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根本的なとこで、通じていません!
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急いで帰ると必然的に起こり得る事が起こってしまい、俺の足は鈍った。
門から寮のエントランスまでは、校舎と違ってレンガ敷きになっていて、それ以外は芝生になっている。
エントランス脇の壁に寄りかかり、周が立っていた。やや俯きがちだった面を上げ、ばっちりと目が合ってしまう。周は何か言いた気に口を開き、俺が近付くのを待っていた。
「さっきはごめん、俺……」
開口一番に謝られて、驚きながらも俺は首を振った。
「ううん、俺こそゴメンな」
近付いて隣に並び、さっき周がしていたように壁に凭れ掛かる。
「なんでカズが謝るんだよ」
「だって、理由はともかく、周のこと怒らせちゃったから」
「──変なヤツ」
周は腕を組んでそっぽを向いたけど、話は続くみたいだった。
「あのさ、俺ずっと寮生だったから、共学のことなんか知らなくってさ……。つい、おんなじようにやっちゃったというか。だから、急には受け入れられないよな。恐かっただろ……ごめん」
こんなに素直に謝られるなんて思ってもいなかったから、さっきの讃岐や小橋の心配するようなことはなさそうだなと俺は嬉しくなった。
「いや、俺も世間知らずらしいからさ。まあ、周も寮生活のこととか色々教えてな? そんで、明日からも一緒に応援団がんばろ? 折角チームメイトで仲良くなれたんだし、これからも仲良くして欲しいよ」
「え? いいのかよ……。もう近くにいたくねえって思うんが普通じゃねえの?」
驚いた周が、振り向いて俺を凝視する。
「別に……確かに恐かったけど、友達じゃなくなるほうがもっと嫌だし。だけどああいうのは、俺にはちょっと……」
ごにょごにょと、語尾を濁す。
「じゃあどういうのだったらOK? 途中までは気持ち良さそうにしてたのに、急に萎えちゃっただろ。次はもっとよくしてやるから」
うあ! 違うー! 根本的なトコ伝わってないー!
「ほ、他の遊びしよ? な?」
「あのな、なんか誤解してるようだけど、俺は誰彼構わずんなこと仕掛けてんじゃねえぞ」
隣から正面に位置を変えた周が、そのまま両手を俺の頭の脇に突いた。
ふえぇ……やばい。なんかわかんないけどちょっとまた変な空気ですー!
人通りもあるんだからあんまり変なことはしないだろうけど……。
「次は邪魔の入らねえとこでゆっくり、な」
近付いてくる顔が気になって、言っている内容なんて全然耳に入ってこなかった。
ひいっ! ここ、外ですようっ玄関口ですよーっ!
ぎゃあああっ、ち、近いっ! 見つめすぎだしっ。
横から擦り抜けられないかと壁をまさぐっていると、スパン! と小気味良い音がして、俺たちの顔の横で何かが跳ねた。黄色い残像だけが視界に入ったんだけど。
「──今すぐ離れろよ」
「ああ?」
不機嫌そうに振り返る周の体越しに、門の方から歩いて来る智洋が見えた。隣にいる誰かと二人、テニスウェアを着てラケットを下げている。
コロコロと転がったボールが、その足元に返って行った。隣を歩いているヤツが屈んでそれを拾い、少し離れている智洋に投げ、ちらっと横目で見ただけで視線はこちらのままそれを受け取る。
吊り上がった眼差しが、陽光を全て凍てつかせる位に鋭く冷たく周を睨みつけている。
こんなに怒りオーラ放っている智洋なんて初めてで、俺は安堵すると共に動けなくなった。
「今度ははずさねえよ?」
左手をトスの形に上げると、隣のヤツが、
「こいつの球、めっちゃドライブ効いてっから生身に受けたら痛いぞー」
なんて忠告してくれている。
軟式出身のヤツは硬式の球にスピンが掛かりやすいって聞いたことある。軟式でも十分痛いだろうに、全力でサーブされた硬式球なんて絶対受けたくない。俺の方がぶるると震えてしまった。
「くっそ、なんなんだよ」
周は智洋から視線を外さないまま俺から離れると「またな」と言ってロビーに入って行った。
ふええ……助かった……。
門から寮のエントランスまでは、校舎と違ってレンガ敷きになっていて、それ以外は芝生になっている。
エントランス脇の壁に寄りかかり、周が立っていた。やや俯きがちだった面を上げ、ばっちりと目が合ってしまう。周は何か言いた気に口を開き、俺が近付くのを待っていた。
「さっきはごめん、俺……」
開口一番に謝られて、驚きながらも俺は首を振った。
「ううん、俺こそゴメンな」
近付いて隣に並び、さっき周がしていたように壁に凭れ掛かる。
「なんでカズが謝るんだよ」
「だって、理由はともかく、周のこと怒らせちゃったから」
「──変なヤツ」
周は腕を組んでそっぽを向いたけど、話は続くみたいだった。
「あのさ、俺ずっと寮生だったから、共学のことなんか知らなくってさ……。つい、おんなじようにやっちゃったというか。だから、急には受け入れられないよな。恐かっただろ……ごめん」
こんなに素直に謝られるなんて思ってもいなかったから、さっきの讃岐や小橋の心配するようなことはなさそうだなと俺は嬉しくなった。
「いや、俺も世間知らずらしいからさ。まあ、周も寮生活のこととか色々教えてな? そんで、明日からも一緒に応援団がんばろ? 折角チームメイトで仲良くなれたんだし、これからも仲良くして欲しいよ」
「え? いいのかよ……。もう近くにいたくねえって思うんが普通じゃねえの?」
驚いた周が、振り向いて俺を凝視する。
「別に……確かに恐かったけど、友達じゃなくなるほうがもっと嫌だし。だけどああいうのは、俺にはちょっと……」
ごにょごにょと、語尾を濁す。
「じゃあどういうのだったらOK? 途中までは気持ち良さそうにしてたのに、急に萎えちゃっただろ。次はもっとよくしてやるから」
うあ! 違うー! 根本的なトコ伝わってないー!
「ほ、他の遊びしよ? な?」
「あのな、なんか誤解してるようだけど、俺は誰彼構わずんなこと仕掛けてんじゃねえぞ」
隣から正面に位置を変えた周が、そのまま両手を俺の頭の脇に突いた。
ふえぇ……やばい。なんかわかんないけどちょっとまた変な空気ですー!
人通りもあるんだからあんまり変なことはしないだろうけど……。
「次は邪魔の入らねえとこでゆっくり、な」
近付いてくる顔が気になって、言っている内容なんて全然耳に入ってこなかった。
ひいっ! ここ、外ですようっ玄関口ですよーっ!
ぎゃあああっ、ち、近いっ! 見つめすぎだしっ。
横から擦り抜けられないかと壁をまさぐっていると、スパン! と小気味良い音がして、俺たちの顔の横で何かが跳ねた。黄色い残像だけが視界に入ったんだけど。
「──今すぐ離れろよ」
「ああ?」
不機嫌そうに振り返る周の体越しに、門の方から歩いて来る智洋が見えた。隣にいる誰かと二人、テニスウェアを着てラケットを下げている。
コロコロと転がったボールが、その足元に返って行った。隣を歩いているヤツが屈んでそれを拾い、少し離れている智洋に投げ、ちらっと横目で見ただけで視線はこちらのままそれを受け取る。
吊り上がった眼差しが、陽光を全て凍てつかせる位に鋭く冷たく周を睨みつけている。
こんなに怒りオーラ放っている智洋なんて初めてで、俺は安堵すると共に動けなくなった。
「今度ははずさねえよ?」
左手をトスの形に上げると、隣のヤツが、
「こいつの球、めっちゃドライブ効いてっから生身に受けたら痛いぞー」
なんて忠告してくれている。
軟式出身のヤツは硬式の球にスピンが掛かりやすいって聞いたことある。軟式でも十分痛いだろうに、全力でサーブされた硬式球なんて絶対受けたくない。俺の方がぶるると震えてしまった。
「くっそ、なんなんだよ」
周は智洋から視線を外さないまま俺から離れると「またな」と言ってロビーに入って行った。
ふええ……助かった……。
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