゃ帰って来るでしょ)
一旦帰って出直そうかとも考えたが、何故かウォルターに会いたくて仕方ないのだ。少しでも早く顔が見たくて、ここを離れた途端に帰って来てはと後ろ髪を引かれる位ならば、ずっとここに居る方がいい。
(何でウォルターってば、ケータイかベル持ってねーのよぉっ)
円華は自分の携帯電話を見つめ、バッテリーの残量が少ないのに気付き、電源を切っておくことにした。
(今は誰とも話す気ないし、丁度いいか……)
鞄の中に戻して、代わりに煙草とライターを取り出した。人さまの家の玄関前で、ちょっとマズイかなと危惧しつつも、煙草を咥える。
なるべくゆっくり最後まで吸っているつもりなのに、吸殻はどんどん増えて行き、周囲は段々暗くなって来た。
(七時かぁー……)
円華は腕時計を見て、溜め息をついた。
(何やってんだよ、一体)
待っているこの二時間に、家の中からは何度も電話の呼び出し音が聞こえてきて、その度に「せめて留守電ぐれー付けろよ」とぼやいていた。
今度はふぁーあ、と欠伸が漏れた。睡眠時間が少なかったせいだろう、段々と瞼が重くなり睡魔に負けそうになる。何度か自分の頬を叩いて抗ってはみたものの、結局膝を抱えるようにして、いつの間にか円華は意識を失ってしまっていた。
辺りがすっかり暗くなった頃、ウォルターはようやく帰路に着いていた。
(あーあ、もう七時半かぁ~。今日は何処で寝ようかなあ……それとも、予習だけして家で眠ろっかな。久し振りに)
うーん、と鞄を持ったまま伸びをする。まだ日中は暑いものの、衣替えが済んだので登下校だけは上着も着ている。
(晩御飯何にしよっかなぁ……。あ、明日買い物行かなきゃ)
などと所帯じみた事を考えながら、ウォルターは自宅の門扉に手を掛けた。その時、脇に停めてある原付に気が付いた。
「お」
(これ確かマドカの……)
中に入ると、階段にしゃがみこんでいる円華が目に入る。ウォルターが近付いても一向に気付く気配は無く、スースーと寝息が聞こえて来た。
その足元に、山になった吸殻を見付けて、優しい笑みが浮かぶ。
(ずっと待ってたのか……)
ウォルターは鞄を持ち直すと、円華の正面に腰を落とした。
「マドカ」
取り敢えず、名前を呼んでみる。
んんー……と唸って円華が身じろぎしたので、もう一度呼び掛けた。
「……ん……ウォルター?」
ゆっくりと、円華は顔を上げた。
「お待たせ」
しゃがみこんだ状態で、ウォルターは円華の顔を見つめた。
始め、円華はまだ夢見心地で自分が何処に居るのかも判っていなかったが、じきに頭がハッキリして来たのと同時に、思い出したくない事まで思い出してしまった。
「ナンだよ……おせぇじゃんかっ」
別に約束をしていたわけではないので文句を言う筋合いでもないのだが、ついつい憎まれ口を叩きそうになる。
ウォルターは優しく「ごめんな」と言って、左手でそうっと円華の髪に触れた。その途端に、堰を切ったようにポロポロと涙が零れ落ちてしまった。
「ウォルタ……私っ」
(何で……んなに優しいんだよぉ……。強がりが効かないんだもん、ウォルターってばっ)
鞄で顔を隠そうとして、その手をやんわりと握られた。
「取り敢えず、中入ろ、な?」
円華がこくんと頷くと、ウォルターは立ち上がって鍵を開けた。
中でチャイムが鳴っているのは聞こえるのだが、一向にドアが開く気配はない。
(まだ学園かなぁ。そういや、次は学園祭の後期があるつってたし、その準備でもしてんのかなあ。
それとも明け方まで飲んでたし、まだ寝てるとか~?)
鞄から携帯電話を取り出し、電話を掛けてみる。家の中からは微かに電話の呼び出し音が聞こえてくるものの、十回以上鳴らし続けても取る様子もなければ、他に物音も聞こえてこない。どうやら本当に無人のようだと判断し、フリッパーを閉じた。
(すぐ帰って来るかなぁ。少し待ってみよっか)
道路の端に停めておいた原付を門の中に入れると、玄関前の階段に腰掛ける。
(今、五時過ぎか……遅くても七時くらいにゃ帰って来るでしょ)
一旦帰って出直そうかとも考えたが、何故かウォルターに会いたくて仕方ないのだ。少しでも早く顔が見たくて、ここを離れた途端に帰って来てはと後ろ髪を引かれる位ならば、ずっとここに居る方がいい。
(何でウォルターってば、ケータイかベル持ってねーのよぉっ)
円華は自分の携帯電話を見つめ、バッテリーの残量が少ないのに気付き、電源を切っておくことにした。
(今は誰とも話す気ないし、丁度いいか……)
鞄の中に戻して、代わりに煙草とライターを取り出した。人さまの家の玄関前で、ちょっとマズイかなと危惧しつつも、煙草を咥える。
なるべくゆっくり最後まで吸っているつもりなのに、吸殻はどんどん増えて行き、周囲は段々暗くなって来た。
(七時かぁー……)
円華は腕時計を見て、溜め息をついた。
(何やってんだよ、一体)
待っているこの二時間に、家の中からは何度も電話の呼び出し音が聞こえてきて、その度に「せめて留守電ぐれー付けろよ」とぼやいていた。
今度はふぁーあ、と欠伸が漏れた。睡眠時間が少なかったせいだろう、段々と瞼が重くなり睡魔に負けそうになる。何度か自分の頬を叩いて抗ってはみたものの、結局膝を抱えるようにして、いつの間にか円華は意識を失ってしまっていた。
辺りがすっかり暗くなった頃、ウォルターはようやく帰路に着いていた。
(あーあ、もう七時半かぁ~。今日は何処で寝ようかなあ……それとも、予習だけして家で眠ろっかな。久し振りに)
うーん、と鞄を持ったまま伸びをする。まだ日中は暑いものの、衣替えが済んだので登下校だけは上着も着ている。
(晩御飯何にしよっかなぁ……。あ、明日買い物行かなきゃ)
などと所帯じみた事を考えながら、ウォルターは自宅の門扉に手を掛けた。その時、脇に停めてある原付に気が付いた。
「お」
(これ確かマドカの……)
中に入ると、階段にしゃがみこんでいる円華が目に入る。ウォルターが近付いても一向に気付く気配は無く、スースーと寝息が聞こえて来た。
その足元に、山になった吸殻を見付けて、優しい笑みが浮かぶ。
(ずっと待ってたのか……)
ウォルターは鞄を持ち直すと、円華の正面に腰を落とした。
「マドカ」
取り敢えず、名前を呼んでみる。
んんー……と唸って円華が身じろぎしたので、もう一度呼び掛けた。
「……ん……ウォルター?」
ゆっくりと、円華は顔を上げた。
「お待たせ」
しゃがみこんだ状態で、ウォルターは円華の顔を見つめた。
始め、円華はまだ夢見心地で自分が何処に居るのかも判っていなかったが、じきに頭がハッキリして来たのと同時に、思い出したくない事まで思い出してしまった。
「ナンだよ……おせぇじゃんかっ」
別に約束をしていたわけではないので文句を言う筋合いでもないのだが、ついつい憎まれ口を叩きそうになる。
ウォルターは優しく「ごめんな」と言って、左手でそうっと円華の髪に触れた。その途端に、堰を切ったようにポロポロと涙が零れ落ちてしまった。
「ウォルタ……私っ」
(何で……んなに優しいんだよぉ……。強がりが効かないんだもん、ウォルターってばっ)
鞄で顔を隠そうとして、その手をやんわりと握られた。
「取り敢えず、中入ろ、な?」
円華がこくんと頷くと、ウォルターは立ち上がって鍵を開けた。
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