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亨珈

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初めてのセックス

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 豪が俺とセックスする理由は、最初からはっきりしている。
 普通なら思いつきもしないだろうそれを聞いたとき、驚愕に言葉も出なかった。でもその後すぐに脱力して苦笑して、豪らしいなと思った。
 俺がセックスしたことあるのは豪だけだけど、ほかにそんな理由でするやつは、きっといないだろう。

 家が近所でも、学校が離れていれば毎日会うこともない。恋愛感情だと気付いてからの日々が苦しくて、それが普通じゃないからと切り捨てることもできずに悶々としていた俺は、ついに中学の卒業式の後、豪に気持ちを告げた。クラスの皆とカラオケにでも行こうかなんて話していたから、その横を通り過ぎてそのまま帰るつもりだったのに、豪から俺に駆け寄ってきたりなんかするから。
 悪戯なのか、俺のボタンにキスまでして、一瞬意識が飛びそうになって、無我夢中で腕を引いてしまったんだ。

 中庭にある大きな枝垂れ桜が舞落ちて、ところどころでつむじを巻いていた。凄く情緒のある場所なのに、そのときだけなぜだか人影がなくて、俺と豪だけが静かに見つめ合っていた。
「好きなんだ、おまえが」
 まだ受験前の生徒も多くて閑散としていたのかもしれない。今だからふとそう思いつくけれど、そのときの俺には周りを気にするゆとりもなく、高鳴る鼓動とは逆に淡々と事実を告げた。
 豪は長い睫を瞬かせて、束の間瞠目した。
「俺も好きだけど。そういうことじゃなく、だよな。やっぱり」
 茶化すことなく小首を傾げるその肩に、白に近い花弁が降り積もる。
 気持ち悪い。やめてくれよ、ばっかじゃねえの。いつも通りの声音で、そう返されるのを覚悟していた。ごめんなって謝って、もう二度と話しかけないつもりだった。拒絶されるのを前提に、ありとあらゆる展開を予想して、それでも伝えると決めてしまったから。口に出してしまったら、もう戻れない。
 ごくりと唾を飲み静かに見つめていると、反対側に首をまた傾げて、それから豪はふわりと笑った。
「それが本当ならさ……今からセックスしてみようぜ」
 声にならないまま、ただ息を飲み、言葉の意味を、真意を測りかねて目で問う。豪は一歩足を踏み出して至近距離から俺を見つめ。その瞳がいたずらを思い付いた子供のようにきらめいていた。
「琉真、俺を抱けるのか。男の俺を」
 どうやって家まで帰ったのかあやふやで。気付いたときには豪のベッドでマウントポジションになっていた。

 傷つけたくなくて、必死にほぐした。帰りがけにドラッグストアでローションを買ったのは豪自身で、使えよと握らされて、これが夢なら覚めないでくれと願った。
「ん、い……ぁ、そこ」
 既に二本入れてゆっくり広げている最中に指摘された箇所が豪のイイトコロで、ゆるゆると刺激を続けていると、豪のペニスは自分の腹に届くほどに反り返っていく。
 先走りを指先に絡めて亀頭をくるくると撫でながら中の愛撫を続けていると、豪の腰が揺れた。四つん這いで獣のポーズでそんなことをされると、俺の我慢はもちそうにない。痛い思いをさせたくなくてひたすら解して、しつこいって豪が上半身をすっかりシーツに着けてしまうまで続けた。
「も、いーから……りゅうま」
 辿々しく口にして見上げてくる豪の可愛いこと可愛いこと。すらりとくびれた腰から下の動きが扇状的すぎるのに、大好きな顔が快楽にとろけて涙を浮かべて感じている。
 耐えられなかった。
 最大にたかぶっているペニスを押し進めると、意外にすんなりと入っていく。はくはくと口を開けて喘いでいる豪の両目は見開かれていて、流石に辛いのかも知れないと思ったけど、思っただけで体は抑制が利かない。
 ひたりと冷たい臀部に腿が当たるまで腰を突き進めると、ゆるゆると円を描くように腰を使った。
「ぁ、あ……」
 漏れる声には艶があり、苦しいのかも知れないけど、痛そうではなく。いいところをぐりっと押すと乾いた悲鳴を上げて白が混じった先走りをこぼれさせた。
「動くからな」
 必死に堪えていた情動を解放してリズミカルに腰を使うと、次第に豪の声が甘くなっていく。その喘ぎに恍惚と聞き惚れながら穿ち続ける。すぐにでもイキそうなのに、もしかしたらこれが最初で最後かもしれないとも考えて、なるべく長引かせたかった。
 それでも、いつか絶頂はやってくる。
「ぁ、も、いく……っ」
 先に豪が果てて、それに連動してきゅうっと絞られて、俺は中にそのまま放ってしまった。ゴムを着けようとしたとき豪に止められたから、外出しするつもりだったのに。
「ご、豪……ごめん、中に」
「いんだよ、こうして欲しかったんだ、からっ」
 どくどくと放出されるものを、中が蠢いて飲み込もうとしている。勿論そこは出すところでそんなことはあり得ないって理性では解っているのに、色惚けした幸せなおつむでは、豪の好意も恋愛感情かもなんて微かに期待してしまっていた。
 同性の欲望の果てに出されたものなんて、自分のものだって臭いには辟易するのに……欲しかった、だなんて。
 もしかしたら豪の方からも何かしら好意を持たれていたのかもなんて、迂闊にも期待してしまったんだ。
 なんて浅はかな、俺。
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