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第68章:「3月25日、午前0時過ぎ」
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スティーブが俺達のアパートメントに戻っていった。
だから今夜は、
俺、一人きり。
この一週間、
体力も気力も十分にあった。
今だって、なんの疲れも感じてない。
だけど。
なんでだか今日は一日中、心が重い。
あと。
睡眠時間が極端に減ってからも、
目覚めたときの落ち込み方は依然と同じ・・・フツウじゃない。
誰にも、スティーブにも言ってないけど、
これはもう、アーサーで治療を受けてる時から変わらない。
これが、
かなり、
キツイ。
壁にかかっている時計を見ると、もうすぐ0時。
「もうこんな時間か」
毎日が、光のように過ぎていく。
特にこの一週間は、
一瞬で終わった。
「2年なんて、ほとんど時間がないに等しいじゃないか?」
「記憶も曖昧なままで、何ができるんだ?」
「間に合うわけないだろ?」
どこからともなく俺の頭に囁く声が、俺をひどく焦らせる。
でも、一方で俺の本質的な部分は至極落ち着いていて、
「落ち着けキョウ。ちゃんと見極めるんだ」
「オマエは全部知ってる。わかってる」
「源へ、戻れ。直観を信じろ」
そんな言葉をかけてくる。
それは、ランニングマシーンを使って黙々と走ってるときに頻繁に起こる。
「・・・ちょっと走って、思考を飛ばすかな」
そんなことを考えてた時――――
うっ・・・
左腕の血管が急に丸く腫れあがり、激痛を走らせた。
痛みに耐えながら、その腫れた部分を右手で抑えようとした時。
「なんだ、これ・・・」
その腫れあがった皮膚の中心にある、大小二つのほくろが
―――青く点滅し始めた。
「なんなんだ、これ・・・?」
今まで、この腕に違和感を感じたこともなかったし、
何かをここに埋め込む手術をした記憶もない・・・
埋め込む、手術?
「これ・・・どうしたらいいんだ?」
とりあえず、この部屋の近くにある実習室から、
消毒液と手術用マイクロメスなんかを持ってきて、
ここを切り取ってみるしか・・・
なぜそう思ったのかはわからないけど、
そう感じてソファから立ち上がった時。
痛みが一瞬で消えたのと同時に気づいた・・・
「あ・・・この点滅、一定じゃない」
よく見るとそれは、
大きなほくろが光ったと思えば、
小さなほくろが光り、
そしてまた大きなほくろに戻って数回・・・
てな具合で光っていく。
「暗号・・・?」
再び、
なぜ俺がそう思ったのかはわからない。
でも。
俺はそんなことが自分に起こった驚きも忘れ、
繰り返し繰り返し、その光をカウントし続けた。
「大が1回、小が4回、大が7回、小が1回、大が6回、小が4回、大が7回、小が1回、大が6回・・・」
規則性はある。
小が4回から大が6回まで。
でも最初の大の1回が半端だし、このままだと永遠にこの点滅が続くループ状態。
どういう意味だ?
俺はもう一度、それを見つめた。
「あ」
大の6回・・・
最後の1回の点滅が微妙に遅い・・・・
そうか。
これは「大が1回、小が4回、大が7回、小が1回、大が5回」の繰り返しなんだ。
で?
なんとなく、だけど。
これは恐らく、俺が自分で埋め込んだもののような気がする。
だから、なんとなく、わかるんだと思う。
なぜこんなことをしたのか、
理由はわからないけど。
仮にそうだとして。
俺はなぜ、こういう風に光を点滅させたのか。
モールス?
大が―で小が●とか。
真っ先に思いつくのはそれ。
俺はそれを紙に書いてみた。
-●●●●-------●-----
もしくは逆で
●----●●●●●●●-●●●●●
欧文、和文、数字に変換してみたり、混合でも考えてみた。
けど、どう組み合わせても言葉にならない。
「・・・俺が作ったとして、俺が解読できるもの・・・」
よくよくそれを眺めていたら、
―が1に、●が0に見えてきた。
だから置き換えてみた。
100001111111011111
011110000000100000
「これ・・・バイナリだ」
俺達が普段使ってるのは10進法といって、0から9までの数字だけど、
2進法、
つまりバイナリだと0と1しか存在しなくて、すべてのものを0と1の組み合わせで表現できる。
未だコンピュータなんかはバイナリで構成されてるんだけど、
これを10進法とか16進法なんかに変換することも可能なわけで。
俺はとりあえずこのふたつの組み合わせを10進法に変換した。
139231
そして
122912
これをアルファベットに置き換えると、アルファベットは26文字しかないから
1/3/9/2/3/1
13/9/2/3/1
1/3/9/23/1
13/9/23/1
1/2/2/9/1/2
12/2/9/1/2
1/2/2/9/12
12/2/9/12
1/22/9/1/2
1/22/9/12
のいずれかの組み合わせになる。
つまりこれをアルファベットに変換すると
ACIBCA
MIBCA
ACIWA
MIWA
ABBIAB
LBIAB
ABBIL
CBIC
AVIAB
AVIC
この中でちゃんと単語になってんのは・・・
MIWA?
MIWA?
ミワ?
ミワ
ミワ
ミワ
ミワ
ミワ
ミワ・・・
なんか、
頭の中でミワって呼ぶと、胸が痛くなる。
だから声に出して言ってみた。
「ミワ」
すると――――
青い光が・・・止まった。
MIWAが正解、
ってこと。か。
ミワ。
どういう意味、なんだろう。
人の名前?
苗字?
それとも下の名前?
土地の名前・・・?
ミワ
この、たった二文字を思うだけで、
俺の心臓はバクバクと音を立て、
カラダが激しく震え、
そして------
自然と涙が一粒零れた。
だから今夜は、
俺、一人きり。
この一週間、
体力も気力も十分にあった。
今だって、なんの疲れも感じてない。
だけど。
なんでだか今日は一日中、心が重い。
あと。
睡眠時間が極端に減ってからも、
目覚めたときの落ち込み方は依然と同じ・・・フツウじゃない。
誰にも、スティーブにも言ってないけど、
これはもう、アーサーで治療を受けてる時から変わらない。
これが、
かなり、
キツイ。
壁にかかっている時計を見ると、もうすぐ0時。
「もうこんな時間か」
毎日が、光のように過ぎていく。
特にこの一週間は、
一瞬で終わった。
「2年なんて、ほとんど時間がないに等しいじゃないか?」
「記憶も曖昧なままで、何ができるんだ?」
「間に合うわけないだろ?」
どこからともなく俺の頭に囁く声が、俺をひどく焦らせる。
でも、一方で俺の本質的な部分は至極落ち着いていて、
「落ち着けキョウ。ちゃんと見極めるんだ」
「オマエは全部知ってる。わかってる」
「源へ、戻れ。直観を信じろ」
そんな言葉をかけてくる。
それは、ランニングマシーンを使って黙々と走ってるときに頻繁に起こる。
「・・・ちょっと走って、思考を飛ばすかな」
そんなことを考えてた時――――
うっ・・・
左腕の血管が急に丸く腫れあがり、激痛を走らせた。
痛みに耐えながら、その腫れた部分を右手で抑えようとした時。
「なんだ、これ・・・」
その腫れあがった皮膚の中心にある、大小二つのほくろが
―――青く点滅し始めた。
「なんなんだ、これ・・・?」
今まで、この腕に違和感を感じたこともなかったし、
何かをここに埋め込む手術をした記憶もない・・・
埋め込む、手術?
「これ・・・どうしたらいいんだ?」
とりあえず、この部屋の近くにある実習室から、
消毒液と手術用マイクロメスなんかを持ってきて、
ここを切り取ってみるしか・・・
なぜそう思ったのかはわからないけど、
そう感じてソファから立ち上がった時。
痛みが一瞬で消えたのと同時に気づいた・・・
「あ・・・この点滅、一定じゃない」
よく見るとそれは、
大きなほくろが光ったと思えば、
小さなほくろが光り、
そしてまた大きなほくろに戻って数回・・・
てな具合で光っていく。
「暗号・・・?」
再び、
なぜ俺がそう思ったのかはわからない。
でも。
俺はそんなことが自分に起こった驚きも忘れ、
繰り返し繰り返し、その光をカウントし続けた。
「大が1回、小が4回、大が7回、小が1回、大が6回、小が4回、大が7回、小が1回、大が6回・・・」
規則性はある。
小が4回から大が6回まで。
でも最初の大の1回が半端だし、このままだと永遠にこの点滅が続くループ状態。
どういう意味だ?
俺はもう一度、それを見つめた。
「あ」
大の6回・・・
最後の1回の点滅が微妙に遅い・・・・
そうか。
これは「大が1回、小が4回、大が7回、小が1回、大が5回」の繰り返しなんだ。
で?
なんとなく、だけど。
これは恐らく、俺が自分で埋め込んだもののような気がする。
だから、なんとなく、わかるんだと思う。
なぜこんなことをしたのか、
理由はわからないけど。
仮にそうだとして。
俺はなぜ、こういう風に光を点滅させたのか。
モールス?
大が―で小が●とか。
真っ先に思いつくのはそれ。
俺はそれを紙に書いてみた。
-●●●●-------●-----
もしくは逆で
●----●●●●●●●-●●●●●
欧文、和文、数字に変換してみたり、混合でも考えてみた。
けど、どう組み合わせても言葉にならない。
「・・・俺が作ったとして、俺が解読できるもの・・・」
よくよくそれを眺めていたら、
―が1に、●が0に見えてきた。
だから置き換えてみた。
100001111111011111
011110000000100000
「これ・・・バイナリだ」
俺達が普段使ってるのは10進法といって、0から9までの数字だけど、
2進法、
つまりバイナリだと0と1しか存在しなくて、すべてのものを0と1の組み合わせで表現できる。
未だコンピュータなんかはバイナリで構成されてるんだけど、
これを10進法とか16進法なんかに変換することも可能なわけで。
俺はとりあえずこのふたつの組み合わせを10進法に変換した。
139231
そして
122912
これをアルファベットに置き換えると、アルファベットは26文字しかないから
1/3/9/2/3/1
13/9/2/3/1
1/3/9/23/1
13/9/23/1
1/2/2/9/1/2
12/2/9/1/2
1/2/2/9/12
12/2/9/12
1/22/9/1/2
1/22/9/12
のいずれかの組み合わせになる。
つまりこれをアルファベットに変換すると
ACIBCA
MIBCA
ACIWA
MIWA
ABBIAB
LBIAB
ABBIL
CBIC
AVIAB
AVIC
この中でちゃんと単語になってんのは・・・
MIWA?
MIWA?
ミワ?
ミワ
ミワ
ミワ
ミワ
ミワ
ミワ・・・
なんか、
頭の中でミワって呼ぶと、胸が痛くなる。
だから声に出して言ってみた。
「ミワ」
すると――――
青い光が・・・止まった。
MIWAが正解、
ってこと。か。
ミワ。
どういう意味、なんだろう。
人の名前?
苗字?
それとも下の名前?
土地の名前・・・?
ミワ
この、たった二文字を思うだけで、
俺の心臓はバクバクと音を立て、
カラダが激しく震え、
そして------
自然と涙が一粒零れた。
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