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ずるい
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呆れるやら悔しいやら悲しいやらで、取り敢えず手を挙げて揃えた指で智洋のおでこをペチンと叩いてやった。
てっ、と顔を離したところで鼻を摘まんでギューッと力を込めた。
「バカ! そんなこと一番に俺に相談しろよ! 当事者なんだから」
いてててと苦鳴を漏らしながら、俯きがちに涙目で上目遣いに見上げられては堪らない。
ヤバい。駄目だ、普段すっごく凛々しいのに俺の前だけでこんな顔すんの。
「あいつはねー、智洋に気があんの。可愛さ余ってで意地悪される場合もあるかもだけど、そんなの証拠も何もないし何よりあいつはご同類だろ? 変な噂立ったら困るのはあっちだって一緒じゃん。なんでそんなあほらしい手に引っ掛かって振り回されてんの」
しゅんと項垂れている智洋が可愛すぎて、仕方がないから手を離すとしっかり鼻の頭が真っ赤になっていて、暫くは人前に出られそうにないご面相になっていた。それが赤鼻のトナカイみたいで間抜けに可愛くてくすくす笑いながら、ちゅっと鼻先に唇を落とした。
「それで? 体触らせたり触ったりキスしたりしてたんだ?」
「そ、そうだけど……」
ビクつきながらじっとしているのも可愛い。
それで? と訊きながら、手を下ろして行く。抵抗もなく今度は自分から太腿の間に手を入れると、ぴくんと反応して少し硬度を増す、それ。
「もしかして、手とか口とかでしてくれたんだ? 赤堀」
触れるか触れないかという微妙さで指の腹を動かすと、服越しでも反応しているのが如実に感じられる。ん、と眉根を寄せて口を噤むから、指先の力を少しだけ強くして上下に擦った。
「気持ち良かった? 他にも色々したの、この口で」
もう片方の手で、そっと唇をなぞる。浩司先輩よりちょっと厚みのある唇。そこから差し込んでそっと舌先を挟んだり引っ張ったりして、唾液を絡めてからまた静かに表面を撫でた。股間のものはもう痛そうなくらいに張り詰めていて、漏れる吐息も苦しそう。
それを確認して、俺は両手を離した。
あ、と思わず漏れた声が色っぽくて、俺の腰の後ろを直撃する。
「だ、から……男には……和明以外には勃たねえって」
「そう? こんなに簡単になっちゃってんのに?」
目蓋を伏せて苦しそうに喘ぐから、なんだかやたらに嗜虐心をそそられるんですけど。
だって、俺は傷付いたし怒ってんだから、簡単には許してやらねえ。
そっと、指の腹だけで触れるとピクリと反応がある。動かさずにそのままで目を合わせると、熱を孕んだ瞳が潤んでいた。
「口でしてもらっても、こんな風にならなかったなんて嘘だろ」
はあ、と零れる吐息が熱い。それでも俺の背に回したままの手が、拳を握った。
「嘘じゃ、な……」
指先でその下の塊をギュッと押さえつけると、腰が跳ねて目を瞑った。結構痛かった筈だ。そのつもりでやったんだから。
憎たらしいけど、可愛い。皆が俺のこと可愛い可愛い言うのは信じられなかったけど、普段凛々しくてかっこいい智洋に対してこの俺が可愛いって感じるんだから、ちっこけりゃもっと思われても仕方ねえかって、なんか納得してしまう。
でも憎らしいからもっと苛めてやれ。
「今なら出来るよ? いかせてもらったら~。赤堀呼んだら嬉々として来るんじゃねえ?」
当然そんなことして欲しくないし、いくらなんでも俺だって耐えられない。だけど悔しいから精一杯意地悪そうな顔を作ってゆるゆると指を動かし続けたら、目蓋を上げた智洋が、ぐっと歯を食いしばって睨んできた。
あ、やりすぎたかな。
ビクッとして手を離して、無言で見詰め合うことしばし。
でも俺から折れるとなんか悔しいし、黙ってじっと待っていたら、拳を開いた手が俺の背中を撫でて、そのまま両手をそっと取られた。どっかの貴婦人にするみたいにうやうやしく手の甲にキスを落とされて、構えていた肩からストンと力が抜けた。
「ホントごめん。もう、そういういちゃつくようなこと、あいつとしねえから……ちゃんと断るから。だからむくれてないで許してくれよ」
触れるだけのものから、音を立てるキスへと変わり、そのまま舌と唇を指に這わされて快感で体が震える。
「ずるい、智洋……」
「どうしていいか、わかんね」
指先を吸いながら舌を這わされて、吐息の温度が急上昇する。
指から口を離した智洋が顔を寄せてきて、まだ赤みの残る鼻先を俺の鼻に寄せて切なそうに目を細めるから、堪らなくなって自分から目を閉じた。
最初遠慮しながらくっ付けあって、すぐに貪るような口付けに変わる。
それからどちらからともなく伸ばした手で、お互いの象徴を慰めあった。
てっ、と顔を離したところで鼻を摘まんでギューッと力を込めた。
「バカ! そんなこと一番に俺に相談しろよ! 当事者なんだから」
いてててと苦鳴を漏らしながら、俯きがちに涙目で上目遣いに見上げられては堪らない。
ヤバい。駄目だ、普段すっごく凛々しいのに俺の前だけでこんな顔すんの。
「あいつはねー、智洋に気があんの。可愛さ余ってで意地悪される場合もあるかもだけど、そんなの証拠も何もないし何よりあいつはご同類だろ? 変な噂立ったら困るのはあっちだって一緒じゃん。なんでそんなあほらしい手に引っ掛かって振り回されてんの」
しゅんと項垂れている智洋が可愛すぎて、仕方がないから手を離すとしっかり鼻の頭が真っ赤になっていて、暫くは人前に出られそうにないご面相になっていた。それが赤鼻のトナカイみたいで間抜けに可愛くてくすくす笑いながら、ちゅっと鼻先に唇を落とした。
「それで? 体触らせたり触ったりキスしたりしてたんだ?」
「そ、そうだけど……」
ビクつきながらじっとしているのも可愛い。
それで? と訊きながら、手を下ろして行く。抵抗もなく今度は自分から太腿の間に手を入れると、ぴくんと反応して少し硬度を増す、それ。
「もしかして、手とか口とかでしてくれたんだ? 赤堀」
触れるか触れないかという微妙さで指の腹を動かすと、服越しでも反応しているのが如実に感じられる。ん、と眉根を寄せて口を噤むから、指先の力を少しだけ強くして上下に擦った。
「気持ち良かった? 他にも色々したの、この口で」
もう片方の手で、そっと唇をなぞる。浩司先輩よりちょっと厚みのある唇。そこから差し込んでそっと舌先を挟んだり引っ張ったりして、唾液を絡めてからまた静かに表面を撫でた。股間のものはもう痛そうなくらいに張り詰めていて、漏れる吐息も苦しそう。
それを確認して、俺は両手を離した。
あ、と思わず漏れた声が色っぽくて、俺の腰の後ろを直撃する。
「だ、から……男には……和明以外には勃たねえって」
「そう? こんなに簡単になっちゃってんのに?」
目蓋を伏せて苦しそうに喘ぐから、なんだかやたらに嗜虐心をそそられるんですけど。
だって、俺は傷付いたし怒ってんだから、簡単には許してやらねえ。
そっと、指の腹だけで触れるとピクリと反応がある。動かさずにそのままで目を合わせると、熱を孕んだ瞳が潤んでいた。
「口でしてもらっても、こんな風にならなかったなんて嘘だろ」
はあ、と零れる吐息が熱い。それでも俺の背に回したままの手が、拳を握った。
「嘘じゃ、な……」
指先でその下の塊をギュッと押さえつけると、腰が跳ねて目を瞑った。結構痛かった筈だ。そのつもりでやったんだから。
憎たらしいけど、可愛い。皆が俺のこと可愛い可愛い言うのは信じられなかったけど、普段凛々しくてかっこいい智洋に対してこの俺が可愛いって感じるんだから、ちっこけりゃもっと思われても仕方ねえかって、なんか納得してしまう。
でも憎らしいからもっと苛めてやれ。
「今なら出来るよ? いかせてもらったら~。赤堀呼んだら嬉々として来るんじゃねえ?」
当然そんなことして欲しくないし、いくらなんでも俺だって耐えられない。だけど悔しいから精一杯意地悪そうな顔を作ってゆるゆると指を動かし続けたら、目蓋を上げた智洋が、ぐっと歯を食いしばって睨んできた。
あ、やりすぎたかな。
ビクッとして手を離して、無言で見詰め合うことしばし。
でも俺から折れるとなんか悔しいし、黙ってじっと待っていたら、拳を開いた手が俺の背中を撫でて、そのまま両手をそっと取られた。どっかの貴婦人にするみたいにうやうやしく手の甲にキスを落とされて、構えていた肩からストンと力が抜けた。
「ホントごめん。もう、そういういちゃつくようなこと、あいつとしねえから……ちゃんと断るから。だからむくれてないで許してくれよ」
触れるだけのものから、音を立てるキスへと変わり、そのまま舌と唇を指に這わされて快感で体が震える。
「ずるい、智洋……」
「どうしていいか、わかんね」
指先を吸いながら舌を這わされて、吐息の温度が急上昇する。
指から口を離した智洋が顔を寄せてきて、まだ赤みの残る鼻先を俺の鼻に寄せて切なそうに目を細めるから、堪らなくなって自分から目を閉じた。
最初遠慮しながらくっ付けあって、すぐに貪るような口付けに変わる。
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