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第17章:「信頼」
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「「新しい地球」になるために生まれた組織」
美和が言ったその言葉は明らかにケインとサラを頷かせていたけれど
なんていうか・・・もう。
わからないというよりも、
「アーサー」自体が、
今の俺が理解できる範疇のモノじゃないってことがよくわかった。
美和が言うように、徐々にわかっていけばいいんだろう・・・と思う。
ただ。
これだけは確認しておきたい。
「明らかに俺は「アーサー」がなんなのかわかってないんだけど」
「いいよ、今はそれで」
「そうなんだろうね。でもさ」
「ん?」
「美和は「アーサー」を信頼してるってことだよな?」
すると美和はケインとサラを一瞬見て微笑み、俺に言った。
「そうだよ。「アーサー」もここに所属してる人たちもみんな信頼してる。全面的に」
「つまり、この人達に着いて行けば俺は美和を守れて、ずっと一緒にいられるってことだよな?」
「・・・」
「そうだよな?」
「そうだよ」
そう答えたのはレオン。
美和じゃなかった。
美和は何故か、俺を凝視したまま動かない。
「なんで答えないの?そうなんだろ?」
俺が何度そう聞いても、美和は答えない。
「違うの?俺がトレーニングや仕事を受けるのはそのためだ。レオンだって圭さんだってそうだって言ってんのに、なんで張本人の美和が答えられない?」
正直。
俺はこの時初めて・・・美和にイラついた。
答えは明らかなはずなのに、答えない美和。
俺は美和の口からちゃんと
「そうだよ、ずっと一緒にいられるよ」って聞きたいだけ。
それが俺がいま欲しい言葉。
できれば。
美和の肩をおもいっきり掴んで、ゆすって脅してでもそう言わせたい。
けど、そんなことしたって意味ないし。
結局、俺と美和はしばらく向き合ったまま・・・。
こんな時、
マジで、
机でもなんでも蹴り飛ばしたい。
「ミワはね・・・今だったらまだ、キョウを普通の生活に戻してあげられるんじゃないかって思ってるんだよ」
「そうね。迷ってるのはミワの方。でもミワ、それはムリよ・・・いろんな意味で。わかってるでしょう?だから今回キョウをここに連れてくる覚悟をしたんでしょう?」
それでも美和は、唇をぎゅっと咬んで答えない。
だから俺は、ふぅ・・・ってゆっくり息を吐きながら、美和の頭に手を置いた。
優しく、撫でるように。
そして、言った。
「美和は何も心配しなくていいよ。これは俺が選んだんだから。俺の決断に美和が責任を負う必要はない」
「杏・・・」
「究極のところ、俺が俺の望む人生を歩むためには、これ一択しかないんだから」
するとサラが話し始めた。
「ミワとキョウが同期してるかもしれない、ってことは聞いたわよね?これはまだトップシークレットでここにいる4人しか知らないけれど」
「あぁ、美和がそんなこと言ってたけど・・・え、美和はそのことを心配してるの?」
「そのことを含めて、だと思うわ」
「俺は嬉しかったんだけど・・・イヤなの、俺と同期するの」
俺がちょっと不貞腐れて言うと、レオンとサラが爆笑しはじめた。
「あははははっ。そうじゃないんだよ。ミワは別にイヤなんじゃなくてただ心配なだけなんだよ」
「何が心配なの?」
「・・・だって」
「いいよミワ、ボクが説明する。実はね、ボクとサラも同期してるんだよ」
「え?」
「今はお互いの思考や感情をコントロールできるようになったから、必要な時だけ同期することができるし、必要に応じてココロで会話もできる」
あぁ、だからさっき・・・
「だけど最初のうちは・・・特に同期が急激に進んで、感情がお互いを無秩序に流れるようになってからしばらくは大変でね。前例がなかったからどう対処していいか「アーサー」もわかってなかったし。ミワはそれを見てたから余計に心配なんじゃないかな」
「そうね、あの頃はレオンもワタシも感情の波が激しくなって、狂ったように怒ったり泣いたり・・・しばらくは眠れなかったわ」
「でもそういうことがあったからこそ、ボクとサラはお互いを唯一無二の存在だって認めてる。今はお互いの全てを受け入れられるんだよ」
「そうね。そうだと思う。それに、ミワとキョウの場合はそんなに心配しなくてもいいと思うのよ?」
「どうして?」
ここで初めて、美和が言葉を発した。
「二つ理由があるんだけど、1つ目は・・・ワタシとレオンっていう前例があるから、どう自分をコントロールすればいいかワタシたちが教えてあげられるってこと。ワタシたちみたいにカオスな状況になって、険悪な雰囲気になるってことは避けられると思うわ。ふふっ」
「でもあれがあったから、サラがボクのこと好きなんだってわかったんだけど」
「違うわよ、レオンがワタシのことスキだってわかったから、仕方なく受け入れたんじゃない」
「違うよ!サラの方が先にボクのことスキになったんだって!」
「もー、勝手に言ってれば?」
「え、サラ、怒っちゃった?ごめん、仲直りしよ?ハグしよ?」
「じゃ、レオンが先に私のことスキになったって認める?」
「認めるよ。認める」
「ならハグする」
そう言って、サラはケインに抱きついた。
レオンもぎゅって、サラを抱き返した。
「それで?二つ目の理由は?」
きっとそういう「じゃれてる」2人を見慣れているんだろう。
美和はまるで何事もなかったように、冷静に話を続けた。
「二つ目はね・・・ミワ、別にキョウにココロの内を見られても困るようなことはなにもないでしょう?ミワは正直者だし、オープンだし、今までだって「麻生家」のこと以外で隠し事はなかったはず」
「まぁ、ね」
「それに、なにより、キョウのこと絶対的に信頼してるよね?」
「うん」
「それはキョウも一緒。ミワのこと絶対的に信頼してるでしょう?」
「じゃなかったら、ここまでこないし」
「そうよね?だからね、ミワ。大丈夫。何も心配することないよ?」
「そう、かな・・・」
それでも美和は不安げにレオンを見た。
サラをハグしたままのレオンは、微笑んでこう言った。
「ミワ、大丈夫だよ。キョウの未来を信じてよ」
「杏の未来?」
「そうだよ。それが「アーサー」でしょう?ボク達の未来を信じられなければ「アーサー」は何のために存在するの?ボク達が今やってることが全てムダになっちゃうよ?何のためにこんな大掛かりなことやってるの?麻生家の先祖たちがやってきたことだって同じ・・・それらをムダだって言いたいの?」
「それは・・・」
「キョウはどこへも行かない。ずっとミワの傍に居る。ミワのことも麻生家のことも、「アーサー」のことだって全部理解して受け入れる。ただもうちょっと時間が必要なだけ。ボクにはわかる」
「レオン・・・」
「キョウもミワも「アーサー」が守る。ボク達を信頼してるんでしょう?ボク達は絶対にその信頼に応えるよ・・・それが「アーサー」なんだから」
美和が言ったその言葉は明らかにケインとサラを頷かせていたけれど
なんていうか・・・もう。
わからないというよりも、
「アーサー」自体が、
今の俺が理解できる範疇のモノじゃないってことがよくわかった。
美和が言うように、徐々にわかっていけばいいんだろう・・・と思う。
ただ。
これだけは確認しておきたい。
「明らかに俺は「アーサー」がなんなのかわかってないんだけど」
「いいよ、今はそれで」
「そうなんだろうね。でもさ」
「ん?」
「美和は「アーサー」を信頼してるってことだよな?」
すると美和はケインとサラを一瞬見て微笑み、俺に言った。
「そうだよ。「アーサー」もここに所属してる人たちもみんな信頼してる。全面的に」
「つまり、この人達に着いて行けば俺は美和を守れて、ずっと一緒にいられるってことだよな?」
「・・・」
「そうだよな?」
「そうだよ」
そう答えたのはレオン。
美和じゃなかった。
美和は何故か、俺を凝視したまま動かない。
「なんで答えないの?そうなんだろ?」
俺が何度そう聞いても、美和は答えない。
「違うの?俺がトレーニングや仕事を受けるのはそのためだ。レオンだって圭さんだってそうだって言ってんのに、なんで張本人の美和が答えられない?」
正直。
俺はこの時初めて・・・美和にイラついた。
答えは明らかなはずなのに、答えない美和。
俺は美和の口からちゃんと
「そうだよ、ずっと一緒にいられるよ」って聞きたいだけ。
それが俺がいま欲しい言葉。
できれば。
美和の肩をおもいっきり掴んで、ゆすって脅してでもそう言わせたい。
けど、そんなことしたって意味ないし。
結局、俺と美和はしばらく向き合ったまま・・・。
こんな時、
マジで、
机でもなんでも蹴り飛ばしたい。
「ミワはね・・・今だったらまだ、キョウを普通の生活に戻してあげられるんじゃないかって思ってるんだよ」
「そうね。迷ってるのはミワの方。でもミワ、それはムリよ・・・いろんな意味で。わかってるでしょう?だから今回キョウをここに連れてくる覚悟をしたんでしょう?」
それでも美和は、唇をぎゅっと咬んで答えない。
だから俺は、ふぅ・・・ってゆっくり息を吐きながら、美和の頭に手を置いた。
優しく、撫でるように。
そして、言った。
「美和は何も心配しなくていいよ。これは俺が選んだんだから。俺の決断に美和が責任を負う必要はない」
「杏・・・」
「究極のところ、俺が俺の望む人生を歩むためには、これ一択しかないんだから」
するとサラが話し始めた。
「ミワとキョウが同期してるかもしれない、ってことは聞いたわよね?これはまだトップシークレットでここにいる4人しか知らないけれど」
「あぁ、美和がそんなこと言ってたけど・・・え、美和はそのことを心配してるの?」
「そのことを含めて、だと思うわ」
「俺は嬉しかったんだけど・・・イヤなの、俺と同期するの」
俺がちょっと不貞腐れて言うと、レオンとサラが爆笑しはじめた。
「あははははっ。そうじゃないんだよ。ミワは別にイヤなんじゃなくてただ心配なだけなんだよ」
「何が心配なの?」
「・・・だって」
「いいよミワ、ボクが説明する。実はね、ボクとサラも同期してるんだよ」
「え?」
「今はお互いの思考や感情をコントロールできるようになったから、必要な時だけ同期することができるし、必要に応じてココロで会話もできる」
あぁ、だからさっき・・・
「だけど最初のうちは・・・特に同期が急激に進んで、感情がお互いを無秩序に流れるようになってからしばらくは大変でね。前例がなかったからどう対処していいか「アーサー」もわかってなかったし。ミワはそれを見てたから余計に心配なんじゃないかな」
「そうね、あの頃はレオンもワタシも感情の波が激しくなって、狂ったように怒ったり泣いたり・・・しばらくは眠れなかったわ」
「でもそういうことがあったからこそ、ボクとサラはお互いを唯一無二の存在だって認めてる。今はお互いの全てを受け入れられるんだよ」
「そうね。そうだと思う。それに、ミワとキョウの場合はそんなに心配しなくてもいいと思うのよ?」
「どうして?」
ここで初めて、美和が言葉を発した。
「二つ理由があるんだけど、1つ目は・・・ワタシとレオンっていう前例があるから、どう自分をコントロールすればいいかワタシたちが教えてあげられるってこと。ワタシたちみたいにカオスな状況になって、険悪な雰囲気になるってことは避けられると思うわ。ふふっ」
「でもあれがあったから、サラがボクのこと好きなんだってわかったんだけど」
「違うわよ、レオンがワタシのことスキだってわかったから、仕方なく受け入れたんじゃない」
「違うよ!サラの方が先にボクのことスキになったんだって!」
「もー、勝手に言ってれば?」
「え、サラ、怒っちゃった?ごめん、仲直りしよ?ハグしよ?」
「じゃ、レオンが先に私のことスキになったって認める?」
「認めるよ。認める」
「ならハグする」
そう言って、サラはケインに抱きついた。
レオンもぎゅって、サラを抱き返した。
「それで?二つ目の理由は?」
きっとそういう「じゃれてる」2人を見慣れているんだろう。
美和はまるで何事もなかったように、冷静に話を続けた。
「二つ目はね・・・ミワ、別にキョウにココロの内を見られても困るようなことはなにもないでしょう?ミワは正直者だし、オープンだし、今までだって「麻生家」のこと以外で隠し事はなかったはず」
「まぁ、ね」
「それに、なにより、キョウのこと絶対的に信頼してるよね?」
「うん」
「それはキョウも一緒。ミワのこと絶対的に信頼してるでしょう?」
「じゃなかったら、ここまでこないし」
「そうよね?だからね、ミワ。大丈夫。何も心配することないよ?」
「そう、かな・・・」
それでも美和は不安げにレオンを見た。
サラをハグしたままのレオンは、微笑んでこう言った。
「ミワ、大丈夫だよ。キョウの未来を信じてよ」
「杏の未来?」
「そうだよ。それが「アーサー」でしょう?ボク達の未来を信じられなければ「アーサー」は何のために存在するの?ボク達が今やってることが全てムダになっちゃうよ?何のためにこんな大掛かりなことやってるの?麻生家の先祖たちがやってきたことだって同じ・・・それらをムダだって言いたいの?」
「それは・・・」
「キョウはどこへも行かない。ずっとミワの傍に居る。ミワのことも麻生家のことも、「アーサー」のことだって全部理解して受け入れる。ただもうちょっと時間が必要なだけ。ボクにはわかる」
「レオン・・・」
「キョウもミワも「アーサー」が守る。ボク達を信頼してるんでしょう?ボク達は絶対にその信頼に応えるよ・・・それが「アーサー」なんだから」
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