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二人がかりはやめて!
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体育会まで三週間を切り、慌しく日々が過ぎていく。
イベントがあってもそこはそれ、進学校の悲しさで、授業が減ったり宿題が減るわけでもない。クラスによっては八限があるから平日は殆ど何も出来ない日も多い。
そこで四校時の土曜日に皆がつんと取り組むから、応援団のメンバーだけがちょっとゆとりを持っているだけというか要するにちょっと手持ち無沙汰だった。
当日衣装を着るだけと言っていた智洋だけど、要となる衣装も手縫いのものがあるらしく、メンバーと被服室に篭って布と悪戦苦闘しているらしい。厚紙とか使って誤魔化すところもあるらしいけどさ。
会長情報によると、本番の日は最後にキャンプファイヤーをやって看板や仮装の衣装は火にくべて燃やしてしまうんだそうだ。勿体無いというか豪快なのかなんともコメントに困る。基本、使い回しは出来ないわけだし、看板は木と紙で出来ているわけだし、よく燃えそうだけどさ。
作らなきゃいけないものがあるからどうしてもそっちに気が行ってしまうけど、競技も誰がどれに出るのかほぼ決まった。
共学みたいにダンスがないから、棒倒しや騎馬戦と格闘系の競技が入るんだよね……。騎馬戦の乗る方にならいいけど、俺に馬無理だし~とか、棒に辿り着くまでに踏まれてぺちゃんこになりそうとか考えたら必然的に走る競技ばかりに登録することになってしまった。
二人三脚とスウェーデンリレー。二人三脚は辰がペアになっているから、いつか時間を見つけて練習しねえとな。男女のペアならえっちらおっちら歩く速度でも微笑ましいけど、流石に男ばっかの場合は真剣勝負だろう! 歩幅とタイミングが勝負の分かれ目だ!
それに部活対抗リレーなんてのもあるらしい。こっちはイロモノというか、まあよくある感じで例えばテニス部ならラケットにテニスボール載せて走るとか、サッカーはドリブルしながらだとか、賑やかしだよな。
けど、文化部って何やるんだろ……。んで、こういうときに会長は一体何処に出場するのかが気に掛かる。まさか執行部も出るんだろうか。パソコン抱えて走るとか? うーん……。
あっという間に土曜日になり、応援団の練習が終われば暇な俺は、それでも一応部室棟に足を向けていた。
何となく、周と一緒のタイミングで寮に帰りづらいっていうのもある。どうせ部屋に帰っても智洋いねえし、それなら部室で予習やってれば、もしかしたら会長が来て教えてもらえるところもあるかもしれない。
あれ、でもそういえば俺鍵持ってないや。廊下を歩きながらふと気付き、開いてなかったら帰ろうとドアレバーに手を伸ばすと、あっさりドアが開いた。
「やあ、お疲れ様です」
何故か室内に小橋と間野がいる。他二名も会長もいないから無言のまま回れ右しようとしたら、がしっと腕を掴まれて中に引き込まれた。
いつの間に近くに来たんだ間野!
「カズ~? シカトとはいい度胸じゃねえか」
「ええと、こんにちは?」
小橋みたいに骨と皮じゃなくてそれなりに体格の良い間野に掴まれると、俺はもう諦めるしかない。銀縁のフレームの向こうの目、よく見ると上がり目なんだなあとか今頃気付いた。
てか、顔ちーかーすーぎーっ!
「きょ、今日はクラスの準備は?」
そのまま部屋の奥まで連行されて逃げ場のない俺は、必死で話題を探す。
小橋がなんだか恐ろしい笑顔を湛えて近寄ってくるんだけど、二人して何企んでる!
しげくんとサトサトは何処行ったーっ!
「勿論皆さん忙しく準備中ですよ。私たちは大事な用があって抜けてきたんです」
「あ、じゃあどうぞその用事をー」
してください、って言おうとしたらガバッとシャツを上にたくし上げられた。練習の後だから、いつも通り上はTシャツ一枚だ。それ上げられたら勿論素肌が出るわけで!
「うぎゃっ! 何すんだ間野っ」
「はいはい、今の内~」
へらっと笑っている間野に両腕を頭上で戒められて、すっと小橋が俺の体に腕を回す。
ん? 何か体に当たってるっ。メジャー?
こそばゆくて体が逃げそうになると、至近距離に間野が顔を寄せてくる。
「動くな。もっときつく拘束されてえのか?」
ひいっ! 脅しだよな? それ同じ同好会員にとる態度かよっ。
ウエストとか胸とかに当たるメジャーの感触に、勝手に体が反応する。特に、乳首とかに軽く当たってしゅるしゅる動く感じがなんとも……。
「っん……ふ、うぅ」
ぎゅっと目を閉じて唇を噛んで耐えていると、指が肌を撫でる感触がして目を開けてしまった。
えっと……二人とも目が据わってるじゃないですかね……?
イベントがあってもそこはそれ、進学校の悲しさで、授業が減ったり宿題が減るわけでもない。クラスによっては八限があるから平日は殆ど何も出来ない日も多い。
そこで四校時の土曜日に皆がつんと取り組むから、応援団のメンバーだけがちょっとゆとりを持っているだけというか要するにちょっと手持ち無沙汰だった。
当日衣装を着るだけと言っていた智洋だけど、要となる衣装も手縫いのものがあるらしく、メンバーと被服室に篭って布と悪戦苦闘しているらしい。厚紙とか使って誤魔化すところもあるらしいけどさ。
会長情報によると、本番の日は最後にキャンプファイヤーをやって看板や仮装の衣装は火にくべて燃やしてしまうんだそうだ。勿体無いというか豪快なのかなんともコメントに困る。基本、使い回しは出来ないわけだし、看板は木と紙で出来ているわけだし、よく燃えそうだけどさ。
作らなきゃいけないものがあるからどうしてもそっちに気が行ってしまうけど、競技も誰がどれに出るのかほぼ決まった。
共学みたいにダンスがないから、棒倒しや騎馬戦と格闘系の競技が入るんだよね……。騎馬戦の乗る方にならいいけど、俺に馬無理だし~とか、棒に辿り着くまでに踏まれてぺちゃんこになりそうとか考えたら必然的に走る競技ばかりに登録することになってしまった。
二人三脚とスウェーデンリレー。二人三脚は辰がペアになっているから、いつか時間を見つけて練習しねえとな。男女のペアならえっちらおっちら歩く速度でも微笑ましいけど、流石に男ばっかの場合は真剣勝負だろう! 歩幅とタイミングが勝負の分かれ目だ!
それに部活対抗リレーなんてのもあるらしい。こっちはイロモノというか、まあよくある感じで例えばテニス部ならラケットにテニスボール載せて走るとか、サッカーはドリブルしながらだとか、賑やかしだよな。
けど、文化部って何やるんだろ……。んで、こういうときに会長は一体何処に出場するのかが気に掛かる。まさか執行部も出るんだろうか。パソコン抱えて走るとか? うーん……。
あっという間に土曜日になり、応援団の練習が終われば暇な俺は、それでも一応部室棟に足を向けていた。
何となく、周と一緒のタイミングで寮に帰りづらいっていうのもある。どうせ部屋に帰っても智洋いねえし、それなら部室で予習やってれば、もしかしたら会長が来て教えてもらえるところもあるかもしれない。
あれ、でもそういえば俺鍵持ってないや。廊下を歩きながらふと気付き、開いてなかったら帰ろうとドアレバーに手を伸ばすと、あっさりドアが開いた。
「やあ、お疲れ様です」
何故か室内に小橋と間野がいる。他二名も会長もいないから無言のまま回れ右しようとしたら、がしっと腕を掴まれて中に引き込まれた。
いつの間に近くに来たんだ間野!
「カズ~? シカトとはいい度胸じゃねえか」
「ええと、こんにちは?」
小橋みたいに骨と皮じゃなくてそれなりに体格の良い間野に掴まれると、俺はもう諦めるしかない。銀縁のフレームの向こうの目、よく見ると上がり目なんだなあとか今頃気付いた。
てか、顔ちーかーすーぎーっ!
「きょ、今日はクラスの準備は?」
そのまま部屋の奥まで連行されて逃げ場のない俺は、必死で話題を探す。
小橋がなんだか恐ろしい笑顔を湛えて近寄ってくるんだけど、二人して何企んでる!
しげくんとサトサトは何処行ったーっ!
「勿論皆さん忙しく準備中ですよ。私たちは大事な用があって抜けてきたんです」
「あ、じゃあどうぞその用事をー」
してください、って言おうとしたらガバッとシャツを上にたくし上げられた。練習の後だから、いつも通り上はTシャツ一枚だ。それ上げられたら勿論素肌が出るわけで!
「うぎゃっ! 何すんだ間野っ」
「はいはい、今の内~」
へらっと笑っている間野に両腕を頭上で戒められて、すっと小橋が俺の体に腕を回す。
ん? 何か体に当たってるっ。メジャー?
こそばゆくて体が逃げそうになると、至近距離に間野が顔を寄せてくる。
「動くな。もっときつく拘束されてえのか?」
ひいっ! 脅しだよな? それ同じ同好会員にとる態度かよっ。
ウエストとか胸とかに当たるメジャーの感触に、勝手に体が反応する。特に、乳首とかに軽く当たってしゅるしゅる動く感じがなんとも……。
「っん……ふ、うぅ」
ぎゅっと目を閉じて唇を噛んで耐えていると、指が肌を撫でる感触がして目を開けてしまった。
えっと……二人とも目が据わってるじゃないですかね……?
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