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浩司先輩は別格!
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申し訳なくて両手を合わせてもじもじしながら、早く始まんねえかななんて考えていたら、何だか肩で息をしている辰が向こうから人込み掻き分けながらやってきて、無理矢理連れてこられたらしい周がすっげえ嫌そうな顔で明後日の方向いたまま傍に来るという技を見せた。
器用だね? 周。
「カズっ、笑って」
会長の横に膝を突いた辰に言われて、恥ずかしいままにどうにか首を傾げて笑顔を作ると、横とかから悲鳴みたいな声が聞こえて泣きたくなってくる。
カシャカシャと辰と会長の指は忙しなく動いてるけどさ……ごめんね、皆。こんな気持ち悪いもん見せて。
ようやく入場出来てほっと一安心。
智洋とか浩司先輩も見てるのかなー。ん? そいや智洋もこれ出てんじゃねえの。
今更ながらに気が付いてきょときょと見回して探す。アナウンスがさっきからやかましいけどどうでもいい。
テニスウェアの一行、いるじゃん!
あ、智洋だ~!
発見して嬉しくてついつい笑顔で手を振ったら、目が合った瞬間に顔を覆って向こうを向かれてしまった。
ええっ? いくら敵同士だからってそりゃねえよ……。
それとも、こんな格好のヤツと友達とかって見られたら恥ずかしいのかな。みっともねえもんな、今の俺……。
また涙が出そう。
すん、と鼻を啜ると「お仕事ですから」って小橋に背中を叩かれた。
「勝負はどうでもいい! 目立ったもん勝ちだ!」
また間野の根拠のねえ自信出たよ……。
ついでにマントの下からケツ撫でられて「ひゃんっ」って跳び上がりそうになったら、またしても周りの奴らが口元押さえて背を向けた。
くっそー! セクハラは部室の中だけにしやがれ!
トップはサトサト、それからしげくん、小橋、間野、でアンカーが俺。
つってもユニフォーム着た運動部ばっかの中で、俺たちめっちゃ浮いてるというか。間野に言わせりゃ「勝った!」ってことになるんだろうけど、ただただ恥ずかしい。
またさっきみたいに視線逸らされたらショックで泣くかもしれねえから、こっそり静かに智洋の勇姿を眺めてはにやつく口元。
うあっ、ちょっと頬っぺた赤いかも。やべえ……!
両手を頬に当てて必死で口元が緩むのと格闘しながら足踏みしていると、走ってるやつの起こした風がぴらっとスカート捲りそうになって、慌てて前屈みに裾を押さえたら、隣の列のバドミントン部のヤツが何故か躓いて転びそうになっていた。
あいつも風で何かなったのかなー?
まあいいやと気を取り直して、走ってるとは程遠いスピードで一周してきた間野から『いつでも会員募集中! TRPG同好会』と書かれたプラカードを受け取り、言われたとおり跳ねるような感じにトラックを回ってみる。
スカートがふわんってなって難しいな~。いくらストッキングでも丸見えは嫌だしなあ。
思い付いて途中でくるりとターンしたりしながらふと観覧席を見ると、境目のロープを倒しそうな勢いで凝視してる浩司先輩と目が合った。
隣には森本先輩も居て、着替えが間に合わなかったのか面倒なのか、二人とも学ランだけ脱いだ状態でかっこいいです!
嬉しくてついつい笑い掛けてしまったら、浩司先輩からは蕩けるような極上の笑みが返って来た。
良かった~!
智洋みたいに無視されたら死ぬかと思ったよ。
森本先輩からもにこやかに手を振られて、気を取り直してまたふわんふわんとジャンプしながらゴールしたら最後だった。
──いいか。アピールできたしっ!
終わった終わったと気が軽くなってスキップしながら退場する。
皆、さり気なく見ないようにしてくれてるけど、もう少しだから我慢してくれ。見苦しい姿見せてマジでゴメン!
門のところには何故か浩司先輩がいて、相変わらず待機していたらしい会長が構えたカメラの前で腕を広げて「カズ!」なんて呼ばれちゃったもんだから、嬉しくて胸に飛びついてしまった。
ん? 後ろどよめいてる?
もしかして皆浩司先輩のファンか! でも遠慮したら負けるから気にしないもんね。
シャッターを切る音が全く気にならないのか、先輩はほっぺにチュッてして軽々と抱き上げては「可愛い」って連呼している。
うーん、いつものことだけど、先輩に言われる「可愛い」ってのは嬉しいんだよな。愛情だって判ってるし。でもさー、良く考えたら近くに智洋いるんじゃねえかな……。
ちょっぴり気が引けるけど、でもやっぱり浩司先輩は別格!
幸せ~!
自分からも首に腕を回してすりすりと甘えてしまった。
《おまけ》
周一郎「辰~っ、憶えてろよ……!」
(折角諦めようとしてんのに可愛すぎて目が合わせられねえじゃんか! マジやばすぎるって!)
智洋 (何か今幻が見えた)チラッ。ぐふぅっ!
(誰だ和明にあんなカッコさせたの! ライバル増えてんじゃねえかーっ!!)
他、黒凌出身以外の生徒たち
「どうしてあれが本物の女子じゃねえんだ……(涙)」
ウォルター 「浩司、やりすぎ」
浩司 「こんくれえアピールしときゃ下手に手ぇだせねえだろ!」
ウォルター 「それはどうかなあ……」
器用だね? 周。
「カズっ、笑って」
会長の横に膝を突いた辰に言われて、恥ずかしいままにどうにか首を傾げて笑顔を作ると、横とかから悲鳴みたいな声が聞こえて泣きたくなってくる。
カシャカシャと辰と会長の指は忙しなく動いてるけどさ……ごめんね、皆。こんな気持ち悪いもん見せて。
ようやく入場出来てほっと一安心。
智洋とか浩司先輩も見てるのかなー。ん? そいや智洋もこれ出てんじゃねえの。
今更ながらに気が付いてきょときょと見回して探す。アナウンスがさっきからやかましいけどどうでもいい。
テニスウェアの一行、いるじゃん!
あ、智洋だ~!
発見して嬉しくてついつい笑顔で手を振ったら、目が合った瞬間に顔を覆って向こうを向かれてしまった。
ええっ? いくら敵同士だからってそりゃねえよ……。
それとも、こんな格好のヤツと友達とかって見られたら恥ずかしいのかな。みっともねえもんな、今の俺……。
また涙が出そう。
すん、と鼻を啜ると「お仕事ですから」って小橋に背中を叩かれた。
「勝負はどうでもいい! 目立ったもん勝ちだ!」
また間野の根拠のねえ自信出たよ……。
ついでにマントの下からケツ撫でられて「ひゃんっ」って跳び上がりそうになったら、またしても周りの奴らが口元押さえて背を向けた。
くっそー! セクハラは部室の中だけにしやがれ!
トップはサトサト、それからしげくん、小橋、間野、でアンカーが俺。
つってもユニフォーム着た運動部ばっかの中で、俺たちめっちゃ浮いてるというか。間野に言わせりゃ「勝った!」ってことになるんだろうけど、ただただ恥ずかしい。
またさっきみたいに視線逸らされたらショックで泣くかもしれねえから、こっそり静かに智洋の勇姿を眺めてはにやつく口元。
うあっ、ちょっと頬っぺた赤いかも。やべえ……!
両手を頬に当てて必死で口元が緩むのと格闘しながら足踏みしていると、走ってるやつの起こした風がぴらっとスカート捲りそうになって、慌てて前屈みに裾を押さえたら、隣の列のバドミントン部のヤツが何故か躓いて転びそうになっていた。
あいつも風で何かなったのかなー?
まあいいやと気を取り直して、走ってるとは程遠いスピードで一周してきた間野から『いつでも会員募集中! TRPG同好会』と書かれたプラカードを受け取り、言われたとおり跳ねるような感じにトラックを回ってみる。
スカートがふわんってなって難しいな~。いくらストッキングでも丸見えは嫌だしなあ。
思い付いて途中でくるりとターンしたりしながらふと観覧席を見ると、境目のロープを倒しそうな勢いで凝視してる浩司先輩と目が合った。
隣には森本先輩も居て、着替えが間に合わなかったのか面倒なのか、二人とも学ランだけ脱いだ状態でかっこいいです!
嬉しくてついつい笑い掛けてしまったら、浩司先輩からは蕩けるような極上の笑みが返って来た。
良かった~!
智洋みたいに無視されたら死ぬかと思ったよ。
森本先輩からもにこやかに手を振られて、気を取り直してまたふわんふわんとジャンプしながらゴールしたら最後だった。
──いいか。アピールできたしっ!
終わった終わったと気が軽くなってスキップしながら退場する。
皆、さり気なく見ないようにしてくれてるけど、もう少しだから我慢してくれ。見苦しい姿見せてマジでゴメン!
門のところには何故か浩司先輩がいて、相変わらず待機していたらしい会長が構えたカメラの前で腕を広げて「カズ!」なんて呼ばれちゃったもんだから、嬉しくて胸に飛びついてしまった。
ん? 後ろどよめいてる?
もしかして皆浩司先輩のファンか! でも遠慮したら負けるから気にしないもんね。
シャッターを切る音が全く気にならないのか、先輩はほっぺにチュッてして軽々と抱き上げては「可愛い」って連呼している。
うーん、いつものことだけど、先輩に言われる「可愛い」ってのは嬉しいんだよな。愛情だって判ってるし。でもさー、良く考えたら近くに智洋いるんじゃねえかな……。
ちょっぴり気が引けるけど、でもやっぱり浩司先輩は別格!
幸せ~!
自分からも首に腕を回してすりすりと甘えてしまった。
《おまけ》
周一郎「辰~っ、憶えてろよ……!」
(折角諦めようとしてんのに可愛すぎて目が合わせられねえじゃんか! マジやばすぎるって!)
智洋 (何か今幻が見えた)チラッ。ぐふぅっ!
(誰だ和明にあんなカッコさせたの! ライバル増えてんじゃねえかーっ!!)
他、黒凌出身以外の生徒たち
「どうしてあれが本物の女子じゃねえんだ……(涙)」
ウォルター 「浩司、やりすぎ」
浩司 「こんくれえアピールしときゃ下手に手ぇだせねえだろ!」
ウォルター 「それはどうかなあ……」
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