3 / 35
いつかくるその日まで
しおりを挟む
ボクサーパンツを下げられると、反り返ったものが飛び出した。その下にある袋を口に含み舐め回し、溢れる唾液を見せつけるように垂らしながら、竿の部分を舐め上げられる。
物理的な刺激も勿論のこと、俺は豪の表情に釘付けになり、視覚的な刺激だけでもうノックアウトされてしまう。
抑えきれない吐息がこぼれる。
こんなこと、いつまで続けたって無意味なのに。
欲しいのは、豪の心だ。俺だけを恋い慕ってくれる気持ちが欲しい。
いつだって綺麗な女性を隣に歩いて、自慰なんて必要のない生活を送っているこいつに、男の恋人なんて要らない。
解ってる。よく解ってる。ずっと傍にいた俺自身が誰より知っている。
だからこそ、もう二度と会えなくなってもいい覚悟で気持ちを伝えたんだ。なのに。
深く咥内に迎え入れられて舌を絡めて吸われ、もう弾けそうだ。荒くなる呼吸を確認するように、艶めいた眼差しがずっと俺の顔から離れない。
絶頂が来る。そのタイミングで、ぴたりと豪が動きを止めた。
「っは……ご、う」
意志に反して腰を押しつけるような動きをしてしまう俺を見上げて、豪の表情は誇らしげだ。
「琉真、その気になっただろ」
当たり前だ。好きなんだ。どうやって誤魔化そうとしても、体は素直に反応してしまう。
口では突っぱねようとしても、流されてしまう。豪に迫られて、俺が勝てる筈がない。
「帰ったばっかで疲れてんだろ。俺が全部やるから」
ゆっくりと立ち上がった豪に誘われて、ふらふらとベッドに向かう。下げられていただけのボクサーパンツも足から抜かれて、素っ裸で仰向けに転がる。そこへ、自分も着衣を解いた豪が、ローション片手に跨って来た。
両手に広げたローションをまずは俺のものになすりつけると、滑りを確認する。くちゅくちゅとなぶられて、滲みだした先走りと混ざった液体が濁りながら垂れていく。併せてむくりと容積を増したそれに片手を添えたまま、もう片方の手は自分の背後に回した。
「ん……」
くぐもった声を漏らして、豪の手が蠢く。その白い指先がしているところは見えなくても、濡れた音に刺激されて俺の喉も鳴ってしまう。
はちきれそうに膨らんだ俺のペニスを細めた目がうっとりと見つめて、それからようやく待ち望んでいた瞬間がやってきた。
くるくると縁を先端でなぞり、口がほわりと緩むのを待って、ずぷんと豪の体が沈む。
「あ……」
少し喉を反らせて、唇が開く。殆ど一息に根本まで納めて、俺の下腹に豪の尻が乗る。体温の低いその部位が懐かしい。数ヶ月ぶりのその感触に酔いしれ、それ以上に屹立を包む柔で力強い内襞にもっていかれないように、懸命に堪える。
「久しぶり、琉真の」
俺以外のなら受け入れていたのかとぼんやりとした痛みを感じるが、今はそれもどうでもいい。豪の言葉に翻弄されていたら身が持たない。
ぐるりと腰を回してから、俺の腰骨に手を突いて、上下に動かし始める。笠の張った部分がいいところを掠める度に甘い声が落ちて、持って行かれそうになる。
豪がイイと、俺もイイ。
体だけしか繋がっていなくても、このひととき、シンクロしているという充足感。
ずっと、ずっと終わらないでいて欲しい――
けれど、溜まりに溜まった欲望をいつまでも抑えておけるはずもなく。
いつの間にか俺の方から豪の腰を支えて、がむしゃらに下から突き上げて達してしまっていた。
「あ……いい、いっぱいくれ」
その瞬間にはいつもいつも凄い締め付けが俺を離さない。最奥に突き入れたところを捕獲されて、洞窟から抜け出せなくなる。ぎゅうぎゅうに絞られる。蠕動する体内。最後の一滴まで出さないと緩んでもくれなくて、一発目なのにもうへろへろだ。
「りゅ、ま」
長い舌がもつれたかのように甘えた声で呼ばれる。とすんと胸の上に合わさってくる体温は低くて、汗に濡れた互いの肌がひたりと吸いつく。
重なる鼓動。
気持ちは重なることがなくても。
「豪」
艶やかな黒髪を撫でながらうなじに唇を寄せると、首を振って逃げていく。キスも、キスマークも嫌う豪。当然だな。俺たちは恋人同士じゃない。それなのに、誘いを掛ける時だけ、自分からしてくるんだ。俺には主導権も選択権もない。
欲しても、欲しても、手に入るのはカラダだけ。それだって全部じゃない。好きなようにはさせてくれない。ただ、豪の欲しがるものを与えるだけの、ひとときの快楽と悦楽を共有する相手でしかない。
ずっと傍にいて、喧嘩らしい喧嘩をしたことがない俺たちには、決定的な離別なんてないのかもしれない。
こうやって、気まぐれに訪れる豪とカラダを重ねて、ただ時だけが過ぎて。
どちらかが結婚すれば、終わる。
それでも、俺は――
いつかくるだろうその日まで、喉元まで上がって息が詰まるくらいの切なさを溜め込んだまま、ただ抱き続けていくしかないのか。
物理的な刺激も勿論のこと、俺は豪の表情に釘付けになり、視覚的な刺激だけでもうノックアウトされてしまう。
抑えきれない吐息がこぼれる。
こんなこと、いつまで続けたって無意味なのに。
欲しいのは、豪の心だ。俺だけを恋い慕ってくれる気持ちが欲しい。
いつだって綺麗な女性を隣に歩いて、自慰なんて必要のない生活を送っているこいつに、男の恋人なんて要らない。
解ってる。よく解ってる。ずっと傍にいた俺自身が誰より知っている。
だからこそ、もう二度と会えなくなってもいい覚悟で気持ちを伝えたんだ。なのに。
深く咥内に迎え入れられて舌を絡めて吸われ、もう弾けそうだ。荒くなる呼吸を確認するように、艶めいた眼差しがずっと俺の顔から離れない。
絶頂が来る。そのタイミングで、ぴたりと豪が動きを止めた。
「っは……ご、う」
意志に反して腰を押しつけるような動きをしてしまう俺を見上げて、豪の表情は誇らしげだ。
「琉真、その気になっただろ」
当たり前だ。好きなんだ。どうやって誤魔化そうとしても、体は素直に反応してしまう。
口では突っぱねようとしても、流されてしまう。豪に迫られて、俺が勝てる筈がない。
「帰ったばっかで疲れてんだろ。俺が全部やるから」
ゆっくりと立ち上がった豪に誘われて、ふらふらとベッドに向かう。下げられていただけのボクサーパンツも足から抜かれて、素っ裸で仰向けに転がる。そこへ、自分も着衣を解いた豪が、ローション片手に跨って来た。
両手に広げたローションをまずは俺のものになすりつけると、滑りを確認する。くちゅくちゅとなぶられて、滲みだした先走りと混ざった液体が濁りながら垂れていく。併せてむくりと容積を増したそれに片手を添えたまま、もう片方の手は自分の背後に回した。
「ん……」
くぐもった声を漏らして、豪の手が蠢く。その白い指先がしているところは見えなくても、濡れた音に刺激されて俺の喉も鳴ってしまう。
はちきれそうに膨らんだ俺のペニスを細めた目がうっとりと見つめて、それからようやく待ち望んでいた瞬間がやってきた。
くるくると縁を先端でなぞり、口がほわりと緩むのを待って、ずぷんと豪の体が沈む。
「あ……」
少し喉を反らせて、唇が開く。殆ど一息に根本まで納めて、俺の下腹に豪の尻が乗る。体温の低いその部位が懐かしい。数ヶ月ぶりのその感触に酔いしれ、それ以上に屹立を包む柔で力強い内襞にもっていかれないように、懸命に堪える。
「久しぶり、琉真の」
俺以外のなら受け入れていたのかとぼんやりとした痛みを感じるが、今はそれもどうでもいい。豪の言葉に翻弄されていたら身が持たない。
ぐるりと腰を回してから、俺の腰骨に手を突いて、上下に動かし始める。笠の張った部分がいいところを掠める度に甘い声が落ちて、持って行かれそうになる。
豪がイイと、俺もイイ。
体だけしか繋がっていなくても、このひととき、シンクロしているという充足感。
ずっと、ずっと終わらないでいて欲しい――
けれど、溜まりに溜まった欲望をいつまでも抑えておけるはずもなく。
いつの間にか俺の方から豪の腰を支えて、がむしゃらに下から突き上げて達してしまっていた。
「あ……いい、いっぱいくれ」
その瞬間にはいつもいつも凄い締め付けが俺を離さない。最奥に突き入れたところを捕獲されて、洞窟から抜け出せなくなる。ぎゅうぎゅうに絞られる。蠕動する体内。最後の一滴まで出さないと緩んでもくれなくて、一発目なのにもうへろへろだ。
「りゅ、ま」
長い舌がもつれたかのように甘えた声で呼ばれる。とすんと胸の上に合わさってくる体温は低くて、汗に濡れた互いの肌がひたりと吸いつく。
重なる鼓動。
気持ちは重なることがなくても。
「豪」
艶やかな黒髪を撫でながらうなじに唇を寄せると、首を振って逃げていく。キスも、キスマークも嫌う豪。当然だな。俺たちは恋人同士じゃない。それなのに、誘いを掛ける時だけ、自分からしてくるんだ。俺には主導権も選択権もない。
欲しても、欲しても、手に入るのはカラダだけ。それだって全部じゃない。好きなようにはさせてくれない。ただ、豪の欲しがるものを与えるだけの、ひとときの快楽と悦楽を共有する相手でしかない。
ずっと傍にいて、喧嘩らしい喧嘩をしたことがない俺たちには、決定的な離別なんてないのかもしれない。
こうやって、気まぐれに訪れる豪とカラダを重ねて、ただ時だけが過ぎて。
どちらかが結婚すれば、終わる。
それでも、俺は――
いつかくるだろうその日まで、喉元まで上がって息が詰まるくらいの切なさを溜め込んだまま、ただ抱き続けていくしかないのか。
1
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ただいま、おかえり、だいすき、また来年。
ばりお
BL
昨年のお祭りで「来年は一緒に祇園祭に行こう」と約束した月影さんと武蔵君。
一年越しの約束を叶えます。
武蔵君の実家に立ち寄り、ご両親の温かさに触れて楽しい時間を過ごす二人。
しかし祭り会場で武蔵君の旧知とバッタリ出くわして、そこから事態は思わぬ方向へ……。
(当作品は2019年にpixivで公開した作品の再録です)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる