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第18章:「アーサーが生まれた理由」
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「で、最後の1つは?」
「これはまぁもう聞いてると思うし、キョウには必要のないことだとは思うんだけど、念のため事前に言っておかなきゃいけなくて。これは「アーサー」に関わる人達みんなに、事前に伝えなきゃいけない・・・つまり義務なんだよ」
「もしかして、俺が万が一美和から離れなきゃいけなくなった時は、あの「家」の秘密が消されて、その時に70%の確率で美和の記憶も消える、ってヤツですか?」
「そう。実際はあの「家」のことっていうより、「アーサー」に関すること全てが消されるんだけど」
「「アーサー」のことはいいですよ、別に消されても・・・美和のことは困るけど」
「くくっ。そう言うと思ってたよ。ま、仮に記憶が消されてミワのことを忘れちゃったとしても、どうやらミワがまた迎えに行くらしいから心配してないけどね。じゃ、はい、これ」
ケインはテーブルに置いてあった二つの黒い箱を、1つは俺、もうひとつは美和に手渡した。
「なんですか、これ」
「開けたらわかるよ」
宝石が入ってる様な、重厚な箱。
ゆっくり開けるとそれは・・・・シルバーのペンダント。
1X2cmくらいのプレートが先端に着いていて
「Miwa&Kyo, 1/2」
と彫られていた。
「これは?」
「キョウの部屋のカギだよ」
「1/2っていうのは?」
「ミワの方は2/2、つまり2つ作られたうちの1番目か2番目かってこと」
「あぁ、なるほど・・・着けてもいいですか?」
「もちろんだよ」
美和の方を見ると、美和はペンダントを付けながら俺を見てニッコリほほ笑んだ。
「似合うよ。平井くんと松本くんが身に付けてるペンダントみたい」
「そう?」
「説明をするわね。2人が通るたびにドアが自動で認識してロックしたり解除したりするから、2人がしなきゃいけないのは、このペンダントを常に身に付けておくことだけ。あ、ドアの開閉は自分たちでしてね?」
「へぇ」
「あとついでだったから、このペンダントにいろいろと細工をさせてもらって・・・」
「え、もしかしてGPS付けた?」
美和がレオンを睨む。
「普段は2人の行動はチェックしないよ。非常時のみだけってJJにも言ってあるし」
「・・・他は?」
「非常時にそのプレートを思いっきり引っ張るとZの部隊がすぐ掛けつける」
「了解。他は?」
「勝手に2人が同期しないように、ある特殊なエネルギーが常に放出していて、体表にバリアを張るようにした。でも実験段階だから100%同期しないとは言い切れない」
「それはいいね。あとは?」
「ペンダントに関してはそれだけ。お風呂の時も外しちゃだめだよ?あとこの件に関わり続ける限り、お給料は支払われるから。それも聞いてるよね?」
「まぁ」
「興味なさそうだけど、大事なことだよ。ちゃんと付いてきてもらうからね?」
「了解、です」
その後。
俺達がいたレオンのオフィスにアジア系の男性がやってきて、俺だけ連れだされた。
彼の名はJJ・・・さっきレオンの会話に出てた人。
たぶん30代前半くらい。
「アーサー」本部を一通り案内してくれるという。
「JJもここに住んでるんですか?」
「はい。他のスタッフ同様、ここで生活しながら仕事をしています」
「どんな仕事なんですか?」
「GISって知ってますか?」
「GIS?GPSじゃなくて?いや・・・聞いたこともないです」
「GPS、近いところ付いてますよ。GISっていうのはGeographic Information Systemsの略で、日本語で言うと地理情報システムといいます。さっきレオンのオフィスの壁に地球が映し出されていましたよね?あれはボクが「アーサー」用に開発した「マザーアース」というシステムです」
「へぇ、なんかすごいなぁ。でもなんのために?」
「あれは3Dの地球儀なんですけど、あれに様々なデータを載せることによってデータがヴィジュアル化され、問題分析がより容易になります」
「例えば?」
「ヒ素で汚染された地域と人口データを重ねることで、どこでどのくらいの人達が健康被害にあっているかがわかります」
「あぁ、なるほど」
「あとは例えば・・・キョウが行方不明になった時にそのペンダントから発信されるシグナルを追跡して居場所を突き止めることができます。どのビルのどの部屋にキョウがいて、その部屋の持ち主が誰なのか、更にその人物の経歴、家族構成、友人関係などもわかります」
「え?」
「すごいでしょう?GISって面白いんですよ。くく」
JJはまるで他人事のように、子供のように笑った。
「うん、まだよくわかってないけど、スゴイね・・・」
「でもキョウの方が遥に凄いですよ。あの3人を越えようとしてるんですから」
「え?なんのこと?」
するとJJは微笑んでこう言った。
「キョウは「アーサー」の人々にとって、憧れであり希望なんですよ?ここでキョウのことを知らない人はいません」
「へ?」
「その自覚がないところがまたいいですよね。いいんですよ、そのままでいてください」
「え、ちょっと待ってよ。それって、どういうことですか?」
「そうですねぇ・・・じゃ、お茶でも飲みながら話しましょうか?」
JJが連れてきてくれたのは、これまた全面ガラス張りの、果てしなく天井の高いカフェ。
ここで働いている人達が使う24時間オープンのいわば「社員食堂」らしい。
俺はJJに勧められて「アーサー」特製ドリンクを注文した。
「これ一杯で一日に必要な栄養素が摂取できるんですよ。おまけに美味しいんです」
実際、それは本当に美味しかった。
だけど・・・無糖のアイスレモンティーみたいな味。
野菜ジュースみたいなものを想像していた俺には意外だった。
「これ、何で出来てるんですか?」
「ここで開発された植物「ココヒヨリ」から抽出された飲み物です。飲みやすいでしょう?」
「はい。ってことは、ここでは植物の研究もしてるんですね」
「植物の研究だけじゃないですよ?なんでも研究しています・・・地球に必要なことは全て」
「全て?」
「そうです」
JJはそう言いきった。
なんか「アーサー」ってすごいところだよな。
「で、さっきの話なんですけど・・・なんでここの人達は俺のこと知ってるんですか?」
「それはキョウが特殊中の特殊な人間だからですよ。あの3人、レオン、サラ、ミワを越えるくらいの。だから、キョウのデータはここの研究者全ての手に渡っているんです。もちろんボクも頂いています」
「え?」
「みなそれぞれの分野であなたについて研究しているんですよ。もちろんそれは「アーサー」の包括的なプロジェクトの一環として。ある専門家は「いかにキョウの能力をのばすか」、他の専門家は「いかにキョウを守るか」・・・」
「JJは?」
「ボクは「どうやったらGISを使ってキョウの仕事を助けられるか」についてです。だからこれからは頻繁に連絡することになると思います。よろしくお願いしますね?」
「いや、こちらこそよろしく・・・っていうか」
「キョウは研究対象としても非常に魅力的なので、それだけでもここの研究者達の気合の入れようは相当なものなんですが・・・同時に、キョウ自身が現在の「アーサー」のプロジェクトの中でトッププライオリティであることは間違いないですし、「アーサー」に賛同している私達だからこその期待も大きいんです」
「俺・・・そんなたいそうな人間じゃないんですけど」
「あはは。いいんですよ、いまはそれで。でもこれから培うその能力を是非、いいことに使ってください・・・この地球のために。「アーサー」はそれを望んでいます」
はぁ・・・ここの人達には申し訳ないけど研究者達の俺に対する過大な期待は正直どうでもいい。
近いうちにどうせ、俺がそれほど大したことないのはばれるだろうし。
っつうより、規模のデカイ話ばかりが続いて、ちょっと頭が痛くなってきた。
だから話を変えることにした。
「そういえば・・・話が逸れてしまって「アーサー」がどういう意味なのかレオンから答えを聞けなかったんですけど、何かの略ですか?」
「ARTHUR(アルトゥール)は6人の人間のイニシャルのコンビネーションです。彼らが「アーサー」の創設メンバーです」
「彼らは今、どこにいるんですか?」
「彼らが生きたのは1700年代前半のこと。もうこの世にはいません」
「1700年代?!」
「そうです。それ以降「アーサー」は裏から・・・内部から、と言った方が正しいでしょうか・・・この地球を支えてきました」
「なんのために?」
「地球を守るためです。6人の創設者はあのときすでにわかっていたんです」
「なにを?」
「地球上の全てのものが・・・破滅に向かっているということをです」
「これはまぁもう聞いてると思うし、キョウには必要のないことだとは思うんだけど、念のため事前に言っておかなきゃいけなくて。これは「アーサー」に関わる人達みんなに、事前に伝えなきゃいけない・・・つまり義務なんだよ」
「もしかして、俺が万が一美和から離れなきゃいけなくなった時は、あの「家」の秘密が消されて、その時に70%の確率で美和の記憶も消える、ってヤツですか?」
「そう。実際はあの「家」のことっていうより、「アーサー」に関すること全てが消されるんだけど」
「「アーサー」のことはいいですよ、別に消されても・・・美和のことは困るけど」
「くくっ。そう言うと思ってたよ。ま、仮に記憶が消されてミワのことを忘れちゃったとしても、どうやらミワがまた迎えに行くらしいから心配してないけどね。じゃ、はい、これ」
ケインはテーブルに置いてあった二つの黒い箱を、1つは俺、もうひとつは美和に手渡した。
「なんですか、これ」
「開けたらわかるよ」
宝石が入ってる様な、重厚な箱。
ゆっくり開けるとそれは・・・・シルバーのペンダント。
1X2cmくらいのプレートが先端に着いていて
「Miwa&Kyo, 1/2」
と彫られていた。
「これは?」
「キョウの部屋のカギだよ」
「1/2っていうのは?」
「ミワの方は2/2、つまり2つ作られたうちの1番目か2番目かってこと」
「あぁ、なるほど・・・着けてもいいですか?」
「もちろんだよ」
美和の方を見ると、美和はペンダントを付けながら俺を見てニッコリほほ笑んだ。
「似合うよ。平井くんと松本くんが身に付けてるペンダントみたい」
「そう?」
「説明をするわね。2人が通るたびにドアが自動で認識してロックしたり解除したりするから、2人がしなきゃいけないのは、このペンダントを常に身に付けておくことだけ。あ、ドアの開閉は自分たちでしてね?」
「へぇ」
「あとついでだったから、このペンダントにいろいろと細工をさせてもらって・・・」
「え、もしかしてGPS付けた?」
美和がレオンを睨む。
「普段は2人の行動はチェックしないよ。非常時のみだけってJJにも言ってあるし」
「・・・他は?」
「非常時にそのプレートを思いっきり引っ張るとZの部隊がすぐ掛けつける」
「了解。他は?」
「勝手に2人が同期しないように、ある特殊なエネルギーが常に放出していて、体表にバリアを張るようにした。でも実験段階だから100%同期しないとは言い切れない」
「それはいいね。あとは?」
「ペンダントに関してはそれだけ。お風呂の時も外しちゃだめだよ?あとこの件に関わり続ける限り、お給料は支払われるから。それも聞いてるよね?」
「まぁ」
「興味なさそうだけど、大事なことだよ。ちゃんと付いてきてもらうからね?」
「了解、です」
その後。
俺達がいたレオンのオフィスにアジア系の男性がやってきて、俺だけ連れだされた。
彼の名はJJ・・・さっきレオンの会話に出てた人。
たぶん30代前半くらい。
「アーサー」本部を一通り案内してくれるという。
「JJもここに住んでるんですか?」
「はい。他のスタッフ同様、ここで生活しながら仕事をしています」
「どんな仕事なんですか?」
「GISって知ってますか?」
「GIS?GPSじゃなくて?いや・・・聞いたこともないです」
「GPS、近いところ付いてますよ。GISっていうのはGeographic Information Systemsの略で、日本語で言うと地理情報システムといいます。さっきレオンのオフィスの壁に地球が映し出されていましたよね?あれはボクが「アーサー」用に開発した「マザーアース」というシステムです」
「へぇ、なんかすごいなぁ。でもなんのために?」
「あれは3Dの地球儀なんですけど、あれに様々なデータを載せることによってデータがヴィジュアル化され、問題分析がより容易になります」
「例えば?」
「ヒ素で汚染された地域と人口データを重ねることで、どこでどのくらいの人達が健康被害にあっているかがわかります」
「あぁ、なるほど」
「あとは例えば・・・キョウが行方不明になった時にそのペンダントから発信されるシグナルを追跡して居場所を突き止めることができます。どのビルのどの部屋にキョウがいて、その部屋の持ち主が誰なのか、更にその人物の経歴、家族構成、友人関係などもわかります」
「え?」
「すごいでしょう?GISって面白いんですよ。くく」
JJはまるで他人事のように、子供のように笑った。
「うん、まだよくわかってないけど、スゴイね・・・」
「でもキョウの方が遥に凄いですよ。あの3人を越えようとしてるんですから」
「え?なんのこと?」
するとJJは微笑んでこう言った。
「キョウは「アーサー」の人々にとって、憧れであり希望なんですよ?ここでキョウのことを知らない人はいません」
「へ?」
「その自覚がないところがまたいいですよね。いいんですよ、そのままでいてください」
「え、ちょっと待ってよ。それって、どういうことですか?」
「そうですねぇ・・・じゃ、お茶でも飲みながら話しましょうか?」
JJが連れてきてくれたのは、これまた全面ガラス張りの、果てしなく天井の高いカフェ。
ここで働いている人達が使う24時間オープンのいわば「社員食堂」らしい。
俺はJJに勧められて「アーサー」特製ドリンクを注文した。
「これ一杯で一日に必要な栄養素が摂取できるんですよ。おまけに美味しいんです」
実際、それは本当に美味しかった。
だけど・・・無糖のアイスレモンティーみたいな味。
野菜ジュースみたいなものを想像していた俺には意外だった。
「これ、何で出来てるんですか?」
「ここで開発された植物「ココヒヨリ」から抽出された飲み物です。飲みやすいでしょう?」
「はい。ってことは、ここでは植物の研究もしてるんですね」
「植物の研究だけじゃないですよ?なんでも研究しています・・・地球に必要なことは全て」
「全て?」
「そうです」
JJはそう言いきった。
なんか「アーサー」ってすごいところだよな。
「で、さっきの話なんですけど・・・なんでここの人達は俺のこと知ってるんですか?」
「それはキョウが特殊中の特殊な人間だからですよ。あの3人、レオン、サラ、ミワを越えるくらいの。だから、キョウのデータはここの研究者全ての手に渡っているんです。もちろんボクも頂いています」
「え?」
「みなそれぞれの分野であなたについて研究しているんですよ。もちろんそれは「アーサー」の包括的なプロジェクトの一環として。ある専門家は「いかにキョウの能力をのばすか」、他の専門家は「いかにキョウを守るか」・・・」
「JJは?」
「ボクは「どうやったらGISを使ってキョウの仕事を助けられるか」についてです。だからこれからは頻繁に連絡することになると思います。よろしくお願いしますね?」
「いや、こちらこそよろしく・・・っていうか」
「キョウは研究対象としても非常に魅力的なので、それだけでもここの研究者達の気合の入れようは相当なものなんですが・・・同時に、キョウ自身が現在の「アーサー」のプロジェクトの中でトッププライオリティであることは間違いないですし、「アーサー」に賛同している私達だからこその期待も大きいんです」
「俺・・・そんなたいそうな人間じゃないんですけど」
「あはは。いいんですよ、いまはそれで。でもこれから培うその能力を是非、いいことに使ってください・・・この地球のために。「アーサー」はそれを望んでいます」
はぁ・・・ここの人達には申し訳ないけど研究者達の俺に対する過大な期待は正直どうでもいい。
近いうちにどうせ、俺がそれほど大したことないのはばれるだろうし。
っつうより、規模のデカイ話ばかりが続いて、ちょっと頭が痛くなってきた。
だから話を変えることにした。
「そういえば・・・話が逸れてしまって「アーサー」がどういう意味なのかレオンから答えを聞けなかったんですけど、何かの略ですか?」
「ARTHUR(アルトゥール)は6人の人間のイニシャルのコンビネーションです。彼らが「アーサー」の創設メンバーです」
「彼らは今、どこにいるんですか?」
「彼らが生きたのは1700年代前半のこと。もうこの世にはいません」
「1700年代?!」
「そうです。それ以降「アーサー」は裏から・・・内部から、と言った方が正しいでしょうか・・・この地球を支えてきました」
「なんのために?」
「地球を守るためです。6人の創設者はあのときすでにわかっていたんです」
「なにを?」
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