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降るようなキス
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「ご、ごめんっ。そんな真剣に俺のこと見守っててくれたんだな」
取り繕うと、智洋は「わるい」と困ったような顔をして唇を噛んだ。
しばらく沈黙が落ちて、また智洋の方から口を開いた。
「──ほんとに何もされなかったのか? 全部が見聞き出来たわけじゃねえし、映画館も席離れてたしわかんねえんだけど」
「え……と。実は俺もよく判んなくて……」
あの、映画館でのことと、バスの中でのこと。座席を蹴った時の智洋は、一体何処まで見えてたんだろう。
「判んねえって何?」
不満げに眉を寄せ、それからしばらく考えて、
「されたこと、俺にやってみて?」
なんて言われてしまった。
あ、あれをですか……!
俺がやっても、周みたいなエロい雰囲気は出せないと思うんだけど。
でも、ああいうのって普通によくあることなのか判んないのも確かだし、それなら智洋に判断してもらうのもいいか。
「ええと……じゃあやってみるけど、多分ぎこちないからなんか違うと思うけど」
体を起こして念押しすると、「いいからやってみて」と促され、あの時みたいに指を絡ませて智洋の手を取った。
持ち上げて、指先を口に含みそのまま舌を這わせると、智洋は口を半分開けて俺の口元を凝視していた。
やっぱ下手かな? そんなに舌長くないし、おんなじようには出来ないけどさ……。
精一杯がんばって、指の根元まで舌を這わせて行く。
なんか、ちょっとだけ顔赤い? 智洋。照れられると俺も恥ずかしくなるんだけど。
くっ、と噛み締めるように口を閉じて「も、いい」と手を引かれた。
ううん……やっぱ下手だったかな。俺はあの時気持ちいいって思っちゃったんだけど……。
しょぼんとなりながら、そのまま手を智洋の口元に当てて唇をなぞってみる。
「で、バスの中で、智洋が蹴るまではこんなことされてたんだけど」
目を見張る智洋の唇を割り、人差し指と中指を滑り込ませた。俺がされたように舌を挟みこむと、案の定しばらくして唾液を嚥下するために智洋が口を閉じようと舌を蠢かせ、指先を吸われる。そのまま指の腹を返し上顎をなぞると、今度は明らかな意思を持った舌が、指に絡んできた。
手首をとられ、さっきの仕返しとばかりに指の股にまで丹念に舌を這わされて、腰の辺りが疼く。
「ん、ぅ……っ」
視線がばっちり絡まって、催眠術でも掛けられたかのように身動きできなくなった。
「とも、ひろぉ……っ」
びくびくと戦慄く体を、腰に手を回して抱き寄せられる。
やばいーっ! このままじゃ昨日みたいにムスコさんがっ、ムスコさんが主張しちゃうじゃないですかーっ!
心の中でわめいても、体はもう言うことを聞かない。
「そうか……こんな風にされてたんだ?」
声が、いじわるだ。
耳元に屈みこまれて、ぶるりと肩が震えた。
「……ここまでは感じてないけどっ」
「へえ?」
口の中に反対の手が入れられて、指先に翻弄される。
「ふ……うぅ、」
手と、口と。それだけなのに……。
どうしてこんなに感じちゃうんだろう。
「和明」
散々遊ばれた後、軽く唇を啄ばまれた。チュッ、チュッて何度も何度も。
「もう、されたら駄目だかんな?」
合間に言い聞かせるように強い眼差しで見詰められる。
「谷本のこと、好きなわけじゃねえだろ?」
「っん……嫌いじゃ、ないよ」
「俺のことは?」
「す、好きだよ?」
「じゃあ俺の言うこと聞いて」
なんだか良く判らない論理展開だけど、うんうんと頷いた。
顔中に、降るようなキスを落とされた。
取り繕うと、智洋は「わるい」と困ったような顔をして唇を噛んだ。
しばらく沈黙が落ちて、また智洋の方から口を開いた。
「──ほんとに何もされなかったのか? 全部が見聞き出来たわけじゃねえし、映画館も席離れてたしわかんねえんだけど」
「え……と。実は俺もよく判んなくて……」
あの、映画館でのことと、バスの中でのこと。座席を蹴った時の智洋は、一体何処まで見えてたんだろう。
「判んねえって何?」
不満げに眉を寄せ、それからしばらく考えて、
「されたこと、俺にやってみて?」
なんて言われてしまった。
あ、あれをですか……!
俺がやっても、周みたいなエロい雰囲気は出せないと思うんだけど。
でも、ああいうのって普通によくあることなのか判んないのも確かだし、それなら智洋に判断してもらうのもいいか。
「ええと……じゃあやってみるけど、多分ぎこちないからなんか違うと思うけど」
体を起こして念押しすると、「いいからやってみて」と促され、あの時みたいに指を絡ませて智洋の手を取った。
持ち上げて、指先を口に含みそのまま舌を這わせると、智洋は口を半分開けて俺の口元を凝視していた。
やっぱ下手かな? そんなに舌長くないし、おんなじようには出来ないけどさ……。
精一杯がんばって、指の根元まで舌を這わせて行く。
なんか、ちょっとだけ顔赤い? 智洋。照れられると俺も恥ずかしくなるんだけど。
くっ、と噛み締めるように口を閉じて「も、いい」と手を引かれた。
ううん……やっぱ下手だったかな。俺はあの時気持ちいいって思っちゃったんだけど……。
しょぼんとなりながら、そのまま手を智洋の口元に当てて唇をなぞってみる。
「で、バスの中で、智洋が蹴るまではこんなことされてたんだけど」
目を見張る智洋の唇を割り、人差し指と中指を滑り込ませた。俺がされたように舌を挟みこむと、案の定しばらくして唾液を嚥下するために智洋が口を閉じようと舌を蠢かせ、指先を吸われる。そのまま指の腹を返し上顎をなぞると、今度は明らかな意思を持った舌が、指に絡んできた。
手首をとられ、さっきの仕返しとばかりに指の股にまで丹念に舌を這わされて、腰の辺りが疼く。
「ん、ぅ……っ」
視線がばっちり絡まって、催眠術でも掛けられたかのように身動きできなくなった。
「とも、ひろぉ……っ」
びくびくと戦慄く体を、腰に手を回して抱き寄せられる。
やばいーっ! このままじゃ昨日みたいにムスコさんがっ、ムスコさんが主張しちゃうじゃないですかーっ!
心の中でわめいても、体はもう言うことを聞かない。
「そうか……こんな風にされてたんだ?」
声が、いじわるだ。
耳元に屈みこまれて、ぶるりと肩が震えた。
「……ここまでは感じてないけどっ」
「へえ?」
口の中に反対の手が入れられて、指先に翻弄される。
「ふ……うぅ、」
手と、口と。それだけなのに……。
どうしてこんなに感じちゃうんだろう。
「和明」
散々遊ばれた後、軽く唇を啄ばまれた。チュッ、チュッて何度も何度も。
「もう、されたら駄目だかんな?」
合間に言い聞かせるように強い眼差しで見詰められる。
「谷本のこと、好きなわけじゃねえだろ?」
「っん……嫌いじゃ、ないよ」
「俺のことは?」
「す、好きだよ?」
「じゃあ俺の言うこと聞いて」
なんだか良く判らない論理展開だけど、うんうんと頷いた。
顔中に、降るようなキスを落とされた。
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