[完]鎖の付いた使役人はコミュ障マスターを溺愛したい

小葉石

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「カ……カイ、ルさん…?」

 シヨンは驚きすぎて言葉がうまく出ない様だ。

「カイル……?」

 スッポリと当然のようにカイルの片腕の中に抱きしめられながら、ユリージュはポカンと上を向く…紛れも無いカイル…その両腕には戒めの鎖も……

「え!?なんで、いるの?」

 一番びっくりしているのはユリージュかもしれない。部屋から出られないように、両手を鎖で縛っていたんだから…それも、自分の魔力で作った鎖だから、ちょっとやそっとでは壊れないはず……?

「呼んだろ?」

「…………うん…」

 確かに…カイルの名を読んだ記憶がユリージュにはある。普段だったらなんて事のない日常会話の流れでだ…

「おい、坊主!何の話をしていた?」

「え…!?は、話?」

「ユリとだよ?」

 背の高いカイルから凄まれれば、カイルにその気がなくも物凄く圧迫感があるんだろう……王宮魔術師ともあろうシヨンさえもカイルの迫力には気圧されている。

「あの、俺が、選定官になるって言う……」

「あ~………それでか……分かった。坊主はもう行きな…」

 しっしっと追い払うような手振りでカイルはシヨンをあしらった…

「え?でも、これ、まずくないっすか?」

「?」

 カイルにはピンときていないようだったがカイルの行為は明らかな王城への不法侵入だ。

「なんでだよ?俺、元々魔術師宿舎にいるんだぞ?」
 
 外に出ないだけで、王宮敷地内の魔術師宿舎にカイルは繋がれていたからだ。

「不法侵入ではないだろ?」

「け、けど、無関係の者の城内への侵入は探知されると思う……バレたらまずくないのか?」

 カイルは使役物としての登録も許可もされていないのに………落ち着きを取り戻しつつあるシヨンのもっともな質問にもカイルはフッと笑い飛ばしてしまう。

「あのねぇ、坊主…俺、ユリの魔力から作られてるんだよ?魔法探知かけられても、引っ掛かるのはユリの魔力だけなの。だから本当は何も問題ないんだな、これが。」

「で、でも見つかったら……」

「そ、逆に見つからなきゃいいわけで………一旦帰るかユリ…?」

 ギュッとカイルの服を握りしめているユリージュを心配してカイルが話を中断した。

「そ、そうだな…早く見つかる前に宿舎に行った方がいいぞ!厄介な事になるから!」

 本当だったらいない存在のカイル。見つかったら只事ではないだろう。

「坊主。またな!」

 カイルはユリージュの答えを聞かないうちに一瞬で………

「……すげ………」

 後には呆然としているシヨンだけが取り残されたという……








「……んっ……んぅ…」

 木造の造りのユリージュの部屋。何重にも結界が張り巡らせてあるにも拘らずカイルはすんなりと抜けて行く。この宿舎に貼られている結界は、外からの侵入を防ぐものだ。カイルが出ようと思えばいつでも出られる。今日、カイルは自らそれを示し、一瞬でまた元の部屋へと帰って来た。部屋へと戻って来るなり、有無を言わさずにカイルはユリージュの唇を塞いでいく。

「ふ…ぁ…っ…ん…んぅ」
 
 離れて息を継いではまた塞がれる唇…もう何度目の口付けだか分からないくらいに、カイルはユリージュの唇を求めて行く。
 カイルの大きな熱い手はユリージュの後頭部をガッチリと抑えたまま動かない。もう片方はユリージュの腰に添えられて…その手は徐々に下へと下がってくる。不思議なことに、カイルの両腕の鎖は部屋へと帰ってくるなり部屋中央の魔法石に繋がって行く……

 ピクンッ…ユリージュの細い背がしなる…

「んぁ……っぁ…」

 執拗な口付けと、ユリージュの双丘を包み込む様に這い巡るカイルの手にユリージュは翻弄されて抗議の声も出す事ができないでいる。

「んぅ…カイ、ル…?」

 息継ぎの間に、疑問を口にしようとするユリージュに隙を与えないように更にカイルは覆いかぶさってきて…部屋の木の床へとユリージュを押し倒す形になってしまった……ユリージュのローブを脱がし、上着のボタンを外し、下衣の留め具を緩めて行く…既に半裸にされているユリージュはカイルに良いようにされるがままになってしまっている。

 カイルの片手はユリージュの胸元へ伸び、もう片方の手は主張し始めている前に伸びる…


……何もかも、忘れてしまえばいい………


「あ…っん……んっ…」

 立ち上がっていた慎ましいものを、しっかりとした力で握り込まれてしまってはユリージュも抵抗しようとする気も起きない程に身体は熱く疼いてくる……

「ユリ……気持ちいいか?」

 ユリージュをしっかりと押さえ込みながら、カイルは耳元でそんな事を聞いてきた。

「ん、んっ……ふぅ…ん…あっ…!」


……ユリ、思い出さなくていい………


 すっかりと身体の力が抜けたユリージュは震える手でカイルの黄土色の髪を手繰り寄せようと必死になっていた………

 





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