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告白、そして最悪な展開
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中学の卒業式、既に市外に進学を決めていた俺と、豪の離別は決定的になっていた。
幼稚園で仲良くなり、そのまま市立の小学校、中学校と共に通い、沢山の時間を共有した。豪の容姿に惹かれて寄ってくる女子は、花の蜜に誘われる蝶のように華やかで、それでも巧く調整して男のツレとの付き合いも大事にしていたから、嫌われて孤立することもなかった。
取り立てて飾っているわけじゃないのに、独特のオーラで人を引き寄せる。途中までは、ただ一緒に遊ぶのが楽しかっただけの俺は、年を経るにつれ寂しさを募らせるようになった。
決定的だったのは、中三の春。放課後の自転車置き場でキスシーンを見たことだろう。トタンに遮られて見えにくいと思ったんだろうが、校舎脇の細い隙間を抜けて近道をしていた俺にははっきりと見えてしまっていた。
同じ学年で一番の美人と誰もが肯定するマドンナと、豪。白い頬を紅潮させて豪に抱かれている彼女を見た瞬間、駆け寄って引き剥がしたい衝動に駆られた。その次の瞬間に、自分自身に動揺し、後ずさりしてから無理矢理視線を外して駆け戻った。
どんなに考えても、豪に嫉妬したわけじゃないのは解りきっていた。女の方に悋気を覚えたんだ。
そんな馬鹿な。
何度も何度も自分に問い、そうして納得した。
今時小学生でも誰それが好き、と友達と話題にするのに、付き合いで無難そうな名前を挙げていたものの、その子がほかの誰かを好きと後で聞かされてがっかりしたことがない。
中学に上がってからも同じ状態が続き、いつだって俺が建前として引き合いに出すのは、間違っても俺なんか相手にしてくれなさそうなレベルの高い女子の名前。なんだお前もかよって皆が納得してくれるような、それで追求されないような、そんな存在。
そうだ。俺は女を好きになったことがないんだ。そう思い至って、ようやく何かのピースがかちりとはまったかのように、心が落ち着いた。
あのキスシーンを見て、ようやく自覚したんだ。俺が欲しいのは、豪なんだって。
日焼けしにくい質だという白い肌を乱暴に撫で上げる。その間ずっと離れることのない互いの唇は開いたまま、舌を伸ばして中を探り合い、唾液を啜る間もなく上顎を愛撫する。
鼻にかかった甘い声が俺の理性を溶かしていく。
少しだけ長くした爪の先で胸元を引っかく仕草は強請っている証拠で、誘われるままに豪の乳首を摘むと、漏れる声のトーンが上がる。
「りゅ、ま……琉真、ああ……舐めろよ、はや、く」
言われるままに舌を伸ばしながら、中学の卒業式の日を思い出していた。
一足先に帰った母親は、午後から出勤だからと急いでいた。昼飯は作ってあると言うから、同級生たちと街へ繰り出すでもなく、俺は帰ろうとしていた。
そこへ、学ランの前を全開にした豪が小走りに現れたんだった。
袖のボタンまで見事に全部なくなっている学生服はしまりがないはずなのに、豪が羽織っているだけでイケてるように見える。これは元々そういう上着で、かっちり全部のボタンがある俺の方が格好悪いような。
「琉、待てよっ」
襟足の長い髪が肩に当たって跳ねる。呼ばれて振り返って瞠目していると、俺の学ランを確認した豪がからかうように笑った。
「誰かにお下がりで遣る予定なのか」
「別に」
前ボタンに視線だけ落として、どれひとつあげる相手のいない自分が惨めになった。言われてみれば、後輩の誰かに譲るとか、今度入学する予定の誰かにっていう手もあるわけだ。生憎欲しがっている知り合いもいない。
沢山の女生徒にもみくちゃにされているところから抜け出してきて、わざわざ俺をからかいたかったんだろうか。ムッとしているところに豪が手を差し出してきて、目をしばたく。
「なんだよ」
「だからー、お下がりの予定ないなら、俺がもらってやるよ。そしたら少しは格好つくだろ」
別に格好なんてつかなくていい。更に仏頂面になったところに、焦れた豪が両手で前立てを掴んで上から二番目のボタンを外してしまった。
「ほら、こっちんが男前」
「あのな、豪」
ついでのようにボタンにキスをしてちゅってリップ音までさせて。綺麗なウインクのおまけつきだ。なんだかどうでもよくなってくる。
この日をずっと待っていた。
そして、怖れてもいた。
黙って消えようと思いもしたし、でもそれじゃあ親からバレたあとに酷く詰られそうだなと思い直した。
責められてもいいから、この気持ちにピリオドを打ちたかった。離れてしまえばどうにかなると思ってた。顔を見なくなれば、徐々に消えるんじゃないかって。
今ならそれは間違いだったって解る。でもこの後の展開が最悪だったのも間違いない。
物思いに耽る俺の前で、豪は自ら服を脱いでいく。シャツもジーンズも、無造作に床に投げ捨てて、俺の前に膝を突き、上目に見上げてくる。
口角の上がった唇から、ちろりと赤い舌が覗く。指の腹で布地の上から俺の中心を撫でると、顔を寄せて大きく甘噛みした。
もう、やめたい。離れたい。諦めたい。
辛すぎて胸が痛くて。それなのに、もしかしたらという僅かな期待があるから諦めきれない。
どんな括りでもいい。確かに自分が豪に必要とされているって信じていたくて、幼なじみで親友というポジションをキープしているように見せかけて、ただ時折、豪が必要としたときにだけ体を繋いでいる。
切なくて、泣きたいくらいに惨めなのに、それでも豪の愛撫で中心が芯を持つ。下半身が重くなっていく。
幼稚園で仲良くなり、そのまま市立の小学校、中学校と共に通い、沢山の時間を共有した。豪の容姿に惹かれて寄ってくる女子は、花の蜜に誘われる蝶のように華やかで、それでも巧く調整して男のツレとの付き合いも大事にしていたから、嫌われて孤立することもなかった。
取り立てて飾っているわけじゃないのに、独特のオーラで人を引き寄せる。途中までは、ただ一緒に遊ぶのが楽しかっただけの俺は、年を経るにつれ寂しさを募らせるようになった。
決定的だったのは、中三の春。放課後の自転車置き場でキスシーンを見たことだろう。トタンに遮られて見えにくいと思ったんだろうが、校舎脇の細い隙間を抜けて近道をしていた俺にははっきりと見えてしまっていた。
同じ学年で一番の美人と誰もが肯定するマドンナと、豪。白い頬を紅潮させて豪に抱かれている彼女を見た瞬間、駆け寄って引き剥がしたい衝動に駆られた。その次の瞬間に、自分自身に動揺し、後ずさりしてから無理矢理視線を外して駆け戻った。
どんなに考えても、豪に嫉妬したわけじゃないのは解りきっていた。女の方に悋気を覚えたんだ。
そんな馬鹿な。
何度も何度も自分に問い、そうして納得した。
今時小学生でも誰それが好き、と友達と話題にするのに、付き合いで無難そうな名前を挙げていたものの、その子がほかの誰かを好きと後で聞かされてがっかりしたことがない。
中学に上がってからも同じ状態が続き、いつだって俺が建前として引き合いに出すのは、間違っても俺なんか相手にしてくれなさそうなレベルの高い女子の名前。なんだお前もかよって皆が納得してくれるような、それで追求されないような、そんな存在。
そうだ。俺は女を好きになったことがないんだ。そう思い至って、ようやく何かのピースがかちりとはまったかのように、心が落ち着いた。
あのキスシーンを見て、ようやく自覚したんだ。俺が欲しいのは、豪なんだって。
日焼けしにくい質だという白い肌を乱暴に撫で上げる。その間ずっと離れることのない互いの唇は開いたまま、舌を伸ばして中を探り合い、唾液を啜る間もなく上顎を愛撫する。
鼻にかかった甘い声が俺の理性を溶かしていく。
少しだけ長くした爪の先で胸元を引っかく仕草は強請っている証拠で、誘われるままに豪の乳首を摘むと、漏れる声のトーンが上がる。
「りゅ、ま……琉真、ああ……舐めろよ、はや、く」
言われるままに舌を伸ばしながら、中学の卒業式の日を思い出していた。
一足先に帰った母親は、午後から出勤だからと急いでいた。昼飯は作ってあると言うから、同級生たちと街へ繰り出すでもなく、俺は帰ろうとしていた。
そこへ、学ランの前を全開にした豪が小走りに現れたんだった。
袖のボタンまで見事に全部なくなっている学生服はしまりがないはずなのに、豪が羽織っているだけでイケてるように見える。これは元々そういう上着で、かっちり全部のボタンがある俺の方が格好悪いような。
「琉、待てよっ」
襟足の長い髪が肩に当たって跳ねる。呼ばれて振り返って瞠目していると、俺の学ランを確認した豪がからかうように笑った。
「誰かにお下がりで遣る予定なのか」
「別に」
前ボタンに視線だけ落として、どれひとつあげる相手のいない自分が惨めになった。言われてみれば、後輩の誰かに譲るとか、今度入学する予定の誰かにっていう手もあるわけだ。生憎欲しがっている知り合いもいない。
沢山の女生徒にもみくちゃにされているところから抜け出してきて、わざわざ俺をからかいたかったんだろうか。ムッとしているところに豪が手を差し出してきて、目をしばたく。
「なんだよ」
「だからー、お下がりの予定ないなら、俺がもらってやるよ。そしたら少しは格好つくだろ」
別に格好なんてつかなくていい。更に仏頂面になったところに、焦れた豪が両手で前立てを掴んで上から二番目のボタンを外してしまった。
「ほら、こっちんが男前」
「あのな、豪」
ついでのようにボタンにキスをしてちゅってリップ音までさせて。綺麗なウインクのおまけつきだ。なんだかどうでもよくなってくる。
この日をずっと待っていた。
そして、怖れてもいた。
黙って消えようと思いもしたし、でもそれじゃあ親からバレたあとに酷く詰られそうだなと思い直した。
責められてもいいから、この気持ちにピリオドを打ちたかった。離れてしまえばどうにかなると思ってた。顔を見なくなれば、徐々に消えるんじゃないかって。
今ならそれは間違いだったって解る。でもこの後の展開が最悪だったのも間違いない。
物思いに耽る俺の前で、豪は自ら服を脱いでいく。シャツもジーンズも、無造作に床に投げ捨てて、俺の前に膝を突き、上目に見上げてくる。
口角の上がった唇から、ちろりと赤い舌が覗く。指の腹で布地の上から俺の中心を撫でると、顔を寄せて大きく甘噛みした。
もう、やめたい。離れたい。諦めたい。
辛すぎて胸が痛くて。それなのに、もしかしたらという僅かな期待があるから諦めきれない。
どんな括りでもいい。確かに自分が豪に必要とされているって信じていたくて、幼なじみで親友というポジションをキープしているように見せかけて、ただ時折、豪が必要としたときにだけ体を繋いでいる。
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