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相性の問題じゃないかな
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「ここで執行部のお仕事してたんですか? 俺、何か手伝えることは……」
「いや、今のところ大丈夫だ。今日はウォルターを捕まえて放り込んで来たからな。それより、少しは僕も休憩したいんだ。付き合ってくれないか」
何かを思い出したのか少し眉間に皺が寄るのを見てしまい、俺はこくこくと頷いた。
っても何をしたらいいのかなあ。
何かリラックス出来る事……。あ、そうか!
「肩でも揉みましょうか? それか手の平のマッサージとか」
会長は首を傾けてふむと思案し、「じゃあ折角だからマッサージをしてもらおうかな」と、頭から下ろされた手の平をそっと差し出される。
高い位置だと二人とも疲れてしまうから、そのまま腿の上に下ろしてまずは指のマッサージから始めた。一本ずつ脇を根元から先へと人差し指と親指で挟んで指圧し、背を親指の腹でくるくる円を描くように指を動かし最後に爪の脇を両側からギュッと押す。
これを両手の全ての指にゆっくりと施していくと、会長がほうっと息をついた。
「気持ちいいな。絶妙の力加減だ」
「良かった」
俺じゃあレベルが低すぎて色んな面で肩を並べられる相手がいない。だけど先輩のサポートをするくらいになら、なれるといいな。取り敢えず今は、コーヒー入れたりマッサージしたりくらいしか出来ねえけど……。
仕上げに手の平を親指で指圧して完了!
最初はちょっと冷たくなっていた会長の手も、血流が回復したようだ。
マッサージって、携もよく俺にやってくれてたから、見よう見真似でやってるうちにさまになってきた気がする。
引っ込める様子のない会長の両手をそれぞれに握って、やんわりと指圧を続けてみた。
気に入ってくれたんだろうな~。もうちょっとサービスしよう。
お互いにコーヒーが飲めないけど、会長の望みとあらば応えたいもので。指圧しながら目線だけで確認すると、気持ち良さそうに目を細めていて眉間の皺も無くなっている。良かった~。
廊下に人の気配がして、こんこんと扉が鳴った。
「どうぞ」
会長の応えにドアを開けたのは、ウォルター先輩だった。
俺は顔を向けつつもマッサージは続けていたので、先輩がきょとんとして俺の膝に視線を落とす。
「えーと……なんだかお邪魔のようで」
左手で髪をかき上げる仕草が流れるように綺麗で様になっている。
でも邪魔って何がー? 休憩してるだけだから別に問題ないと思うんだけども。
「構わないが?」
会長も首を傾げて、それから俺にありがとうと言ってから手を引いた。
これで少しでも疲れが取れているといいんだけどな。
「ヒデさんもそんな優しそうな顔するんですねえー」
中に入ってから静かにドアを閉めた金髪王子は、にんまりと意地悪そうな笑みを湛えている。
ヒデさんって……ああそうか、会長の名前って英明だったっけ。まさに名は体を現すって感じだよな。
「失礼な。僕が今まで優しくなかったみたいじゃないか」
心外だという風にフレームを直す会長、また眉間に皺が~。
あーあ、もしかして今までの顰めっ面って金髪王子のせいなんじゃ……。
「あのー、会長は最初から優しいですよ?」
取り成すつもりじゃないけど、何か勘違いされているなら気の毒だ。恐る恐る意見してみた。
ここに初めて来た時から、大野会長はさっきみたいに微笑んでいたと思う。金髪王子は仕事サボりすぎだから優しくしてもらえないんだよ、きっと。流石にそれは言えないけど。
ウォルター先輩は変な笑顔のまま眉を上げて俺を見て、それからまた会長に視線を戻してくくっと笑った。
「それは相手がカズくんだからじゃないのー?」
えー……そんなこともないと思うんだけど。
まあ、自分がいないところでの会長なんて知りようもないし、確かに校内で見掛ける時には忙しそうに早足で歩いているか、誰かと話していてもきりりと引き締まった表情しているけどさ。
それって仕事中とかだからだよね。いっつもへらへらしてたら、逆に変だと思う。
──ああ、そういえばウォルター先輩は笑顔が標準装備だったっけ。
それなら会長の真面目すぎるところ、理解できないのかもしれないな。
俺には身近に携って存在がいるから、普段表情に乏しい人が自分に向けて微笑んでくれるのって凄く嬉しいし、だから普段の顔が他人には険しく見えても別にそれ怒っているわけじゃないよって教えてあげたい時もあるくらいだ。
「いや、今のところ大丈夫だ。今日はウォルターを捕まえて放り込んで来たからな。それより、少しは僕も休憩したいんだ。付き合ってくれないか」
何かを思い出したのか少し眉間に皺が寄るのを見てしまい、俺はこくこくと頷いた。
っても何をしたらいいのかなあ。
何かリラックス出来る事……。あ、そうか!
「肩でも揉みましょうか? それか手の平のマッサージとか」
会長は首を傾けてふむと思案し、「じゃあ折角だからマッサージをしてもらおうかな」と、頭から下ろされた手の平をそっと差し出される。
高い位置だと二人とも疲れてしまうから、そのまま腿の上に下ろしてまずは指のマッサージから始めた。一本ずつ脇を根元から先へと人差し指と親指で挟んで指圧し、背を親指の腹でくるくる円を描くように指を動かし最後に爪の脇を両側からギュッと押す。
これを両手の全ての指にゆっくりと施していくと、会長がほうっと息をついた。
「気持ちいいな。絶妙の力加減だ」
「良かった」
俺じゃあレベルが低すぎて色んな面で肩を並べられる相手がいない。だけど先輩のサポートをするくらいになら、なれるといいな。取り敢えず今は、コーヒー入れたりマッサージしたりくらいしか出来ねえけど……。
仕上げに手の平を親指で指圧して完了!
最初はちょっと冷たくなっていた会長の手も、血流が回復したようだ。
マッサージって、携もよく俺にやってくれてたから、見よう見真似でやってるうちにさまになってきた気がする。
引っ込める様子のない会長の両手をそれぞれに握って、やんわりと指圧を続けてみた。
気に入ってくれたんだろうな~。もうちょっとサービスしよう。
お互いにコーヒーが飲めないけど、会長の望みとあらば応えたいもので。指圧しながら目線だけで確認すると、気持ち良さそうに目を細めていて眉間の皺も無くなっている。良かった~。
廊下に人の気配がして、こんこんと扉が鳴った。
「どうぞ」
会長の応えにドアを開けたのは、ウォルター先輩だった。
俺は顔を向けつつもマッサージは続けていたので、先輩がきょとんとして俺の膝に視線を落とす。
「えーと……なんだかお邪魔のようで」
左手で髪をかき上げる仕草が流れるように綺麗で様になっている。
でも邪魔って何がー? 休憩してるだけだから別に問題ないと思うんだけども。
「構わないが?」
会長も首を傾げて、それから俺にありがとうと言ってから手を引いた。
これで少しでも疲れが取れているといいんだけどな。
「ヒデさんもそんな優しそうな顔するんですねえー」
中に入ってから静かにドアを閉めた金髪王子は、にんまりと意地悪そうな笑みを湛えている。
ヒデさんって……ああそうか、会長の名前って英明だったっけ。まさに名は体を現すって感じだよな。
「失礼な。僕が今まで優しくなかったみたいじゃないか」
心外だという風にフレームを直す会長、また眉間に皺が~。
あーあ、もしかして今までの顰めっ面って金髪王子のせいなんじゃ……。
「あのー、会長は最初から優しいですよ?」
取り成すつもりじゃないけど、何か勘違いされているなら気の毒だ。恐る恐る意見してみた。
ここに初めて来た時から、大野会長はさっきみたいに微笑んでいたと思う。金髪王子は仕事サボりすぎだから優しくしてもらえないんだよ、きっと。流石にそれは言えないけど。
ウォルター先輩は変な笑顔のまま眉を上げて俺を見て、それからまた会長に視線を戻してくくっと笑った。
「それは相手がカズくんだからじゃないのー?」
えー……そんなこともないと思うんだけど。
まあ、自分がいないところでの会長なんて知りようもないし、確かに校内で見掛ける時には忙しそうに早足で歩いているか、誰かと話していてもきりりと引き締まった表情しているけどさ。
それって仕事中とかだからだよね。いっつもへらへらしてたら、逆に変だと思う。
──ああ、そういえばウォルター先輩は笑顔が標準装備だったっけ。
それなら会長の真面目すぎるところ、理解できないのかもしれないな。
俺には身近に携って存在がいるから、普段表情に乏しい人が自分に向けて微笑んでくれるのって凄く嬉しいし、だから普段の顔が他人には険しく見えても別にそれ怒っているわけじゃないよって教えてあげたい時もあるくらいだ。
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