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8、邪教徒の占い師 1

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 まず、一つ聞きたい…人間って無能なのか?

 まさかね、とこの考えを否定したくともここ娼館で見る人間達の何と目の節穴だらけなこと……旦那様に仕方ないから占い師を、と職を与えられたのは良かったものの…ここにいれば男女のあれこれ技術について学べるし…衣食住はついてるし…良いは良いのだが……

 チョロチョロ足元で動き回っている精霊達の力を借りて占い師なるものをしていけば、こんな事をこの子達に頼みたく無いって言う様な事まで占ってって言う御仁が多すぎて……

 メガネが何処いったかって?最後に見た所にあるだろうよ?

 相手が自分の事が好きかどうかって?本人に聞け?
 
 事業が上手くいくかって?予知はできん、だから事業についてもっと勉強しろ!

 女房の浮気を疑ってるって?そんなドロドロ現場ここにいる小さい子達に見せるもんじゃ無いだろ?変なもん見せるな!
 
 やれって言われた手前やって見たけれど、こんな事なら受けなきゃ良かった…時々、生き別れの子供を探してる…もう亡くなってて…やら、大金持ちになる為にはどうしたら…こっちが聞きたいし、はっきり言って興味がないからそんなの知らん…やらあって答えに困ったりするし…

 旦那様は娼館に来るお客がお姉さん達目当ての客ばかりじゃなくなって客足が増えた事に喜んでいるけど…

「あ~~ぁ……」

 深く被ったフードの下から大きなため息が出てしまう。

「やだ、疲れた?」

 昼間の時間は占いの館と化した娼館でやっと今日の仕事が終わったリシュリーは一息着いたところだ。お姉さん達はこれからが本番で夕方から夜にかけてお仕事に励む。ゾロゾロとロビー兼食堂兼占い場に降りてきては簡単に食事を取る。予約が入ってるお姉さんはこのままお客が来るのを待つだけだが、予約のないお姉さんは食堂で接客をしながら客が付くのを待つそうだ。指名が無い時はずっと食堂での仕事となる。それでもお給料は貰えるらしいけど、お客を取った時と比べると全然違うんだそうだ。 

「はい、リシュリーお疲れ様。ほら今日の食事よ。」
 
 野菜と何の肉か分からない肉をクタクタに煮込んだシチューと硬めのパン。普通のお客にも出す物だが、その日一番多く作れる物がリシュリー達の食事になる。
 
「ありがとう~」
 
「何?疲れたの?」

 いつもと違いウダウダしているリシュリーに、クルクルした茶髪を見事にまとめ上げたケルトがひょっこりと顔をのぞいてくる。

 疲れた…?う~ん…?疲れたのかな?疲れが何なのかわからないけれども、やる気は無いな…

「あれだけお客に並ばれたら、お茶も飲めないものねぇ?」

 はっきり言ってお茶が飲めなくても大丈夫である。水の精霊は消えてしまったけど、まだ風の精霊が側にいる。彼が空中から水分だけ選り分けてこっそり口に入れてくれたりするし…

「オーナーはウハウハよ?リシュリーは良い買い物だったって鼻の下伸ばしてたわ。」
 
「やだ、鼻の下は気持ち悪いわ。」

「違いな~い!!」

 キャッキャと会話に花咲かせているお姉さん達は時に辛辣だ。

 ボ~~~ッとそんな事を眺めていたら、物凄い事を思いついた…

「…探せば良いんじゃない?」

 あれ?僕、ここで他の人の探し物やらやってる暇なくない?無いよね?無かったはずだよね?

 なに流されるまま、職を貰って落ち着いちゃってるんだよ!

「そうだよ!探さなくちゃ!」

「うん?何を?スプーン?」

 そう言えば、スプーンがなかった。これじゃシチューが食べられない…って違う!

「はい、どうぞ。」

 サラーラがスプーンを持ってきてくれた。

「探し物?」

 水の精霊が消えたあの日、随分と取り乱していたサラーラだったが、流石貴族のお嬢様とでも言うのか、すぐに自分を取り戻し仕事に望んだのだ。

 芯が強いお姉さんなんだ。

「うん!最初に言ってた呪われた王家の末裔!最初から探しとけば良かった…」

 呪われては無いんだけどね…

「え……」

「それって…」

「リシュリー……それ、王族の事?」
 
 パンネの顔が険しくなる。

「そう!何処にいる?やっぱりお城?」

 何で最初から小さい皆に探してもらわなかったんだろう。お城の場所さえわかれば行けるじゃん。てか、街中探せば城見える?

「呪われた王家の話、したわよね?」
 
「うん、けど、呪いじゃないから!」

「うん…それは、分かってるけど…」

 何やらお姉さん達が神妙な顔をしながら僕を囲んで座り出す。モリモリとシチューを食べながら、何だなんだと様子を見てた。

「リシュリーの言い分は分かった様なわからない様感じ何だけどさ……」

「私達が知っているのは……」

「ねぇ…?」

 お姉さん達は皆で顔を見つめあってて、どうしようか考えあぐねている様だ。

「グダグダしてても始まらないから言うわよ?」

 パンネが意を結したようにこちらを向いた。

「生きてるのか、死んでいるのか分からないらしいのよ……」

 皆でグッと身体を寄せ合ってパンネは一層声を落としながらそう言い切った。







 
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