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とられたら嫌なんだ
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「昨日、凄かったな。なんか色々」
じっと考えていると、そのままの体勢で智洋が話し掛けてきた。
息が口の辺りに当たりそうなくらいの距離なんですが!
「凄いなんてもんじゃなかったよあれは……別世界だった……」
思い出しても呆然としそうなくらいの衝撃だったよね、あれ。
一応二人ともスカートも下着も着けたままだったから局部が見えたわけじゃねえけどさ。相当恥ずかしかったと思うよ~……。初対面の俺たちの前であんな風に足広げて! 負けとはいってもちゃんと円華さんだってイかされてたしっ。
「指だけでイかせられるもんなんだって初めて知ったよ俺……。生で見ると迫力あるな。AVみたいな嘘っぽい喘ぎ方じゃねえし……」
と、智洋も、出来るんだろうか。
訊いてみたいけど、なんだかなあ。
「とある統計によると、女性の七割はセックスは嫌いか好きじゃないからしいけどな。つまり挿入で気持ち良くなるのは男のエゴってわけだ。翔子さんも、今までイったことないっつってたし」
「え? そうなんだ……」
「もしかしてそういうの教えてくれたんじゃね? 先輩たち。あの人たち相当テクあるよな」
「あー、なんかバイトもオールで指名が、みたいに言ってたのってホストみたいなのやってんのかな」
「かも、なー」
チュッと音をたてて、下唇を吸われた。
「なんにしても、ゲストって言われた時和明のことかと思ってビビったけど、良かったよ」
「ええー? 俺のことイかせたって面白くもなんともないじゃん」
しかも年上の女性に見せるもんじゃねえしっ! 智洋って変……。
あんまりにもおかしなことを言うもんだから、くしゃくしゃに髪の毛乱して笑ってやった。ついでに、
「俺も、翔子さんが智洋のことマジじゃなくてほっとしたよ?」
なんて打ち明けてみる。
と。
智洋がぴたりと動きを止めて、体を離して正面からまじまじと俺の目を見つめてきた。
あれ? 何か変なこと言っちゃったかな俺。
不安になって、早く何か言ってくれないかなと次の言葉を待つ。
──まだかな……参った……。
何が変だったのか、早く教えてよ~。
「和明。ほっとしたのって……なんで?」
足に置いていた手を取られ、唇をくっつけるようにしてようやく智洋は口を開いた。綺麗な流線を描く眼から視線を逸らせない。
「え、な、なんでだろ……わかんね」
うん、だって自分でもわかんねえんだもん。ホントだって。
軽く触れているだけの柔らかな場所に意識を持っていかれる。目は互いを見つめたまま、触感は、指先に集中してて。
「逆ナンされた時も、なんか俺の予想と全然違う行動とってくれてさ……嬉しいんだけど」
「う、嬉しいの?」
ん、と応じながら、ちゅうっと人差し指を吸われた。
「だってさ……なんか、あの子たちと智洋じゃ釣り合わないっていうか……俺が約束してたんだし、取られたら嫌っていうか」
「とられる」
「あっ、ごめん! モノじゃねえのにそんな言い方されたら嫌だよなっ。じゃなくてー……えっと」
慌てて弁明しながら、適当な言葉がないかと頭の中を必死で探す。引き出しの中、なんか出て来い!
目を見張って視線を絡めたままだった智洋が、口元を綻ばせた。
あれ? 怒ってるわけじゃないんだ。良かった~。
「だからさ……あん時、ごめんって。俺が突っ走って意地悪しちゃったというか、変なヤキモチ焼いて智洋が彼女出来るかもしれないの邪魔しちゃったかと思ってちょっと反省したんだけど~。
翔子さんにも、あ、あんなことされてっし! けどでも本気じゃないなら良かったとかって。あーもう、なんかぐたぐだだけど、うん……仲良くしてくれてありがとな」
自分でも何言ってんだか解らなくなって。
でも目の前の智洋は、やっぱり驚いた顔をしながらも嬉しそうっていうか、面白いだけかもしれないけどさ、なんか微笑んだままで。
じっと考えていると、そのままの体勢で智洋が話し掛けてきた。
息が口の辺りに当たりそうなくらいの距離なんですが!
「凄いなんてもんじゃなかったよあれは……別世界だった……」
思い出しても呆然としそうなくらいの衝撃だったよね、あれ。
一応二人ともスカートも下着も着けたままだったから局部が見えたわけじゃねえけどさ。相当恥ずかしかったと思うよ~……。初対面の俺たちの前であんな風に足広げて! 負けとはいってもちゃんと円華さんだってイかされてたしっ。
「指だけでイかせられるもんなんだって初めて知ったよ俺……。生で見ると迫力あるな。AVみたいな嘘っぽい喘ぎ方じゃねえし……」
と、智洋も、出来るんだろうか。
訊いてみたいけど、なんだかなあ。
「とある統計によると、女性の七割はセックスは嫌いか好きじゃないからしいけどな。つまり挿入で気持ち良くなるのは男のエゴってわけだ。翔子さんも、今までイったことないっつってたし」
「え? そうなんだ……」
「もしかしてそういうの教えてくれたんじゃね? 先輩たち。あの人たち相当テクあるよな」
「あー、なんかバイトもオールで指名が、みたいに言ってたのってホストみたいなのやってんのかな」
「かも、なー」
チュッと音をたてて、下唇を吸われた。
「なんにしても、ゲストって言われた時和明のことかと思ってビビったけど、良かったよ」
「ええー? 俺のことイかせたって面白くもなんともないじゃん」
しかも年上の女性に見せるもんじゃねえしっ! 智洋って変……。
あんまりにもおかしなことを言うもんだから、くしゃくしゃに髪の毛乱して笑ってやった。ついでに、
「俺も、翔子さんが智洋のことマジじゃなくてほっとしたよ?」
なんて打ち明けてみる。
と。
智洋がぴたりと動きを止めて、体を離して正面からまじまじと俺の目を見つめてきた。
あれ? 何か変なこと言っちゃったかな俺。
不安になって、早く何か言ってくれないかなと次の言葉を待つ。
──まだかな……参った……。
何が変だったのか、早く教えてよ~。
「和明。ほっとしたのって……なんで?」
足に置いていた手を取られ、唇をくっつけるようにしてようやく智洋は口を開いた。綺麗な流線を描く眼から視線を逸らせない。
「え、な、なんでだろ……わかんね」
うん、だって自分でもわかんねえんだもん。ホントだって。
軽く触れているだけの柔らかな場所に意識を持っていかれる。目は互いを見つめたまま、触感は、指先に集中してて。
「逆ナンされた時も、なんか俺の予想と全然違う行動とってくれてさ……嬉しいんだけど」
「う、嬉しいの?」
ん、と応じながら、ちゅうっと人差し指を吸われた。
「だってさ……なんか、あの子たちと智洋じゃ釣り合わないっていうか……俺が約束してたんだし、取られたら嫌っていうか」
「とられる」
「あっ、ごめん! モノじゃねえのにそんな言い方されたら嫌だよなっ。じゃなくてー……えっと」
慌てて弁明しながら、適当な言葉がないかと頭の中を必死で探す。引き出しの中、なんか出て来い!
目を見張って視線を絡めたままだった智洋が、口元を綻ばせた。
あれ? 怒ってるわけじゃないんだ。良かった~。
「だからさ……あん時、ごめんって。俺が突っ走って意地悪しちゃったというか、変なヤキモチ焼いて智洋が彼女出来るかもしれないの邪魔しちゃったかと思ってちょっと反省したんだけど~。
翔子さんにも、あ、あんなことされてっし! けどでも本気じゃないなら良かったとかって。あーもう、なんかぐたぐだだけど、うん……仲良くしてくれてありがとな」
自分でも何言ってんだか解らなくなって。
でも目の前の智洋は、やっぱり驚いた顔をしながらも嬉しそうっていうか、面白いだけかもしれないけどさ、なんか微笑んだままで。
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