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小さくない決心
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それにしてもそんな先輩が俺みたいなちんくしゃの男子相手に変な気持ちになっちゃうなんて、男子校恐るべし!
でも正気に返ったときに絶対後悔するからやめたほうがいいと思うんだ。
今回は浩司先輩が傍にいてくれるから助かってるけど、じゃなかったら他のやつらにもいじられそうな予感がするんだよね。
皆が小橋や間野みたいなセクハラしてきたらどうしよう……!
不意に怖くなってきて、体の向きを変えて浩司先輩のシャツをギュッと握り締めて胸に顔を擦り付けた。
「ん? どした、カズ。森本が怖えなら捨ててきてやろうか」
優しく頭を撫でられて、後ろからは「なんだその言い草は!」と憤慨している森本先輩の声。
でも、どうすればいいのか解らない。
ついさっきまで普通に接していられたのに、なんでか急に不安になって、怖くなって。悪いのは、森本先輩や応援団の皆じゃなくて、きっと俺の方なんだ……。
気分を切り替えられないかと、首を振ってから先輩を見上げる。
「ちょっとトイレ行って来ます」
「おう、じゃ俺も行くわ」
そのまま腕を引いて立たされて、ひらりと後ろ手に手を振る先輩に続いて上履きを履いて、遊戯室のすぐ正面にあるトイレに向かう。
うーん、先輩と連れション……初めてかも。
別に何も問題ねえんだけど、ちょっとばかし緊張する。
ドキドキしながら廊下に出ると、入り口の前に「清掃中」の看板が立ててある。
食堂や遊戯室に一番近いここのトイレは他の場所より個室や小便器の数も多く、掃除には時間が掛かる。平日は専門の業者の人が授業中に掃除してくれているんだけど、休日は寮生が持ち回りで当番をしているんだ。
今日の当番さん、皆が打ち上げで遊んでいる時間にやるなんて奇特だなあ。
不思議に思いつつも、トイレは他にもいっぱいあるのでもう一つ向こうにあるやつに向かう。距離にしてほんの二十メートルほどだ。
浩司先輩も怪訝な表情で、それから何となく周囲を見回しながら俺の隣を歩いている。
トイレに入ると先客が二人いて、用足しするでもなくなんだか奥の方で話をしていたようだ。
もしかしてここもこれから掃除すんのかな。折角学園側が料理や飲み物提供してくれているんだから、グループじゃないにしろ食堂とかで楽しめばいいのに。
気にはなりつつも、小便器で用足しして、洗面台で手を洗ってからまた遊戯室に戻る。浩司先輩は、用足しの最中もそれとなくあの二人を窺っていたようだ。
やっぱり気になるよね~。掃除、他の時間にすればいいのに。
いつも通りの時間に食堂へ行くと、減った軽食の分きちんとした夕食が並べられていた。
おばちゃんたち、今日はずっと調理し続けてるんじゃないだろうか。大変だなあ、いくらお仕事とは言っても。
感謝しつつ、玄米ご飯・肉じゃが・キャベツの酢の物・小松菜の辛し和え・わかめとなめこの味噌汁と順番にトレイに載せていつもの席へ。
結構飲み食いしたつもりだったけど、しゃべったりゲームしたりで忙しかったし、こうして温かな物を目の前にしていると匂いに誘われて腹の虫が鳴る。手を合わせてゆっくり食べ始めると、携と智洋が続けて入って来た。
携、やっぱり少しは時間に余裕できたのかな。
両脇に腰掛ける二人に順々に「おつかれ~」と声を掛けると、安心したように微笑む携。
ん? 俺何か心配させるようなことしたっけ?
それより、実は決心したことがあるんだ。
「あのさ、携。後で部屋に行ってもいい?」
「いいよ。体育会の後処理も終わったことだし」
あっさりと首肯して食事を始める携に「じゃあまた後で」と声を掛けて、俺も食事を再開する。同じように食べ始めていた智洋の方へと視線を遣ると物問いたげにしていたから、誤魔化すわけじゃないけれど安心させようと微笑みかけてみた。
少し考える風だったけど、ここじゃ言えないことと悟ってくれたのか、そのまま食事を続ける。
そうして部屋に帰ってから、俺は立ったまま背中からムギュッと抱きついた。
でも正気に返ったときに絶対後悔するからやめたほうがいいと思うんだ。
今回は浩司先輩が傍にいてくれるから助かってるけど、じゃなかったら他のやつらにもいじられそうな予感がするんだよね。
皆が小橋や間野みたいなセクハラしてきたらどうしよう……!
不意に怖くなってきて、体の向きを変えて浩司先輩のシャツをギュッと握り締めて胸に顔を擦り付けた。
「ん? どした、カズ。森本が怖えなら捨ててきてやろうか」
優しく頭を撫でられて、後ろからは「なんだその言い草は!」と憤慨している森本先輩の声。
でも、どうすればいいのか解らない。
ついさっきまで普通に接していられたのに、なんでか急に不安になって、怖くなって。悪いのは、森本先輩や応援団の皆じゃなくて、きっと俺の方なんだ……。
気分を切り替えられないかと、首を振ってから先輩を見上げる。
「ちょっとトイレ行って来ます」
「おう、じゃ俺も行くわ」
そのまま腕を引いて立たされて、ひらりと後ろ手に手を振る先輩に続いて上履きを履いて、遊戯室のすぐ正面にあるトイレに向かう。
うーん、先輩と連れション……初めてかも。
別に何も問題ねえんだけど、ちょっとばかし緊張する。
ドキドキしながら廊下に出ると、入り口の前に「清掃中」の看板が立ててある。
食堂や遊戯室に一番近いここのトイレは他の場所より個室や小便器の数も多く、掃除には時間が掛かる。平日は専門の業者の人が授業中に掃除してくれているんだけど、休日は寮生が持ち回りで当番をしているんだ。
今日の当番さん、皆が打ち上げで遊んでいる時間にやるなんて奇特だなあ。
不思議に思いつつも、トイレは他にもいっぱいあるのでもう一つ向こうにあるやつに向かう。距離にしてほんの二十メートルほどだ。
浩司先輩も怪訝な表情で、それから何となく周囲を見回しながら俺の隣を歩いている。
トイレに入ると先客が二人いて、用足しするでもなくなんだか奥の方で話をしていたようだ。
もしかしてここもこれから掃除すんのかな。折角学園側が料理や飲み物提供してくれているんだから、グループじゃないにしろ食堂とかで楽しめばいいのに。
気にはなりつつも、小便器で用足しして、洗面台で手を洗ってからまた遊戯室に戻る。浩司先輩は、用足しの最中もそれとなくあの二人を窺っていたようだ。
やっぱり気になるよね~。掃除、他の時間にすればいいのに。
いつも通りの時間に食堂へ行くと、減った軽食の分きちんとした夕食が並べられていた。
おばちゃんたち、今日はずっと調理し続けてるんじゃないだろうか。大変だなあ、いくらお仕事とは言っても。
感謝しつつ、玄米ご飯・肉じゃが・キャベツの酢の物・小松菜の辛し和え・わかめとなめこの味噌汁と順番にトレイに載せていつもの席へ。
結構飲み食いしたつもりだったけど、しゃべったりゲームしたりで忙しかったし、こうして温かな物を目の前にしていると匂いに誘われて腹の虫が鳴る。手を合わせてゆっくり食べ始めると、携と智洋が続けて入って来た。
携、やっぱり少しは時間に余裕できたのかな。
両脇に腰掛ける二人に順々に「おつかれ~」と声を掛けると、安心したように微笑む携。
ん? 俺何か心配させるようなことしたっけ?
それより、実は決心したことがあるんだ。
「あのさ、携。後で部屋に行ってもいい?」
「いいよ。体育会の後処理も終わったことだし」
あっさりと首肯して食事を始める携に「じゃあまた後で」と声を掛けて、俺も食事を再開する。同じように食べ始めていた智洋の方へと視線を遣ると物問いたげにしていたから、誤魔化すわけじゃないけれど安心させようと微笑みかけてみた。
少し考える風だったけど、ここじゃ言えないことと悟ってくれたのか、そのまま食事を続ける。
そうして部屋に帰ってから、俺は立ったまま背中からムギュッと抱きついた。
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