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山岸の休日も終わり、通常通りの勤務に戻ったのだが、妻静香の言っていた通り、本当に山の様に送られてきた猪肉を仕事後の九郎と山岸は冷凍庫に収納するのに一苦労した。
「こんな事を聞くのもなんですけど、奥様の感覚ってどうなんですか?こんなに送って寄越して…」
冷凍庫になんとかしまえたから良かったものの収納機能が無かったらただの嫌がらせにしかならないじゃない、と山岸はプリプリと怒っている。ご近所に配れる様な物ではないと言っていたから意地でも田中家で消費しなければならないのだ。
「山岸ちゃんの家にもさ、少し持っていかない?向こうで食べることもあるし?」
あまりの肉量に山岸のアパートの一人用の冷凍庫にも収納する始末であった。
「ほんとに、しばらくは飢えなくても良いほどですね……」
もう呆れながらもこの状況を飲むしかない……
「では、九郎さん私は一度これで帰りますね?スーツの替えなんて持ってきていませんので。」
休みの時はいざ知らず、通常乗務が始まっていればお互いの家に好きに泊まって行く事も時には難しくなる。暫くはまた行ったり来たりの逢瀬だろう。九郎は妻の静香の事はもちろん愛してはいるが、瑞々しく若く、可愛らしく尽くしてくれる後輩の山岸はまた手放し難いのだ。
「うん。山岸ちゃん、お疲れ様!本当、飯美味かったよ!また会社でな?」
「は~い!九郎さん余り一人で食べすぎないでくださいね?」
「分かってる分かってるって!一緒に食べような?」
「ふふふ、もう仕方ないですね?じゃ、もう行きます。」
山岸は田中家の中をざっと片付けて自分のいた痕跡を消して行く。結婚していない関係の二人は誰にもバレてはいけないものだ………
日常に戻ればあっという間に日々が過ぎる。研修中よりも時間にはゆとりが無くて帰りもまちまちになってしまうのは仕方がない。九郎にとっては何時もの就業体制で、世間では学生達の夏休みが終わりを迎える頃になっても九郎達の関係は終わりを迎えなかった。
「あ~~~山岸ちゃん…?」
会社オフィスの給湯室兼休憩室。簡易な給湯器に水場と自販機、テーブルに椅子が並べられている。
「はい?お疲れ様です、田中さん。」
流石に会社では名前では呼べないだろう。
「家の娘のさ、夏休みが終わるんだよね。」
「あ、もう9月になりますものね?」
「そう。明日帰ってくるって、昨日連絡があってさ…」
「まぁ!久しぶりに会うんでしょう?」
「まぁね?」
この休憩室には今他の社員は居ない。九郎と山岸だけである。
「ふふ、お嬢さん少し大きくなってたりして…?」
「子供の成長は早いからねぇ…なんか寂しいな……」
「良いじゃないですか!久しぶりなんだから十分甘えさせてあげたら良いですよ!」
「そうなんだけど…暫く、嫁もいるし山岸ちゃんの所にはそう頻繁に行けなくなっちゃったな………」
少し寂しそうな九郎…残念、とばかりに山岸の髪を弄ぶ。
「……じゃぁ、今日、来ます……?替えのシャツはありますから……」
「う~~ん……いい?」
「良いですよ…もぅ…!」
クルクル遊ぶ九郎の腕を山岸は力を入れずにポンっと叩く…
「じゃあ、今日はもらったお肉で肉丼にでもしましょうか?」
これだったら手っ取り早くて美味いのだ。
「お!良いね!分かってるね、山岸ちゃん!」
九郎は軽くチュッと山岸の頭にキスを落とす。
「も、もう!九郎さんたら!ダメですよ!ここ、会社ですって!」
ダメ、と言いながらも山岸の顔は嬉しそうである。その後の九郎は仕事を頑張った。いつも以上にハキハキとテキパキと仕事を終わらせ定時過ぎには会社を出た。そして定時に上がったであろう山岸を追って山岸のアパートへと消えて行った。
「明日かぁ~~」
ベッドの中で二人仲良く横になりながら山岸は間伸びした声を出す。
「ん?何が、明日なんだ?」
「あ、九郎さんの奥様が帰ってくる日ですよ。」
「ん~そうだね。」
「お家の方大丈夫でしょうか?」
「何が?」
「一様元あった様に片付けては来ましたけど、奥様に気が付かれないかなって……」
「お、今更ながらに不安になった?」
「…そうですね…女は、勘がいいんですよ?」
「はは!別に静香や美沙が居なくても俺が家にいたんだし、物の位置が変わってたって不思議じゃないだろ?」
「そうなんですけど、九郎さん、お料理しないじゃないですか。」
「う、まぁね…それはそうかな……?」
「今まで奥様に何も言われたことないんですよね?」
「うん。もう山岸ちゃんとは二年くらいか?何も勘繰られる様な事を聞かれた事はないな…」
「そっか……そうですよね?大丈夫かな、うん。」
「平気だって…それより、今日もありがとうな?飯、美味かったし…」
九郎はそう言うと布団の中でギュッと山岸を抱きしめる。
「ふふ。良かった。九郎さんに喜んでもらえて…」
「うん……」
明日には、静香と美沙が帰ってくる……
「こんな事を聞くのもなんですけど、奥様の感覚ってどうなんですか?こんなに送って寄越して…」
冷凍庫になんとかしまえたから良かったものの収納機能が無かったらただの嫌がらせにしかならないじゃない、と山岸はプリプリと怒っている。ご近所に配れる様な物ではないと言っていたから意地でも田中家で消費しなければならないのだ。
「山岸ちゃんの家にもさ、少し持っていかない?向こうで食べることもあるし?」
あまりの肉量に山岸のアパートの一人用の冷凍庫にも収納する始末であった。
「ほんとに、しばらくは飢えなくても良いほどですね……」
もう呆れながらもこの状況を飲むしかない……
「では、九郎さん私は一度これで帰りますね?スーツの替えなんて持ってきていませんので。」
休みの時はいざ知らず、通常乗務が始まっていればお互いの家に好きに泊まって行く事も時には難しくなる。暫くはまた行ったり来たりの逢瀬だろう。九郎は妻の静香の事はもちろん愛してはいるが、瑞々しく若く、可愛らしく尽くしてくれる後輩の山岸はまた手放し難いのだ。
「うん。山岸ちゃん、お疲れ様!本当、飯美味かったよ!また会社でな?」
「は~い!九郎さん余り一人で食べすぎないでくださいね?」
「分かってる分かってるって!一緒に食べような?」
「ふふふ、もう仕方ないですね?じゃ、もう行きます。」
山岸は田中家の中をざっと片付けて自分のいた痕跡を消して行く。結婚していない関係の二人は誰にもバレてはいけないものだ………
日常に戻ればあっという間に日々が過ぎる。研修中よりも時間にはゆとりが無くて帰りもまちまちになってしまうのは仕方がない。九郎にとっては何時もの就業体制で、世間では学生達の夏休みが終わりを迎える頃になっても九郎達の関係は終わりを迎えなかった。
「あ~~~山岸ちゃん…?」
会社オフィスの給湯室兼休憩室。簡易な給湯器に水場と自販機、テーブルに椅子が並べられている。
「はい?お疲れ様です、田中さん。」
流石に会社では名前では呼べないだろう。
「家の娘のさ、夏休みが終わるんだよね。」
「あ、もう9月になりますものね?」
「そう。明日帰ってくるって、昨日連絡があってさ…」
「まぁ!久しぶりに会うんでしょう?」
「まぁね?」
この休憩室には今他の社員は居ない。九郎と山岸だけである。
「ふふ、お嬢さん少し大きくなってたりして…?」
「子供の成長は早いからねぇ…なんか寂しいな……」
「良いじゃないですか!久しぶりなんだから十分甘えさせてあげたら良いですよ!」
「そうなんだけど…暫く、嫁もいるし山岸ちゃんの所にはそう頻繁に行けなくなっちゃったな………」
少し寂しそうな九郎…残念、とばかりに山岸の髪を弄ぶ。
「……じゃぁ、今日、来ます……?替えのシャツはありますから……」
「う~~ん……いい?」
「良いですよ…もぅ…!」
クルクル遊ぶ九郎の腕を山岸は力を入れずにポンっと叩く…
「じゃあ、今日はもらったお肉で肉丼にでもしましょうか?」
これだったら手っ取り早くて美味いのだ。
「お!良いね!分かってるね、山岸ちゃん!」
九郎は軽くチュッと山岸の頭にキスを落とす。
「も、もう!九郎さんたら!ダメですよ!ここ、会社ですって!」
ダメ、と言いながらも山岸の顔は嬉しそうである。その後の九郎は仕事を頑張った。いつも以上にハキハキとテキパキと仕事を終わらせ定時過ぎには会社を出た。そして定時に上がったであろう山岸を追って山岸のアパートへと消えて行った。
「明日かぁ~~」
ベッドの中で二人仲良く横になりながら山岸は間伸びした声を出す。
「ん?何が、明日なんだ?」
「あ、九郎さんの奥様が帰ってくる日ですよ。」
「ん~そうだね。」
「お家の方大丈夫でしょうか?」
「何が?」
「一様元あった様に片付けては来ましたけど、奥様に気が付かれないかなって……」
「お、今更ながらに不安になった?」
「…そうですね…女は、勘がいいんですよ?」
「はは!別に静香や美沙が居なくても俺が家にいたんだし、物の位置が変わってたって不思議じゃないだろ?」
「そうなんですけど、九郎さん、お料理しないじゃないですか。」
「う、まぁね…それはそうかな……?」
「今まで奥様に何も言われたことないんですよね?」
「うん。もう山岸ちゃんとは二年くらいか?何も勘繰られる様な事を聞かれた事はないな…」
「そっか……そうですよね?大丈夫かな、うん。」
「平気だって…それより、今日もありがとうな?飯、美味かったし…」
九郎はそう言うと布団の中でギュッと山岸を抱きしめる。
「ふふ。良かった。九郎さんに喜んでもらえて…」
「うん……」
明日には、静香と美沙が帰ってくる……
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