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友人を一人失うかもしれない恐怖
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「最初に応援団の練習に行った時に初めて周と話してさ、仲良くなれそうだって思ったんだ。同じ赤組応援団のメンバーが周で、良かったって思ったよ。だからビデオを借りて練習にも誘った。
あのまま……普通に練習していたら、少なくとも身構えることはなかったし、智洋と携が変に周のこと警戒することもなかったんだ」
真剣に話し始めた俺を見て、周は息を呑んだ。
質問に対する答えだけを待っていたのかもしれない。
だけど、俺は……ごめんな、周。こんな糾弾するような真似、本当はしたくなかったよ。
「だから、こんなに早くこんなことになったのは、ある意味周のお陰。だってさ、俺たち元々そういう感情知らなかったんだ。異性と恋愛することにしか興味なくて。
まさか自分がさ……当事者になるなんて思ってもみなかったよ」
「とんだピエロじゃん、俺」
苦々しい笑みを浮かべて、嘆息する周。
「じゃなくてさ、ええと、本題はそこじゃなくて……」
ううー。頭の中でこんな風って思っていても、言葉にするのって難しい。
「出会いがゼロから始まるとして、そこから大抵一づつ好感度が上がって親密度も上がるよね。それが、周の時は一まで行ってたのが急にマイナス十くらいになっちゃったんだ……。
たったあれだけのことでって思われるかもしれない。けどさ、ごめんな、俺、周たちみたいな環境にいたわけじゃないから、何もかも推測でしかないんだけどさ。だけど、俺にとっては凄くショックだったっていうか……だから、腰が引けて気持ちも引けちゃって。
頭では解ってるんだ。周のこと、友達の一人として好きだ。出来たらこれからも仲良くして欲しいと思ってる。だけどごめん、周が俺に……俺と、したいと思っているようなことは、きっとこの先もしたいと思わないと思う」
ご清聴ありがとうございましたって言いたくなるくらい、三人とも静かに耳を傾けてくれていた。
言いたいことは言えた、と思う。伝わってるかどうかは、自信ないけど……。
視線を絡めたままの周の眼。あの時は怖かったけど……今も、これで嫌われたら凄く悲しいなってそういう意味で怖い、けど。
それも仕方ないんだよな?
全員と一定の仲の良さを保つって、友情でも結構難しいのにそこに恋愛感情が絡んできたら、駄目なんだよな、きっと。俺がいくら友達でいたくても、俺が他の誰かを一番に決めたら、傍で見ているのはきっと辛いだろうから。
そういうのって、男女の恋人なら当たり前のことで、友人じゃない異性が傍にいたら相手に嫌われる。漫画とかドラマとかでしかそういうの見たことないし、体感じゃあないけど。
だから……クラスメイトだから、全然会わないってわけにはいかないけど、もしかしたらもう口きいてもらえなくなるかもしれない。ビリヤードも、もう一緒には出来ないんだろうな。一人でも練習頑張ってたから、これからも楽しんで欲しいよ。
一緒に色んな遊び出来たらいいなと思ってたけど、いなくても周りに目を向けてくれよな、周。
「──解った」
ようやく口を開いた周が、ゆっくりと立ち上がる。
「すみません、先輩。今日は部屋で一人で考えます」
「おう」
目で追いながら答える浩司先輩と腰を下ろしたまま、襖を開けて出て行く周を見守った。
ウォルター先輩は、浩司先輩に目配せしてから周の後を追い、襖は開け放したまま遊戯室を出て行ってしまった。
日曜日、いつものように閑散としていて俺と先輩以外に人っ子一人いない空間。見回して、目頭が熱くなってくる。
駄目だ。俺が周のことフッたんだから、俺が泣いちゃ失礼だろ。
ぐいと拳で瞼をこすると、浩司先輩がくしゃくしゃと髪をかき混ぜてくる。
「頑張ったな」
全くもう。先輩は俺のこと甘やかしすぎです!
くしゃくしゃされた後はまた丁寧に撫で付けられて、体も心も弛緩していく。ドキドキするのさえなければ、先輩の撫で撫では携がしてくれるのと同じで最高の癒しだ。
それにしても今日はいっぺんに色んな人とキスしちゃったなあとか、改めて思い出して……。
これって、智洋に報告すべきなのか、真剣に悩んでしまった。
あのまま……普通に練習していたら、少なくとも身構えることはなかったし、智洋と携が変に周のこと警戒することもなかったんだ」
真剣に話し始めた俺を見て、周は息を呑んだ。
質問に対する答えだけを待っていたのかもしれない。
だけど、俺は……ごめんな、周。こんな糾弾するような真似、本当はしたくなかったよ。
「だから、こんなに早くこんなことになったのは、ある意味周のお陰。だってさ、俺たち元々そういう感情知らなかったんだ。異性と恋愛することにしか興味なくて。
まさか自分がさ……当事者になるなんて思ってもみなかったよ」
「とんだピエロじゃん、俺」
苦々しい笑みを浮かべて、嘆息する周。
「じゃなくてさ、ええと、本題はそこじゃなくて……」
ううー。頭の中でこんな風って思っていても、言葉にするのって難しい。
「出会いがゼロから始まるとして、そこから大抵一づつ好感度が上がって親密度も上がるよね。それが、周の時は一まで行ってたのが急にマイナス十くらいになっちゃったんだ……。
たったあれだけのことでって思われるかもしれない。けどさ、ごめんな、俺、周たちみたいな環境にいたわけじゃないから、何もかも推測でしかないんだけどさ。だけど、俺にとっては凄くショックだったっていうか……だから、腰が引けて気持ちも引けちゃって。
頭では解ってるんだ。周のこと、友達の一人として好きだ。出来たらこれからも仲良くして欲しいと思ってる。だけどごめん、周が俺に……俺と、したいと思っているようなことは、きっとこの先もしたいと思わないと思う」
ご清聴ありがとうございましたって言いたくなるくらい、三人とも静かに耳を傾けてくれていた。
言いたいことは言えた、と思う。伝わってるかどうかは、自信ないけど……。
視線を絡めたままの周の眼。あの時は怖かったけど……今も、これで嫌われたら凄く悲しいなってそういう意味で怖い、けど。
それも仕方ないんだよな?
全員と一定の仲の良さを保つって、友情でも結構難しいのにそこに恋愛感情が絡んできたら、駄目なんだよな、きっと。俺がいくら友達でいたくても、俺が他の誰かを一番に決めたら、傍で見ているのはきっと辛いだろうから。
そういうのって、男女の恋人なら当たり前のことで、友人じゃない異性が傍にいたら相手に嫌われる。漫画とかドラマとかでしかそういうの見たことないし、体感じゃあないけど。
だから……クラスメイトだから、全然会わないってわけにはいかないけど、もしかしたらもう口きいてもらえなくなるかもしれない。ビリヤードも、もう一緒には出来ないんだろうな。一人でも練習頑張ってたから、これからも楽しんで欲しいよ。
一緒に色んな遊び出来たらいいなと思ってたけど、いなくても周りに目を向けてくれよな、周。
「──解った」
ようやく口を開いた周が、ゆっくりと立ち上がる。
「すみません、先輩。今日は部屋で一人で考えます」
「おう」
目で追いながら答える浩司先輩と腰を下ろしたまま、襖を開けて出て行く周を見守った。
ウォルター先輩は、浩司先輩に目配せしてから周の後を追い、襖は開け放したまま遊戯室を出て行ってしまった。
日曜日、いつものように閑散としていて俺と先輩以外に人っ子一人いない空間。見回して、目頭が熱くなってくる。
駄目だ。俺が周のことフッたんだから、俺が泣いちゃ失礼だろ。
ぐいと拳で瞼をこすると、浩司先輩がくしゃくしゃと髪をかき混ぜてくる。
「頑張ったな」
全くもう。先輩は俺のこと甘やかしすぎです!
くしゃくしゃされた後はまた丁寧に撫で付けられて、体も心も弛緩していく。ドキドキするのさえなければ、先輩の撫で撫では携がしてくれるのと同じで最高の癒しだ。
それにしても今日はいっぺんに色んな人とキスしちゃったなあとか、改めて思い出して……。
これって、智洋に報告すべきなのか、真剣に悩んでしまった。
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