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だって、涙が出ちゃう
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一人で赤くなったり青くなったりしていると、ようやく智洋が続きを言う気になったようだ。
「あんなトコに一人でいて大丈夫なのか? 生徒会長がいない時はヤバいんじゃねえ?」
神の目でも持ってるんですかーっ!?
まさに居ない時にされたあんなことやこんなことを思い出して血の気が引く。
いやだ……あれ知られるくらいなら今ここで切腹したい。
「えーと、なんで? 確かに変人の集まりだけど」
そういう意味じゃないよね、って平静を装って返してみる。
智洋は、空いている手で顎の辺りを弄りながら思案していた。
「んー……はっきり何がどうとは言えないんだけどな。あの山下ってヤツも、やけにお前の方ばっか見てたしさ、それにあのうるせえ二人、見るからに和明のこと触りたがってたし」
「あははー」
乾いた笑いしか出せなかった……そう、シナリオの途中でもキャラ絡ませたがるし、ダイス貸せとか理由つけては手を握ったりなんだかんだ隣の席に来ようとしたり。
智洋が居るときにはそう露骨なことはしてこなかったけど、湖でジェイク(俺のキャラ)が水浴びしてる間に服隠されて素っ裸で探す羽目になったりとかな? 現実では何も恥ずかしいことはないわけだけど、そういうちまっとしたセクハラしてきやがるんだよな……だからシナリオが進まねえっての!
「で、でもまあ、全員ノーマル嗜好な筈だし、からかわれているだけじゃね? 山下はわかんねえけどさ、彼女いるって言ってたし、他に理由があって見てたんだろ」
なんか、言い訳っぽくなっちゃうけど、こんなことでイライラして欲しくないから一所懸命に取り繕おうとしてみた。
けど、智洋は喉の奥で唸りながら体を捻って、俺の足を跨ぐように膝を突いた。両手を壁に突いて体を支えているから、囲い込まれている状態になる。
「和明……」
瞼を伏せがちに見下ろしながら、顔が近付いてくる。
あ、キスされる。そう思って少し顎を上げる感じで目を瞑ったんだけど、近くに体温は感じるのに一向に触れてこない。
あれ? と目を開けると、体感通りに至近距離、鼻先がくっ付くようなとこに顔があって、射る様に見つめられていた。
どうして……? いつもなら、すぐにキスしてくるのに。
目つきが怖くて、楽しみのドキドキとは違う、キュッと締め付けられる感じで胸が鳴っている。
まさか……自分では誤魔化せたつもりだったけど、あいつらに色々されたのバレちゃってんだろうか。首筋舐められたり、乳首弄られたりして感じちゃったこと、気付いて怒らせた? もう、嫌われちゃった?
これ以上心の中の動揺を知られたくなくて、目を逸らしたい。でも、ここで逸らしたら絶対に怪しまれるから逸らせない。
頼むから、そんな睨み付けないで……。
息が苦しくて、唇がわなないて……瞬きした拍子に、眦から熱いものが頬を伝った。
「和明?」
変でもなんでもいい。もう見つめられているのに耐えられなくて、ギュッと目を瞑って俯いた。その顎を捕らえられてグイと上向かされる。
泣きたくなんかないから、これ以上溢れてくるなって念じながら頑なに目を閉じていると、瞼に暖かいものが触れた。
「──どうして泣くんだよ……」
困り果てた声がして、でもまだ開けるのは嫌で。
「だって……智洋、怒ってるじゃん……」
「怒ってんじゃねえよ」
確かに、今聞こえる声は怒ってないけど。でも、じゃあなんで睨んだりして、キスしてくれないんだよ。
体を縮こまらせて顔を背けようとしても、掴んだ手がそれを許してくれない。唇の感触が、頬を伝う。柔らかく押し付けて、きっと零れた涙を掬い取ってくれている。
それを思えば、怒っていないっていうのは真実なんだろうとか思うんだけど、でも。
「マーキングしてえ……」
不意に耳に届いた低い声。
意味が判らなくて、びっくりして思わずパチッと目を開けてしまった。
えーと、マーキングって、野生動物が自分の縄張り示す為に臭い付けるアレかなあ。
「智洋の縄張り? って何処?」
ちょっと不良っぽい外見ではあるけど、族とかチームとかは入ってないよね? 実家の近くだろうか。
「商店街の辺りー?」
顎を捕らわれたまま、怖いのは飛んで行ったから尋ねてみれば、その距離のまま智洋は、はあぁ~……と大きく溜め息をついた。
「ぜんっぜんちげーよ」
そんな全力で否定しなくても。
「ええと、じゃあじゃあ、出身中の近くとか」
懸命に考えてみても、そういうのと縁がなかった俺には見当が付かない。
「だから、違うって」
脱力したのか、腕を壁から離すと、俺の肩を抱きこむようにしてマットレスの上に転がった。横向きに向かい合って寝転んで、もぞもぞと智洋の顔が下に下りていく。
Tシャツを捲り上げて、胸をちろりと舌が這った。
「っあ、ん」
「こことか」
突起を強く吸われて仰け反る。下から上へと撫でながら肌を伝う指と手の平が、熱を高めていく。先端を舌先で突付いては転がし硬くなると指先でピンと弾く。
「ッつ、や……あっ」
反射で首を振ってしまうけれど、けして嫌なわけじゃない。
もっと、もっと触れて欲しい。そうして、さっきの視線の意味、ちゃんと教えて欲しい。
両方が硬くなり、指先だけで弄りながら、唇が音を立ててその周りを吸い上げて行く。
いつもなら優しいだけの行為が、瞬間的な痛みの後にジンと痺れるような甘い疼きを伴って、快感が背を突き抜ける。
ここも、ここも……と耳に届く声が欲望を伝えて来て、愛しいその人が口にした言葉の意味が、ようやく解った。
ずらされたハーフパンツを追いながら、下腹部にも唇は容赦しない。中心には触れずに、人目を避けて、柔肌ばかり狙って印を付けられて。
大きく開かされた太腿の内側、付け根に近い場所を吸われた時には、もう切ないほどに俺自身が反応していて腰が跳ねた。
「は……んあっ、ともひろぉ……!」
先刻とは理由の違う涙が溢れて、彼の髪に手を伸ばしてくしゃりと握る。
「気持ちいいか?」
「んっ、気持ちい……もっと、欲しいよ、智洋」
「んなエロいこと言うなよ。たまんねえ……今日は無理だろ」
愛撫を止めてずり上がって、また涙を唇で掬われる。
確かにそうなんだけど。明日、体育の授業もあるし無理なんだけど。
切なくて熱い体を持て余して、腰を突き出すように懇願してしまう。
「こんな中途半端なの、やだ」
智洋は、今度こそ唇を重ねてくれて、息が弾むほどに求め合ってからようやく手を伸ばして自分のスウェットを下着ごと下げた。
既にとろとろと雫を零し続けている俺のと一緒に擦り上げ始める。
二人一緒に熱を吐き出したとき、消灯五分前の音楽が鳴り始めた。
「あんなトコに一人でいて大丈夫なのか? 生徒会長がいない時はヤバいんじゃねえ?」
神の目でも持ってるんですかーっ!?
まさに居ない時にされたあんなことやこんなことを思い出して血の気が引く。
いやだ……あれ知られるくらいなら今ここで切腹したい。
「えーと、なんで? 確かに変人の集まりだけど」
そういう意味じゃないよね、って平静を装って返してみる。
智洋は、空いている手で顎の辺りを弄りながら思案していた。
「んー……はっきり何がどうとは言えないんだけどな。あの山下ってヤツも、やけにお前の方ばっか見てたしさ、それにあのうるせえ二人、見るからに和明のこと触りたがってたし」
「あははー」
乾いた笑いしか出せなかった……そう、シナリオの途中でもキャラ絡ませたがるし、ダイス貸せとか理由つけては手を握ったりなんだかんだ隣の席に来ようとしたり。
智洋が居るときにはそう露骨なことはしてこなかったけど、湖でジェイク(俺のキャラ)が水浴びしてる間に服隠されて素っ裸で探す羽目になったりとかな? 現実では何も恥ずかしいことはないわけだけど、そういうちまっとしたセクハラしてきやがるんだよな……だからシナリオが進まねえっての!
「で、でもまあ、全員ノーマル嗜好な筈だし、からかわれているだけじゃね? 山下はわかんねえけどさ、彼女いるって言ってたし、他に理由があって見てたんだろ」
なんか、言い訳っぽくなっちゃうけど、こんなことでイライラして欲しくないから一所懸命に取り繕おうとしてみた。
けど、智洋は喉の奥で唸りながら体を捻って、俺の足を跨ぐように膝を突いた。両手を壁に突いて体を支えているから、囲い込まれている状態になる。
「和明……」
瞼を伏せがちに見下ろしながら、顔が近付いてくる。
あ、キスされる。そう思って少し顎を上げる感じで目を瞑ったんだけど、近くに体温は感じるのに一向に触れてこない。
あれ? と目を開けると、体感通りに至近距離、鼻先がくっ付くようなとこに顔があって、射る様に見つめられていた。
どうして……? いつもなら、すぐにキスしてくるのに。
目つきが怖くて、楽しみのドキドキとは違う、キュッと締め付けられる感じで胸が鳴っている。
まさか……自分では誤魔化せたつもりだったけど、あいつらに色々されたのバレちゃってんだろうか。首筋舐められたり、乳首弄られたりして感じちゃったこと、気付いて怒らせた? もう、嫌われちゃった?
これ以上心の中の動揺を知られたくなくて、目を逸らしたい。でも、ここで逸らしたら絶対に怪しまれるから逸らせない。
頼むから、そんな睨み付けないで……。
息が苦しくて、唇がわなないて……瞬きした拍子に、眦から熱いものが頬を伝った。
「和明?」
変でもなんでもいい。もう見つめられているのに耐えられなくて、ギュッと目を瞑って俯いた。その顎を捕らえられてグイと上向かされる。
泣きたくなんかないから、これ以上溢れてくるなって念じながら頑なに目を閉じていると、瞼に暖かいものが触れた。
「──どうして泣くんだよ……」
困り果てた声がして、でもまだ開けるのは嫌で。
「だって……智洋、怒ってるじゃん……」
「怒ってんじゃねえよ」
確かに、今聞こえる声は怒ってないけど。でも、じゃあなんで睨んだりして、キスしてくれないんだよ。
体を縮こまらせて顔を背けようとしても、掴んだ手がそれを許してくれない。唇の感触が、頬を伝う。柔らかく押し付けて、きっと零れた涙を掬い取ってくれている。
それを思えば、怒っていないっていうのは真実なんだろうとか思うんだけど、でも。
「マーキングしてえ……」
不意に耳に届いた低い声。
意味が判らなくて、びっくりして思わずパチッと目を開けてしまった。
えーと、マーキングって、野生動物が自分の縄張り示す為に臭い付けるアレかなあ。
「智洋の縄張り? って何処?」
ちょっと不良っぽい外見ではあるけど、族とかチームとかは入ってないよね? 実家の近くだろうか。
「商店街の辺りー?」
顎を捕らわれたまま、怖いのは飛んで行ったから尋ねてみれば、その距離のまま智洋は、はあぁ~……と大きく溜め息をついた。
「ぜんっぜんちげーよ」
そんな全力で否定しなくても。
「ええと、じゃあじゃあ、出身中の近くとか」
懸命に考えてみても、そういうのと縁がなかった俺には見当が付かない。
「だから、違うって」
脱力したのか、腕を壁から離すと、俺の肩を抱きこむようにしてマットレスの上に転がった。横向きに向かい合って寝転んで、もぞもぞと智洋の顔が下に下りていく。
Tシャツを捲り上げて、胸をちろりと舌が這った。
「っあ、ん」
「こことか」
突起を強く吸われて仰け反る。下から上へと撫でながら肌を伝う指と手の平が、熱を高めていく。先端を舌先で突付いては転がし硬くなると指先でピンと弾く。
「ッつ、や……あっ」
反射で首を振ってしまうけれど、けして嫌なわけじゃない。
もっと、もっと触れて欲しい。そうして、さっきの視線の意味、ちゃんと教えて欲しい。
両方が硬くなり、指先だけで弄りながら、唇が音を立ててその周りを吸い上げて行く。
いつもなら優しいだけの行為が、瞬間的な痛みの後にジンと痺れるような甘い疼きを伴って、快感が背を突き抜ける。
ここも、ここも……と耳に届く声が欲望を伝えて来て、愛しいその人が口にした言葉の意味が、ようやく解った。
ずらされたハーフパンツを追いながら、下腹部にも唇は容赦しない。中心には触れずに、人目を避けて、柔肌ばかり狙って印を付けられて。
大きく開かされた太腿の内側、付け根に近い場所を吸われた時には、もう切ないほどに俺自身が反応していて腰が跳ねた。
「は……んあっ、ともひろぉ……!」
先刻とは理由の違う涙が溢れて、彼の髪に手を伸ばしてくしゃりと握る。
「気持ちいいか?」
「んっ、気持ちい……もっと、欲しいよ、智洋」
「んなエロいこと言うなよ。たまんねえ……今日は無理だろ」
愛撫を止めてずり上がって、また涙を唇で掬われる。
確かにそうなんだけど。明日、体育の授業もあるし無理なんだけど。
切なくて熱い体を持て余して、腰を突き出すように懇願してしまう。
「こんな中途半端なの、やだ」
智洋は、今度こそ唇を重ねてくれて、息が弾むほどに求め合ってからようやく手を伸ばして自分のスウェットを下着ごと下げた。
既にとろとろと雫を零し続けている俺のと一緒に擦り上げ始める。
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