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俺が本当に欲しいのは
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果てた後の心地よい倦怠感に包まれて、そのまま緩く豪を抱き締めていた。豪も自分からは離れようとしないし、抜かないでって少し恥ずかしそうに囁かれて、どうにかなりそうなくらいに興奮していた。
瞬く間に復活したソレに当然気付かないはずもなく、豪が微笑む。
「いいぜ、こいよ」
腰が辛そうな豪を横向きにして、片足だけ引き上げて、二ラウンド目に突入。最後は正常位で、すがりつくように肩に腕を回してくる豪を穿った。
また中で放って、豪に被さったまま極力体重をかけないようにしていると、突如豪が突っ張ってくる。
「きたきた……」
うー、と唸って痛そうな顔をする。俺は慌てた。
「悪い、どっか辛くなってきたか」
「ちょ、すまん。退いて」
かなり強く押されて、俺はベッドから降りた。豪は臍の辺りを両手で押さえて冷や汗をかいている。見守っていると、少し経ってから勢いよく起きあがり、脱兎のごとく部屋から出て行ってしまった。素っ裸のままで。
どうやら腹痛らしいと判ったものの、どうしようもなくて俺はただはらはらしながら待つしかない。手持ち無沙汰に服を身に着け、廊下に出ようとして思いとどまる。
自分だったら、腹を下している真っ最中にドアの前で待たれたくなんてない。恥ずかしすぎる。ここで待った方がいいと思い直して、ベッドに腰掛けた。
腹痛の原因は当然俺だろう。出してと請われて中出ししてしまったけど、やっぱりゴムを付けるべきだったんだ。俺と違って男とのセックスなんて予想外だった豪が、女じゃないから中でも大丈夫って程度にしか思っていなくても不思議じゃない。
押し寄せる後悔にうなだれて、膝の上に両肘を突いて、勉強机の上で小さな目覚まし時計が時を刻むのを聞きながら待つ。
怒っているに違いないと信じていたから、やがて戻ってきた豪の満足げな笑顔を見て、俺は言葉に詰まった。
「あ、あの、豪」
ごめんなって言いたかったのに、「サンキューな」って爽やかに笑い掛けられて、ぽかんと口が開きっぱなしだ。
そんな俺の足下に散らばったままの制服を集めて椅子の背にぞんざいに掛けると、豪はクロゼットから私服を出して身に着け始める。
「いやー、昔からそういう体質だったけど、最近ホント便秘が酷くてさ。だからって浣腸するのも抵抗あって。したら琉真が俺のこと好きって言うだろ。男抱けるなら気持ちよくしてもらえて更に便秘解消するんじゃねえのって思ったんだよなー」
呆気にとられて言葉にならない俺の前で、「ああすっきりしたー」と豪は爽やかに笑っていた。
ごく普通の腐れ縁の親友から、なんだか訳の分からない関係になってしまい、戸惑いばかりだった。
一番近いのは、セフレなんだろう。但し、基本的に女好きというかノーマルな豪だから、欲しいのは精液込みの快楽だ。アナルを掘られる時の、もっというなら腰を引くときの感覚が、便が出ていくときの感覚と同じで、もの凄く快感なんだとか。
それは俺にだって想像できるけど、なんだかもやっとしたまま、けれど断るなんて選択肢もなく。
「こんなこと頼めるの琉真だけだ」って照れた顔で言われたら、ノックアウトされるしかないだろ。少し俯いて、斜めからの上目遣い。長い睫の下からちらりと俺を見る瞳が羞恥を湛えていて色っぽい。
もしも、の中にあった、豪も俺のことを好きで、恋人になれたら……なんて。その時には、当然するはずだったキスは、許してくれなかった。あからさまにじゃないけど、気配を感じたらさりげなく反らすから、首や耳に愛撫をすることで自分を宥めてきた。
俺が本当に欲しいのは……豪、お前の心だっていうことは、はっきりしているのに。
結局、反応してしまったふがいないムスコさんを目にして発奮した豪にいいようにされ、犯された気分満載の朝、久しぶりの本社へと向かう。中学の卒業式の思い出と入り乱れて、自分がどうなったのかも解らない。アラームで目覚めると、いつも通り豪は姿を消していた。
アパートに置きっぱなしだった車は、たまに豪が乗ってくれているから、バッテリーは上がっていなかった。
入社するとき、こんなにも長期出張が多いと知っていれば、たとえ中古でも、車なんて買わなかった。ただ、地方都市だから公共機関のアクセスが悪く、自家用車があると便利なのも確かだから維持しているにすぎない。
これの寿命が来たら、駐車場解約してもいいかな……とぼんやり思考する。
卒業式の後、実家同士でも親の目を盗んでは互いの部屋で行為をしていた。大学生になり、俺が一人暮らしを始めると、豪が入り浸り始めた。俺が地元企業に就職して、豪はそのまま院に進んでから家業を手伝うようになり、やっぱり都合よく俺にセックスを強請る。
断られるなんて、微塵も思ってないに違いない。
確かに、俺は豪しか知らない。自覚して、はっきり好きだと意識したあの中学の時から、綺麗だとか可愛いだとか一瞬は感じても、女に恋をしたことがない。だからといって男にそう感じるわけでもないから、自分がゲイなのかも判らずじまいだ。
全国津々浦々、短くても一週間、一ヶ月なんて当たり前、今回みたいに数ヶ月の出張もざらにある。はっきりいって本社勤務の日数の方が少ないから、本当ならアパートに一人暮らしなんて、経済的にはもったいないの一言に尽きる。遠くても実家から通勤した方がいい。家にいない日の方が多いんだから。
だけど、それでも――
豪が来るから。あの部屋に。
豪が乗るから。この車に。
どちらも手放せなくて。ただの都合のいい男だと解っていても。
瞬く間に復活したソレに当然気付かないはずもなく、豪が微笑む。
「いいぜ、こいよ」
腰が辛そうな豪を横向きにして、片足だけ引き上げて、二ラウンド目に突入。最後は正常位で、すがりつくように肩に腕を回してくる豪を穿った。
また中で放って、豪に被さったまま極力体重をかけないようにしていると、突如豪が突っ張ってくる。
「きたきた……」
うー、と唸って痛そうな顔をする。俺は慌てた。
「悪い、どっか辛くなってきたか」
「ちょ、すまん。退いて」
かなり強く押されて、俺はベッドから降りた。豪は臍の辺りを両手で押さえて冷や汗をかいている。見守っていると、少し経ってから勢いよく起きあがり、脱兎のごとく部屋から出て行ってしまった。素っ裸のままで。
どうやら腹痛らしいと判ったものの、どうしようもなくて俺はただはらはらしながら待つしかない。手持ち無沙汰に服を身に着け、廊下に出ようとして思いとどまる。
自分だったら、腹を下している真っ最中にドアの前で待たれたくなんてない。恥ずかしすぎる。ここで待った方がいいと思い直して、ベッドに腰掛けた。
腹痛の原因は当然俺だろう。出してと請われて中出ししてしまったけど、やっぱりゴムを付けるべきだったんだ。俺と違って男とのセックスなんて予想外だった豪が、女じゃないから中でも大丈夫って程度にしか思っていなくても不思議じゃない。
押し寄せる後悔にうなだれて、膝の上に両肘を突いて、勉強机の上で小さな目覚まし時計が時を刻むのを聞きながら待つ。
怒っているに違いないと信じていたから、やがて戻ってきた豪の満足げな笑顔を見て、俺は言葉に詰まった。
「あ、あの、豪」
ごめんなって言いたかったのに、「サンキューな」って爽やかに笑い掛けられて、ぽかんと口が開きっぱなしだ。
そんな俺の足下に散らばったままの制服を集めて椅子の背にぞんざいに掛けると、豪はクロゼットから私服を出して身に着け始める。
「いやー、昔からそういう体質だったけど、最近ホント便秘が酷くてさ。だからって浣腸するのも抵抗あって。したら琉真が俺のこと好きって言うだろ。男抱けるなら気持ちよくしてもらえて更に便秘解消するんじゃねえのって思ったんだよなー」
呆気にとられて言葉にならない俺の前で、「ああすっきりしたー」と豪は爽やかに笑っていた。
ごく普通の腐れ縁の親友から、なんだか訳の分からない関係になってしまい、戸惑いばかりだった。
一番近いのは、セフレなんだろう。但し、基本的に女好きというかノーマルな豪だから、欲しいのは精液込みの快楽だ。アナルを掘られる時の、もっというなら腰を引くときの感覚が、便が出ていくときの感覚と同じで、もの凄く快感なんだとか。
それは俺にだって想像できるけど、なんだかもやっとしたまま、けれど断るなんて選択肢もなく。
「こんなこと頼めるの琉真だけだ」って照れた顔で言われたら、ノックアウトされるしかないだろ。少し俯いて、斜めからの上目遣い。長い睫の下からちらりと俺を見る瞳が羞恥を湛えていて色っぽい。
もしも、の中にあった、豪も俺のことを好きで、恋人になれたら……なんて。その時には、当然するはずだったキスは、許してくれなかった。あからさまにじゃないけど、気配を感じたらさりげなく反らすから、首や耳に愛撫をすることで自分を宥めてきた。
俺が本当に欲しいのは……豪、お前の心だっていうことは、はっきりしているのに。
結局、反応してしまったふがいないムスコさんを目にして発奮した豪にいいようにされ、犯された気分満載の朝、久しぶりの本社へと向かう。中学の卒業式の思い出と入り乱れて、自分がどうなったのかも解らない。アラームで目覚めると、いつも通り豪は姿を消していた。
アパートに置きっぱなしだった車は、たまに豪が乗ってくれているから、バッテリーは上がっていなかった。
入社するとき、こんなにも長期出張が多いと知っていれば、たとえ中古でも、車なんて買わなかった。ただ、地方都市だから公共機関のアクセスが悪く、自家用車があると便利なのも確かだから維持しているにすぎない。
これの寿命が来たら、駐車場解約してもいいかな……とぼんやり思考する。
卒業式の後、実家同士でも親の目を盗んでは互いの部屋で行為をしていた。大学生になり、俺が一人暮らしを始めると、豪が入り浸り始めた。俺が地元企業に就職して、豪はそのまま院に進んでから家業を手伝うようになり、やっぱり都合よく俺にセックスを強請る。
断られるなんて、微塵も思ってないに違いない。
確かに、俺は豪しか知らない。自覚して、はっきり好きだと意識したあの中学の時から、綺麗だとか可愛いだとか一瞬は感じても、女に恋をしたことがない。だからといって男にそう感じるわけでもないから、自分がゲイなのかも判らずじまいだ。
全国津々浦々、短くても一週間、一ヶ月なんて当たり前、今回みたいに数ヶ月の出張もざらにある。はっきりいって本社勤務の日数の方が少ないから、本当ならアパートに一人暮らしなんて、経済的にはもったいないの一言に尽きる。遠くても実家から通勤した方がいい。家にいない日の方が多いんだから。
だけど、それでも――
豪が来るから。あの部屋に。
豪が乗るから。この車に。
どちらも手放せなくて。ただの都合のいい男だと解っていても。
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