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17、遭遇2

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「ここにしばらく入ってろ!」

「おい、良いのか、一緒で?」

「構わんだろ。他が一杯なんだ。全く今日はついているんだがついていないんだか…」

「旦那様にまた報告にいかねぇとな。」

 ドンッと乱暴に突き飛ばされて入れられたのは小さな小部屋?いや最初に入れられた所とは内装は違えど牢屋だろう。リシュリーがここまで引いて来られた時にいくつもの同じ様な牢屋があり、それぞれ人が入っていた様だった。

「痛ったぁ……」

 足は拘束されていないが、両手は後ろで縛れているのだ。思い切り突き飛ばされれば転びもする。リシュリーはもぞもぞ横になり房内を観察する。

 人がいる………

「おい、大丈夫か?」

 人、が…いる………

 リシュリーが盛大に転けた事を心配して低い声の持ち主が声をかけてくれた。その人の方が両手両足縛られてて、リシュリーよりも辛そうに見えるのに……

 小さい子達の目がキラキラして横たわった人物を凝視してる…

 歩けば良いのに、立つのも勿体無く感じたリシュリーはズリズリとその人物の側にずり寄って行く。心配そうにこちらを見ている者の瞳の色は薄紫…!髪は金色で銀から離れてしまっているけれど、長い年月薄まっていった血筋と思えばおかしくはない。

「おい…?どこか、打った、の…か……?」

「いた………いたよ~~!!」

 リシュリーは瞳からボロボロと涙をこぼし泣き出してしまった。

「お、おい…?どうした?どこか痛むのか?」

「ちが……ちが……」

「血?そう言えば、お前の顔に傷があるな。切られたのか!?」

「違うんだよ……やっと…見つけたぁ…」

 心底ホッとしたリシュリーはヘニャリと座り込む。

「見つけた…?」

「そう!精霊王の血を引く王族って君でしょう?やっと会えた!」

 そして一番良い笑顔で、それでも泣き笑いであるけれども、精一杯笑って見せた。

「な………」

「さて……僕は僕の仕事をしなきゃ、ね?爺ちゃん精霊王の子孫、僕の事、わかる?」










 
 地下牢が一時騒がしくなった。

 ここに閉じ込められてからどれくらい経ったのか…生かさず殺さずの奴らは、ここに入れられた者達の健康など一切考えないのだろう。ここに入れられてから縛られたまま、一度も水も与えられていないからだ…

「殿下…ご無事で…?」

 何度か目のタークスの問いかけには、ただ、ああ、と答えるしかない。他の臣下達の体調も不安事項である。

 耐えてくれ……これしか願えぬ主人を許せ……

 気力の勝負になりつつある所へ、囚人が増えたようで、地下牢に騒がしさが訪れたと思えば、此方の牢に投げ込まれてきた。

「……!」

「痛った~」

 思い切り転んだのだろう。投げ込まれたまま床に突っ伏してしまう。まだ若い青年の声だ。こんな所に一人きりで知り合いもなく投げ込まれれば不安も強かろうかと声をかけた。その青年は牢に入れられた事に怯えるわけでも、命乞いをするわけでもなく、体制を整えたと思ったら凄い速さで此方にずり這いで這ってくる。光を放つような銀の髪に、紫の瞳の…まさか、と思わせる美貌の青年だ……

 そしてこちらを見ていたと思ったら泣き出したのだ。それも恥も外聞もなくポロポロと涙を流して泣き出した。どこか痛むのかと聞いたら「ちが…」と言う。なるほど、青年の左目の外側に刃物で切られたと思われる切り傷がありきめ細やかな白い肌には血が滲んでいた。
 一瞬、良くもこんな美しい者に斬りかかれるものだと変な関心をしてしまった。そして酷く力が抜けたような、気の抜けたような、全く警戒心のなさそうな、こんな牢の中では絶対にお目にかかれないような、全開の笑顔で青年は笑って見せた…一瞬、この者の周囲が光り輝いた様に見えたのは錯覚……?

 そして彼は言ったのだ。精霊王の血筋は君だろう、と…
  
 この国にいる者ならば王家の人間には物語のような伝説があることを知っているだろう。しかし今ではそれは伝承化され、御伽噺の一つとされ、時代を追うごとに邪神の成り代わりとまで言われてきたのに……今では国民が精霊王の名さえ口にする事が禁じられているのに、この青年は酷く嬉しそうに、屈託のない笑顔でそう聞いてきた。

 だから、戸惑ってしまう…何と答えていいのやら…反王政派の罠なのか、はたまた外国から何かの物語でも頼りにここまできたのか……精霊王と言った、それは本当に…………





「王子!!精霊王との約束だ!子供を作ろう!!」

「「なっ…!!!」」

 さも当然と言うべき言い方で青年はまた精霊王の名を口にする。そればかりではなく、子供を、作ろうと?隣の房で何が起こっているのかと聞き耳を立てていたタークスもつい声を上げてしまったようだ。

「そう!精霊王の血を受け継ぐ者同士、この地を守る王を生み出すために!!」

「何を言っているのだ…それは遥か昔の世迷言では……」

「何を言ってるかって、そっちこそ何言ってんの!?ほら!!」

 ガバッと王太子の身体を仰向かせにしたその青年の両手はもう縛られてはいなかった。









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