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5、娼館 2
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「そんな奴らの金蔓に君も売られたってわけ…こっちは文句言えないけどね。」
お姉さん達の話は止まらない。が、大体わかった。
精霊の祝福が呪いに置き換えられて語り継がれているのだと言うことが……!
くっそ!!だれがそんな事しやがった!こちとらこの時の為だけに産まれてきたんだよ!
メラメラと怒りが湧いてくる。同時に火の精霊も無言で青白い炎を噴出させて火山の如しだ………
「何言ってんの?本当にそんな事信じてる?」
少しどころじゃなくムッとした表情はしてたさ…してたけど………
「やっだ!!可愛い!!イヤン!そんな目で怒ったって全然怖く無いわ。」
「や~怒っても可愛い綺麗って…素がいいって特だわね?」
「ちょ、何言ってんの?僕の話聞いてよ!呪いなんて無いって!呪いなんて嘘なんだよ!」
「やだ、必死になっちゃって…ご両親の教育の賜物かな?今の時代に精霊信仰する人って少ないんだよ?」
ヨシヨシ、とばかりに赤髪の豊満な肉体のお姉さんに頭を抱え込まれるようにしてハグされる。
「でも大丈夫…!ここは安全だから安心して?ここ以上に君ももう行くべき所ないしね?」
「?」
「精霊信仰は邪教の一つになっているわ。」
静かに語る茶髪ストレートの女性が食事らしい物を運んでくれた。
「邪教…………?」
言うに事欠いてそんな事まで……?
「サラーラは痛い思いしてるもんね?」
赤髪のお姉さんは茶髪ストレートのお姉さんをそう呼んだ。
「リシュリー、僕、リシュリーって言うんだ。サラーラ、何があったの?」
まだ赤髪お姉さんにハグされたままだけれども呪いで痛い思いをしてきたみたいなサラーラに理由を聞きたい。
「精霊を家族で信仰していたの…」
ちょっとお庭が広いです、程度の領土を持つ男爵家だったサラーラ。持っている土地も田舎の更に隅に行くような田舎にあった。曽祖父の代から絶対に忘れてはいけないことの一つとして精霊に感謝の祈りを捧げる事があった。幼い頃から祖父母も両親もそれに従い、精霊信仰を守ってきたのだそうだ。その影響からなのか、サラーラの家の畑では病害虫に強く、天候にも左右されないと言う強靭な野菜が育つと有名にもなったそうだ。
そのコツを享受願いたいと多くの領から使徒が遣わされた。そこで祖父母、両親も共に精霊に感謝する事だと正直に伝えたのだった。
結果、これが決定打となってサラーラの男爵家は領土も爵位も没収され、家族は散り散りに収監され、年若いサラーラに至っては娼館に売り払われてしまったのだった。王都から大分距離があった領地であり、裕福ではなかった両親達が滅多に王都へも出向くことすらできなかった一家は知らなかったのである。精霊信仰が邪教として扱われ、国を挙げて排除しようとしていた事に…捉えられ、収監された祖父母と父は収監先で亡くなったと聞かされた。母親だけは収監先で病にかかり、蔓延を恐れた看守長の判断により町外れの修道院へと送られたらしいのだ。
「だからか…」
サラーラの身体の周囲は少しばかり輝いて見えるのだ。精霊を信じている証拠として、精霊から少しばかりの祝福を与えられる事は珍しく無い事だとリシュリーは聞いていたから。でも、ここに来た後では、そんな人間にさえお目にかかるのが難しいようで、サラーラ以外は見た事がないのだが。
「サラーラ、今も精霊に祈ってるだろ?」
ニッコリとリシュリーは微笑む。だってその証拠に小さな精霊達が嬉しそうにサラーラの周りをクルクルクルクル周りながら踊り狂ってる。相当嬉しいようで、風の妖精が何処からか花びらを飛ばしてきた。
ヒラヒラ舞い落ちる小さな花弁…色とりどりの瑞々しい花弁は王都では高くて一般人には手に入らない。それほど自然は荒れ果て実りが無くなっているのだ。
「わぁ………」
「ま…ぁ………」
「綺麗…こんなの初めて見たわ…」
そんなに特別な事では無い。一昔前ならきっと何処にでも咲いていた野の花の花弁なのだから。
「貴方は………」
目をまんまるくしてその様を見つめているお姉さん達の隣で、サラーラは目に一杯の涙を溜めてリシュリーを凝視している。
「ね?サラーラ。邪教じゃ無いだろう?精霊の事を好きでいてくれる君の事が、皆んなも好きなんだよ。」
特に水の精霊は特別サラーラに興味があるみたいだった。サラーラの身体によじ登って、今にも零れ落ちそうな涙に手を添えている。
「サラーラ、何を願ったの?」
「母が…悪い水に当たった様で、容体が悪いと手紙が来たの。でも、薬を買うお金もなくて、ここで稼いだお金を全て使ってもまだ足りないと言われるの!もう、何もする事ができなくて……」
ポロポロと涙を流すサラーラ。他のお姉さん達はただ黙って聴いている事しかできない。
知っているのだ、どんなにお金を積もうとも、邪教信者と判断されたならばまともな治療をしてもらう事など無理に等しいと…………
「良かったね、サラーラ!お母さん、良くなるよ。」
静かに微笑むリシュリーの笑顔は輝くばかりだった。サラーラによじ登りその涙を受け止めていた小さな水の精霊もニッコリと微笑んで、サラーラの涙と共に消えて行った。
お姉さん達の話は止まらない。が、大体わかった。
精霊の祝福が呪いに置き換えられて語り継がれているのだと言うことが……!
くっそ!!だれがそんな事しやがった!こちとらこの時の為だけに産まれてきたんだよ!
メラメラと怒りが湧いてくる。同時に火の精霊も無言で青白い炎を噴出させて火山の如しだ………
「何言ってんの?本当にそんな事信じてる?」
少しどころじゃなくムッとした表情はしてたさ…してたけど………
「やっだ!!可愛い!!イヤン!そんな目で怒ったって全然怖く無いわ。」
「や~怒っても可愛い綺麗って…素がいいって特だわね?」
「ちょ、何言ってんの?僕の話聞いてよ!呪いなんて無いって!呪いなんて嘘なんだよ!」
「やだ、必死になっちゃって…ご両親の教育の賜物かな?今の時代に精霊信仰する人って少ないんだよ?」
ヨシヨシ、とばかりに赤髪の豊満な肉体のお姉さんに頭を抱え込まれるようにしてハグされる。
「でも大丈夫…!ここは安全だから安心して?ここ以上に君ももう行くべき所ないしね?」
「?」
「精霊信仰は邪教の一つになっているわ。」
静かに語る茶髪ストレートの女性が食事らしい物を運んでくれた。
「邪教…………?」
言うに事欠いてそんな事まで……?
「サラーラは痛い思いしてるもんね?」
赤髪のお姉さんは茶髪ストレートのお姉さんをそう呼んだ。
「リシュリー、僕、リシュリーって言うんだ。サラーラ、何があったの?」
まだ赤髪お姉さんにハグされたままだけれども呪いで痛い思いをしてきたみたいなサラーラに理由を聞きたい。
「精霊を家族で信仰していたの…」
ちょっとお庭が広いです、程度の領土を持つ男爵家だったサラーラ。持っている土地も田舎の更に隅に行くような田舎にあった。曽祖父の代から絶対に忘れてはいけないことの一つとして精霊に感謝の祈りを捧げる事があった。幼い頃から祖父母も両親もそれに従い、精霊信仰を守ってきたのだそうだ。その影響からなのか、サラーラの家の畑では病害虫に強く、天候にも左右されないと言う強靭な野菜が育つと有名にもなったそうだ。
そのコツを享受願いたいと多くの領から使徒が遣わされた。そこで祖父母、両親も共に精霊に感謝する事だと正直に伝えたのだった。
結果、これが決定打となってサラーラの男爵家は領土も爵位も没収され、家族は散り散りに収監され、年若いサラーラに至っては娼館に売り払われてしまったのだった。王都から大分距離があった領地であり、裕福ではなかった両親達が滅多に王都へも出向くことすらできなかった一家は知らなかったのである。精霊信仰が邪教として扱われ、国を挙げて排除しようとしていた事に…捉えられ、収監された祖父母と父は収監先で亡くなったと聞かされた。母親だけは収監先で病にかかり、蔓延を恐れた看守長の判断により町外れの修道院へと送られたらしいのだ。
「だからか…」
サラーラの身体の周囲は少しばかり輝いて見えるのだ。精霊を信じている証拠として、精霊から少しばかりの祝福を与えられる事は珍しく無い事だとリシュリーは聞いていたから。でも、ここに来た後では、そんな人間にさえお目にかかるのが難しいようで、サラーラ以外は見た事がないのだが。
「サラーラ、今も精霊に祈ってるだろ?」
ニッコリとリシュリーは微笑む。だってその証拠に小さな精霊達が嬉しそうにサラーラの周りをクルクルクルクル周りながら踊り狂ってる。相当嬉しいようで、風の妖精が何処からか花びらを飛ばしてきた。
ヒラヒラ舞い落ちる小さな花弁…色とりどりの瑞々しい花弁は王都では高くて一般人には手に入らない。それほど自然は荒れ果て実りが無くなっているのだ。
「わぁ………」
「ま…ぁ………」
「綺麗…こんなの初めて見たわ…」
そんなに特別な事では無い。一昔前ならきっと何処にでも咲いていた野の花の花弁なのだから。
「貴方は………」
目をまんまるくしてその様を見つめているお姉さん達の隣で、サラーラは目に一杯の涙を溜めてリシュリーを凝視している。
「ね?サラーラ。邪教じゃ無いだろう?精霊の事を好きでいてくれる君の事が、皆んなも好きなんだよ。」
特に水の精霊は特別サラーラに興味があるみたいだった。サラーラの身体によじ登って、今にも零れ落ちそうな涙に手を添えている。
「サラーラ、何を願ったの?」
「母が…悪い水に当たった様で、容体が悪いと手紙が来たの。でも、薬を買うお金もなくて、ここで稼いだお金を全て使ってもまだ足りないと言われるの!もう、何もする事ができなくて……」
ポロポロと涙を流すサラーラ。他のお姉さん達はただ黙って聴いている事しかできない。
知っているのだ、どんなにお金を積もうとも、邪教信者と判断されたならばまともな治療をしてもらう事など無理に等しいと…………
「良かったね、サラーラ!お母さん、良くなるよ。」
静かに微笑むリシュリーの笑顔は輝くばかりだった。サラーラによじ登りその涙を受け止めていた小さな水の精霊もニッコリと微笑んで、サラーラの涙と共に消えて行った。
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