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34、少しの悪意 1

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「起きれるか…?」

 とっくに深夜を回っている王太子サージェスの部屋では、身体を重ねた後、ポヤポヤ、ウトウトしているリシュリーにサージェスが声をかける。二人とも夕食もまだで、腹が減っているだろうと思うのだ。

「ん………ん…」

「ほら、リシュリー。チキンサンドにフルーツもあるぞ?」

「ん、食べる…」

 わざとやっているわけではないだろうが、こんな時のリシュリーは更にサージェスに甘えにくる。

「ほら、口を開けろ。」

「あ………ん……おいし…」

 一口、食べ物を口に入れられて、目が覚めてきた様だ。お互いまだ裸で、サージェスはベッドから出てガウンを羽織っているが、リシュリーは下半身のみ掛け物で覆っている程度だった。
 その白い肌には点々とサージェスが付けたであろう華が咲いていて、より一層リシュリーの肌の白さを際立てている。 

「飲むか?」

「ん…それ何?」

「果実酒か。」

「飲ませて?」

「…………仕方ないな…」

 サージェスはクッと果実種を煽ると、リシュリーの口に入れてやる。爽やかなフルーツの香りと甘味、飲んだ後にはさっぱりとした後味が上等な果実酒だと教えくれる。

「おいし……」

「だろう?水は腐りつつあるのに、果物だけで作られる果実酒の方が、まだ安全に飲める。」

「王都でも?」

「そうだな。リシュリーにはどう見える?」

「外も内も同じくボロボロ……でも、少しだけ、内側が動き出した…ここまで…」

「ボロボロは変わらんか…郊外では、子供が殆ど育たないそうだ。だから…優先的に子供を連れた家族を王都内に避難させている。」

 遠くを見つめるサージェスの視線。何を見て、何を思って、何をしようと思っている?

「…少し、僕が出歩いてもいい?」

「ああ、王太子宮勤務であった騎士達を呼び寄せている。彼らと共に、王城内のみで、と言う条件をつけさせてくれ…」

 王太子直属の近衛がつくのだから、もし、他の階級の者達がリシュリーを拘束しようとしてもリシュリーの身柄は王太子の管轄という事になるので手出しはできないのだ。

「はーい!分かった。ね、もっかいする?」

 なんとも元気な事だ。

「今日はもう寝よう。リシュリーだって疲れているはずだろう?」

 なんと言っても王太子宮の城壁の火災を全て消して見せたのだ。サージェスが部屋に帰ってくるまでぐっすりと寝入ってしまうほどには消耗して居たのだろう。

「え~僕もう大丈夫だよ?サージェとしてると疲れも吹き飛ぶよ?」
 
 なんという事を言うのだか…………

 これは別に、貴方は早すぎて疲れるまでも無いと言う意味ではない。無いから、好きだと思った者にそんな事を言われたら自然に顔が熱くなる………

「悪いが、私も明日は朝から公務がある…」

「五月蝿い人たちがいるのかな?あれじゃあ、黙らせられないか………ん~どうしたもんだろ?」

「もう良い。今は休もう…明日も早いのだから…」

 サージェスは部屋の電気を全て消してしまう。今では人の手で火を灯し、明かりを取る事が多いのに、流石は王城、少しだけ光の精の恩恵が残っている様だ。

「おやすみ、サージェ…」

「お休み、リシュリー。」

 お休みの挨拶をしてもサージェスはすぐには寝ない。何かしら書類を持ち込んでいるか、読書をして勉強している。勤勉家な王太子である。

「少しだけ、戻っている…」

 内が、動いた。これは形だけじゃなくて目に見えない精霊の力についてもだ。それは、神官や昨日のリシュリーを見てから精霊に畏怖を感じた者達からの祈りだろう。まだ自分の力の充満を知らないリシュリーにはそれだけでもありがたいものだった。

 自分の手元だけ薄明かりを灯して、何やら読み耽るサージェスを見つつリシュリーはもう一度小さく、おやすみ、と言って目を閉じた。









 精霊は寝ないのか?いや、昨日リシュリーはサージェスが部屋に帰ってくる前にもは寝ていた、だからあんなに元気なんだ……

 空が白んで夜が明けると同時にリシュリーは起床したようで、適当に部屋にあった負荷を来て、サージェスが起き出す前には夜番の騎士と共にもう庭にいた。早出の庭師と話しながら、庭園を周り、薬草園を見て、泉に手を浸しつつして楽しんだ後、まだ微睡んでいるサージェスを起こしにきた。

「おはよう……リシュリー、何をしている?」

 来たは良いのだが………

「あ、おはよう、サージェ!ん?良い天気だし、子作り?」

 嬉々として人の下衣を下ろしに来ないで欲しい………

「まて、リシュリー…!」

 夜が明けたと言う事は、部屋付きの侍女達がもうすぐ来訪するだろう。今日も朝から公務があり、遅れるわけには…

「だって、回数こなさなきゃだろ?だから、チャンスは頂かないと!」

 ニッコリと綺麗な爽やかな笑みでそんな事を言ってくる。

「リシュリー!侍女がもう来るんだ!」

「僕もちゃんと働いてきたよ?だから褒美に!」

 人間には報奨という物がある。娼館で占い師の真似事をしていた時も金銭を貰っていた。王城にいれば金銭はいらないから、だからそれに代わるサージェスの子種でいいと思ったのだが…

「だめ?」

トントントン……
  
 上目遣いで目を潤ませて可愛く聞かれても、駄目ものは駄目だろう…ほら、もう朝を告げる侍女達が部屋の都ドアをノックしているのだから。

「王太子殿下に朝のご挨拶を申し上げます。」
















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