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Fourth Contact きみが好き
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「兄貴っ」
一応コンコンとノックしてから、美里が満の部屋に入って来た。
「学園祭行っちゃるから、模擬店のタダ券もらって来て」
「はぁー? お前オレよか金持ちなんだから、自分で金出せよ」
勉強机に座って明日の準備をしていた満は、背凭れに腕を乗せて振り返った。
「馬鹿者。タダでもらえるもんは、もらわないと損でしょお」
美里はぱふんとベッドに腰掛けると、偉そうに言ってのけた。とても人に物を頼む態度とは思えない。
「七月に買い物に付き合ってやった恩を忘れたかっ」
「へぇへぇ……分かったよ。んじゃ、ウォルターに頼んどく。シェフするって言ってたから」
満ははぁっと溜め息をついた。
「やったぁ!! ウォルターの手料理って美味しいんでしょ? 期待しとこうっと。兄貴んトコは?」
美里は揉み手をして上目遣いに兄を見た。
「オレは劇に出るから、チケットはありませーん。入場は無料です」
「何やんの?」
「【アリス】……を基にしたコメディーなミュージカル?」
「なんだその疑問口調はっ。トランプの兵士でもやんの?」
「当日、観に来りゃー判るでしょ」
「ふーん……言えないような役なワケね」
美里はニヤリと笑った。大方、満が中等部時代のことや、高等部に上がってからの武勇伝でも思い出しているのだろう。
「はいはい、オレはもう寝るんだから、自分の部屋に戻るべし」
それには知らん振りで満は立ち上がると、シッシッと手を振った。
「えーっ、もう!?」
ぶーぶー言いながらも立ち上がる美里。まだ二十二時過ぎである。
「だって明日っから、援団の朝錬あるもん」
応援団の練習は、各種部活動より優先されるのだ。だからこの時期に大事な試合がある部に所属しているものは、応援団には入らないのだが、野球部は秋の大会に出るにしてもそこまで切羽詰っていないので許可されているのである。
つまりそんなに強いチームではないという証拠でもあるわけだったが。
満は妹の肩を押して自分も一緒に部屋を出ると、廊下に置いてある電話の子機で、新菜にベルを打った。
(そういや、明日打つとしたら六時頃かぁ……。
ちと早過ぎるよなぁ。目ぇ覚まさせちゃ可哀相だし……。
夜だけにしよっか、当分の間)
心の中で決めると、満は自室に引き上げたのだった。
( 複雑ぅ~~~…… )
翔子はベッドに仰向けに寝転がり、両手を後頭部に当てて天井を凝視していた。
(青葉さんは私の憧れで~青葉さん追っ掛けて梁塁に入って。今じゃー新菜さんと円華さんのお陰で、身近で話も出来るようになって、結構幸せに浸ってたりして……。青葉さんってマジカッコイイしぃ……。
けどこの間、浩司くんとぉ……)
始業式の日のことを思い出し、溜め息が漏れた。
(浩司くんと青葉さん、仲良くして欲しいなんて思わないけど、ふつーに話すくらいは……って。
けど青葉さんは、満くんに喧嘩売ってたのよねぇ、ライバルだし。なのに当の満くんはどっちかってーとケロリとしてて、浩司くんの方が敵対心持っちゃって……。
浩司くんが梁塁来てくれたんは凄く嬉しかったけど、来たら青葉さんと会うのは目に見えてっし、やっぱ次からは私らが星野原に行くべきだなぁ。
あっ!! そう言えばっ)
何かを思い出し、ガバッと上半身を起こす。
(浩司くんと【RyuRyu】で一緒にいた女!! もしかして星野原のモンかも知んねぇし、もし見つけたら、浩司くんのいねートコでどーゆー関係か訊かんと気になってしゃーねぇし。
ふん、どぉせ浩司くんにゃ訊けねーよっ)
ぶつぶつ心の中で独り言を言っていると、不穏な空気を感じたのかドアの向こうから声が掛かった。
「お姉ちゃん!! 御飯っ」
一応コンコンとノックしてから、美里が満の部屋に入って来た。
「学園祭行っちゃるから、模擬店のタダ券もらって来て」
「はぁー? お前オレよか金持ちなんだから、自分で金出せよ」
勉強机に座って明日の準備をしていた満は、背凭れに腕を乗せて振り返った。
「馬鹿者。タダでもらえるもんは、もらわないと損でしょお」
美里はぱふんとベッドに腰掛けると、偉そうに言ってのけた。とても人に物を頼む態度とは思えない。
「七月に買い物に付き合ってやった恩を忘れたかっ」
「へぇへぇ……分かったよ。んじゃ、ウォルターに頼んどく。シェフするって言ってたから」
満ははぁっと溜め息をついた。
「やったぁ!! ウォルターの手料理って美味しいんでしょ? 期待しとこうっと。兄貴んトコは?」
美里は揉み手をして上目遣いに兄を見た。
「オレは劇に出るから、チケットはありませーん。入場は無料です」
「何やんの?」
「【アリス】……を基にしたコメディーなミュージカル?」
「なんだその疑問口調はっ。トランプの兵士でもやんの?」
「当日、観に来りゃー判るでしょ」
「ふーん……言えないような役なワケね」
美里はニヤリと笑った。大方、満が中等部時代のことや、高等部に上がってからの武勇伝でも思い出しているのだろう。
「はいはい、オレはもう寝るんだから、自分の部屋に戻るべし」
それには知らん振りで満は立ち上がると、シッシッと手を振った。
「えーっ、もう!?」
ぶーぶー言いながらも立ち上がる美里。まだ二十二時過ぎである。
「だって明日っから、援団の朝錬あるもん」
応援団の練習は、各種部活動より優先されるのだ。だからこの時期に大事な試合がある部に所属しているものは、応援団には入らないのだが、野球部は秋の大会に出るにしてもそこまで切羽詰っていないので許可されているのである。
つまりそんなに強いチームではないという証拠でもあるわけだったが。
満は妹の肩を押して自分も一緒に部屋を出ると、廊下に置いてある電話の子機で、新菜にベルを打った。
(そういや、明日打つとしたら六時頃かぁ……。
ちと早過ぎるよなぁ。目ぇ覚まさせちゃ可哀相だし……。
夜だけにしよっか、当分の間)
心の中で決めると、満は自室に引き上げたのだった。
( 複雑ぅ~~~…… )
翔子はベッドに仰向けに寝転がり、両手を後頭部に当てて天井を凝視していた。
(青葉さんは私の憧れで~青葉さん追っ掛けて梁塁に入って。今じゃー新菜さんと円華さんのお陰で、身近で話も出来るようになって、結構幸せに浸ってたりして……。青葉さんってマジカッコイイしぃ……。
けどこの間、浩司くんとぉ……)
始業式の日のことを思い出し、溜め息が漏れた。
(浩司くんと青葉さん、仲良くして欲しいなんて思わないけど、ふつーに話すくらいは……って。
けど青葉さんは、満くんに喧嘩売ってたのよねぇ、ライバルだし。なのに当の満くんはどっちかってーとケロリとしてて、浩司くんの方が敵対心持っちゃって……。
浩司くんが梁塁来てくれたんは凄く嬉しかったけど、来たら青葉さんと会うのは目に見えてっし、やっぱ次からは私らが星野原に行くべきだなぁ。
あっ!! そう言えばっ)
何かを思い出し、ガバッと上半身を起こす。
(浩司くんと【RyuRyu】で一緒にいた女!! もしかして星野原のモンかも知んねぇし、もし見つけたら、浩司くんのいねートコでどーゆー関係か訊かんと気になってしゃーねぇし。
ふん、どぉせ浩司くんにゃ訊けねーよっ)
ぶつぶつ心の中で独り言を言っていると、不穏な空気を感じたのかドアの向こうから声が掛かった。
「お姉ちゃん!! 御飯っ」
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