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Fourth Contact きみが好き
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「ちょっ……翔子!!」
新菜がそちらに向いた時には既に遅く、いつものごとく浩司に抱きついたところだった。
「あちゃ―――――……」
新菜は右手を額に当て、顔を顰めた。
(やっぱ、な……やるんじゃねぇかと思ったら、やっぱりやったか……)
「お、ま、え、はぁ~~~~~っ」
ようやく済んでホッとしながらハチマキを取ろうとしていた浩司は、無防備になっていた胸にいきなり抱きつかれ、上げていた両手を下ろした。
「よくまあ恥ずかしげも無く……っ!!」
白手をはめた拳がふるふると震えている。
周囲を歩いていた生徒たちは、ピューイッと口笛を吹いて囃し立てた。
翔子はその場になってやっと新菜に釘を刺されていたことに気付き、やばっという表情で抱きついたまま新菜たちの方へ顔を向けた。
新菜はクルリと背を向けて他人の振りをし、円華はシッシと手で払い、唯と夏美はニヤニヤしながら離れて見ている。
(ま、ここまでやるとしゃーないか)
開き直った翔子は、浩司を見上げてちらりと舌を出した。
「来ちゃった」
えへへ、と微笑んでみる。
「来ちゃったって――」
浩司は暫く怒りに震えていたが、周囲の生徒たちが余りにも煩かったので、
「うっせーぞ!! 外野は散れっ」
と怒鳴り声を上げ、「見せもんじゃねーんだよっ」と男たちに向かって蹴る真似をした。
だが翔子がコバンザメのように抱きついたままなので、イマイチ迫力に欠けている。
「おーこわこわ」「軸谷ってば、他校に女いたんじゃんかー」
と口々に言いながらも、皆それぞれ行くべきところへと散って行った。浩司は険しい表情でそれを見送った後、はぁーっと大きく溜め息をついた。
「もー終わっちゃったのぉ? ざぁーんねん」
彼女扱いされたことが嬉しかったらしく、ちぇっと寂しそうな顔をしてから腕を解き、一歩離れて浩司の全身をためつすがめつ眺める翔子。
「浩司くん……かっこい~」
ぽーっとして呟き、またしてもカメラを忘れたことを激しく後悔していた。
「へえへえ、分かったから、もう手ぇ離せよな」
かっこいいと褒められて悪い気はしないらしく、浩司も怒るのを諦めて腰に置かれていた手を剥がした。
「でぇ、ウォルターと満くんは? 円華さんらも来てんだー」
翔子はそう言いながら顔を新菜たちの方へ向けた。
円華はキョロキョロと周囲を見回し、新菜は相変わらず背を向けたままで、唯と夏美は笑顔でこちらに手を振っている。
「ウォルターはどっかで寝てんじゃねーかな。榎本なら今あっこだけど」
そう言って浩司は親指で本部席の方を指差した。
本部席前では、たった今演技を終えたBブロックが「あしたっ!!」と礼をして退場するところだった。
水色のハチマキをした男子生徒らと、サテンの衣装の女子たちが退場門へと向かって来る。その中に満の姿もあった。
「あ!! 満くん、おひさ~」
翔子は満を見つけると手を振った。
その声が聞こえた新菜は一瞬振り向いたが、すぐにまた背を向けてしまう。円華はそんな新菜を肘で小突いた。
(接触せずに帰ろぉ思ってたってーのに……翔子のヤローはぁ。結局こーなっちまうんだもんなぁ……)
新菜は大きく息を吐いた。
「おっす、新菜ちゃん!! 今日も来てくれたんだな。明日だけかと思ったのに」
満の方から嬉しそうに駆け寄って来た。擦れ違い様に翔子の肩をポンッと叩き「よっ」と挨拶はしたものの、やはり新菜の方が気になるらしかった。
「えー!! もしかして先輩の彼女ぉ!?」「梁塁だろ? あれ」「派手だけどキレーな人~」etc.etc。同じブロックの生徒らが、好奇心に満ちた目で満を追う。
新菜は仕方なく振り向くと、
「翔子に無理矢理連れて来られたんだよ」
と無愛想に言った。
「満くん、学ランも似合うじゃん」
新菜の隣で、円華が満の肩を叩いた。
「やっぱ男は学ランよねぇ」
そのまた隣では夏美が呟き、唯も相槌を打つ。
「まあ二年前まで着てたしね~。そりゃそうと、新菜ちゃんどったの? 気分わりーの?」
満はそぉっと新菜の前に移動し、腰を屈めて顔を覗き込んだ。
「別に」
新菜はプイッと顔を背ける。
(制服着て目立ってんから、ヤだったのに……。つっても、あたし以外のもんは既に仲良くしてるから一緒かぁ?)
新菜がわざと素っ気無くしているというのに、そんなのは意味がないような気がしてくる。
新菜がそちらに向いた時には既に遅く、いつものごとく浩司に抱きついたところだった。
「あちゃ―――――……」
新菜は右手を額に当て、顔を顰めた。
(やっぱ、な……やるんじゃねぇかと思ったら、やっぱりやったか……)
「お、ま、え、はぁ~~~~~っ」
ようやく済んでホッとしながらハチマキを取ろうとしていた浩司は、無防備になっていた胸にいきなり抱きつかれ、上げていた両手を下ろした。
「よくまあ恥ずかしげも無く……っ!!」
白手をはめた拳がふるふると震えている。
周囲を歩いていた生徒たちは、ピューイッと口笛を吹いて囃し立てた。
翔子はその場になってやっと新菜に釘を刺されていたことに気付き、やばっという表情で抱きついたまま新菜たちの方へ顔を向けた。
新菜はクルリと背を向けて他人の振りをし、円華はシッシと手で払い、唯と夏美はニヤニヤしながら離れて見ている。
(ま、ここまでやるとしゃーないか)
開き直った翔子は、浩司を見上げてちらりと舌を出した。
「来ちゃった」
えへへ、と微笑んでみる。
「来ちゃったって――」
浩司は暫く怒りに震えていたが、周囲の生徒たちが余りにも煩かったので、
「うっせーぞ!! 外野は散れっ」
と怒鳴り声を上げ、「見せもんじゃねーんだよっ」と男たちに向かって蹴る真似をした。
だが翔子がコバンザメのように抱きついたままなので、イマイチ迫力に欠けている。
「おーこわこわ」「軸谷ってば、他校に女いたんじゃんかー」
と口々に言いながらも、皆それぞれ行くべきところへと散って行った。浩司は険しい表情でそれを見送った後、はぁーっと大きく溜め息をついた。
「もー終わっちゃったのぉ? ざぁーんねん」
彼女扱いされたことが嬉しかったらしく、ちぇっと寂しそうな顔をしてから腕を解き、一歩離れて浩司の全身をためつすがめつ眺める翔子。
「浩司くん……かっこい~」
ぽーっとして呟き、またしてもカメラを忘れたことを激しく後悔していた。
「へえへえ、分かったから、もう手ぇ離せよな」
かっこいいと褒められて悪い気はしないらしく、浩司も怒るのを諦めて腰に置かれていた手を剥がした。
「でぇ、ウォルターと満くんは? 円華さんらも来てんだー」
翔子はそう言いながら顔を新菜たちの方へ向けた。
円華はキョロキョロと周囲を見回し、新菜は相変わらず背を向けたままで、唯と夏美は笑顔でこちらに手を振っている。
「ウォルターはどっかで寝てんじゃねーかな。榎本なら今あっこだけど」
そう言って浩司は親指で本部席の方を指差した。
本部席前では、たった今演技を終えたBブロックが「あしたっ!!」と礼をして退場するところだった。
水色のハチマキをした男子生徒らと、サテンの衣装の女子たちが退場門へと向かって来る。その中に満の姿もあった。
「あ!! 満くん、おひさ~」
翔子は満を見つけると手を振った。
その声が聞こえた新菜は一瞬振り向いたが、すぐにまた背を向けてしまう。円華はそんな新菜を肘で小突いた。
(接触せずに帰ろぉ思ってたってーのに……翔子のヤローはぁ。結局こーなっちまうんだもんなぁ……)
新菜は大きく息を吐いた。
「おっす、新菜ちゃん!! 今日も来てくれたんだな。明日だけかと思ったのに」
満の方から嬉しそうに駆け寄って来た。擦れ違い様に翔子の肩をポンッと叩き「よっ」と挨拶はしたものの、やはり新菜の方が気になるらしかった。
「えー!! もしかして先輩の彼女ぉ!?」「梁塁だろ? あれ」「派手だけどキレーな人~」etc.etc。同じブロックの生徒らが、好奇心に満ちた目で満を追う。
新菜は仕方なく振り向くと、
「翔子に無理矢理連れて来られたんだよ」
と無愛想に言った。
「満くん、学ランも似合うじゃん」
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「やっぱ男は学ランよねぇ」
そのまた隣では夏美が呟き、唯も相槌を打つ。
「まあ二年前まで着てたしね~。そりゃそうと、新菜ちゃんどったの? 気分わりーの?」
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「別に」
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