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久しぶりに、昔の夢を見た…懐かしい、ただユリージュが可愛らしかった頃の夢……隣を見れば、その可愛い顔がすやすやと今も落ち着いた寝息を立ててくれていて…見ているだけで、カイルの顔はヘラッと緩んできそうだ。
「あれから、何年経っただろうな?」
初めて会った綺麗すぎた幼いユリージュ、人を恐れてカイル以外の村人には物凄い警戒を見せていたっけ?何がきっかけかカイルにもわかっていないが、なぜか、妙に懐かれて……
「ユリ……」
ユリージュの白い頬にキスを落とす…
毎年、毎年お前が来るのが待ち遠しかった……
「ユリ…」
今度はキスを額に落とす……
会う度に、綺麗にそして魔力が強くなっていくお前が眩しかったなぁ……
「ユリ……?」
次は鼻先へ…そして唇へ…チョンチョンと突く様なキスを降らせて。
「ん……ぅ」
最後はしっかりと深く、唇を捉えて行く…
「んぅ…っ…っ!」
バチッとユリージュが目を開ける。
「カイル…!?…もう!起こす時はちゃんと起こして…!」
目を開けた瞬間にユリージュの顔がボッと赤くなった。
「おはよう、ユリ。後1時間で出勤だよ?朝食は出来ているから早くシャワーを浴びておいで?」
ユリージュの反応が可愛くて可愛くて
クスクスクスクス、きっと本人が怒るだろうことが分かるのに、カイルからは笑みが消えない。
「え?シャワー……」
は、昨日入ったはず…?
「俺は良いけどね?そのままでも…なんなら、朝から手伝おうか?」
手伝うと言ったカイルは有言実行とばかりにユリージュの下半身に手を伸ばす……
「朝だし?さっきのキスにも反応したか?昨日の名残もあるだろうからさっぱりしてきな?」
「あ…っ…分かっ…たから、カイル…離して…?」
朝からそんな事を言われれば、昨夜の記憶も蘇るし今の状態も恥ずかしすぎる。金の瞳が涙目になりながら、優しくユリージュを包む、手を離してと懇願し出した。
「よし、目は覚めたな?」
ニッコリと確認だけしてカイルはあっさりと手を離してくれた。
こんな事をされては、朝からユリージュの息は上がるし顔は火照る、どうしようもなく疼いてしまう熱をモジモジと持て余してしまって余計に辛いのに…
良い笑顔でただ笑っているカイルは、準備を手伝いユリージュに食事をさせて、出がけの玄関で、耳元で囁く。
「ユリ……愛してるよ…早く、帰っておいで?」
それだけでもうビクッとユリージュの肩が跳ねる。
「も、う…もうもう…!……カイル!!」
既に半泣き状態のユリージュをカイルはスッポリと抱きしめて、優しく甘い口付けを落とした。
「続きは帰ってから、だ。だから、早く、帰っておいで。」
真っ赤になった頬を隠す様に、ユリージュはグッとローブをずり下げた。
「行って、来ます!」
少し、不貞腐れた様にユリージュは走って王城に向かって行った。
「だってなぁ……今日は王族警護の日だろう?ユリがフラフラしない様に、ちゃんと釘は刺して置かないと……」
王族警護。その名の通りの王族の護衛だ。視察や行事、夜会などで外出する王族の警護にあたる当番制の仕事。ただでさえ見た目が必要以上に麗しいユリージュの事だ。その能力もさる事ながら、外見だってなかなかに噂の的にはなっているだろう。見目よし、力良し、ではどこのお偉いさんが欲しがるかわかったものではないのだから、使役人として絶対に離れることは無いカイルとて気が気ではない。ただでさえこの家からは出てはならない、と戒められているのに……何かあってからでは後悔では足りないくらい後悔する…
「ま、でも今日も先生が一緒、か…」
ならばそこまでは心配する必要はない。王城の中でも魔術士達を束ねる地位にいる者は出自の身分が低かろうとも一目置かれているくらいの影響力はあるから、そうそう無体なことは起きないだろう……
「ユリ……」
主人の居ない静かな部屋でカイルは一人で呟いた。自分の両手にある黒い戒めの鎖に、口付けを落としながら…
「…愛してるよ………」
今日の護衛は幼い姫君の乗馬訓練。まだ御歳九歳と言う幼い姫君は遊びたい盛りの活発さがあり、乗馬に挑戦となったらしい。
「ユリージュ、我々は外側ですよ?良いですね?」
姫君が馬で移動する馬場を囲む様にして内側から騎士、魔法剣士、魔術師の順で円形の陣を描く様に人を配置し護衛にあたる。魔術師は王族より一番離れた所で結界に異常が出ない様に対処するのが仕事内容になる。なので、実質王族警護と言っても、顔合わせの挨拶をする最初のひと時以降、ほとんど王族と顔を合わせることは無い。
「はい、分かっています。いつもの様に結界を張っても良いですか?」
広範囲の結界を張る為には、魔術師が通常四、五人は必要になる。それをユリージュは一人で軽く張れるほどの実力の持ち主。今日一緒に担当となった魔術師はラッキーな方だろう。力の強いユリージュの術を土台にして結界を張る為、他の魔術師の仕事がなくなるからだ……
「ええ、良いですよ?他の者は周囲の探索を怠らない様に!」
休める、と思っていただろう他の魔術師にもしっかりと魔術師長スーレは釘を刺した。
「あれから、何年経っただろうな?」
初めて会った綺麗すぎた幼いユリージュ、人を恐れてカイル以外の村人には物凄い警戒を見せていたっけ?何がきっかけかカイルにもわかっていないが、なぜか、妙に懐かれて……
「ユリ……」
ユリージュの白い頬にキスを落とす…
毎年、毎年お前が来るのが待ち遠しかった……
「ユリ…」
今度はキスを額に落とす……
会う度に、綺麗にそして魔力が強くなっていくお前が眩しかったなぁ……
「ユリ……?」
次は鼻先へ…そして唇へ…チョンチョンと突く様なキスを降らせて。
「ん……ぅ」
最後はしっかりと深く、唇を捉えて行く…
「んぅ…っ…っ!」
バチッとユリージュが目を開ける。
「カイル…!?…もう!起こす時はちゃんと起こして…!」
目を開けた瞬間にユリージュの顔がボッと赤くなった。
「おはよう、ユリ。後1時間で出勤だよ?朝食は出来ているから早くシャワーを浴びておいで?」
ユリージュの反応が可愛くて可愛くて
クスクスクスクス、きっと本人が怒るだろうことが分かるのに、カイルからは笑みが消えない。
「え?シャワー……」
は、昨日入ったはず…?
「俺は良いけどね?そのままでも…なんなら、朝から手伝おうか?」
手伝うと言ったカイルは有言実行とばかりにユリージュの下半身に手を伸ばす……
「朝だし?さっきのキスにも反応したか?昨日の名残もあるだろうからさっぱりしてきな?」
「あ…っ…分かっ…たから、カイル…離して…?」
朝からそんな事を言われれば、昨夜の記憶も蘇るし今の状態も恥ずかしすぎる。金の瞳が涙目になりながら、優しくユリージュを包む、手を離してと懇願し出した。
「よし、目は覚めたな?」
ニッコリと確認だけしてカイルはあっさりと手を離してくれた。
こんな事をされては、朝からユリージュの息は上がるし顔は火照る、どうしようもなく疼いてしまう熱をモジモジと持て余してしまって余計に辛いのに…
良い笑顔でただ笑っているカイルは、準備を手伝いユリージュに食事をさせて、出がけの玄関で、耳元で囁く。
「ユリ……愛してるよ…早く、帰っておいで?」
それだけでもうビクッとユリージュの肩が跳ねる。
「も、う…もうもう…!……カイル!!」
既に半泣き状態のユリージュをカイルはスッポリと抱きしめて、優しく甘い口付けを落とした。
「続きは帰ってから、だ。だから、早く、帰っておいで。」
真っ赤になった頬を隠す様に、ユリージュはグッとローブをずり下げた。
「行って、来ます!」
少し、不貞腐れた様にユリージュは走って王城に向かって行った。
「だってなぁ……今日は王族警護の日だろう?ユリがフラフラしない様に、ちゃんと釘は刺して置かないと……」
王族警護。その名の通りの王族の護衛だ。視察や行事、夜会などで外出する王族の警護にあたる当番制の仕事。ただでさえ見た目が必要以上に麗しいユリージュの事だ。その能力もさる事ながら、外見だってなかなかに噂の的にはなっているだろう。見目よし、力良し、ではどこのお偉いさんが欲しがるかわかったものではないのだから、使役人として絶対に離れることは無いカイルとて気が気ではない。ただでさえこの家からは出てはならない、と戒められているのに……何かあってからでは後悔では足りないくらい後悔する…
「ま、でも今日も先生が一緒、か…」
ならばそこまでは心配する必要はない。王城の中でも魔術士達を束ねる地位にいる者は出自の身分が低かろうとも一目置かれているくらいの影響力はあるから、そうそう無体なことは起きないだろう……
「ユリ……」
主人の居ない静かな部屋でカイルは一人で呟いた。自分の両手にある黒い戒めの鎖に、口付けを落としながら…
「…愛してるよ………」
今日の護衛は幼い姫君の乗馬訓練。まだ御歳九歳と言う幼い姫君は遊びたい盛りの活発さがあり、乗馬に挑戦となったらしい。
「ユリージュ、我々は外側ですよ?良いですね?」
姫君が馬で移動する馬場を囲む様にして内側から騎士、魔法剣士、魔術師の順で円形の陣を描く様に人を配置し護衛にあたる。魔術師は王族より一番離れた所で結界に異常が出ない様に対処するのが仕事内容になる。なので、実質王族警護と言っても、顔合わせの挨拶をする最初のひと時以降、ほとんど王族と顔を合わせることは無い。
「はい、分かっています。いつもの様に結界を張っても良いですか?」
広範囲の結界を張る為には、魔術師が通常四、五人は必要になる。それをユリージュは一人で軽く張れるほどの実力の持ち主。今日一緒に担当となった魔術師はラッキーな方だろう。力の強いユリージュの術を土台にして結界を張る為、他の魔術師の仕事がなくなるからだ……
「ええ、良いですよ?他の者は周囲の探索を怠らない様に!」
休める、と思っていただろう他の魔術師にもしっかりと魔術師長スーレは釘を刺した。
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