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Third Contact すれ違いの純情
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家に帰った満は、甚平を床に脱ぎ散らかしたまま、ベッドに転がって枕を抱き締めてうだうだしていた。
(結局…新菜ちゃん返事してくんなかったし。
……オレ、振られちゃってんのかなあ)
はあーと大きな溜め息。
(震えてた手、ちょっと冷たかった……困ってたのかなあ。そうだよな、あんな訊き方したら「うん」としか答えられないよな。
あーあ…「冗談でしょ?」とかって笑い飛ばしてくれた方がまだマシだった。
あの後オレ、ぎこちなくなかったかな?
新菜ちゃんにこれ以上嫌な思いさせたくねえし……。
けどショックであんまし憶えてねーわ……)
実は、皆と合流してからの満、浩司にまで怪訝な顔をされるほど傍から見てハイテンションだった。落ち込んでいる自分を誤魔化したかったのか、それとも落ち込みすぎてその反対側まで突き抜けてしまったのか、自覚もない。
(次に会った時は、今まで通りにしなくちゃな……)
そしてまた、はふ、と溜め息が漏れた。
電車の中で巾着が小刻みに振動し、新菜は手を突っ込んでポケベルを引っ張り出した。
『オヤスミ ミチル』と入っている。
「おやま。相変わらずマメだねぇ」
横から画面を覗き見た円華は、にやにやと笑っている。
翔子はお目当てのバルーンを手に持ってひたすらにこにこと嬉しそうにしている。久し振りに浩司に会えたことが何よりも嬉しいのだろう。
「そりゃそうと、逸れてる間満くんと何話してたんだよ。
あの後、やっこさん妙にハイだったような気がすんだけど」
円華に問われ「ちと、ね」と新菜は曖昧に首を傾げ、視線を窓の外の明かりに移しながらポケベルを巾着にしまった。
「ちとっつー顔じゃねーけどなぁ。ま、私にゃ関係ねーコトだけど。
で、やっぱそのピアス、満くんからだったってわけか……」
ちらりと新菜の耳朶を見る。
「買うのもだけど、一人で『パンドラ』まで持って来たってのも勇気いったろうなあ。で、いつあの店教えたの?」
問われて、新菜はキョトンとして見つめ返した。
「あ? 円華だと思ってた」
円華は首を横に振って否定すると、前髪をかき上げる。
「翔子でもなさそうだけど? あいつの頭ん中は浩司くん中心で回ってんから、んなことにまで気が回らねーし」
「え? 私がなんですかぁ?」
自分の名が出て翔子が振り向いたが、「何でもない」と新菜が手を振るとあっさりと街明かりに顔を戻した。
「じゃあ満くん、わざわざ調べたんだ。健気~! さぞ大変だっただろうに」
(てっきり円華か翔子が教えたもんだと思ってた。まさかプレゼントくれるなんて思ってもみなかったし)
独り言のように話し続ける円華の隣で、新菜は流れる景色を眺めていた。
「満くん、相当新菜に惚れてんだねぇ。きっと……」
ふんふんと勝手に納得し、「で?」と円華は新菜の肩にぽんと手を置く。
「で? って?」
「満くんの誕生日に何あげんの?」
興味津々で顔を覗き込んでこられ、一瞬間を置いて新菜は「はははー……」と乾いた笑いを漏らした。
「そいや、誕生日知らないんだっけぇ」
苦笑する新菜に、円華は大きな溜め息をついた。
(結局…新菜ちゃん返事してくんなかったし。
……オレ、振られちゃってんのかなあ)
はあーと大きな溜め息。
(震えてた手、ちょっと冷たかった……困ってたのかなあ。そうだよな、あんな訊き方したら「うん」としか答えられないよな。
あーあ…「冗談でしょ?」とかって笑い飛ばしてくれた方がまだマシだった。
あの後オレ、ぎこちなくなかったかな?
新菜ちゃんにこれ以上嫌な思いさせたくねえし……。
けどショックであんまし憶えてねーわ……)
実は、皆と合流してからの満、浩司にまで怪訝な顔をされるほど傍から見てハイテンションだった。落ち込んでいる自分を誤魔化したかったのか、それとも落ち込みすぎてその反対側まで突き抜けてしまったのか、自覚もない。
(次に会った時は、今まで通りにしなくちゃな……)
そしてまた、はふ、と溜め息が漏れた。
電車の中で巾着が小刻みに振動し、新菜は手を突っ込んでポケベルを引っ張り出した。
『オヤスミ ミチル』と入っている。
「おやま。相変わらずマメだねぇ」
横から画面を覗き見た円華は、にやにやと笑っている。
翔子はお目当てのバルーンを手に持ってひたすらにこにこと嬉しそうにしている。久し振りに浩司に会えたことが何よりも嬉しいのだろう。
「そりゃそうと、逸れてる間満くんと何話してたんだよ。
あの後、やっこさん妙にハイだったような気がすんだけど」
円華に問われ「ちと、ね」と新菜は曖昧に首を傾げ、視線を窓の外の明かりに移しながらポケベルを巾着にしまった。
「ちとっつー顔じゃねーけどなぁ。ま、私にゃ関係ねーコトだけど。
で、やっぱそのピアス、満くんからだったってわけか……」
ちらりと新菜の耳朶を見る。
「買うのもだけど、一人で『パンドラ』まで持って来たってのも勇気いったろうなあ。で、いつあの店教えたの?」
問われて、新菜はキョトンとして見つめ返した。
「あ? 円華だと思ってた」
円華は首を横に振って否定すると、前髪をかき上げる。
「翔子でもなさそうだけど? あいつの頭ん中は浩司くん中心で回ってんから、んなことにまで気が回らねーし」
「え? 私がなんですかぁ?」
自分の名が出て翔子が振り向いたが、「何でもない」と新菜が手を振るとあっさりと街明かりに顔を戻した。
「じゃあ満くん、わざわざ調べたんだ。健気~! さぞ大変だっただろうに」
(てっきり円華か翔子が教えたもんだと思ってた。まさかプレゼントくれるなんて思ってもみなかったし)
独り言のように話し続ける円華の隣で、新菜は流れる景色を眺めていた。
「満くん、相当新菜に惚れてんだねぇ。きっと……」
ふんふんと勝手に納得し、「で?」と円華は新菜の肩にぽんと手を置く。
「で? って?」
「満くんの誕生日に何あげんの?」
興味津々で顔を覗き込んでこられ、一瞬間を置いて新菜は「はははー……」と乾いた笑いを漏らした。
「そいや、誕生日知らないんだっけぇ」
苦笑する新菜に、円華は大きな溜め息をついた。
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