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20、初めては牢の中 2
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「ふふ、ふふふふ、ふふふふふ…♪」
地下牢の中に似つかわしく無い笑い声が響く。
「……リシュリー…と言ったか?」
「うん!」
「何がそんなに楽しい?」
こんな事になって、こんな所で操を散らして……
「だって、念願だった君に会えた!ねぇ、王子!どっちがいい?」
リシュリーは王太子が怪訝な表情をしているのに気がついているはずだ。なのにちっともに気にせず上機嫌である。小さな精霊達はどこの国のものか分からないが、狂喜乱舞して二人の周りを巡りながら踊り狂っている。
「…どっちとは?」
「ん?僕達の子供!男の子?女の子?」
「……本気か…?」
狂言では無くて?確かにリシュリーからは人間離れしたものを感じるのだが…
「当たり前じゃん!その為に僕来たんだよ!どんな力が与えられるかな?楽しみだね?」
本当に幸せそうにリシュリーは笑う。今日、お互いに初めて会ったのに…政略結婚が主流である貴族社会においても、好きでもない者の子供をこんなに待ち侘びる親がいるだろうか。
「ふふ…君の力は薄まり過ぎて、ちょっとどんな特性なのか分かんないね?あ、僕の知りたい?」
「力…?」
「……で、殿下……お子とは……御意でございますか……」
一国の王太子が、得体の知れないどこぞの馬の骨に情けをかけた……臣下としてはこれだけでも主人を止める理由になる。
「そう!残念ながら人間は忘れちゃってるみたいだけどね……」
人懐こいリシュリーは王太子の逞しい胸の上に頭を乗せて横になる。王太子に対して警戒心は皆無だ。
「あ!僕、名前も考えたんだよ。リュミエール!!どう?」
「はぁぁ…どう、と言われてもな…こうなってしまってはリシュリーを無碍にはできまいが…まず、ここから出る事だ……」
タークスの心配もわかる。王家の血筋にいい加減な者を入れられないもの……しかし事がなってしまってはどうしようもないのである。
当初は捕まる事も宰相側の動きを探る良い機会にしようと思っていたのだが、王子の子供が欲しいと強行突破してきたリシュリーが一緒では、ただ大人しく相手方の動向を探る事も難しくなりそうである。ならば、ここから無事に脱出する事を考えるべきだろう。自分の置かれている状況に危機感を全く覚えないリシュリーをこのまま残して行くのも一つの縁を結んだ身としては忍びないのだ。
「え~~光って言う意味だよ?いいと思うんだけどなぁ……この子は、これからの世界の光になる…人間界も僕達の所も明るく照らしてくれる様に…」
ゆっくりとリシュリーは自分の下腹部を摩った…子がいるならば普通の母の反応だろうか?
「あのな…知らぬのならばすまんが、人間はそんなに早く子はできんぞ?」
たった一回で確実に子供を成せるか、と言うと疑問であろう。初夜で授かったと言う話を聞いた事があるにはあるが、何年も子供に恵まれないと言う夫婦もある。リシュリーと言う、自称精霊の男性が、本当に子を授かるなど信じられない事態であるのに…
「えぇ!!」
リシュリーは物凄い声を出した…
「何それ?どう言うこと?」
ガバッとリシュリーは王太子に縋り付く。
「知らなかったのか…人によっては相性と言うものがある様だ。何年も子を授かれない夫婦もある。」
「まっじで……?爺ちゃんそんな事、一言も……待てよ……そっか!じゃ、何度もすればいいんだ!」
子供できるまで!
立ち直りが早いのか、感情の起伏が激しいのか…リシュリーの表情はクルクルクルクル変わっていく…
「よっし!王子!さっきは気持ちよかっただろ?天国にいる様だっただろ?なら、相性はバッチリじゃん!も、一回する…」
「待て待て待て待て!!」
お姉さん達は男に天国を見せる仕事だ、て言ってたんだ。これで天国見れたら相性はいいはずだろ?なんで止める?
もう一度、王太子の下半身にむしゃぶりつこうとしているリシュリーの口を王太子はガッチリと抑えて止めてきた。
「いい加減にしろ!ここは牢だぞ!」
いつ宰相側の者達が来るかわからないこんな所で、続きをしましょうと言われておいそれとできるものでも無い。
「なんれ?ヒャンフなろひ!!」
塞がれてもまだ舐めてこようとするリシュリーの口に仕方なく王太子は指を突っ込んで止めさせた。
「いいか!よく聞け、リシュリーとやら!ここでは命の危険も迫っているんだ。私達だけでは無く勿論そなたの命もだ…そなたの言い分も、まだ全て信じ切る事などもできぬ!まず考えなければならないのは、私達がここから無事に出る事だ!」
「まさか、殿下…その者も助ける気で御座いますか?」
当然の様に臣下は問う。王太子が拘束されていることを知りつつ、破廉恥な暴挙に躍り出たリシュリーは立派な不敬罪にあたるだろう。ならば、この牢屋に捨て置いて脱出すれば良いことだ。なのに、王太子はリシュリーを含めた脱出を考えている様にしか見えないのだ。
「当たり前だろうタークス。寝言を言うなよ?どの様な者でもこの国にいるのならば我が国民だろう。」
へぇ…約束は忘れちゃってるみたいだけど、王子は国を守る意気込みだけは人一倍あるんだ。情を交わした人間を尊敬できるかなんて、そんな事どうでも良いと思っていたけど、なるほど、これだったらもっと人間の事を知ろうとしても良いかもしれない……
地下牢の中に似つかわしく無い笑い声が響く。
「……リシュリー…と言ったか?」
「うん!」
「何がそんなに楽しい?」
こんな事になって、こんな所で操を散らして……
「だって、念願だった君に会えた!ねぇ、王子!どっちがいい?」
リシュリーは王太子が怪訝な表情をしているのに気がついているはずだ。なのにちっともに気にせず上機嫌である。小さな精霊達はどこの国のものか分からないが、狂喜乱舞して二人の周りを巡りながら踊り狂っている。
「…どっちとは?」
「ん?僕達の子供!男の子?女の子?」
「……本気か…?」
狂言では無くて?確かにリシュリーからは人間離れしたものを感じるのだが…
「当たり前じゃん!その為に僕来たんだよ!どんな力が与えられるかな?楽しみだね?」
本当に幸せそうにリシュリーは笑う。今日、お互いに初めて会ったのに…政略結婚が主流である貴族社会においても、好きでもない者の子供をこんなに待ち侘びる親がいるだろうか。
「ふふ…君の力は薄まり過ぎて、ちょっとどんな特性なのか分かんないね?あ、僕の知りたい?」
「力…?」
「……で、殿下……お子とは……御意でございますか……」
一国の王太子が、得体の知れないどこぞの馬の骨に情けをかけた……臣下としてはこれだけでも主人を止める理由になる。
「そう!残念ながら人間は忘れちゃってるみたいだけどね……」
人懐こいリシュリーは王太子の逞しい胸の上に頭を乗せて横になる。王太子に対して警戒心は皆無だ。
「あ!僕、名前も考えたんだよ。リュミエール!!どう?」
「はぁぁ…どう、と言われてもな…こうなってしまってはリシュリーを無碍にはできまいが…まず、ここから出る事だ……」
タークスの心配もわかる。王家の血筋にいい加減な者を入れられないもの……しかし事がなってしまってはどうしようもないのである。
当初は捕まる事も宰相側の動きを探る良い機会にしようと思っていたのだが、王子の子供が欲しいと強行突破してきたリシュリーが一緒では、ただ大人しく相手方の動向を探る事も難しくなりそうである。ならば、ここから無事に脱出する事を考えるべきだろう。自分の置かれている状況に危機感を全く覚えないリシュリーをこのまま残して行くのも一つの縁を結んだ身としては忍びないのだ。
「え~~光って言う意味だよ?いいと思うんだけどなぁ……この子は、これからの世界の光になる…人間界も僕達の所も明るく照らしてくれる様に…」
ゆっくりとリシュリーは自分の下腹部を摩った…子がいるならば普通の母の反応だろうか?
「あのな…知らぬのならばすまんが、人間はそんなに早く子はできんぞ?」
たった一回で確実に子供を成せるか、と言うと疑問であろう。初夜で授かったと言う話を聞いた事があるにはあるが、何年も子供に恵まれないと言う夫婦もある。リシュリーと言う、自称精霊の男性が、本当に子を授かるなど信じられない事態であるのに…
「えぇ!!」
リシュリーは物凄い声を出した…
「何それ?どう言うこと?」
ガバッとリシュリーは王太子に縋り付く。
「知らなかったのか…人によっては相性と言うものがある様だ。何年も子を授かれない夫婦もある。」
「まっじで……?爺ちゃんそんな事、一言も……待てよ……そっか!じゃ、何度もすればいいんだ!」
子供できるまで!
立ち直りが早いのか、感情の起伏が激しいのか…リシュリーの表情はクルクルクルクル変わっていく…
「よっし!王子!さっきは気持ちよかっただろ?天国にいる様だっただろ?なら、相性はバッチリじゃん!も、一回する…」
「待て待て待て待て!!」
お姉さん達は男に天国を見せる仕事だ、て言ってたんだ。これで天国見れたら相性はいいはずだろ?なんで止める?
もう一度、王太子の下半身にむしゃぶりつこうとしているリシュリーの口を王太子はガッチリと抑えて止めてきた。
「いい加減にしろ!ここは牢だぞ!」
いつ宰相側の者達が来るかわからないこんな所で、続きをしましょうと言われておいそれとできるものでも無い。
「なんれ?ヒャンフなろひ!!」
塞がれてもまだ舐めてこようとするリシュリーの口に仕方なく王太子は指を突っ込んで止めさせた。
「いいか!よく聞け、リシュリーとやら!ここでは命の危険も迫っているんだ。私達だけでは無く勿論そなたの命もだ…そなたの言い分も、まだ全て信じ切る事などもできぬ!まず考えなければならないのは、私達がここから無事に出る事だ!」
「まさか、殿下…その者も助ける気で御座いますか?」
当然の様に臣下は問う。王太子が拘束されていることを知りつつ、破廉恥な暴挙に躍り出たリシュリーは立派な不敬罪にあたるだろう。ならば、この牢屋に捨て置いて脱出すれば良いことだ。なのに、王太子はリシュリーを含めた脱出を考えている様にしか見えないのだ。
「当たり前だろうタークス。寝言を言うなよ?どの様な者でもこの国にいるのならば我が国民だろう。」
へぇ…約束は忘れちゃってるみたいだけど、王子は国を守る意気込みだけは人一倍あるんだ。情を交わした人間を尊敬できるかなんて、そんな事どうでも良いと思っていたけど、なるほど、これだったらもっと人間の事を知ろうとしても良いかもしれない……
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