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16、遭遇 1
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「ねぇ!こんばんは!!お兄さん達、何探してるの?」
分からんものは分からんし、でも黙っても見てもいられないし、ので、直接声をかける方法をとるしかない、とリシュリーは動く。関係ないならばそれでいい。でも少しばかり探し人と関わりがあるならば手がかりは欲しいのだから。
「何奴だ!!!」
リシュリーは気楽に、普通に、不信感無くちゃんと挨拶までして声をかけたつもりである。しかし、それが返ってここにいた者達の警戒心を一気に引き上げた様だ。
全ての人間が得物を持っていた。腰に刺している剣。それを一斉に引き抜いて、一気にリシュリーを取り囲む。
「え……え~~~こんばんは?」
あれ?違ったかな?挨拶間違えた?
何がいけなかったのかリシュリーはわからない。が、取り囲まれてしまったのならば変に抵抗しない方がいい、と最初に捕まった時に学んでいる。そうすれば痛い思いもしなくて済むのだ。
「何者だと聞いている!!」
「リシュリーです。」
名前だよね?
「何故ここにおるのだ!」
「人を探していたんですけど、見失っちゃって……」
これも本当。
「人探し?怪しい奴め…!」
ジリジリとリシュリーを取り囲む人達の中で、リシュリーは困った声を出す。
「え~お兄さん達だって怪しいよ?こんな森の中で剣を抜いて一体誰と戦うの?」
どう考えてもこの場合、丸腰のリシュリーよりも戦闘体制バッチリな彼らの方が異様である。
「ふん!お前の様な得体の知れぬ者が徘徊していると言うから警備に来ているところだ!その面妖なフードを取れ!」
フード…これを取ったらどうなるかな?ちょっとだけ悪戯心がムクムクと持ち上がってくるけど、きっと碌な事にはならないんだろうと最初の記憶が告げている。
「う~~ん…どうしよう?」
リシュリーはしっかりと学んでおけばよかった。人間の短気さと横暴さを………
シュッ………左耳のすぐ近くで風を切る音がした。本当ならば左目の辺り…
そしてパラリとフードが落ちる。1人の男がリシュリーのフードを左目を潰す勢いで切り裂いたのだ。
風の精霊グッジョブ!!!
リシュリーの肩に乗っていた小さな風の精霊は咄嗟に風を起こして剣の軌道を反らせた。だからリシュリーの左の目は無事。けれども左目横の皮膚は裂けて少し血が流れ出てしまった。
「お………前!!」
「なんだ、こいつ!!」
「王子の仲間か!?」
月光に照らされた輝く銀の髪に、月の光を吸収して発光している様な濃い紫の瞳。明らかに人間じゃない風態を感じ取り、男達に一斉に緊張がはしった。
「痛いなぁ……脱ごうかどうか考えてたのに、待ってくれない……」
男達の殺気だった怒鳴り声にもびくりとも反応せず、リシュリーは切られたフードを指で摘んであ~あ、と残念そうだ。
「何者だ!」
「だから、リシュリーだって…」
「その容姿、神殿側からの間者か!?」
神殿?間者?はてなんじゃそりゃ?リシュリーはコテンと首を傾げる。
「捕まえておいたほうが…」
「神殿の方の……」
「王族派なのでは?」
「罠かもしれません…」
リシュリーが首を傾げている間にヒソヒソと姦計が計られていて…その間もリシュリーに向かって男達が抜いた剣先は下げられないままである。
「何はどうあれ、あのままの容姿の者は問答無用で捕獲、処罰対象だ。あれだけの容姿の持ち主、何やら事情がありそうではないか?」
ジリジリと押し迫る男達。
「あ、やっぱり捕まるんだな……」
けど、なにやら此方としては良い流れかな?男達が近づいて来れば近づくほど、精霊の気配らしきものがチラチラと見え隠れしているから…
接触したかな…なら、ついて行く?
「分かった!こーさん!降参する!お兄さん達に勝てそうにもないし、そんなつもりもないし!」
「どう言うつもりだ?捕まったらどうなるか、分かっているのか?」
「充分に怪しい人物として縛り上げるぞ!」
「はいはいどうぞ~」
最初の拘束で既に縛られているから、なんとなく縛られる雰囲気は分かるから、自分から両手を後ろに回して、縛られ準備はOKだ。
「くっ…こいつ、頭おかしいのか?」
「自分から…?」
精霊信仰を持っている者は問答無用で処断されている昨今、なんとか逃げようとする者がいても、自分から縛られに来る者はほぼ皆無だ。なぜなら周囲の民衆への見せしめにされる事が多く、処刑も追放も本人の尊厳など皆無だからだ。
「…どうする?」
「う~む……」
「使えるか?」
「どうしたの?まだ?」
「こいつ…少し頭が緩いのか?何されるか分かってるのかよ?」
「良くて、縛られて投獄?」
悪くて処刑だ…だけれど、賭けるしかない…
「はっ!こいつの事は上のお偉方が処理するだろうよ!見たこともねぇほどこんだけ色が濃いんだ。神殿の奴らを黙らせるのに一役買うんじゃねぇの?」
面倒臭そうに1人の男がリシュリーを縛り上げる。どうやら神殿と言う所に差し出されでもするのだろう…
分からんものは分からんし、でも黙っても見てもいられないし、ので、直接声をかける方法をとるしかない、とリシュリーは動く。関係ないならばそれでいい。でも少しばかり探し人と関わりがあるならば手がかりは欲しいのだから。
「何奴だ!!!」
リシュリーは気楽に、普通に、不信感無くちゃんと挨拶までして声をかけたつもりである。しかし、それが返ってここにいた者達の警戒心を一気に引き上げた様だ。
全ての人間が得物を持っていた。腰に刺している剣。それを一斉に引き抜いて、一気にリシュリーを取り囲む。
「え……え~~~こんばんは?」
あれ?違ったかな?挨拶間違えた?
何がいけなかったのかリシュリーはわからない。が、取り囲まれてしまったのならば変に抵抗しない方がいい、と最初に捕まった時に学んでいる。そうすれば痛い思いもしなくて済むのだ。
「何者だと聞いている!!」
「リシュリーです。」
名前だよね?
「何故ここにおるのだ!」
「人を探していたんですけど、見失っちゃって……」
これも本当。
「人探し?怪しい奴め…!」
ジリジリとリシュリーを取り囲む人達の中で、リシュリーは困った声を出す。
「え~お兄さん達だって怪しいよ?こんな森の中で剣を抜いて一体誰と戦うの?」
どう考えてもこの場合、丸腰のリシュリーよりも戦闘体制バッチリな彼らの方が異様である。
「ふん!お前の様な得体の知れぬ者が徘徊していると言うから警備に来ているところだ!その面妖なフードを取れ!」
フード…これを取ったらどうなるかな?ちょっとだけ悪戯心がムクムクと持ち上がってくるけど、きっと碌な事にはならないんだろうと最初の記憶が告げている。
「う~~ん…どうしよう?」
リシュリーはしっかりと学んでおけばよかった。人間の短気さと横暴さを………
シュッ………左耳のすぐ近くで風を切る音がした。本当ならば左目の辺り…
そしてパラリとフードが落ちる。1人の男がリシュリーのフードを左目を潰す勢いで切り裂いたのだ。
風の精霊グッジョブ!!!
リシュリーの肩に乗っていた小さな風の精霊は咄嗟に風を起こして剣の軌道を反らせた。だからリシュリーの左の目は無事。けれども左目横の皮膚は裂けて少し血が流れ出てしまった。
「お………前!!」
「なんだ、こいつ!!」
「王子の仲間か!?」
月光に照らされた輝く銀の髪に、月の光を吸収して発光している様な濃い紫の瞳。明らかに人間じゃない風態を感じ取り、男達に一斉に緊張がはしった。
「痛いなぁ……脱ごうかどうか考えてたのに、待ってくれない……」
男達の殺気だった怒鳴り声にもびくりとも反応せず、リシュリーは切られたフードを指で摘んであ~あ、と残念そうだ。
「何者だ!」
「だから、リシュリーだって…」
「その容姿、神殿側からの間者か!?」
神殿?間者?はてなんじゃそりゃ?リシュリーはコテンと首を傾げる。
「捕まえておいたほうが…」
「神殿の方の……」
「王族派なのでは?」
「罠かもしれません…」
リシュリーが首を傾げている間にヒソヒソと姦計が計られていて…その間もリシュリーに向かって男達が抜いた剣先は下げられないままである。
「何はどうあれ、あのままの容姿の者は問答無用で捕獲、処罰対象だ。あれだけの容姿の持ち主、何やら事情がありそうではないか?」
ジリジリと押し迫る男達。
「あ、やっぱり捕まるんだな……」
けど、なにやら此方としては良い流れかな?男達が近づいて来れば近づくほど、精霊の気配らしきものがチラチラと見え隠れしているから…
接触したかな…なら、ついて行く?
「分かった!こーさん!降参する!お兄さん達に勝てそうにもないし、そんなつもりもないし!」
「どう言うつもりだ?捕まったらどうなるか、分かっているのか?」
「充分に怪しい人物として縛り上げるぞ!」
「はいはいどうぞ~」
最初の拘束で既に縛られているから、なんとなく縛られる雰囲気は分かるから、自分から両手を後ろに回して、縛られ準備はOKだ。
「くっ…こいつ、頭おかしいのか?」
「自分から…?」
精霊信仰を持っている者は問答無用で処断されている昨今、なんとか逃げようとする者がいても、自分から縛られに来る者はほぼ皆無だ。なぜなら周囲の民衆への見せしめにされる事が多く、処刑も追放も本人の尊厳など皆無だからだ。
「…どうする?」
「う~む……」
「使えるか?」
「どうしたの?まだ?」
「こいつ…少し頭が緩いのか?何されるか分かってるのかよ?」
「良くて、縛られて投獄?」
悪くて処刑だ…だけれど、賭けるしかない…
「はっ!こいつの事は上のお偉方が処理するだろうよ!見たこともねぇほどこんだけ色が濃いんだ。神殿の奴らを黙らせるのに一役買うんじゃねぇの?」
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