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別れてくれてありがとう
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部屋を選ぶ間もそこそこに、エレベーターの中でもう雪子が首に腕を回して縋り付いてくる。そうされて嬉しくない筈はないから、脂下がったデレデレ顔で顔中にキスの雨を降らせながら時間を稼ぐ。
部屋に到着し、ドアが閉まりきらないうちに、二人の足元にそれぞれの上着が落ちた。
口付けを深くしながら慎哉が下着ごと雪子のスカートをずらす。丸い丘を撫でながら手の平が下に滑ると、快感に戦慄くように下半身が震えた。
雪子が自分で指を掛けて膝まで下げると、後は足の動きだけでまた床に落とされていく。
その間に雪子が慎哉のジッパーを下ろして、二人の手が重なるようにジーンズと共に下着をも下ろしていく。既に硬さを戻している場所に雪子の指が触れると、勢い良く飛び出したものを恥ずかしいと思う間もなく手の平に収められた。
ただ、やんわりと握られているだけなのに、もう先端から滲み始めている。じれったくて、最後は踏みつけるように脱いで慎哉がくしゃくしゃにしたまま放置すると、雪子の首筋に吸い付きながら、ブラウスのボタンを外した。
僅かでも離れて居たくないと、性急に雪子は腕を伸ばしてそれを落とす。その間に背に回された慎哉の指がホックを外し、それもまた落ちていく。
少しずつベッドに近付きながら脱がせあい、最後に慎哉がシャツと下着を脱ぎ捨てて、少しぶれながらもほぼベッドまで一直線の衣類の川が出来上がる。ふたりで絡まりあいながら目的地へとダイブした。
「吸い付くような肌だね、綺麗。食べちゃいたい」
吸い付いているのは慎哉の方なのに、まるで磁力に引かれているかのように、日本人にしては白すぎる雪子のキメ細かな肌が、全身にひたりと付いてくる。
もう既に首筋から胸元に舌と唇を這わせながら、慎哉が上目に雪子に囁いた。
両手の中に、つんと張りのある乳房が収まっている。既に硬くなっている先端を転がすと、艶のある吐息が漏れた。
「あぁ……ん、食べちゃってよ、全部あげるから、全部頂戴。私も、慎哉くん、食べたい」
慎哉の手を取り口元に運ぶと、雪子はそのまま歯を立て指をしゃぶっている。熱い口内に含まれた指先が痺れる。ちろりと覗く舌先が赤く熟れて誘っている。
「って、ホントに齧るかなあ。変身っぷり凄いね」
呆れたように笑いながらも、もう片方の手では強弱をつけて揉んだり先端を摘んだり。それと同時に舌先で先端を優しく舐めていると、雪子は涙を滲ませて声を漏らした。
これが、本当の私――と掠れた声の後に、んっと唾液を飲んで細まった目が潤みきっている。
「慎哉くんにだけ、知って欲しい」
慎哉の指先から股へと舌を這わせる表情が妖艶だ。痺れるような快感に、慎哉の下半身が更に熱を帯びていく。腰の奥を疼かせるものを抑え込むのに懸命だった。
「嘘、それ付き合った男全員に言ってるでしょ」
トークで気を散らそうと、少し膨れてみせると、雪子の手が慎哉の髪を掻き混ぜて、強引に中心へと手を伸ばしてきた。
「初めてだよ、自分からこんなに欲しくなったのは。体中が慎哉くんに染まりたがってる気がするの。ねえ、早く頂戴」
少し声が震えているのは、もしかしたら冗談半分にでも否定されたことに傷付いているのかもしれない。
慎哉は僅かに後悔しそうになったが、既に限界まで張り詰めているところを滑らかな指先で扱かれ、うっかり放ちそうになる。
くっと奥歯を噛み締めて衝動を逃がすと、お返しとばかりに脇腹に吸い付いた。
ああ、と声を上げて雪子の肢体がしなやかに反る。集中的に責めると、本当にそこが弱いようで、切なく喘いでのたうっている。そのまま手の平をまろい丘に滑らせると、全身が細かく震えた。
それなのにたどたどしい声音で早く欲しいと強請るから、ようやく慎哉は足の間に指を滑らせた。
確かに潤っているようだ。快感を示す声と動きは本物のようで、今までの愛撫だけでも十分に濡れている。
それでも慎哉が挿入しないのを不思議そうにしているから、もしかして今まできちんといかせてもらっていないんじゃないかと訝りながら、太腿を開かせて顔を寄せようとした。
途端、今まで慎哉に身を任せていた雪子の体が強張り、腰が跳ねて足を閉じてしまう。動揺しながら雪子の表情を窺うと、嫌がっているのは恥じらいからのようで、腕に力を入れ直すと、懸命に首を振って意思表示をしている。
ここまできて? と訝るものの、宥めるように膝頭にキスを落とし、焦りすぎたかもと反省しながら、そのまま足先へと唇で愛撫していく。
柔らかな肉に食まれて、ささやかな刺激に雪子の中心が官能の疼きと共に潤みを増していくのが判り、雪子は悶えた。
こそばゆさぎりぎりのラインで、気持ち良い刺激と肌が受け止めている。それを奥に伝えて、泉から溢れてくる。しらず下肢の力が抜けていき、それに伴いやんわりと膝を割りながら、慎哉は今度こそ膝から順に上へ上へと同じように唇で辿っていく。
太腿の付け根の特に柔らかな部分をねっとりと舐め上げて、そのまま中心へと移行すると、もう雪子は抗わなかった。
たどたどしい動きで腕を伸ばして慎哉の髪に白い指が絡む。でも、それだけだった。
伸ばした舌先が濡れる。確かにもう十分に濡れそぼっていて求められていることに感激するが、それでは駄目だろう。
敏感な突起を探り当て、ゆっくりと舌先で刺激しながら慎哉は指を入れ、中からもその部分を突付いたり擦ったりする。
「はぁ、んっ、あ、やぁっ」
いやいやをするように目を瞑って髪を振り乱し、慎哉の髪を掴んで抗議する。羞恥に全身が淡く染まっていくが、構わずに続けていくと、肩に触れている足がぴくぴくと痙攣を始めた。
更に続けていると足を突っ張るように伸ばすから、動きを速くした。
「んんーっ」
白い喉を晒し、中からこぷりと快楽の雫が溢れ出す。そうなって初めて慎哉は自身にゴムを装着して、改めて雪子の足を抱え直した。
「好かった?」
くたりと体を投げ出している雪子は、自身の体の反応に呆然としているようだった。いつも白い頬が紅に染まり、息を乱れさせている。
それでも慎哉の問いにこくりと肯き、自分の指をちゅっと音を立ててしゃぶり、流し目をくれる。またして欲しいと催促されているようで、慎哉は喉を鳴らした。
うわ、なにこれ妖艶すぎるっしょ。
昔ながらのラブホテルの一室は、しつらえも古めかしいままだ。房の付いたワインレッドのベッドカバーに直に横たわったままくたりとしている雪子は、さながら怪物の口内に捉えられたお姫様のよう。
映画のワンシーンのようなその光景に、得体の知れない興奮が襲ってくる。
もっと焦らしたかったのに、一息に慎哉は腰を押し付けてしまった。
「ん、あ……いい」
俺も。すぐに達してしまいそうな衝動を抑え込み、体を倒して慎哉が唇を貪る。
その間はゆるゆると揺するだけの動きで耐え、合い間にもっとと強請られて、体を起こして大きく速い動きに切り替えた。
相性は十分。先刻いかせようとした時には、経験がないのか少し不安な表情を見せていたけれど、いま十分快感を得ていることを示すように中が蠢き締め付ける。
本人もそれが気持ち良いのは明らかで、すっかり体を任せているように見せ掛けながらも、慎哉の動きに合わせて腰を動かしている。
これの一体何処が不満だったっていうんだよ。
元彼たちに呆れながらも、今そいつらがいないからこその二人があるのだと慎哉は感謝する。
別れてくれてありがとう、だな。
そのまま二人は何度も求め合い、朝まで繋がっていた。二人の関係が変わった、記念すべき夜だった。
職場では、相変わらず互いを名字で呼ぶ。
それでも確かに何かが変わったと気付く者は多く、祐次などは率直に「柔らかくなりましたね」なんて雪子に声を掛けて、頬を紅潮させて肘で突付かれたのだと誠也に報告していた。嬉しそうだった。
自分が一番苦しんでいたとき、実務でも精神的にも支えになってくれたのは雪子だったと言う。それは誠也からも聞いていたから、祐次と雪子の関係に嫉妬するのは止めたのだ。
一番好意を抱いている雪子には、幸せになって欲しいと望んでいるのだろう。
だけど真面目な顔して慎哉の前で頭を下げて「くれぐれもお願いします」と言われた日には、「お前は父兄か」と突っ込みたくなった。
雪子は通常、平日には二十時にシフトが終わり、片付けなどを済ませて半くらいに職場を後にすることが多い。深夜スタッフに欠員が出たときだけは深夜一時くらいになることもあるが、幸い今は人手が足りているようだ。
恐らくは祐次もシフトを組むときに気を使っているのだろう。日付けを越えて帰宅ということになると、送っていくのも調整できないときがある。最悪、沙良の当番になってしまうので、それは避けたいところだったからだ。
そして、いざ本当に付き合うようになると、当然出来る限り慎哉が送って行こうと出番が多くなる。そんな可能性はないと頭では解っていても、誠也にはなるべく任せたくないと思ってしまう。
率直に自分が送る日を増やすように進言した途端に、誠也がやや驚いた表情をして、それから微笑んで背中を叩かれた。
「なんだよ」
「いやいや」
自分でもおかしくなるくらい、今までになく独占欲が湧いてくるのだ。それが世間一般では当たり前の感情なのだと知識として知っていても、凄く子供じみている気がして恥ずかしい。
更にそれを誠也に悟られて、しかも嬉しそうにされるなんて。
可愛いやつめという眼差しで見つめられて、ぶすくれた口元すら微笑ましいと見守られてしまう。
遅蒔きながら、これが恋愛をしているということなんだなあと、慎哉はしみじみ実感していた。
部屋に到着し、ドアが閉まりきらないうちに、二人の足元にそれぞれの上着が落ちた。
口付けを深くしながら慎哉が下着ごと雪子のスカートをずらす。丸い丘を撫でながら手の平が下に滑ると、快感に戦慄くように下半身が震えた。
雪子が自分で指を掛けて膝まで下げると、後は足の動きだけでまた床に落とされていく。
その間に雪子が慎哉のジッパーを下ろして、二人の手が重なるようにジーンズと共に下着をも下ろしていく。既に硬さを戻している場所に雪子の指が触れると、勢い良く飛び出したものを恥ずかしいと思う間もなく手の平に収められた。
ただ、やんわりと握られているだけなのに、もう先端から滲み始めている。じれったくて、最後は踏みつけるように脱いで慎哉がくしゃくしゃにしたまま放置すると、雪子の首筋に吸い付きながら、ブラウスのボタンを外した。
僅かでも離れて居たくないと、性急に雪子は腕を伸ばしてそれを落とす。その間に背に回された慎哉の指がホックを外し、それもまた落ちていく。
少しずつベッドに近付きながら脱がせあい、最後に慎哉がシャツと下着を脱ぎ捨てて、少しぶれながらもほぼベッドまで一直線の衣類の川が出来上がる。ふたりで絡まりあいながら目的地へとダイブした。
「吸い付くような肌だね、綺麗。食べちゃいたい」
吸い付いているのは慎哉の方なのに、まるで磁力に引かれているかのように、日本人にしては白すぎる雪子のキメ細かな肌が、全身にひたりと付いてくる。
もう既に首筋から胸元に舌と唇を這わせながら、慎哉が上目に雪子に囁いた。
両手の中に、つんと張りのある乳房が収まっている。既に硬くなっている先端を転がすと、艶のある吐息が漏れた。
「あぁ……ん、食べちゃってよ、全部あげるから、全部頂戴。私も、慎哉くん、食べたい」
慎哉の手を取り口元に運ぶと、雪子はそのまま歯を立て指をしゃぶっている。熱い口内に含まれた指先が痺れる。ちろりと覗く舌先が赤く熟れて誘っている。
「って、ホントに齧るかなあ。変身っぷり凄いね」
呆れたように笑いながらも、もう片方の手では強弱をつけて揉んだり先端を摘んだり。それと同時に舌先で先端を優しく舐めていると、雪子は涙を滲ませて声を漏らした。
これが、本当の私――と掠れた声の後に、んっと唾液を飲んで細まった目が潤みきっている。
「慎哉くんにだけ、知って欲しい」
慎哉の指先から股へと舌を這わせる表情が妖艶だ。痺れるような快感に、慎哉の下半身が更に熱を帯びていく。腰の奥を疼かせるものを抑え込むのに懸命だった。
「嘘、それ付き合った男全員に言ってるでしょ」
トークで気を散らそうと、少し膨れてみせると、雪子の手が慎哉の髪を掻き混ぜて、強引に中心へと手を伸ばしてきた。
「初めてだよ、自分からこんなに欲しくなったのは。体中が慎哉くんに染まりたがってる気がするの。ねえ、早く頂戴」
少し声が震えているのは、もしかしたら冗談半分にでも否定されたことに傷付いているのかもしれない。
慎哉は僅かに後悔しそうになったが、既に限界まで張り詰めているところを滑らかな指先で扱かれ、うっかり放ちそうになる。
くっと奥歯を噛み締めて衝動を逃がすと、お返しとばかりに脇腹に吸い付いた。
ああ、と声を上げて雪子の肢体がしなやかに反る。集中的に責めると、本当にそこが弱いようで、切なく喘いでのたうっている。そのまま手の平をまろい丘に滑らせると、全身が細かく震えた。
それなのにたどたどしい声音で早く欲しいと強請るから、ようやく慎哉は足の間に指を滑らせた。
確かに潤っているようだ。快感を示す声と動きは本物のようで、今までの愛撫だけでも十分に濡れている。
それでも慎哉が挿入しないのを不思議そうにしているから、もしかして今まできちんといかせてもらっていないんじゃないかと訝りながら、太腿を開かせて顔を寄せようとした。
途端、今まで慎哉に身を任せていた雪子の体が強張り、腰が跳ねて足を閉じてしまう。動揺しながら雪子の表情を窺うと、嫌がっているのは恥じらいからのようで、腕に力を入れ直すと、懸命に首を振って意思表示をしている。
ここまできて? と訝るものの、宥めるように膝頭にキスを落とし、焦りすぎたかもと反省しながら、そのまま足先へと唇で愛撫していく。
柔らかな肉に食まれて、ささやかな刺激に雪子の中心が官能の疼きと共に潤みを増していくのが判り、雪子は悶えた。
こそばゆさぎりぎりのラインで、気持ち良い刺激と肌が受け止めている。それを奥に伝えて、泉から溢れてくる。しらず下肢の力が抜けていき、それに伴いやんわりと膝を割りながら、慎哉は今度こそ膝から順に上へ上へと同じように唇で辿っていく。
太腿の付け根の特に柔らかな部分をねっとりと舐め上げて、そのまま中心へと移行すると、もう雪子は抗わなかった。
たどたどしい動きで腕を伸ばして慎哉の髪に白い指が絡む。でも、それだけだった。
伸ばした舌先が濡れる。確かにもう十分に濡れそぼっていて求められていることに感激するが、それでは駄目だろう。
敏感な突起を探り当て、ゆっくりと舌先で刺激しながら慎哉は指を入れ、中からもその部分を突付いたり擦ったりする。
「はぁ、んっ、あ、やぁっ」
いやいやをするように目を瞑って髪を振り乱し、慎哉の髪を掴んで抗議する。羞恥に全身が淡く染まっていくが、構わずに続けていくと、肩に触れている足がぴくぴくと痙攣を始めた。
更に続けていると足を突っ張るように伸ばすから、動きを速くした。
「んんーっ」
白い喉を晒し、中からこぷりと快楽の雫が溢れ出す。そうなって初めて慎哉は自身にゴムを装着して、改めて雪子の足を抱え直した。
「好かった?」
くたりと体を投げ出している雪子は、自身の体の反応に呆然としているようだった。いつも白い頬が紅に染まり、息を乱れさせている。
それでも慎哉の問いにこくりと肯き、自分の指をちゅっと音を立ててしゃぶり、流し目をくれる。またして欲しいと催促されているようで、慎哉は喉を鳴らした。
うわ、なにこれ妖艶すぎるっしょ。
昔ながらのラブホテルの一室は、しつらえも古めかしいままだ。房の付いたワインレッドのベッドカバーに直に横たわったままくたりとしている雪子は、さながら怪物の口内に捉えられたお姫様のよう。
映画のワンシーンのようなその光景に、得体の知れない興奮が襲ってくる。
もっと焦らしたかったのに、一息に慎哉は腰を押し付けてしまった。
「ん、あ……いい」
俺も。すぐに達してしまいそうな衝動を抑え込み、体を倒して慎哉が唇を貪る。
その間はゆるゆると揺するだけの動きで耐え、合い間にもっとと強請られて、体を起こして大きく速い動きに切り替えた。
相性は十分。先刻いかせようとした時には、経験がないのか少し不安な表情を見せていたけれど、いま十分快感を得ていることを示すように中が蠢き締め付ける。
本人もそれが気持ち良いのは明らかで、すっかり体を任せているように見せ掛けながらも、慎哉の動きに合わせて腰を動かしている。
これの一体何処が不満だったっていうんだよ。
元彼たちに呆れながらも、今そいつらがいないからこその二人があるのだと慎哉は感謝する。
別れてくれてありがとう、だな。
そのまま二人は何度も求め合い、朝まで繋がっていた。二人の関係が変わった、記念すべき夜だった。
職場では、相変わらず互いを名字で呼ぶ。
それでも確かに何かが変わったと気付く者は多く、祐次などは率直に「柔らかくなりましたね」なんて雪子に声を掛けて、頬を紅潮させて肘で突付かれたのだと誠也に報告していた。嬉しそうだった。
自分が一番苦しんでいたとき、実務でも精神的にも支えになってくれたのは雪子だったと言う。それは誠也からも聞いていたから、祐次と雪子の関係に嫉妬するのは止めたのだ。
一番好意を抱いている雪子には、幸せになって欲しいと望んでいるのだろう。
だけど真面目な顔して慎哉の前で頭を下げて「くれぐれもお願いします」と言われた日には、「お前は父兄か」と突っ込みたくなった。
雪子は通常、平日には二十時にシフトが終わり、片付けなどを済ませて半くらいに職場を後にすることが多い。深夜スタッフに欠員が出たときだけは深夜一時くらいになることもあるが、幸い今は人手が足りているようだ。
恐らくは祐次もシフトを組むときに気を使っているのだろう。日付けを越えて帰宅ということになると、送っていくのも調整できないときがある。最悪、沙良の当番になってしまうので、それは避けたいところだったからだ。
そして、いざ本当に付き合うようになると、当然出来る限り慎哉が送って行こうと出番が多くなる。そんな可能性はないと頭では解っていても、誠也にはなるべく任せたくないと思ってしまう。
率直に自分が送る日を増やすように進言した途端に、誠也がやや驚いた表情をして、それから微笑んで背中を叩かれた。
「なんだよ」
「いやいや」
自分でもおかしくなるくらい、今までになく独占欲が湧いてくるのだ。それが世間一般では当たり前の感情なのだと知識として知っていても、凄く子供じみている気がして恥ずかしい。
更にそれを誠也に悟られて、しかも嬉しそうにされるなんて。
可愛いやつめという眼差しで見つめられて、ぶすくれた口元すら微笑ましいと見守られてしまう。
遅蒔きながら、これが恋愛をしているということなんだなあと、慎哉はしみじみ実感していた。
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