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行ーきーまーせーんー!
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次の週末に帰省して自分たちもセッションするとかいう流れになって盛り上がっている中、ちらりと横目で遠方の智洋を確認する。腕も足も組んでふんぞり返っている顔は、なんか憮然としているような。
まあ、シナリオやってるわけでもねえし、見てて楽しいもんじゃねえよな。
にこりと笑い掛けてからまた視線を戻すと、ほんの一瞬、山下と視線が交わったような気がした。けど、自然な感じでまた他のメンバーの方へと顔が動き、勘違いかなと思い直す。
「次の土曜日に帰省して中央公民館に行こうって。カズくんはどうする?」
話がまとまったらしく、しげくんが嬉しそうに声を掛けてきた。
他のメンバーはどのゲームにするかの決定に忙しい。もういっそバラバラに好きな卓について遊べばいいのに。
「俺はいつも日曜日には予定入ってっから遠慮するな」
首を振りながらやんわり断ると、どうやって聞いていたのやら、間野と小橋からは大ブーイングだ。
「会長だって行かないんだし、別にいいじゃん」
両手を挙げてまあまあと宥めるように笑顔を作る。
本気で無理だから!
浩司先輩と、お前ら全員載っけた天秤だったとしても、明らかに浩司先輩の方に傾くから!
「会長は日曜は山登りだろうけどさあ」
なんだ、間野は詳しいな。てか、巽中からの付き合いだし、何でも知ってんのか?
つまらなさそうに頬杖をついて、もう片方の手は指でタンタンと机を叩いている。
「日曜はビリヤード教室があるんで」
確かに遊戯室っていつも閑散としているし、誰も知らなくても当たり前なのかも。
というか、だからこそ仲のいいメンバーでゆっくり出来るんだけどさ。
それもあって、出来れば寮内では仲良くしたくないこいつらにプライベートなことは教えたくなかったんだけど、何の用事かはっきりさせないと納得しない雰囲気だ。
「教室ってなに? 習い事?」
何故かしげくんが興味を覚えたようで、ほんわーとした笑顔を向けられる。
「先輩たちに習ってんだ。めっちゃ巧いんだぜ!」
思い出しただけでうっとりしながら、何故か胸を張ってしまう。いやいや、俺はまだヘナチョコだから自慢できねえっての。
ふうんと小橋が鼻を鳴らした。
「それはそれで面白そうですが」
くんな! 頼むからくんな! そもそも興味持つな!
俺と浩司先輩の憩いの時間を邪魔すんなよなー!
めっちゃ目に力を込めて奴らを睨んでいると、ぷっと山下が吹き出した。けど、え?って思って顔を向けるともう普通の顔になってて。
おかしいな……確かに笑い声が聞こえたと思ったのに。
首を傾げつつも、とにかく駄目! 無理! で通した。
結果的には、時間を気にした大野会長によりその論争は断ち切られて、俺と会長以外の全員で参加することに決定したらしい。
それからすぐに山下にキャラクターを作ってもらって、お昼休憩を挟んで長めのシナリオを一本こなした。
流石、慣れているだけあって、俺たちのシートを見てすぐにシーフ(盗賊)のキャラクターを作成した山下。メンバー全員、ほぼ普段どおりの性格のキャラらしいと把握して、それじゃあ自分は居ないタイプでって引っ込み思案で捻くれている背の低い男って設定にしてた。名前はリンク。
午後はメンバー揃って視聴覚に戻ったからか、智洋はもうついて来ないことにしたらしい。ちょっとだけ寂しい気分になったけど、関係ないことに巻き込んで申し訳ない気持ちも大きくて、帰りも絶対誰かと一緒に寮に帰るようにと念を押されて約束した。
初めて本格的な冒険が出来て俺は大満足だったけど、あっという間に十八時になっていて、皆でばたばたと片付けてから急いで帰寮したんだよな。
智洋も携も先に食べ始めていて、それでも俺が食い終わるまでは座ってぽつぽつと話したりして。
携が今まで通りに接してくれるのが、泣きたいくらいに嬉しかった。
部屋に帰って、翌日の準備やら何やかやの雑事を終えて智洋と並んでベッドに座る。
壁を背凭れにして足を投げ出して体の側面をくっつけているだけだっていうのに、なんか安心するし嬉しくなる。
楽しいのは間違いないんだけど、同好会にいるだけで余計な精神力消費するんだよなあ。なんでだ……?
今日の感想を訊いてみると、智洋は首を傾げて複雑な表情。怒っている訳じゃないけど喜んでもいない、かな。
「なんか──」
壁の隙間に腕を入れて、腰を抱き寄せられる。
「なんか? ああ、変だよね。ごめんな、変なやつらの集まりで」
自分が凄く真面目とか、胸張って言えるわけじゃないけどさ、所謂奇人変人の集まりと呼んでおかしくないと思うんだよね~。智洋みたいにお日様の下でキラキラ輝いている人には理解しがたいと思う。
俺も理解したくはないけど、一応楽しんでるから一括りにされても文句は言えない……。
はっ! まさか今日ので呆れて退いてるとかそんなんじゃ……!!
まあ、シナリオやってるわけでもねえし、見てて楽しいもんじゃねえよな。
にこりと笑い掛けてからまた視線を戻すと、ほんの一瞬、山下と視線が交わったような気がした。けど、自然な感じでまた他のメンバーの方へと顔が動き、勘違いかなと思い直す。
「次の土曜日に帰省して中央公民館に行こうって。カズくんはどうする?」
話がまとまったらしく、しげくんが嬉しそうに声を掛けてきた。
他のメンバーはどのゲームにするかの決定に忙しい。もういっそバラバラに好きな卓について遊べばいいのに。
「俺はいつも日曜日には予定入ってっから遠慮するな」
首を振りながらやんわり断ると、どうやって聞いていたのやら、間野と小橋からは大ブーイングだ。
「会長だって行かないんだし、別にいいじゃん」
両手を挙げてまあまあと宥めるように笑顔を作る。
本気で無理だから!
浩司先輩と、お前ら全員載っけた天秤だったとしても、明らかに浩司先輩の方に傾くから!
「会長は日曜は山登りだろうけどさあ」
なんだ、間野は詳しいな。てか、巽中からの付き合いだし、何でも知ってんのか?
つまらなさそうに頬杖をついて、もう片方の手は指でタンタンと机を叩いている。
「日曜はビリヤード教室があるんで」
確かに遊戯室っていつも閑散としているし、誰も知らなくても当たり前なのかも。
というか、だからこそ仲のいいメンバーでゆっくり出来るんだけどさ。
それもあって、出来れば寮内では仲良くしたくないこいつらにプライベートなことは教えたくなかったんだけど、何の用事かはっきりさせないと納得しない雰囲気だ。
「教室ってなに? 習い事?」
何故かしげくんが興味を覚えたようで、ほんわーとした笑顔を向けられる。
「先輩たちに習ってんだ。めっちゃ巧いんだぜ!」
思い出しただけでうっとりしながら、何故か胸を張ってしまう。いやいや、俺はまだヘナチョコだから自慢できねえっての。
ふうんと小橋が鼻を鳴らした。
「それはそれで面白そうですが」
くんな! 頼むからくんな! そもそも興味持つな!
俺と浩司先輩の憩いの時間を邪魔すんなよなー!
めっちゃ目に力を込めて奴らを睨んでいると、ぷっと山下が吹き出した。けど、え?って思って顔を向けるともう普通の顔になってて。
おかしいな……確かに笑い声が聞こえたと思ったのに。
首を傾げつつも、とにかく駄目! 無理! で通した。
結果的には、時間を気にした大野会長によりその論争は断ち切られて、俺と会長以外の全員で参加することに決定したらしい。
それからすぐに山下にキャラクターを作ってもらって、お昼休憩を挟んで長めのシナリオを一本こなした。
流石、慣れているだけあって、俺たちのシートを見てすぐにシーフ(盗賊)のキャラクターを作成した山下。メンバー全員、ほぼ普段どおりの性格のキャラらしいと把握して、それじゃあ自分は居ないタイプでって引っ込み思案で捻くれている背の低い男って設定にしてた。名前はリンク。
午後はメンバー揃って視聴覚に戻ったからか、智洋はもうついて来ないことにしたらしい。ちょっとだけ寂しい気分になったけど、関係ないことに巻き込んで申し訳ない気持ちも大きくて、帰りも絶対誰かと一緒に寮に帰るようにと念を押されて約束した。
初めて本格的な冒険が出来て俺は大満足だったけど、あっという間に十八時になっていて、皆でばたばたと片付けてから急いで帰寮したんだよな。
智洋も携も先に食べ始めていて、それでも俺が食い終わるまでは座ってぽつぽつと話したりして。
携が今まで通りに接してくれるのが、泣きたいくらいに嬉しかった。
部屋に帰って、翌日の準備やら何やかやの雑事を終えて智洋と並んでベッドに座る。
壁を背凭れにして足を投げ出して体の側面をくっつけているだけだっていうのに、なんか安心するし嬉しくなる。
楽しいのは間違いないんだけど、同好会にいるだけで余計な精神力消費するんだよなあ。なんでだ……?
今日の感想を訊いてみると、智洋は首を傾げて複雑な表情。怒っている訳じゃないけど喜んでもいない、かな。
「なんか──」
壁の隙間に腕を入れて、腰を抱き寄せられる。
「なんか? ああ、変だよね。ごめんな、変なやつらの集まりで」
自分が凄く真面目とか、胸張って言えるわけじゃないけどさ、所謂奇人変人の集まりと呼んでおかしくないと思うんだよね~。智洋みたいにお日様の下でキラキラ輝いている人には理解しがたいと思う。
俺も理解したくはないけど、一応楽しんでるから一括りにされても文句は言えない……。
はっ! まさか今日ので呆れて退いてるとかそんなんじゃ……!!
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