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First Contact 海へいこう!
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円華が入力し終わるのを待って「ちょっと貸して?」と満の腕が伸びた。
「見てもいい?」
円華が頷くと、メモリボタンを押してなにやら呼び出している。
察した紫が匡に頼み、ダッシュボードから出されたメモ用紙とボールペンが後ろに放られた。
「ありがとーっ」
難なく片手でキャッチすると、早速満はそれに書き付けていった。
「これ、翔子ちゃんの番号」
押し付けられた紙切れを「いらねーよ」と浩司は押し返したが、「持っとけって」と強引にポケットに突っ込まれてしまった。
そして携帯本機の番号を書き出し、
「円華ちゃんの自宅は?」
と反射的に応じた数字をさらさらと書き足して、今度はそれをウォルターに差し出した。
番号を確認してから、ウォルターはポケットに納めた。
次に新菜の番号を呼び出しそれをメモすると、
「新菜ちゃんは携帯とかピッチ持ってないの?」
と尋ねた。即座に、
「縛られんのがイヤなの」
と返って来た。
「あっ、けど新菜さんベルなら持ってるよ」
と翔子が注進し、「いいよ、言わんでも」と新菜が止めるのも聞かず満に番号を教えてしまった。
「いつでも打ってやって? ここ最近女からしか鳴らないベルだったし~。ウォルターも浩司くんも暇な時いつでも連絡してきて」
「深夜でも?」
「もち」
円華の言葉にウォルターが確認をいれたが浩司はまるで耳に入っていない態度だったので、円華は思い切り身を乗り出して浩司の耳の近くで「ねっ」と念を押し無理矢理返事を引き出した。
「絶対だよ、約束したかんね。その紙その辺の電話ボックスに貼らないでよ!」
くすくす笑いながらも、再度しっかりと駄目押しした。
公衆電話のボックスに無断で人の電話番号を貼るという悪戯が流行っているのである。
満は礼を言って円華に携帯電話を返し、そこに翔子が顔を突っ込んできた。
「ねえ、三人は携帯持ってないの?」
「オレは欲しいんだけどねぇ」
と満は溜め息で答えた。
一般的な高校生の小遣いでは、入手は勿論維持費も支払えないのである。
「必要ないしな」
「だな」
ウォルターと浩司は全く興味なさそうである。便利さより自由を大事にしているのかもしれない。
翔子が無念そうにしていると、運転席から声が掛かった。
「そろそろ上依知に入るんだけどー」
釣られて全員が窓の外に目を遣った。
「え? もう!? はっやー」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものだ。名残惜しそうにしている翔子を放っておき、円華は真っ直ぐ前を向いて紫に方向を指示していった。
いくつか角を曲がった後、指定された自販機の傍で車が停車した。
「家、この辺なの? 良かったらそれぞれの家まで送るよ」
優しく微笑みながら紫が尋ねたが、三人はぺこりとお辞儀して荷物を持って腰を上げた。
「大丈夫です。皆近所だし、ここまで原チャで来てるんで」
翔子が答えて、下りてからもう一度三人で紫と匡に礼を言った。後部座席の窓をウォルターが開けて、男三人が顔を見せてそれぞれに短い挨拶をする。
バイバイと手を振りながら紫が車を発進させて、あっという間に走り去って行った。
車の姿が見えなくなると、三人は円華の家に上がりこんで一息ついた。
「あっという間の一日だったなぁ」
「そっすねぇ」
円華は大きく伸びをして、翔子はぺたりと床に座り込んだ。
最後に部屋に入った新菜も大きく息を吐きながら床に座り、ふと思い出して口を開く。
「あれ? そういえばウォルターってビーチで携帯使ってたじゃん」
「そいやかかってきてましたねぇ」
キョトンとした顔で、翔子は円華を見上げた。
「でも持ってないって……」
「上手いことはぐらかされたんじゃねーの? 円華」
新菜がじいっと円華を見つめた。
「こりゃあ電話番号の方も怪しいかもな」
「でもあれは満くんが教えてくれたんだし……」
どぎまぎしながら、円華はベッドの縁に腰掛けた。
「そっか……あいつは嘘つかなさそう」
頷く新菜に「へっえぇー」と円華と翔子が声を揃えた。
「こりゃまた随分とお気に入りのようで」
時代劇に出てくる何とか屋のようにニヤニヤと笑いながら、円華は揉み手をした。
「ば、ばぁか。んなんじゃねぇけど」
かあっと赤面して「んなことよりウォルターだろっ」と話を逸らせた。
「そうですねぇ……どーすんです? 円華さん」
おずおずと翔子も視線を円華に戻した。
うーんと唸りながら、円華は机上の煙草に火を点けた。数回スパスパやってようやく気持ちが決まったようだ。
「ま、しゃあない。取り敢えず、聞いた番号に掛けてみるさ」
「デタラメだったら?」
「そん時ぁそん時だよ」
無表情に煙草をくゆらせる円華に、二人はそれ以上の追及を控えたのだった。
「見てもいい?」
円華が頷くと、メモリボタンを押してなにやら呼び出している。
察した紫が匡に頼み、ダッシュボードから出されたメモ用紙とボールペンが後ろに放られた。
「ありがとーっ」
難なく片手でキャッチすると、早速満はそれに書き付けていった。
「これ、翔子ちゃんの番号」
押し付けられた紙切れを「いらねーよ」と浩司は押し返したが、「持っとけって」と強引にポケットに突っ込まれてしまった。
そして携帯本機の番号を書き出し、
「円華ちゃんの自宅は?」
と反射的に応じた数字をさらさらと書き足して、今度はそれをウォルターに差し出した。
番号を確認してから、ウォルターはポケットに納めた。
次に新菜の番号を呼び出しそれをメモすると、
「新菜ちゃんは携帯とかピッチ持ってないの?」
と尋ねた。即座に、
「縛られんのがイヤなの」
と返って来た。
「あっ、けど新菜さんベルなら持ってるよ」
と翔子が注進し、「いいよ、言わんでも」と新菜が止めるのも聞かず満に番号を教えてしまった。
「いつでも打ってやって? ここ最近女からしか鳴らないベルだったし~。ウォルターも浩司くんも暇な時いつでも連絡してきて」
「深夜でも?」
「もち」
円華の言葉にウォルターが確認をいれたが浩司はまるで耳に入っていない態度だったので、円華は思い切り身を乗り出して浩司の耳の近くで「ねっ」と念を押し無理矢理返事を引き出した。
「絶対だよ、約束したかんね。その紙その辺の電話ボックスに貼らないでよ!」
くすくす笑いながらも、再度しっかりと駄目押しした。
公衆電話のボックスに無断で人の電話番号を貼るという悪戯が流行っているのである。
満は礼を言って円華に携帯電話を返し、そこに翔子が顔を突っ込んできた。
「ねえ、三人は携帯持ってないの?」
「オレは欲しいんだけどねぇ」
と満は溜め息で答えた。
一般的な高校生の小遣いでは、入手は勿論維持費も支払えないのである。
「必要ないしな」
「だな」
ウォルターと浩司は全く興味なさそうである。便利さより自由を大事にしているのかもしれない。
翔子が無念そうにしていると、運転席から声が掛かった。
「そろそろ上依知に入るんだけどー」
釣られて全員が窓の外に目を遣った。
「え? もう!? はっやー」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものだ。名残惜しそうにしている翔子を放っておき、円華は真っ直ぐ前を向いて紫に方向を指示していった。
いくつか角を曲がった後、指定された自販機の傍で車が停車した。
「家、この辺なの? 良かったらそれぞれの家まで送るよ」
優しく微笑みながら紫が尋ねたが、三人はぺこりとお辞儀して荷物を持って腰を上げた。
「大丈夫です。皆近所だし、ここまで原チャで来てるんで」
翔子が答えて、下りてからもう一度三人で紫と匡に礼を言った。後部座席の窓をウォルターが開けて、男三人が顔を見せてそれぞれに短い挨拶をする。
バイバイと手を振りながら紫が車を発進させて、あっという間に走り去って行った。
車の姿が見えなくなると、三人は円華の家に上がりこんで一息ついた。
「あっという間の一日だったなぁ」
「そっすねぇ」
円華は大きく伸びをして、翔子はぺたりと床に座り込んだ。
最後に部屋に入った新菜も大きく息を吐きながら床に座り、ふと思い出して口を開く。
「あれ? そういえばウォルターってビーチで携帯使ってたじゃん」
「そいやかかってきてましたねぇ」
キョトンとした顔で、翔子は円華を見上げた。
「でも持ってないって……」
「上手いことはぐらかされたんじゃねーの? 円華」
新菜がじいっと円華を見つめた。
「こりゃあ電話番号の方も怪しいかもな」
「でもあれは満くんが教えてくれたんだし……」
どぎまぎしながら、円華はベッドの縁に腰掛けた。
「そっか……あいつは嘘つかなさそう」
頷く新菜に「へっえぇー」と円華と翔子が声を揃えた。
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時代劇に出てくる何とか屋のようにニヤニヤと笑いながら、円華は揉み手をした。
「ば、ばぁか。んなんじゃねぇけど」
かあっと赤面して「んなことよりウォルターだろっ」と話を逸らせた。
「そうですねぇ……どーすんです? 円華さん」
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うーんと唸りながら、円華は机上の煙草に火を点けた。数回スパスパやってようやく気持ちが決まったようだ。
「ま、しゃあない。取り敢えず、聞いた番号に掛けてみるさ」
「デタラメだったら?」
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