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第27章:「hide-and-seek2」
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俺はスクリーンのスイッチを押し、画面を切り替えた。
「Z、部隊から何人か家に見張りを頼みます」
「わかってる。家の外側に数ヶ所、車で待機させるから。あとヘリも用意してる」
「ありがとう。偶然とはいえ助かったのは・・・今夜コンちゃんたち家に戻って来ないから、彼らを巻き込まずに済む」
「そうだな。キョウ・・・」
「はい」
「気を抜くなよ?いつもの訓練通り行け」
「はい」
その時。
TRRRRRRRRRRRRR
美和のスマホが鳴った。
「誰?」
「圭ちゃん。今は取らない方がいいよね」
「いや。取ってこの状況を説明しといて?」
「わかった・・・もしもし、圭ちゃん?うん、あのね、実は・・・・・・・・えぇっ?!どうして?!」
今まで見たこともないくらい驚愕した美和が、俺を見つめている。
「どうした?!」
「あ、えっと・・・あ、圭ちゃん、直接杏と話す?」
そう言うと美和は、自分のスマホをスピーカーモードにし、音量を上げた。
「杏?」
「圭さん、俺達今、追われてるみたいなんですよ。今、運転中です」
「知ってるよ。オマエ、バラの花束、お墓に置いてったろ?預かってるから枯れる前にちゃんと取りに来いよ?」
「は?」
「バラってどのくらい持つのかな。今が一番綺麗な状態だから、ま、もって2日ってとこかな?」
「圭さん、今そんな話してる場合じゃないんですよ」
「いや、大事な話だろ。その時に美和ちゃんの彼氏として認めてやるんだから」
「っつうか、マジで今、それどころじゃないんですよ。とりあえず家に向かうんで、着いたらまた電話します」
「キョウ!後方300m、左車線に不審車両発見!キョウのと同じタイプのバン!」
JJがスクリーンを通して叫ぶ。
左車線の方が車の動きが早く、たぶんあと1分くらいで追いつかれる。
右車線に逃げたいけど、交差点が近くてムリだ・・・
「JJ、右はムリ!左車線に逸れる!」
「ダメです!先に追いつかれます!」
「くそ!美和、重心低くして!運転が荒くなるから!」
その瞬間、信じられないことが起こった・・・
横に並んだ不審車両。
運転しているのはサングラスをかけた白人。
助手席には同じくサングラスをかけた・・・黒人。
そして。
フルスモーク後方部のドアが走ったままスライドし、そこに見えたのは・・・
圭さんだった。
「美和ちゃん、こっちに来い!飛び移るんだ!」
「美和、行くな!ここにいろ!俺がちゃんと守るから!」
「早くするんだ、美和ちゃん!」
すると美和はシートベルトを外し、俺の横をすり抜けて後部座席に移った。
「美和、オマエ何やってんだよ!」
「杏、ごめん。私、圭ちゃんのところに行く」
「は?!」
「ホントにごめん!」
「ふざけんなよ美和!行くな!自分が何やってんのかわかってんのか?!」
そんな俺の叫びに美和は無言で答え、静かに後方ドアをスライドさせた。
向かい側では圭さんが大きく手を広げて美和を待っている。
「杏、2日以内に必ず迎えに来て!」
「美和!」
「待ってるから!」
そして美和は、圭さんのバンに飛び移った―――。
一瞬の出来事で・・・茫然自失になった俺はバンを路肩に停めた。
美和がいない。
自ら圭さんの元へ行ってしまった。
なんでだ?
俺が頼りないからか?
圭さんといたほうが、安全だからか?
それにバラの花束を預かってるって―――
俺達を追っていたモノ・・・あれは圭さんとあの2人の外国人だったのか?
畜生。
俺は自分のスマホを取り出した。
TRRRRRRRRRRRRRRRRRR
ガチャ。
「・・・さっき、霊園にいたのは圭さん達ですか?」
「そうだよ」
「ふざけないでくださいよ!」
「ふざけてねぇよ。一世一代くらい真剣」
「俺に殺されたいんですか?!」
「杏に殺されるんだったら本望だね」
「何のためにこんなことするんですか!巻き込まれた美和が可哀そうでしょ!」
「理由を言ったら美和ちゃん許してくれたし」
「理由ってなんですか!事と次第によってはマジで圭さんのこと許しませんよ!」
「理由は簡単。杏が俺を越えたかどうかのテスト。このテストに杏が合格したら美和ちゃんの彼氏として認めないといけないから、俺も本気で行かせてもらうよ?」
それって・・・
「つまり―――2日以内に美和を迎えに行けばいいってことですか?」
「そう。一人でね」
「―――わかりましたよ。2日以内に美和は返してもらいます。ちょっと―――美和に代わってください」
「くくっ。ようやく杏も本気モードになったな。はい、美和ちゃん」
「・・・杏、ごめんね」
「謝るくらいなら行くな」
「ごめん・・・」
「マジで・・・すげぇショック。この状況で他の男に持ってかれるとか、俺、立ち直れないくらい傷ついてんだけど」
「ごめん・・・でも」
「でもなんだよ?」
「杏、ちゃんと迎えに来てくれるでしょう?その時、杏の彼女になってもいいって圭ちゃんが言ったの」
「そうかもしれないけど・・・美和さ」
「ん」
「もう二度と、どんな理由があっても俺を置いて他の男のとこに行くな。今回のことだって、手段は他にいくらでもあったはずだし」
「ん・・・ごめん」
「とりあえず・・・追手が本物の敵じゃなくてよかった。美和のことは―――絶対に2日以内に迎えに行くから安心して待ってろ」
「ん・・・ありがとう」
「それから―――今度会った時、覚悟しとけよ」
「え?」
「俺、マジでむちゃくちゃ怒ってんだからな。きっと俺、美和に優しくとかできねぇから。もう二度とこんなこと出来ないようにしてやるから」
「ふぇぇ。」
「じゃ、圭さんに代わって」
「おい、あんまり美和ちゃんのこと虐めるなよ」
「誰のせいだと思ってるんですか!」
「オマエのせいだろ?」
「どうしてそうなるんですか!俺、マジで行きますからね。多少の怪我は覚悟して下さい。圭さんの周りの人達も」
「問題ないよ。こっちも本気で行くから。そうじゃないと意味ないし。じゃ、待ってるよ~♪」
はぁ。
あぁ、マジで怒りが収まらねぇ。
でもとりあえず、JJに美和の居場所を追跡してもらわないと―――
俺には48時間しかないんだから。
「杏くん」
同じく路肩に車を止め、降りてきたのは余裕の笑みで近付いてくる喜多嶋さん。
「やられたみたいですね、圭さんに」
「俺いまめちゃくちゃ機嫌悪いんで、そういう冗談止めてもらえますか?」
「くくっ。そりゃそうですよね、大事な美和さんが奪われちゃったんですから・・・でもですね」
「なんですか」
「こういうことでもないと、杏くん、本気にならないでしょう?こんな杏くんの表情を見られるなんて、もう一生ないかもしれないなぁ・・・さすがレオン。杏くんのツボをよくわかってる」
「レオンも咬んでるんですか?」
「サラ以外、アーサーは全員咬んでますよ。サラに言ったら絶対に反対されますからね。でも安心してください。アーサー部隊は杏くんサイドです。つまり杏くんの指示で全てが動きます。つまり圭さんは今回アーサーを敵に回してるんですよ、お遊びですけど―――レオンが審判役の」
「お遊び?」
「このプロジェクト名は「hide-and-seek」、つまりかくれんぼです。壮大なかくれんぼですけどね、はは。ちなみに圭さんはアーサーを使えない代わりに、自分の持つネットワークを全て使えることになっています」
「それって・・・俺が知らないネットワークですか?」
「おそらく」
これは・・・圭さんは本当に本気だ。
でも、絶対に負けねぇ。
どんなことをしてでも、絶対に美和を奪い返してやる。
「Z、部隊から何人か家に見張りを頼みます」
「わかってる。家の外側に数ヶ所、車で待機させるから。あとヘリも用意してる」
「ありがとう。偶然とはいえ助かったのは・・・今夜コンちゃんたち家に戻って来ないから、彼らを巻き込まずに済む」
「そうだな。キョウ・・・」
「はい」
「気を抜くなよ?いつもの訓練通り行け」
「はい」
その時。
TRRRRRRRRRRRRR
美和のスマホが鳴った。
「誰?」
「圭ちゃん。今は取らない方がいいよね」
「いや。取ってこの状況を説明しといて?」
「わかった・・・もしもし、圭ちゃん?うん、あのね、実は・・・・・・・・えぇっ?!どうして?!」
今まで見たこともないくらい驚愕した美和が、俺を見つめている。
「どうした?!」
「あ、えっと・・・あ、圭ちゃん、直接杏と話す?」
そう言うと美和は、自分のスマホをスピーカーモードにし、音量を上げた。
「杏?」
「圭さん、俺達今、追われてるみたいなんですよ。今、運転中です」
「知ってるよ。オマエ、バラの花束、お墓に置いてったろ?預かってるから枯れる前にちゃんと取りに来いよ?」
「は?」
「バラってどのくらい持つのかな。今が一番綺麗な状態だから、ま、もって2日ってとこかな?」
「圭さん、今そんな話してる場合じゃないんですよ」
「いや、大事な話だろ。その時に美和ちゃんの彼氏として認めてやるんだから」
「っつうか、マジで今、それどころじゃないんですよ。とりあえず家に向かうんで、着いたらまた電話します」
「キョウ!後方300m、左車線に不審車両発見!キョウのと同じタイプのバン!」
JJがスクリーンを通して叫ぶ。
左車線の方が車の動きが早く、たぶんあと1分くらいで追いつかれる。
右車線に逃げたいけど、交差点が近くてムリだ・・・
「JJ、右はムリ!左車線に逸れる!」
「ダメです!先に追いつかれます!」
「くそ!美和、重心低くして!運転が荒くなるから!」
その瞬間、信じられないことが起こった・・・
横に並んだ不審車両。
運転しているのはサングラスをかけた白人。
助手席には同じくサングラスをかけた・・・黒人。
そして。
フルスモーク後方部のドアが走ったままスライドし、そこに見えたのは・・・
圭さんだった。
「美和ちゃん、こっちに来い!飛び移るんだ!」
「美和、行くな!ここにいろ!俺がちゃんと守るから!」
「早くするんだ、美和ちゃん!」
すると美和はシートベルトを外し、俺の横をすり抜けて後部座席に移った。
「美和、オマエ何やってんだよ!」
「杏、ごめん。私、圭ちゃんのところに行く」
「は?!」
「ホントにごめん!」
「ふざけんなよ美和!行くな!自分が何やってんのかわかってんのか?!」
そんな俺の叫びに美和は無言で答え、静かに後方ドアをスライドさせた。
向かい側では圭さんが大きく手を広げて美和を待っている。
「杏、2日以内に必ず迎えに来て!」
「美和!」
「待ってるから!」
そして美和は、圭さんのバンに飛び移った―――。
一瞬の出来事で・・・茫然自失になった俺はバンを路肩に停めた。
美和がいない。
自ら圭さんの元へ行ってしまった。
なんでだ?
俺が頼りないからか?
圭さんといたほうが、安全だからか?
それにバラの花束を預かってるって―――
俺達を追っていたモノ・・・あれは圭さんとあの2人の外国人だったのか?
畜生。
俺は自分のスマホを取り出した。
TRRRRRRRRRRRRRRRRRR
ガチャ。
「・・・さっき、霊園にいたのは圭さん達ですか?」
「そうだよ」
「ふざけないでくださいよ!」
「ふざけてねぇよ。一世一代くらい真剣」
「俺に殺されたいんですか?!」
「杏に殺されるんだったら本望だね」
「何のためにこんなことするんですか!巻き込まれた美和が可哀そうでしょ!」
「理由を言ったら美和ちゃん許してくれたし」
「理由ってなんですか!事と次第によってはマジで圭さんのこと許しませんよ!」
「理由は簡単。杏が俺を越えたかどうかのテスト。このテストに杏が合格したら美和ちゃんの彼氏として認めないといけないから、俺も本気で行かせてもらうよ?」
それって・・・
「つまり―――2日以内に美和を迎えに行けばいいってことですか?」
「そう。一人でね」
「―――わかりましたよ。2日以内に美和は返してもらいます。ちょっと―――美和に代わってください」
「くくっ。ようやく杏も本気モードになったな。はい、美和ちゃん」
「・・・杏、ごめんね」
「謝るくらいなら行くな」
「ごめん・・・」
「マジで・・・すげぇショック。この状況で他の男に持ってかれるとか、俺、立ち直れないくらい傷ついてんだけど」
「ごめん・・・でも」
「でもなんだよ?」
「杏、ちゃんと迎えに来てくれるでしょう?その時、杏の彼女になってもいいって圭ちゃんが言ったの」
「そうかもしれないけど・・・美和さ」
「ん」
「もう二度と、どんな理由があっても俺を置いて他の男のとこに行くな。今回のことだって、手段は他にいくらでもあったはずだし」
「ん・・・ごめん」
「とりあえず・・・追手が本物の敵じゃなくてよかった。美和のことは―――絶対に2日以内に迎えに行くから安心して待ってろ」
「ん・・・ありがとう」
「それから―――今度会った時、覚悟しとけよ」
「え?」
「俺、マジでむちゃくちゃ怒ってんだからな。きっと俺、美和に優しくとかできねぇから。もう二度とこんなこと出来ないようにしてやるから」
「ふぇぇ。」
「じゃ、圭さんに代わって」
「おい、あんまり美和ちゃんのこと虐めるなよ」
「誰のせいだと思ってるんですか!」
「オマエのせいだろ?」
「どうしてそうなるんですか!俺、マジで行きますからね。多少の怪我は覚悟して下さい。圭さんの周りの人達も」
「問題ないよ。こっちも本気で行くから。そうじゃないと意味ないし。じゃ、待ってるよ~♪」
はぁ。
あぁ、マジで怒りが収まらねぇ。
でもとりあえず、JJに美和の居場所を追跡してもらわないと―――
俺には48時間しかないんだから。
「杏くん」
同じく路肩に車を止め、降りてきたのは余裕の笑みで近付いてくる喜多嶋さん。
「やられたみたいですね、圭さんに」
「俺いまめちゃくちゃ機嫌悪いんで、そういう冗談止めてもらえますか?」
「くくっ。そりゃそうですよね、大事な美和さんが奪われちゃったんですから・・・でもですね」
「なんですか」
「こういうことでもないと、杏くん、本気にならないでしょう?こんな杏くんの表情を見られるなんて、もう一生ないかもしれないなぁ・・・さすがレオン。杏くんのツボをよくわかってる」
「レオンも咬んでるんですか?」
「サラ以外、アーサーは全員咬んでますよ。サラに言ったら絶対に反対されますからね。でも安心してください。アーサー部隊は杏くんサイドです。つまり杏くんの指示で全てが動きます。つまり圭さんは今回アーサーを敵に回してるんですよ、お遊びですけど―――レオンが審判役の」
「お遊び?」
「このプロジェクト名は「hide-and-seek」、つまりかくれんぼです。壮大なかくれんぼですけどね、はは。ちなみに圭さんはアーサーを使えない代わりに、自分の持つネットワークを全て使えることになっています」
「それって・・・俺が知らないネットワークですか?」
「おそらく」
これは・・・圭さんは本当に本気だ。
でも、絶対に負けねぇ。
どんなことをしてでも、絶対に美和を奪い返してやる。
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