71 / 153
餌付けされてしまいそうです
しおりを挟む
「どうする? 流石に迷惑な気がするんだけど」
「だよな……確かに恋人ではなさそうだけど、仲良さそうだし。それに二人分も料理増えたら大変じゃん」
細かいトコに気が付くよな、智洋。家で手伝わされてんのか?
でも確かにそうなんだよなあ。
栗原邸では挨拶の声しか聞こえなかったけど奥にお母さん居た気配してたのに、この家には今この室内に居るメンバー以外気配がしない。
玄関の靴を見てもそんな感じだし、どんな家族構成なんだろう……一軒家なのになあ。
「二人ともー、心配してくれてるみたいだから一応言っとくけど、俺調理は趣味みたいなもんだから気にしないでいいよ? 運ぶ時だけ手伝ってくれたらOK」
マドカさんが電話で話している隙に、いつの間にやら傍に先輩が立っていた。
「でもおうちの人には断りいれといてな。そこに電話あるからどうぞ」
部屋の入り口にある外国の映画に出てくるみたいなクラシックな電話機を示されて、ついつい弾みで頷いてしまった。
てことは今テーブルの上に並んでるのも全部先輩の手作りー!?
お洒落だし、おいしそうだし、母親の手料理とは全然違って盛り付け方のセンスもいいし!
なんなんですかこの人はもう!
支度をするからとキッチンに向かった後ろ姿を見送り料理を見て涎を垂らさんばかりにしていると、携帯電話をしまったマドカさんが煙草の火を消しながら話し掛けてきた。
「すげえよな、ウォルターって。私もすっかり餌付けされちゃってさ~。もうそこまでされたら女ならイチコロ。『抱いて!』って感じだよなあ」
ウシシ、って笑い方とか喋り方にしてもやっぱり面白い人だなあ。
でも返答に困りますよ……。
「男はどうなの? やっぱり食べ物に弱い?」
んん? まあ普通は女の子が手作りの弁当とか菓子を差し入れて、ってパターンだよね。
うん、確かにそういうの、弱いかも……。勿論誰からでもいいってわけじゃあないだろうけど。
されたことないからわかんねえなあ……でも。
「んー、先輩みたいなかっこいい人にされたらクラッとしますよねえ」
両手でグラスを持ったまま、残りを一気に飲み干した。
「だしょー」
こっちを指差してマドカさんは笑ってるけど、なんか智洋が不安そうに俺のことチラ見してて。
どうかした? って意味を込めて顔を覗き込むと、目が泳いで「じゃあ電話借りる」と立ち上がってしまった。
なんだったのかなあ。
黒電話より軽かったけど、久し振りにダイヤル式の電話を掛けて懐かしさに浸りながら、先輩が持ってきてくれた揚げたてのフライドポテトを摘まむ。
うまー!
ファストフードの、潰して固めたんじゃなくて切って揚げただけのやつ。素材の味が生きててメチャうまです。
「だよな……確かに恋人ではなさそうだけど、仲良さそうだし。それに二人分も料理増えたら大変じゃん」
細かいトコに気が付くよな、智洋。家で手伝わされてんのか?
でも確かにそうなんだよなあ。
栗原邸では挨拶の声しか聞こえなかったけど奥にお母さん居た気配してたのに、この家には今この室内に居るメンバー以外気配がしない。
玄関の靴を見てもそんな感じだし、どんな家族構成なんだろう……一軒家なのになあ。
「二人ともー、心配してくれてるみたいだから一応言っとくけど、俺調理は趣味みたいなもんだから気にしないでいいよ? 運ぶ時だけ手伝ってくれたらOK」
マドカさんが電話で話している隙に、いつの間にやら傍に先輩が立っていた。
「でもおうちの人には断りいれといてな。そこに電話あるからどうぞ」
部屋の入り口にある外国の映画に出てくるみたいなクラシックな電話機を示されて、ついつい弾みで頷いてしまった。
てことは今テーブルの上に並んでるのも全部先輩の手作りー!?
お洒落だし、おいしそうだし、母親の手料理とは全然違って盛り付け方のセンスもいいし!
なんなんですかこの人はもう!
支度をするからとキッチンに向かった後ろ姿を見送り料理を見て涎を垂らさんばかりにしていると、携帯電話をしまったマドカさんが煙草の火を消しながら話し掛けてきた。
「すげえよな、ウォルターって。私もすっかり餌付けされちゃってさ~。もうそこまでされたら女ならイチコロ。『抱いて!』って感じだよなあ」
ウシシ、って笑い方とか喋り方にしてもやっぱり面白い人だなあ。
でも返答に困りますよ……。
「男はどうなの? やっぱり食べ物に弱い?」
んん? まあ普通は女の子が手作りの弁当とか菓子を差し入れて、ってパターンだよね。
うん、確かにそういうの、弱いかも……。勿論誰からでもいいってわけじゃあないだろうけど。
されたことないからわかんねえなあ……でも。
「んー、先輩みたいなかっこいい人にされたらクラッとしますよねえ」
両手でグラスを持ったまま、残りを一気に飲み干した。
「だしょー」
こっちを指差してマドカさんは笑ってるけど、なんか智洋が不安そうに俺のことチラ見してて。
どうかした? って意味を込めて顔を覗き込むと、目が泳いで「じゃあ電話借りる」と立ち上がってしまった。
なんだったのかなあ。
黒電話より軽かったけど、久し振りにダイヤル式の電話を掛けて懐かしさに浸りながら、先輩が持ってきてくれた揚げたてのフライドポテトを摘まむ。
うまー!
ファストフードの、潰して固めたんじゃなくて切って揚げただけのやつ。素材の味が生きててメチャうまです。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。



男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

みどりとあおとあお
うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。
ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。
モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。
そんな碧の物語です。
短編。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる