【完結】君に会えたら

たいけみお

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Chapter 20:「片桐純」

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【8月13日(月)】


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TOKYO CHIC お盆のため休刊

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「ゆぅ・・・はぁっ・・もぅ・・」

「はぁ・・・絢・・・アヤっ・・・ぁっ」


弓のように思いっきり外側に逸らせた身体のその力を、一瞬で一気に失った祐が、そのまま私の上に倒れ込んだ。

そんな祐が愛おしくて、愛おしくて、私は彼をぎゅっと抱きしめる。

祐は息が落ち着いてくると横にずれて、私をぎゅっときつく抱きしめ返した。



「・・・絢、俺ずっと思ってることがあるんだけど・・・絶対笑わないで聞いて」

「なに?」


「俺・・・絢との子供が欲しい。今すぐ欲しいんだ、、、すげぇ欲しい、今すぐに」

祐は私の耳たぶを甘噛みした。



「でも、今はムリなのは分かってるから。だから・・・いつか、俺のコ生んで?頼むから」

「うん、私も祐との子供が欲しい」

「すげぇ嬉しい・・・けど・・・はぁ、、、なんで今じゃダメなんだよ、、、」



すごい至近距離から、少し泣きそうな、苦しそうな顔をして私を見降ろしてる祐を、私は引き寄せてキスをした。

すると、次第に形勢が逆転して、

祐の舌が、私の口内を隙間なく犯していく。

息ができなくなるほど、激しいキス。


「あぁ、早く大人になりてぇ・・・」

祐は私の両腿を広げ、また私の中に入ってきた。



悩ましい顔をして、ゆっくり腰を動かしはじめる祐。

「・・・1人目の名前は決めてある。2人目からは、絢が決めていいから」


呼吸がだんだん荒くなってきて、私はなんども気を失いそうになったけど

祐がとても大切な話をしてるから、一生懸命耐えた。

祐はそれをわかっていながら、動きを止めなかった。


「・・・俺も絢も名前が一文字だから、はぁっ・・・子供も一文字がいいと思って」


「・・・男と女、どっちが生まれても付けられる名前がいいと思って」


「一人目の名前は「純」」


「・・・早く会いてぇ、純に」






―――また、あの夢を見た。

祐が「この世」から消える前日の夢。

「片桐純」が誕生した時の夢。



私の頬は、涙で濡れていた。






―――桃野くんの笑顔が見たい。

私はバスルームで顔を洗い、ベランダを伝って桃野くんの部屋に向かう。



ガラガラガラ



しん、と静まり返った部屋。

桃野くん、どこ?



壁にかかっている時計を見ると、まだ朝の6時。

桃野くんが起きてるわけがなかった。


がっかりして、またベランダに向かう。

桃野くんの顔、見たかった。



部屋に戻って、エスプレッソマシーンの電源を入れる。

桃野くんの顔が見られなかった以上、

私を慰めてくれるものはコーヒーしか残っていない。




その時、ベランダの窓が開く音。

「絢ちゃん今、俺の部屋来た?」

寝ぐせのついた髪の毛をくしゃっと掻きながら、ぼーっとそこに突っ立っている。


「あ、うん。ごめん、起こした?」

「大丈夫だけど、なんかあった?」


―――泣きそう。

桃野くんの優しさが、痛い。



「ううん。時間、間違えただけ。ごめん」

「そっか、ならいいんだけど」


「コーヒー入れるね」

「あぁ・・・ありがとう」



私と桃野くんは赤ソファーに並んで座る。

「ごめんね、こんな早くに起こしちゃって」

「いや、それはいいんだけど・・・やっぱりなんかあったよね」

桃野くんの右手が私の頬を撫でた。


「なんで?」

「目が赤い・・・泣いた?」


「あ・・・うん。変な夢見ちゃって・・・」

「どんな?」


「子供を・・・「片桐純」を産む夢」

まんざら嘘でもない。



「それってやっぱり・・・プレッシャーに押し潰されそうとか?」

桃野くんは心配そうに私を見つめて、抱き寄せた。


「それはないよ。連載は前倒ししてるし」

「じゃあ、ドラマの方のプレッシャー?川上さんとやりたくないとか?」

桃野くんの唇が私の頭のてっぺんにくっついてるのを感じて、真っ赤になってしまった。


最近、桃野くんの腕の中にいることが多い。

そこは優しくて、暖かくて、心地いい場所だけど・・・これが当たり前になったらマズイって私の理性が囁く。

勘違い、しそうになる・・・。

―――余計に、離れるのが辛くなる。



私は桃野くんの胸押して、ちょっと離れた。

「大丈夫。ドラマも川上さんも」

「なんでも躊躇しないで言ってくれよ。仕事のことだったら調整するし、それ以外のこともなんとかするから」


でもまた桃野くんは私を引き寄せた。

「うん、その時には言うから。でも本当に今朝は、変な夢を見ただけ」

「・・・俺、もう少ししたら出社しないとだけど、なんかあったらすぐ電話してきて。戻ってくるから―――どっちにしても、15時過ぎにはここに戻るよ」

そう言うと、桃野くんは私のこめかみに唇を寄せて、そして少しの間、私の赤い目を見つめていた。




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