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なんか嫌だったから
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「智洋~っ、お待たせ」
人込みに飲まれないように、なるべくまっすぐに店の前に辿り着くと、ほっと安堵した様子の智洋と振り返る女の子たち。
近寄ってみて改めて小さいなって気付いた。何しろ俺より十センチ以上も低い。まさか中学生じゃねえよな?
「あ、連れの人きたね。いいじゃんいいじゃん! 二対三でも大丈夫だしぃ」
天パが入っているのか、くりくりの髪をショートにしている女の子がぐいぐいと智洋の腕を引いている。
なんかちょっとムカツクんですけど……。初対面で強引すぎねえ? 俺が奥手すぎ?
結構可愛かったけど、なんか苛々が募ってくる。昔の姉貴のこと、思い出したせいかもしれない。
「悪いけど、用事あるから」
もう片方の智洋の腕を取ると、俺は店を素通りして歩き始めた。本当は中でちょっとしゃべるつもりだったけど、そんなことしたら彼女たちが付いて来そうで。
くそー、女の子が入らない店って何処だよ!?
憤然と歩を進める俺に、黙って智洋は付いてくる。あ、腕掴んだままだった。でも行き先も決まってないし、離したらはぐれるかもと思いそのまま歩き続ける。
とっくにアーケードが途切れた頃、俺はようやく手を離した。
普通に歩ける程度に歩道は空いていて、熱気と共に頭に上っていた血が冷えてきたような感覚。
ヤバイ。なんか勢いで勝手に断って連れてきちゃったけど、もしかして余計なことしちゃったかも。
恐る恐る斜め後ろを振り返ると、智洋はポケットから小銭を出しているところだった。
「ソフトクリーム食わねえ?」
そう言って指差された先には、持ち帰り専用のソフトクリームショップ。ワンコインで買えるから、ここいらの学生御用達だ。
「食うっ」
勢い良く頷くと、カウンターにさっさとコインを二枚置くのが見えて「ミックス!」と反射で言ってしまっていた。
「はい、毎度あり~」
手際良くコーンに巻き取り、あっという間にバニラとチョコレートのミックスと、智洋の頼んだバニラが手渡される。歩道の端にもあちこちにベンチがあるので、街路樹で木陰になっているところを見つけて二人で腰掛けた。
「ありがと、頂きます!」
「おう」
木陰とはいえ、もたもたしてたらすぐに溶けてしまう。コーンの下から垂れると勿体無いので、俺はいつも舐めるよりかぶりつく感じにさっさと食べてしまうことにしている。
智洋も同じらしく、二人してあっという間に平らげると、俺は自販機でペットボトルのお茶を買って智洋に手渡した。
一応、ソフトクリームのお返しのつもり。口の中甘ったるいし、甘いものの後はお茶が飲みたくなるよな。
「一本だけ?」
智洋が首を傾げたので、
「そんなに喉渇いてねえから、後で一口だけ飲まして」
とお願いしてみた。
ああ、という感じに微笑んで、少し飲んですぐにペットボトルを突き出され、受け取って飲んでからまた戻した。
「あのさ、さっき……智洋の意見も聞かずに連れ出してごめんな。なんか、嫌だったから……」
立ったままだったけど、今言っておかないとそのままになる気がして謝った。
俺の気分で勝手なことしちゃったけど、本当はあの中に智洋の好みの子がいたかもしれねえし。それだったら、困った顔に見えたのは、先約の俺のこと気にしたからだと思うし。
「遊び、行きたかった?」
俯いて恐る恐る上目に見ると、智洋が戸惑ったように視線を合わせてきた。
「全然好みでもなんでもねえんだけど。つうか、声掛けて来るような女が好みじゃねえよ」
「そっか、ならいいんだけど」
ほっと息をつくと、困惑している気配が伝わってくる。
あー……俺の行動に戸惑ってる、かな。って言っても、自分でもわかんねえし。
まあともかく、さっきの女の子たちじゃあ智洋には釣りあわねえ!
人込みに飲まれないように、なるべくまっすぐに店の前に辿り着くと、ほっと安堵した様子の智洋と振り返る女の子たち。
近寄ってみて改めて小さいなって気付いた。何しろ俺より十センチ以上も低い。まさか中学生じゃねえよな?
「あ、連れの人きたね。いいじゃんいいじゃん! 二対三でも大丈夫だしぃ」
天パが入っているのか、くりくりの髪をショートにしている女の子がぐいぐいと智洋の腕を引いている。
なんかちょっとムカツクんですけど……。初対面で強引すぎねえ? 俺が奥手すぎ?
結構可愛かったけど、なんか苛々が募ってくる。昔の姉貴のこと、思い出したせいかもしれない。
「悪いけど、用事あるから」
もう片方の智洋の腕を取ると、俺は店を素通りして歩き始めた。本当は中でちょっとしゃべるつもりだったけど、そんなことしたら彼女たちが付いて来そうで。
くそー、女の子が入らない店って何処だよ!?
憤然と歩を進める俺に、黙って智洋は付いてくる。あ、腕掴んだままだった。でも行き先も決まってないし、離したらはぐれるかもと思いそのまま歩き続ける。
とっくにアーケードが途切れた頃、俺はようやく手を離した。
普通に歩ける程度に歩道は空いていて、熱気と共に頭に上っていた血が冷えてきたような感覚。
ヤバイ。なんか勢いで勝手に断って連れてきちゃったけど、もしかして余計なことしちゃったかも。
恐る恐る斜め後ろを振り返ると、智洋はポケットから小銭を出しているところだった。
「ソフトクリーム食わねえ?」
そう言って指差された先には、持ち帰り専用のソフトクリームショップ。ワンコインで買えるから、ここいらの学生御用達だ。
「食うっ」
勢い良く頷くと、カウンターにさっさとコインを二枚置くのが見えて「ミックス!」と反射で言ってしまっていた。
「はい、毎度あり~」
手際良くコーンに巻き取り、あっという間にバニラとチョコレートのミックスと、智洋の頼んだバニラが手渡される。歩道の端にもあちこちにベンチがあるので、街路樹で木陰になっているところを見つけて二人で腰掛けた。
「ありがと、頂きます!」
「おう」
木陰とはいえ、もたもたしてたらすぐに溶けてしまう。コーンの下から垂れると勿体無いので、俺はいつも舐めるよりかぶりつく感じにさっさと食べてしまうことにしている。
智洋も同じらしく、二人してあっという間に平らげると、俺は自販機でペットボトルのお茶を買って智洋に手渡した。
一応、ソフトクリームのお返しのつもり。口の中甘ったるいし、甘いものの後はお茶が飲みたくなるよな。
「一本だけ?」
智洋が首を傾げたので、
「そんなに喉渇いてねえから、後で一口だけ飲まして」
とお願いしてみた。
ああ、という感じに微笑んで、少し飲んですぐにペットボトルを突き出され、受け取って飲んでからまた戻した。
「あのさ、さっき……智洋の意見も聞かずに連れ出してごめんな。なんか、嫌だったから……」
立ったままだったけど、今言っておかないとそのままになる気がして謝った。
俺の気分で勝手なことしちゃったけど、本当はあの中に智洋の好みの子がいたかもしれねえし。それだったら、困った顔に見えたのは、先約の俺のこと気にしたからだと思うし。
「遊び、行きたかった?」
俯いて恐る恐る上目に見ると、智洋が戸惑ったように視線を合わせてきた。
「全然好みでもなんでもねえんだけど。つうか、声掛けて来るような女が好みじゃねえよ」
「そっか、ならいいんだけど」
ほっと息をつくと、困惑している気配が伝わってくる。
あー……俺の行動に戸惑ってる、かな。って言っても、自分でもわかんねえし。
まあともかく、さっきの女の子たちじゃあ智洋には釣りあわねえ!
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