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これはもしや憧れの
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「打ち上げか」
途中、客足が鈍りだした頃から片付けを進めていたから、もう大体のところは済んだという知らせだった。予定通りカラオケルームで打ち上げしようと場所が書いてあり、同じように内容を見た直紀が物問いたげな視線を投げてくる。
以前の俺なら、迷うことなく参加していた。もう、企画段階で参加する意思はなかったけど、それでもメールを見るとちょっとだけ気が引かれてしまった。
それを読み取ったらしき直紀が口を開き掛けたとき、今度は音声着信のバイブで、手の中で端末か震えた。
「は、はい」
『終わったか? 近くまで来てるから、出られそうなら校門前に車つけるけど』
健吾さんだった。チャリで来てるけど、下半身的にも漕いで帰るのは大変そうだし、何よりも直紀から離れる口実が出来る。
「今着替え済んだとこ。すぐ行くよ」
『わかった』
学校の近くには通行量の多い道路があって、校門前は数十メートル私道があるけど、人の出入りの多いこの時間には車を停められない。なるべく早く乗り込まないと目立ってしまうから、俺はさっさと携帯をポケットに突っ込むと、ドレスを箱に放り込んだ。
「じゃあな、お疲れ」
車に乗ってからメールに返信すればいいやと、身を翻して部屋を出る。直紀の呼ぶ声が追いかけてきたけど、無視して昇降口へと足早に向かう。
本当は走りたいくらい気が急いてる。でも体の中の異物感と疼きは耐えがたく襲ってくるし、火照る体を宥めながらの選択だった。
幸い校門には他に車はなくて、殆ど同時に滑るように横付けした黒いスポーツカーの助手席に乗り込むと、閉じたばかりのドアをバンと外から叩かれた。
「人見! 降りろっ」
いつの間にか直紀が追い付いて来ていたらしい。不機嫌全開で立ち塞がれて、早くどけないとって焦る気持ちと、健吾さんに迷惑がかかるっていう心配で冷や汗が滑り落ちた。
運転席からの操作で、窓ガラスが下がっていく。右を振り返ると、いつもの落ち着ききった表情で助手席側に首を伸ばしている健吾さん。
「そこ、邪魔なんだけど」
無理矢理発進するわけにも行かないんだろう。ただ静かにぽつりと言っただけなのに、かあっと直紀が興奮するのが伝わってきた。
「あんた、あの郵便局の――」
一方的に見ているだけだから、勿論健吾さんは直紀の顔も知らない。だけど莉央が評するイケメンだから直紀も気にして覚えていたんだろう。一瞬で健吾さんの正体を見破ってしまった。まずい。
「なんでこいつなんだよ。ちゃんと女作ってそっちとヤればいいじゃん。脅して無理矢理関係続けさせるなんて、卑怯だろ」
ぐうっと眉を寄せて、窓枠にしがみついて詰っている。だけど、直紀にそんなこと言われたくない。
「ひとみとは合意だ。こいつが、俺を選んだ。あのメールのときにちゃんとお前が引き留めれば良かったのに、今更遅いよ」
自分がメールを送信した相手だと気付いたのか、俺が口を挟むより先に健吾さんが応じる。
「そんな、俺があんたの職場にバラしたらどうすんだよ? クビになんだろ」
「別に構わない。好きにしろ」
切り札のつもりで出した物は、ダメージを与えない。怯んだ直紀に、健吾さんが追い打ちを掛ける。
「それをしたら被害が大きいのはひとみだ。将来台無し、ご近所の笑いもんだぞ。そんなん、いくら名前伏せてたって広まるからな」
ぐうっと喉の奥で呻いて、また上がっていく窓ガラスに手を挟まれないように、直紀が一歩後退する。
後ろから近付いてきた送迎車に押されるようにして、車はターンした。
「夕飯どうする? 食べて帰るか」
何事もなかったかのように前を向いている。食欲ないわけじゃねえけど、食べたのがついさっきだからそんなに減ってない。
そう伝えると、じゃあ買って帰ろうって言って、信号待ちで停車したときに、シートと体の間に手が差し込まれた。
かちりと音がして、低いバイブ音と共に、体内であれが動き始める。
「ふっ、あっ、」
どうにか堪えていたのに、一気に高められてシャツの裾の下でスラックスがテントを張る。
青に変わり、前の車に合わせて静かに発進する。市街地だから路面は滑らかな方だけど、敏感になっている体は些細な段差で反応してしまう。
バーガーショップの敷地に入るとき、がくんと大きく揺れた。
「ひゃっ」
細かい振動に加えて下から突き上げられているみたいになって、涙が滲む。
ドライブスルーの受付のスピーカーから、スタッフの女性の声が注文を承りますと話しかけている。それにセットを告げて、「おまえは?」と促された。
アイドリングのと玩具の振動のダブルで攻められて、口を開いたら変な声が漏れそう。必死に我慢して「ポテトのL」とようよう声にした。
かしこまりました、と注文内容を復唱して、前進を促される。小窓の横で停まって会計をしている間、左を向いてなるべく平静を装おうと努力した。
一旦窓が閉まり、恐る恐る細く吐息する。隣から伸びた腕が顎を掴んで、体を戻して正面から健吾さんと見つめ合う形になった。
顎から頬骨、そして首へと長い指が辿っていく。こくりと喉仏が動いて、そのささやかな刺激にすら熱が上がり声が漏れそうになるのを我慢する。
凄く、凄く気持ちイイけど! 絶対変な声聞かれたくねえから。まだ羞恥心手放せねえから!
「可愛い」
そんな健気な努力を無視して指は動きつつ、細められた目が嬉しそうなもんだから文句も言えやしない。
「ん、ん、」
ぎゅっと口と拳を握りしめて待つ長い数分間が過ぎて、ようやく品物が手渡された。窓が閉まって車が動き出す。敷地から出るときの段差は容赦なくまた俺を突き上げて、
「んあっ」
と声が上がってしまった。
一度解放したら歯止めが利かなくなって、だらしなく開いた唇からひっきりなしに呻き声が漏れていく。健吾さんが言うには、こういうのが喘ぎ声って言うらしいんだけど。
「エロ。ひとみ、他の車や通行人から見えてんの忘れてる?」
途端、喉の奥で声が掠れて貼り付いたようになる。
わ、忘れてた……プライバシーガラスだけど、全く見えなくなる訳じゃねえんだよな。
また歯を食いしばって耐える時間が長くて長くて。週末の夕方だからいつもより時間が掛かったけどそれでも二十分も掛からなかったのに、駐車場に着いたときにはもう、息も絶え絶えになってたんだった。
外からドアを開けて呼ばれて、震えながら足を付く。腰というか背中心に力を入れることも出来なくて、なんかもう本当にぐだぐだ。
「た、立てない……」
涙でぐにゃりと歪んだ視界の中見上げて訴える。はあ、と溜息を吐くのが聞こえて、嫌われる、とびくりと肩が跳ねた。
「しょうがねえなあ」
腰を落とした健吾さんの腕が背中からぐるりと抱きしめてくれて、食べ物の入った紙袋が俺の腹の上に。それから次々に二本の膝の裏に反対の腕を通すと、そのまま立ち上がった。
あ、憧れのお姫様だっこ! いや、されるんじゃなくてする方で夢だったんだけども。
体でドアを閉めて、すたすたと玄関に向かう。あっと言う間の距離だけど、どきどきが止まらなくなってしまった。
途中、客足が鈍りだした頃から片付けを進めていたから、もう大体のところは済んだという知らせだった。予定通りカラオケルームで打ち上げしようと場所が書いてあり、同じように内容を見た直紀が物問いたげな視線を投げてくる。
以前の俺なら、迷うことなく参加していた。もう、企画段階で参加する意思はなかったけど、それでもメールを見るとちょっとだけ気が引かれてしまった。
それを読み取ったらしき直紀が口を開き掛けたとき、今度は音声着信のバイブで、手の中で端末か震えた。
「は、はい」
『終わったか? 近くまで来てるから、出られそうなら校門前に車つけるけど』
健吾さんだった。チャリで来てるけど、下半身的にも漕いで帰るのは大変そうだし、何よりも直紀から離れる口実が出来る。
「今着替え済んだとこ。すぐ行くよ」
『わかった』
学校の近くには通行量の多い道路があって、校門前は数十メートル私道があるけど、人の出入りの多いこの時間には車を停められない。なるべく早く乗り込まないと目立ってしまうから、俺はさっさと携帯をポケットに突っ込むと、ドレスを箱に放り込んだ。
「じゃあな、お疲れ」
車に乗ってからメールに返信すればいいやと、身を翻して部屋を出る。直紀の呼ぶ声が追いかけてきたけど、無視して昇降口へと足早に向かう。
本当は走りたいくらい気が急いてる。でも体の中の異物感と疼きは耐えがたく襲ってくるし、火照る体を宥めながらの選択だった。
幸い校門には他に車はなくて、殆ど同時に滑るように横付けした黒いスポーツカーの助手席に乗り込むと、閉じたばかりのドアをバンと外から叩かれた。
「人見! 降りろっ」
いつの間にか直紀が追い付いて来ていたらしい。不機嫌全開で立ち塞がれて、早くどけないとって焦る気持ちと、健吾さんに迷惑がかかるっていう心配で冷や汗が滑り落ちた。
運転席からの操作で、窓ガラスが下がっていく。右を振り返ると、いつもの落ち着ききった表情で助手席側に首を伸ばしている健吾さん。
「そこ、邪魔なんだけど」
無理矢理発進するわけにも行かないんだろう。ただ静かにぽつりと言っただけなのに、かあっと直紀が興奮するのが伝わってきた。
「あんた、あの郵便局の――」
一方的に見ているだけだから、勿論健吾さんは直紀の顔も知らない。だけど莉央が評するイケメンだから直紀も気にして覚えていたんだろう。一瞬で健吾さんの正体を見破ってしまった。まずい。
「なんでこいつなんだよ。ちゃんと女作ってそっちとヤればいいじゃん。脅して無理矢理関係続けさせるなんて、卑怯だろ」
ぐうっと眉を寄せて、窓枠にしがみついて詰っている。だけど、直紀にそんなこと言われたくない。
「ひとみとは合意だ。こいつが、俺を選んだ。あのメールのときにちゃんとお前が引き留めれば良かったのに、今更遅いよ」
自分がメールを送信した相手だと気付いたのか、俺が口を挟むより先に健吾さんが応じる。
「そんな、俺があんたの職場にバラしたらどうすんだよ? クビになんだろ」
「別に構わない。好きにしろ」
切り札のつもりで出した物は、ダメージを与えない。怯んだ直紀に、健吾さんが追い打ちを掛ける。
「それをしたら被害が大きいのはひとみだ。将来台無し、ご近所の笑いもんだぞ。そんなん、いくら名前伏せてたって広まるからな」
ぐうっと喉の奥で呻いて、また上がっていく窓ガラスに手を挟まれないように、直紀が一歩後退する。
後ろから近付いてきた送迎車に押されるようにして、車はターンした。
「夕飯どうする? 食べて帰るか」
何事もなかったかのように前を向いている。食欲ないわけじゃねえけど、食べたのがついさっきだからそんなに減ってない。
そう伝えると、じゃあ買って帰ろうって言って、信号待ちで停車したときに、シートと体の間に手が差し込まれた。
かちりと音がして、低いバイブ音と共に、体内であれが動き始める。
「ふっ、あっ、」
どうにか堪えていたのに、一気に高められてシャツの裾の下でスラックスがテントを張る。
青に変わり、前の車に合わせて静かに発進する。市街地だから路面は滑らかな方だけど、敏感になっている体は些細な段差で反応してしまう。
バーガーショップの敷地に入るとき、がくんと大きく揺れた。
「ひゃっ」
細かい振動に加えて下から突き上げられているみたいになって、涙が滲む。
ドライブスルーの受付のスピーカーから、スタッフの女性の声が注文を承りますと話しかけている。それにセットを告げて、「おまえは?」と促された。
アイドリングのと玩具の振動のダブルで攻められて、口を開いたら変な声が漏れそう。必死に我慢して「ポテトのL」とようよう声にした。
かしこまりました、と注文内容を復唱して、前進を促される。小窓の横で停まって会計をしている間、左を向いてなるべく平静を装おうと努力した。
一旦窓が閉まり、恐る恐る細く吐息する。隣から伸びた腕が顎を掴んで、体を戻して正面から健吾さんと見つめ合う形になった。
顎から頬骨、そして首へと長い指が辿っていく。こくりと喉仏が動いて、そのささやかな刺激にすら熱が上がり声が漏れそうになるのを我慢する。
凄く、凄く気持ちイイけど! 絶対変な声聞かれたくねえから。まだ羞恥心手放せねえから!
「可愛い」
そんな健気な努力を無視して指は動きつつ、細められた目が嬉しそうなもんだから文句も言えやしない。
「ん、ん、」
ぎゅっと口と拳を握りしめて待つ長い数分間が過ぎて、ようやく品物が手渡された。窓が閉まって車が動き出す。敷地から出るときの段差は容赦なくまた俺を突き上げて、
「んあっ」
と声が上がってしまった。
一度解放したら歯止めが利かなくなって、だらしなく開いた唇からひっきりなしに呻き声が漏れていく。健吾さんが言うには、こういうのが喘ぎ声って言うらしいんだけど。
「エロ。ひとみ、他の車や通行人から見えてんの忘れてる?」
途端、喉の奥で声が掠れて貼り付いたようになる。
わ、忘れてた……プライバシーガラスだけど、全く見えなくなる訳じゃねえんだよな。
また歯を食いしばって耐える時間が長くて長くて。週末の夕方だからいつもより時間が掛かったけどそれでも二十分も掛からなかったのに、駐車場に着いたときにはもう、息も絶え絶えになってたんだった。
外からドアを開けて呼ばれて、震えながら足を付く。腰というか背中心に力を入れることも出来なくて、なんかもう本当にぐだぐだ。
「た、立てない……」
涙でぐにゃりと歪んだ視界の中見上げて訴える。はあ、と溜息を吐くのが聞こえて、嫌われる、とびくりと肩が跳ねた。
「しょうがねえなあ」
腰を落とした健吾さんの腕が背中からぐるりと抱きしめてくれて、食べ物の入った紙袋が俺の腹の上に。それから次々に二本の膝の裏に反対の腕を通すと、そのまま立ち上がった。
あ、憧れのお姫様だっこ! いや、されるんじゃなくてする方で夢だったんだけども。
体でドアを閉めて、すたすたと玄関に向かう。あっと言う間の距離だけど、どきどきが止まらなくなってしまった。
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